佳奈多をめぐる冒険~佳景山編~

二木島駅は三重県にある。奈多駅という駅も、福岡県の海の中道線にある。では、間を埋める「佳」という時のつく駅は無いか。
「駅メモ」という位置登録型ソシャゲがあって、荒野も1冊解説本を出しているのだが、それの機能の1つに全国の路線と駅を検索する機能がある。まあ、別に他にも駅名探索機能を提供しているアプリやWebサービスはあるのだが、今回使ったのがそれと言う事で。余談だが荒野は駅メモではほこね(ドシスコン姉)・レイカ(ツンデレ)・シーナ(ドS)がお気に入りである。

佳奈多の話に戻ろう。

検索したところ、以外にも佳の付く駅名は「佳景山」ただ1つであった。たった1文字なのだからもう少しあると思ったのだが、1駅だけだった。
ちなみに、バス停だと「佳例川」というバス停が鹿児島県国分市にあるようだ。いずれ、「佳例川~奈多路線バスの旅」というのでも、テレビ東京と提携してやってみたいものである。
今回はあくまで鉄道の駅にこだわったので、佳景山一択となる。テレビ東京の支援も無い。全額自費である。

佳景山駅は、宮城県石巻市にある石巻線の駅である。宮城県。遠い。新潟も遠かったが、距離的には石巻の方がもっと遠い。
元々は、9月前半のシーズンオフに青春18きっぷを使ってゆっくり行くつもりだったが、ちょっと家庭の事情があって盆期間中に家を出なくては行けなくなり、どうせ出るならばと急遽宿を取って石巻まで行く事にした。急だったので出来るだけ乗り換えなしで行こうと、往復とも太平洋フェリーの名古屋~仙台航路を使う事にした。幸い、予約は取れた。予約は。
この年、台風がなかなか上陸しないと言われていた中、台風5号が日本に接近していた。

8/7、以下の内容のメールが太平洋フェリー株式会社から届いた。

8月9日(火)名古屋19時00分発仙台行き「いしかり」は、台風5号の影響により、欠航となりました。
つきましては、払戻し手数料なしでご予約を取消処理いたします。
クレジットカードにてお支払い済みのお客様は、クレジットカードからの運賃の引き落としはございません。
マルチペイメント(コンビニ・ATM)にてお支払い済みのお客様は、以下URLより返金手続きをお済ませ下さい。
なお、復路予約もされておりキャンセルする場合は予約番号をご用意のうえ下記までご連絡ください。(復路予約をお客様ご自身にて取消し操作されますと手数料がかかります)
ご利用のお客様には大変ご迷惑をお掛けいたしますが、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

…。
宿もとったのに、どうやって石巻まで行けばいいのか。新幹線は高い。帰りの関係もあるので、18きっぷはあまり特では無い。
虎の子のANA優待券を使い、飛行機で行く事にした。フェリーよりはずっと高くつくが、新幹線を乗り継ぐよりは安くつく。…そういえば、去年ガタケに参加したときも、前日に急用が入って高速バスキャンセルして、ANA優待券で新潟入りりしたんだっけか。あと、最近金券ショップでANA優待券安く手に入るので、別に虎の子と言うほどでもない。

そういうわけで、予定より1日遅い(フェリーだと船中で1泊する為)8/10に、中部国際空港から仙台空港まで飛行機で飛んだ。昼に着く便を予約したのに、バスが渋滞で遅れた(しかも発車してからアナウンスしやがった)為、一本遅い便に乗る羽目になった。しかも、変更した便まで機材都合で出発が遅れた。
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仙台空港着。仙台空港アクセス線という仙台駅直通の鉄道があるのだが、どうもJR線では無いらしい。しかもまさかのワンマン単線。dsc_0240

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仙台駅で牛タン弁当を買って、石巻に着いたときにはもう夜だった。予定通りなら、石巻まで向かうその途中経路で佳景山駅に立ち寄る事も出来たのだが。
途中駅に、「高城町」という駅があったが、たぶん高城丈太郎とは関係ない。
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その日の夕食は勿論牛タン弁当。紐を引っ張ると暖かくなるんですよ!? 凄くないですか!?

