書き換えることが出来るだろうか。鍵の、その運命を。(Copywrite)

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書き換えることが出来るだろうか。鍵の、その運命を。


 

 

 Rewrite、ようやく一通り終わりました。

 どうも、まだ埋め切れてないルートがあるっぽいけど、主要な部分はどうやら全部やったみたいだし、とりあえず夏コミ前に感想を上げておきたい、という事で。て言うか、今年の夏コミ、どうしようかなー。行きたいけど、あれもの凄く疲れるし、今年は行けないだろうと思ってカタログも買ってないし。

 

 横道から戻って、Rewrite談続行。

 発売日発表と同時に予約、震災を口実にした発売延期を経て6/24の発売に入手、すぐにインストールしたRewrite。なのだけど、なんか妙に時間が無くて、結局本格的にやり始めたのは7月中旬になってから。一番最初にクリアしたルチアルートに費やした時間から計算して、遅くとも発売1ヶ月以内(7/26)までには終わるだろうと思っていたら、ルートによって分量がまちまちで、しかも「やっと終わりが見えた…」と思ったらまだ延々続いてゲンナリしてやる気が無くなることもしばしば(とくに、ちはやルートと静流ルート)。

 結果、この時期にやっと終わる事に。て言うか、幸か不幸かたまたま8月が時間空いてしまったので、Tera編を一挙にやり終え(いや正確には、読みづらくて投げ出した日もあるから、一挙にでは無いのだが)る事が出来ましたが、何か選択できない選択肢がいっぱいあったからそれはどうやって回収するのかしらんと思っていろいろやっているうちにさらに1日潰れてしまった。(結局、これは選択できない仕様らしい。もう、意味がわからん。)

 とにかく。「疲れた…」というのが第一声です。

 

 

 

 改めて、全体の感想を。

 まず、あらかじめ一言でこの作品を形容しておくと。

「劣化版禁書目録田中ロミオ風、一部素材にKey産のものを使用しております」

ってとこでしょうか。

 

 まず、前半の、個別ルートとも言える部分。正直言って出来はよくないです。5ルート全部終えた時点で、「さて、感想アップするときは、一体どんな言葉を使ってこき下ろしてやろうか」等と思っていたくらいです。

 小鳥ルートだけは、良かったなと思えましたけど。でも、これにしても、終わり方がなんか中途半端。「小鳥はメインヒロインだし、たぶん後半部分でいろいろフォローが入るんだろう」と思っていたら、そんなの無し。

 なんていうかね。「指揮官不在で各ライターが好き勝手に書いたものを、後から整合性取ろうとちょっといじくってみたりしたが、むしろ却って悪いものになってしまった」って感じなんですよ。大物ライター2人も引っ張ってきたのが、見事に裏目に出た、って感じですかね。この辺は、後で改めて書きますけど。

 

 とはいえ、後半のMoon編は幻想的な感じが良かったし、Tera編は、「ああこういう事だったのね」と納得させる展開になっていて、話自体は悪くなかったです。ただ、Tera編が、どういう意図があるのか知らないけど、テキスト表示形式が突然Leafのビジュアルノベルみたいな形になっちゃって、すごく読みづらかった。ぶっちゃけ、画面いっぱいに文章表示させたいなら履歴機能使えば出来るんだし、なんでこんな事したのか。

 

 あと、前半に戻っちゃうけど、マッピー超ウザい。マジウザイ。1回目進めてるとき(自分の場合はルチア攻略してるとき)は、まあまだ我慢できたけど、それ以降文章スキップしているときにマッピーが出てくると、もう「またかよマッピー糞ウゼェ!」と声に出して悪態をつかずにはいられなかった。

 て言うかさ。Keyは、こういう仕掛けとかミニゲームでプレイヤーに余計な進行妨害をさせない、て言うのがある意味売りの一つだったと思うんだけど。リトバスでも、ミニゲームはシナリオ進行には支障来さなかったはずでしょ。

