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美凪ご飯

「お、遠野。今日のメシは豪勢だとみちるに聞いたんだが」
「はい、土曜丑なので・・・。」
「うなぎか?!」
「いえ・・・そのつもりだったのですけど、それだけでは面白くないと思いまして・・・。」
「ん、これか? なんか栗、と言うか栗の花のような匂いがするが・・・。栗ご飯か? いやでも栗入ってないし。」
「・・・ですから、うなぎの代わりに、その、私の・・・。」
「・・・・。」
「・・・うなぎご飯じゃなくてみなぎご飯。なんちゃって。」
「誰か助けてくれ!」
 

遠野母御膳

「はんばぁぐ、はんばぁぐ。」
「み、みちる。俺にも一個、一個で良いからくれ、腹が減ってるんだ・・・」
「あら国崎さん。美凪がたくさん混ぜご飯を持っていったはずですけど?」
「混ぜご飯・・・いや、ちょっと事情がありまして、あれは一口しか食べてないんですよ。」
「えー?! 国崎往人、あれ食べてないの? 折角みちるが、自分の分は遠慮して譲ってやったのにー!」
「お前それ、遠慮じゃなくて逃げたんだろ・・・」
「まあ、食べてないなんて。折角私が作り方を教えてあげたのに。」
「え?」
「美凪の料理は、全部私が教えたものなんですよ。もちろん、男の人への愛情の込め方も含めて。」
「・・・。」
「ちなみにこのハンバーグにも、私の愛情がたっぷり入ってます。」
「・・・・。」
「あの人と別れる前・・・そう、ちょうど別れる前の晩にも、たくさん食べさせてあげたのですけど・・・。」
「あの、ちなみに何が入ってるんですか?」
「うふふ、ヒミツです。それに女性にそんな事訊くものじゃありませんよ、めっ。」
「・・・・・。」
 
「うむ。確かに遠野さんのお母上は、完治してはいない。現実に対する認識が戻ったと言うだけで、それはまだ治癒への第一歩に過ぎないからな。だからこそ、君のような周りの人間の理解と協力が」
「いや、そうじゃなくてだな。俺が言いたいのは、あれは病気とかじゃなくて、遺伝とかそういうレベルのもの何じゃないかと・・・」
2005年8月1日執筆
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