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て言うか、凄い勢いで蒸気が出て、凄いというより怖かった。
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あと、牛タン弁当は佳奈多ではなく友利なので、友利と一緒に改めて写真を撮ったがどうにも色合いがおかしくなった。
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翌日。佳景山駅を目指す。石巻線は本数が少ない為、時間をうまく調整しないと佳景山駅で2時間待たされてしまう。そこで、一旦仙台に出て、東北本線で北上して小牛田まで行き、そこから佳景山まで行く事にした。きっぷは、JR東日本の南東北フリーパスを使う事にした。
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途中に「鹿島台」という駅があったが、自分の目的は鹿島では無く佳奈多だ。
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13時過ぎに佳景山駅着。無人駅である。
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周りに何も無い…と思っていたが、そこそこ民家や商店がある。Google MapにもYahoo地図にも載ってなかったが、数百m歩いたら、ファミリーマートもあった。
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どうやら、7月に開店したばかりだったらしい。この日は暑かったので水分補給をしたかったので、助かった。贅沢を言えば「笹かまぼこ」が売っていれば良かったのだが、無かったので、沖縄パインアイスを買った。今回の目的は佳奈多であって佐々美ではないので、ここは仕方がない。
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佳景山駅というのは、駅のすぐ南側(ファミリーマートの西側)にある「佳景山」が由来で、「風光明媚、佳景の山」という意味で、佳景山と言うらしい。「佳人って美人の事よね」というのは佳奈多の台詞にもありますネ。
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とにかく、これにて石巻でのミッションは完了。

…と、これだけで帰ってはあまりにも勿体ないので、石巻線の終点の女川駅(※停止中の女川原発の最寄り駅)まで行ってみた。駅舎は真新しい温泉施設になっていた。勿論、男湯もちゃんとあった。
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石巻には石ノ森章太郎記念館というのがあるようなので、翌日はそこに行ってみた。
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ゴレンジャーアイスというのを食べてみた。
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隣にあった国土交通省のプレハブ展示館にも寄ってみたら、何か薄い本をくれた。
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大して時間もつぶせなかったので、歩いて宿まで帰る途中で、”工業港”なるタクシーを見かけた。
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後で調べたら、本当にそういう名前のタクシー会社らしい。何でそんな名前なのかはよくわからない。そもそも石巻は漁港で海産物が名産で、工業港では無いのでは?

そんな事を考えつつ、ヨークベニマル(東北地方に多いイトーヨーカドー系列の食品スーパー)に寄った。福島といい、なんで東北はこんなにセブン&Iが強いのか。
ヨークベニマルでは、笹かまぼことササミカツと、三陸産わかめを購入した。この日の夕飯はこれ。
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…と思ったが、わかめを塩抜きせずに味噌汁にブチ込んだ為、塩辛くて大変な事になった。しかも量が多すぎた。…おのれクドリャフカ、クドわふ叩きの時は反撃に協力してやったというのに。
お陰で笹かまぼこが異常においしく思えた。佐々美派とはもっと仲良くしとくべきだった。そうすればアニメEXで話数カット等という事態は防げただろうに…。

この後は、翌日に観光用の臨時快速に乗ったぐらいで、特筆すべき事は特にない。途中に鳴子温泉(ナルコオンセン)という駅名があったくらいで、これ以上は書く事は無い。

東京ではコミケ3日目の8/15、12時発の太平洋フェリー「きそ」に乗って、名古屋に帰った。
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太平洋フェリーは思いの外快適だった。ラウンジが充実していてコンセントもあるしLTEの電波もだいたい届くので、仮に2等船室をとっていても、ラウンジでソファに座ってスマホいじってれば、十分快適である。
今回の佳奈多誕生日記念コピ本「こぴかな時々あー#」も、実は半分近くこの船内で書いた。(その割には、それ以降の執筆が進まず結局日程に余裕が無くなったのだが。)

佳景山紀行は、以上である。佳奈多の旅のはずなのに友利や佐々美が割り込んできた印象を受けるかもしれないが、まああまり気にしないで頂きたい。
次回は、いよいよ最終目的地「奈多駅」である。

奈多編に続く。

9/18大阪コミトレお品書き

欠席かもと言っていた大阪コミトレですが、スペース来て下さるという方が現れましたので這ってでも行くことに決めました。こう見えてファンは大事にする荒野草途伸です。…匿名のファンじゃ大事にしようが無いですけどね。誰だかわかりませんから。