 麻枝が指揮してれば、たぶんこんな風には作らなかったと思うんだけど。AngelBeats!で株大暴落したとは言え、やっぱりKeyには麻枝が必要なのか…と思わずにはいられませんでした。…とはいえ、麻枝にはちょっと一回本気で休んで欲しいですけどね。ハワイでもタヒチでもバリでもニューギニアでもいいから、とにかく静養できるところでゆっくり休んで欲しいですわ。沖縄でもいいですよ、豚足食えとは言わないから。つか、リトバス後、やっと休みを取ってくれたと思ってほっとしていたら、誰の命令か知らないけどAngelBeats!の仕事させられてたってんだから(て言うかこれ普通に労働基準法違反だよね)。ほんと、この後Keyをどう運営していくつもりだよ。

 

 また話が横道にそれたが。とりあえずRewriteを作品として総合評価すると。「合格点を与えられるかどうか、かなり微妙なところ」ってとこですかね。

 

 

 

 ここで、ちょっとRewriteの製作体制について、自分なりの考えを書いてみたい。

 ネットを見渡すと、どうやらRewriteは田中ロミオ作品、という風に位置づけている人が多いようで、事実シナリオの殆どを田中ロミオが手がけたんでしょうけど。個人的には、まずここが気にくわない。

 そもそもRewriteって、樋上いたる企画の作品ということで出発したはずなんですから。

 歴史と現状として、久弥が逃げ涼元が抜け、単身Keyを支えてきた麻枝は満身創痍で仮に復活できても数年先になるというのが、今のKeyの現実。そんな中、Keyの精神的支柱(と麻枝は語っていた)である樋上いたるが企画した作品が出る、ということで、「Keyではあるんだけど、今までとはちょっと違う新しい可能性を提示してくれる」と、かなり期待してたんですよ。

 ところが。蓋を開けてみたら、エンディングロールに示されているように、いたるは原案に後退。変わって、世界観設定という名目で田中ロミオの名前が前面に出ている。事実、作品内容は「何かの叩き台があったみたいだけど、それを田中ロミオが換骨奪胎して自分の作品に作り替えてしまった」というものになっている。

 シナリオ読んでて思ったんだけど。田中ロミオという作家は、確かに凄腕のライターだとは思う。けど、自分が1から作った世界観でなければ1行も書けない人なんじゃないか。という風に、自分は感じたんですね。事実、いたる企画の段階で明らかに核だったはずの小鳥について、全然掘り下げられていないし。ちょっとふざけんな、と言いたい。

 ぶっちゃけ、自分は田中ロミオは「何かよく知らないけど有名な人らしい」という程度の認識で、作品を読むのはRewriteが初めてなんですね。なので、全然期待はしていなかったのですが。こんな事されてしまうというのは、いくら何でもちょっと。ありえないです。

 まあ、田中ロミオがこういう条件で引き受けたのか、逆にVA側からそうしてほしいと依頼されたのか、そこはわかりませんけど。純粋培養の鍵っ子としては、腹立たしさを感じずにはいられません。

 

 ついでに、もう1人の大物ライターである竜騎士07について。まあ、なんというか、うまく逃げたな、という感じですね。

 2年近く前の雑誌インタビューで、竜騎士07が「自分の担当分はもう終わった」という事を言っていて、その時は単純に「竜騎士って仕事早いんだな」と思ったのですが。実際にRewriteやり終えてから改めて考えると、「彼は、Rewriteは迷走すると早期に看破していて、それで自分に依頼された最低限の仕事だけさっさと済ませて、あとは本来の自分の仕事であるうみねこ関係の作業に専念していた」って事なのかな、と想像してしまいます。まあ、商業ライターとしては正しいやり方ですよね。

 

 とにかく、こういうのはリーダーがしっかりまとめてればもう少しうまくやれていたと思うんですが。そもそもそのリーダー自体が存在しない、という異常な製作体制だったみたいですから。話になりません。

 本来なら、企画者である樋上いたるがリーダーやるのが筋なんですが、企画内容奪われてしまってまとめ役続けられなくなったのか、逆にまとめ役が務まらないから企画内容も奪われてしまったのか、その辺はわかりませんけど。でも、そういう事態に陥ったら、それは上がフォローしないといけませんよね。でないと、何のための会社組織なの?て話になりますよ。

 樫田や城桐クラスの外注使うならともかく、大物2人も引っ張ってくるなら、Key本体の体制も、不測の事態も想定してあらかじめしっかり構築しておかなければいけませんよね。それを全然やってないって、一体何なの? と、正直ビジュアルアーツの経営能力を疑いますよ。

