たていすかんな
神奈「柳也どの。柳也どのは剣一つで、その身を立てたのであるな。」
柳也「うむ、そうだが。」
神奈「余も何か、そういう特技を身につけたいものじゃ。」
裏葉「神奈様、すばらしいお心がけ。」
柳也「そう言いつつお前、お手玉だって結局ろくに出来なかったじゃないか。」
神奈「無礼者! あれは、あれはその・・・余は余なりに努力したのじゃ。」
裏葉「それはさておき。神奈様、何をなさるおつもりで?」
神奈「うむ。できれば柳也どのと同じ、剣のようなものがよい。」
柳也「うぅむ。しかし剣術というのは基本的に、戦うためのもの。人を殺めることもあるものだぞ。お前に出来るか?」
神奈「それはならぬ。人を殺めることだけは、決してあってはならぬ。」
柳也「なら剣は無理だな。」
裏葉「では、刃物で且つ人を殺めぬものという事で、こちらなどいかがでしょう?」
神奈「これは?」
裏葉「鉋(かんな)と申します。中に刃が仕込まれておりまして、大工が柱などを仕上げるために使うものにてございます。」
神奈「なんと、余と同じ名の道具であるか! うむ、気に入った。余はそれを使いこなして、それで身を立てられるほどになって見せようぞ。」
柳也「うん、そうか。まあせいぜいがんばってくれ。」
神奈「うがああぁぁぁっ!」
柳也「やっぱりうまくできなかったわけだな。」
裏葉「よよよ。せっかくの吉野の本杉が。身を立てるどころか、ささくれが立ってしまっておりまする。」
神奈「言うなっ!」
2005年9月22日執筆