閑話休題

コミトレは直参なので3種限定という制約もないので、持っていけるものは極力持っていきます。…とは言っても、8/21名古屋以来特に新刊もないので(本当は購入者特典用にコピ本程度のものも検討していたのですけど、れもたろ警視庁事件の所為でもう時間的にも体調的にもそれどころじゃ無くなったし弁護士雇うからこれから金銭的にもさらにキツくなりますし)、基本的に持参物は同じになります。

本当は電子カタログっぽくかっこいいレイアウトのものを作りたかったんですけど、ちょっとそこまでの余裕もないので。

リトルバスターズ!に見るリーダー論増補版表裏
リトルバスターズ!に見るリーダー論増補版
700円
ともりちゃん夏得セット 1500円
ともりちゃん夏得セット
1500円
S妹!ともりちゃん前編
S妹!ともりちゃん前編
500円
S妹!ともりちゃん中編
S妹!ともりちゃん中編
600円
「童貞を殺す友利と歩未」アクリルキーホルダー
「童貞を殺す友利と歩未」アクリルキーホルダー
600円
「佳奈多が理樹を」アクリルキーホルダー
「佳奈多が理樹を」アクリルキーホルダー
600円
こぴかな時々あー++表紙
こぴかな時々あー++
300円
荒野草途伸epubCD-R2016年7月版
荒野草途伸epubCD-R2016年7月版
950円
瀬戸川家で語る駅メモ
瀬戸川家で語る駅メモ
300円
瀬戸川家”討議資料”
瀬戸川家”討議資料”
300円

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当日掲示するお品書きは、こちらになります。
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コミトレ201609当日お品書き(PDF)

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9/18(日)、大阪南港 インテックス大阪 2号館 ツ-09a にて、お待ちしております。

9/18・19東京委託の出品内容、他

ちょっと、れもたろ警視庁事件の件でいろいろゴタついてますが、そちらは弁護士に任せるということで。…まだ相談にすらたどり着けていませんが。(良い弁護士はなかなかいないものですね)

9/11仙台宛の荷物は昨日発送しましたので、当日会場にちゃんと並ぶと思います。(※過去の他地域での売れ具合を鑑み、あまり数は多くして無いです)

翌週9/18、19の3イベントについて
予定しているのは 8/31付文書 にあるとおり、直参:大阪、委託:東京・沖縄 となっております。

大阪は不参加かもしれないとしていましたが、前日の予定が問題無いことが確定したのと、元々参加する予定だった文フリ大阪の様子を見学しておきたいので、とりあえず大阪市までは行きます。最終的にどうするかはまだ検討中ですが(れもたろ警視庁事件という想定外の事態も発生しましたし)、もし参加するにしても、文フリ大阪の見学には行きたいので14時~14時半ぐらいで早期撤収することになると思います。

委託の東京・沖縄ですが、東京分は出品3種決定済みで、現在荷造りがほぼ終わっています。

リトルバスターズ!に見るリーダー論増補版
リトルバスターズ!に見るリーダー論増補版
700円
ともりちゃん夏得セット
ともりちゃん夏得セット
1500円
こぴかな時々あー++表紙
こぴかな時々あー++
300円

この3種類を出品します。(参加規約上、3つとも20点限定になります。そこまで売れないとは思いますが。)
(来年4月以降おそらくまたネット専業に戻るので、少なくとも東京のイベント参加は直接・委託を問わずこれ以降おそらく無いので、通販以外で入手できる最初で最後のチャンスかと思います。鍵点参加申込みしたら警視庁が自宅に来ましたとか、冗談じゃ無いわ本当に。
また、東京とか関係なく、ともりちゃんセットは時期限定のセットなので、10月以降のイベントでは単品のみの頒布となります。)

沖縄は現在「3種類」を選定中です。(3種20部よりも6種10部の方が個人的には有り難いんですけどねえ…。)
まあ、東京委託は去年は1種60部しかダメだったのが地方と同じ3種×20部もOKになったので、まだマシになった方なんですかね。。。

前回特に書いていませんでしたが、大分は得に見送りとかの予定もなく、予定通り参加の方向で進めてます。まあ、「高城駅」があるとはいえさすがに鍵っ子そんなにいないと思うので、殆ど物見遊山レベルですが。大分は落ち着いたけど熊本はまだ地震が続いているようですね。大分のイベントの後福岡経由で寄ってみるつもりなんですが…。