 同人サークルじゃないんだからさ。

 

 

 

 さて。ちょっと書き漏らしてしまったので、もう一回Rewriteの作品本体に戻って。

 まあ、内容もちょっと良いとは言い難い(というより、統一感がない)Rewriteですが、それ以上に、細かい設定や品質の荒さというか不備が、あまりにも多いです。

 

 今までのKey作品では考えられないくらい、誤字や言葉の用法間違いが多すぎです。特に田中ロミオの担当分に目立ちます。いえ、これについて田中ロミオを責める気はありません。テキスト打ってれば、最高精度と言われるATOK使ってても誤変換は発生するし、言葉の意味を勘違いしてることだってあるでしょう。

 問題はむしろ、チェック体制の不備と言えるでしょう。QC(品質管理)に麻枝准が任命されていますが、その麻枝からして「こんな大物相手にチェックなんてできるわけない」何て言ってるくらいですから。麻枝はどこまで本気の発言だったかわかりませんが、他のチェック要員も同じような意識でいたとしたら、そりゃあミス指摘なんて出来ませんよね。結果、不具合だらけのテキストをリリースしてしまう。最悪のパターンですね。

 

 あと、設定の荒唐無稽さも目立ちます。一例を挙げれば、風祭市の都市構造。「作品のテーマ自体は、実は環境問題じゃなかった」とはいえ、風祭市自体は「環境緑化都市」という事で設計された都市のはずです。それなのに、鉄道の駅は郊外にしかなく市内路線も無い。これはまだいいとしても、にも関わらず高速道路は何故かしっかり整備されていて、その上をガソリン車が爆走している。

 …少しは勉強しろよ、ってさすがに言いたくなりますね。

 

 …いや、何かけなしてばかりですが。でもだって、特に取り立てて褒めるようなところが無いんだもん…。かと言って、駄作と断じきることも出来ないというのは、なんだか不思議です。
 要するに、「凡作」ってことですかね。

 麻枝准の手がけた作品は、名作か駄作かの両極端に別れるし、Kanonとクドわふたーは普通に名作なので、そういう意味では「Key史上初の凡作」ということになるのでしょう。…全然名誉でもなんでもありませんね。

 

 

 

 閑話休題として、ちょっと雑記を。

 前半個別、自分は、ルチア→ちはや→朱音→静流→小鳥の順で攻略したのですが。朱音ルートはちはやルートを、静流ルートは朱音ルートを終えないと解放されないので、自分の意志で順番が決まってるのはルチアと小鳥だけです。…まあ、この2人が希望通りの順番に出来たので、自分は文句は言いませんけど。

 

 ちなみに一番好きなヒロインは、西九条灯花です。…攻略できないからヒロインじゃない、って意見は、却下です。かつてKanonで香里派さらには北川派の闘士として戦い、リトバスでもEX発売前から佳奈多が一番だった自分にとっては、攻略可能の有無など、関係ないのです。

 攻略可能な5人の中では、ルチアか小鳥か…というのは攻略順の項の記述でもうおわかりいただけるかと思いますが。ところでルチアって、どう見ても川澄舞の互換キャラですよね。舞がヤンデレ化せず普通に成長してたら、たぶんこんな感じになってたんじゃないかと。あと、戦闘能力が高い(武器は剣)・特殊能力がある・黒髪ポニテと、無関係とする方が不自然です。まあ自分は舞は嫌いじゃないから問題無いんですけど。

 

 ところで、Keyはファンの半数近くは女性と言われるほど、女性の支持が強いブランドです。麻枝准がCLANNADは女性ファンも意識して作ったと明言していますし、AIRも、コミケでジャンルAIRでサークル参加しているのは全員女性という時期もありましたから、間違いないでしょう。だからこそ、Rewriteは同じ女性の樋上いたるを企画として起用した、とも考えられます。

 で、実際女性ファンから見てRewriteは満足だったか? というのは、正直わかりません。ダッテジブンオンナノコノトモダチイナイシ…。(いや正確には全くの0かというと嘘になるけど、全員非オタだからRewriteの感想なんて訊けるはずもないし)

 なので、あくまで推測でRewriteの女性受け要素を分析してみます。まず、男性キャラは、数だけは多いです。が、女性好みしそうなイケメン・美少年キャラは殆どいません。咲夜が超人級のイケメンですが、あまりにクオリティが高すぎて、正直浮いてしまっている気がします。何にしろ、1人だけというのバランスが悪すぎます。

 もう1人ショタ系美少年を入れれば一応最低限のラインアップは整うと思うのですが。残念ながらいません。おそらく、樋上いたるとしては主人公の瑚太郎をこのポジションに据えたかったのでしょうが、シナリオ展開的に無理ありすぎなので、断念したといったところでしょうか。それを念頭に改めて瑚太郎のキャラデザを見ると、その辺りの妥協というか葛藤の末生まれた顔つきだなーと、妙に納得してしまいます。

 ていうか、何でバトルものになんかしたの? 一体誰の指示? いたる企画の段階からそうだったの?

 

 ま、こんなとこで。

 

 

 

 さて。最後に、Rewriteの総括を一言で言い表すなら。

 

「戦犯は馬場社長。」

 

 理由は、この文書をもう一度読み返していただければ、自ずとわかるかと。

 

 

 

 とにかく。Keyは今、重大な岐路に立たされていると思いますね。

 現状考え得る最も現実的な方策は、何年かかるかわからないがとにかく麻枝の復活を待って、その間は樫田・城桐で繋いでいく、と言ったところでしょうか。…あ、でも樫田はなんか、税理士開業したらしいし。まあでも開業したてじゃ仕事もそんなに無いだろうし、今ならまだ1作ぐらいは受けて貰えるんじゃないですかね。

 

 起死回生の大技があるのなら、それに越したことはないですけど。

 

 

 書き換えることが出来るだろうか。鍵の、その運命を。

 

 

 

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「智代アフター」発表に関して [智代アフター]

「智代アフター」発表に関して [智代アフター]

 どっちのblogで書こうか迷ったが、どちらかというと一般人向けの「blog出張所」の方で18禁ソフトのことをあまり書くのもなあ・・・と思い、こっちで書くことにした。

 とまあ言い訳は置いといて、「智代アフター」製作発表。いや、ほんとに出すんだ。てっきり麻枝准のホラだとばっかり思ってたのに。

 というか、発表文書を見て気づいたこと。

原画が樋上いたるじゃない
シナリオも、麻枝准以外に樫田レオという人が入っている
タイトルに「CLANNAD」が入っているわけではない
登場人物紹介に、苗字がない
「ストーリー」の内容がCLANNAD本編と矛盾している(CLANNAD本編では、朋也は智代が卒業するまでの一年間、完全に距離を置いていた)

 ということから。この「智代アフター」なるゲームは、「何となくCLANNADっぽいけど実はCLANNADとは関係ない18禁ゲーム」なのではないか。という推測が導かれる。

 正直、「おいおい」という気分である。
 確かに、完全一般指定として出してしまって、和歌山県に広告にまで採用されてしまった「CLANNAD」というブランドに、今更18禁というレッテルを貼られるわけにはいかない、という商業的判断はあるのかもしれない。しかしならば、なぜこんな紛らわしい形に・・・? とも思うわけで。

 思うに、智代アフターはこういう経緯で発表に至ったのでは無かろうか。

  1. 当初は本当に、麻枝准お得意のホラだった
  2. 発売直後から葉鍵板などで朋也批判が噴出、次第にエスカレート
  3. 当初の葉鍵板での朋也批判の根拠は、智代との関係についてというところに集中していた
  4. 朋也のイメージを軌道修正させ、沈静化を図る目的で、ネタのつもりだった「智代アフター」を出すことに
  5. 当初発言で18禁と言ってしまったため、18禁で出さざるを得なくなる
  6. 和歌山県からCLANNADを観光宣伝に使いたいという話が舞い込む
  7. 販売戦略やブランドの路線方針も含め、内部で大激論
  8. 妥協の結果、CLANNADっぽい別物という形で出すことに決定、原画も差し替え

 という、まああくまで荒野草途伸の想像なわけだが。

 ところで、友人iAcnと会話していてもう一点気になったこと。
iAcn「 とも が気になるなあ(マイナスの意味で)」
xatosi「・・・まさか、『登場人物は全て18歳以上です』・・・か?!」

 ・・・まさかなあ。と、思いたいが。
 正直、Keyがそんな真似したら、もう応援する気には到底なれないぞ。いくらAIRの実績があろうとも。

 まあとにかく。自分としては、「智代アフター」は完全に様子見だなあ。つーか、買わない選択肢もあり得る・・・。

2005-04-28 02:06

岡崎朋也論 [CLANNAD-朋也]

岡崎朋也論 [CLANNAD-朋也]

 君は、岡崎朋也が好きか? 私は、微妙である。シナリオの行動そのままを字面通りに評価するのであれば、正直好きにはなれない。

 岡崎朋也という人物を一言で言い表すならば、「ヘタレ」である。「ヘタレという言葉の定義を知りたかったらCLANNADをやりなさい、その主人公がまさにそうだ」と言っていいくらいのヘタレである。
 CLANNAD学園編で朋也はしきりに親友の春原をヘタレ呼ばわりしているが、afterシナリオでは春原以上のヘタレっぷりを見せてくれる。ぶっちゃけた話、ヘタレ同士だからこの二人は気が合ったのだ、とも言えるだろう。
 そんな朋也が、私は気にくわない。

 では主人公がヘタレなのは嫌なのか、と言ったら、そういうわけではない。かつて、Kanonの主人公相沢祐一はヘタレだと主張し、ヘタレであって欲しいと願い、ヘタレであってくれなくては困るとまで言った、そんなイタい過去があるくらいなのだ。
 「ヘタレな主人公」そのものは、むしろ好きと言っても過言ではないだろう。

 では何故朋也だと気にくわないというのか。それは朋也が、度を超したヘタレだからである。
 私がヘタレな主人公が好きなのは、「ヘタレでもヘタレなりに一生懸命頑張っている」姿に好感を抱くからである。共感と言ってもいい。しかし残念ながら岡崎朋也という人物にはそれが感じられない、若しくは間違った努力をしている。そう思わざるを得ないのだ。

 その傾向が如実に表れるのが、after後半、汐編と呼ばれる部分での朋也の行動である。ざっとそのあらすじを書いてみると。

 朋也は渚と結婚し、渚はお腹に二人の娘、汐を宿した。だが元々体の弱かった渚は出産時に死亡。汐の養育を朋也に託す。だが朋也は悲しみに暮れるあまりその養育を放棄し、5年間汐と顔を合わせようとすらしなかった。渚の母親で朋也の代わりに汐を育てていた早苗は、そんな朋也の態度に業を煮やし、二人を朋也の故郷に旅行に行かせ、朋也の祖母に会わせることで問題の解決を図ろうとする。自分の父親が、自分同様早くに妻を亡くし、しかし16になるまで自分をしっかり育ててくれたことを知り、泣き崩れる朋也。朋也は汐を育て、これまで代わりに汐を育ててくれた早苗・秋生夫婦と一生家族でいることを誓う。
 だがそんな朋也の思いも、汐が発病することで再び狂いだしてしまう。汐が渚と同じ症状だと聞かされた朋也は、これからはずっと汐の側にいると心に決める。そして汐を看病するために、早苗の反対を振り切って仕事を辞めてしまう。経済的な余裕は無くなり、貯金も僅かになっていったが、しかし義父秋生からの経済援助は断ってしまう。冬になり、汐の症状は悪化していった。ある日朋也は、汐が一緒に旅行に行きたいと言っていたことを思いだし、汐を外に連れ出してしまう。雪が降り出し、汐は歩けなくなってしまう。そして朋也の腕の中で、汐は幻想を見ながら息絶えていく・・・。

 と、ここまで書く為にCLANNAD汐編を読み直していたのだが。ふと気づいたことがある。半強制的に見せられるものとはいえ、汐編はCLANNADの「バッドエンド」なのだ。そして、あとからプレイする際にこの汐編に入るためには、渚が死の淵を彷徨っている時に朋也が渚を「呼ばない」という選択肢を選ばなくてはならない。
 これが一体何を意味するのか。

 ここでCLANNADのテーマを思い返してみる。1に「街」であり、2に「家族」である。ここで言う街は無機質なコンクリートの固まりによる構造物の集合体のことではなく、そこに住む人達の共同体である、と解するべきであろう。つまり、街にしろ家族にしろ、「人と人との繋がり」というものが、CLANNADの究極テーマであると考えられる。
 さて。汐編での朋也の行動は、このテーマに沿っているだろうか。冒頭で渚を呼ばない。自身の娘を5年も養育放棄。汐発病後、勝手に辞職。秋生からの資金援助も拒絶。まさに、「アンチCLANNAD」とすら言える行動である。そしてこの汐編はバッドエンドなのだ。
 つまり結論を言えば。汐編の朋也は、反面教師なのである。「こんな行動を取ってはいけないよ」「こんな努力の仕方は間違ってるよ」という、作者(麻枝准)からのメッセージなのだ。

 そういう意味では岡崎朋也という人物は、主人公でありながらこんな損な役割をさせられている、大変不幸な人物と言えるかもしれない。こんなことで嫌ったりするのは、酷なことなのかもしれない。だがそれでも、私はこう思わずにはいられないのだ。
 「ああはなるまい」、と。
 
 
 2005-04-12 03:33

霧島佳乃論 [AIR-佳乃]

霧島佳乃論 [AIR-佳乃]

 よそのblogにトラックバックしまくるblog、というつもりで開設したが。3日も経たずに方針変更して、Key系のblogとすることにした。

 どちらかというと、Key系の話で、自分の表ページでちょっと言いづらいことをここで言っていく形になる。

 さて、今回のテーマは「霧島佳乃」。言わずとしれた、AIR3人娘の一人である。

 霧島佳乃さん、どうも世間的には「人気がない」ということになっているらしい。確かに各所の投票所でも観鈴・美凪に比べれば劣るし、コミケでもカタログに佳乃のカットを使っているサークルは決して多くはない。昨年末の冬混みでは、ついに0になってしまった。
 しかし、本当に人気がないのだろうか。私は、否だと思う。例えばKey Fun Pageの「Keyな大辞典」では、「霧島佳乃」のエントリーは1210あり、「北川潤」に次いで第2位につけている。また、同人誌やWeb漫画を取ってみても、佳乃が活躍する場面というのは意外に多い。表向き(人気取りの為)他のキャラを前面に出しつつも、実は作者自身は佳乃が好き。そんな人が多いのではないのだろうか。また、比較的女性からの人気が強いようにも思う。AIR初回版発売直後には、佳乃を割と強力に押していた女性の絵描きさんも、ちらほらと見受けられたものである。

 とはいえ。霧島佳乃というキャラクターが、一般的なオタク男性の好みではないというのも、また事実であろう。
 佳乃の性格的な特長として、「天衣無縫。誰とでも友達になれる」というところがある。これは無論、世間一般的に見れば「とても良い性格」ということになる。だからこそ、作中でも人気のあるキャラクターとして描かれているのだろう。
 ところが。この性格は一方で、「他人のプライベートエリアにも遠慮無く踏み込んでしまう」という行動に繋がってしまう傾向がある。実際、それくらいのことをしなければ、誰とでも友達になるという芸当など出来はしないだろう。

 その一方で、オタクというのは自分自身のプライベートエリアを非常に大事にする。また、その範囲も得てして広い。そんな中に問答無用で飛び込んでくる人がいたら。男女問わず、嫌悪感というか恐怖心を覚えてしまう。それがオタクの性と言うものだ。

 そう。嫌いと言うより、苦手なタイプの女性。それが、オタクにとっての霧島佳乃というキャラクターと言えるのではないだろうか。

 しかし。よく考えてみれば、佳乃みたいな女性は実際にいるとすればとてもありがたい存在である。何しろオタクというのは、女性に対して異様に奥手だったり、変なフィルターをかけたりしがち。そんな相手でも、こういうタイプの女性は問答無用で接近してくれるわけだ。
 そこで、チャンスを生かそうと必死になるか、こんな女嫌だと逃げてしまうのか。そこが結構運命の分かれ道なのだろうなあ、と、思うのである。

2005-03-19 18:17