あと、10/13の佳奈多誕生日に併せてコピ本を作成途中だったのですが、今とてもそんなことやっていられる精神状態ではないので、ちょっと出すの無理かもしれません。

「リトルバスターズ!に見るリーダー論増補版」通販/電子書籍版の案内

昨日の名古屋で頒布した「リトルバスターズ!に見るリーダー論 増補版」ですが

「とらのあな」通販でも委託しています。
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/42/45/040030424549.html
(委託手数料込みの為、即売会価格よりは割高になっております。ご了承下さい。)

またこちら、「とらのあな電子書籍」とセット割引を設定していますので、実質+100円で電子書籍版もお求めになれます。
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/2000/00/23/042000002339.html
(単体だと600円にしてあります。書籍版よりは100円安いです。印刷・在庫リスクが無い分割引ということで。)

また、epub版は、”パブー”にて公開しています。
http://p.booklog.jp/book/109240

こちらは、「こぴかな時々あー++」epub版とのセット割引を設定しています。
対応OS/アプリの範囲が若干狭いですが、こちらのepub版が一番お買い得な設定にしてあります。

9月の即売会での頒布予定は、後日お知らせします。
一応申し込んではいるのですが、ちょっと赤字が酷いので、参加するか決めかねているので。
遠隔地だと、本だけで無く自分自身の送料もかかっちゃいますからね。。。

SMAPとは即ちKeyである

Kanon AIR CLANNAD Planetarian リトバス/
クドわふ
Rewrite Charlotte
S: 栞・沢渡・佐祐理・斉藤・ そら・白穂・ 坂上・早苗・志麻・相良・春原・ シオマネキ・ 椎菜・笹瀬川.佐々美・沙耶・三枝・瞬・咲子・ 静流・千里・咲夜・宗源・しまこ・洲崎.周一郎・桜・ 俊介・七野・サラ・白柳
M: 水瀬・舞・真琴・美坂・美汐・ 観鈴・美凪・みちる・ 宮沢・美佐枝・ 美魚・マスクザ斉藤・ ミドウ・ 美砂
A: あゆ・秋子・天野・相沢・ 秋生・敦子・ あーちゃん先輩・あや・有月・ 朱音・旭・新・ 歩未
P: ぴろ・ ポテト・ ぱに・ プー

https://twitter.com/agbysx/status/765350392246865920
↑のツイートを見て「SMAPとは即ちKeyである」ということを主張したくなったのだが140字で収まらなかったのでこっちに掲載しておく。

SMAPとは即ちKeyである

竹刀乱舞~宮沢謙吾オンリーーイベント~

荒野草途伸ルート>>荒野草途伸Key系ページ>>リトルバスターズ!KX>>リトバスSS>>竹刀乱舞~宮沢謙吾オンリーーイベント~
竹刀乱舞~宮沢謙吾オンリーーイベント~

 

 

「ねえねえ二木さん」

「素敵なイベントがあるの」

 佳奈多さんが声に応じて顔を上げると、そこには西園さんと古式さんが立っていました。二人とも両手で何かのチラシを持っています。佳奈多さんが沈黙したままだったので、西園さんがチラシを佳奈多さんに手渡しました。そこにはこんなことが書いてありました。

 

竹刀乱舞~宮沢謙吾オンリーイベント 1~

日曜日、体育館にて開催

 

 佳奈多さんはざっと目を通して、すぐに顔を上げました。

「うん、これ知ってる」

「えっ。二木さんが、何故?」

「体育館の使用許可申請一覧。私まだ運動部会の関係者という事になってるから、一応資料だけは回ってくるの」

「そうでしたか」

「宮沢謙吾同人イベント? だったかしら? よくもまあ、そんな下らないことを思いつくものね」

「でも二木さんはそれを止めなかった、と」

「資料は回ってきても、口出しする権限まではもう無いの。それに仮にあったとしても」

 そこで何故か二木さん、軽くため息をつきます。

「どうせ棗恭介が手を回しているんでしょう? 止めようが無いじゃない」

「二木さんも随分とあきらめが良く…いえ、人として丸くなりましたね」

「昔だったらどんな手を使ってでもこういうのは潰そうとしたのに」

「別に、いつもそこまで厳しくした覚えは無いわよ」

「そうでしたね。三枝さんや恭介さんが絡んだときだけムキになっていた節もありましたね」

 二木さん、むっとしたように黙ってしまいます。

「まあまあ、今は柔軟になったのだからそれでいいじゃないですか。それで、二木さん。二木さんは宮沢さんとは交友関係もある方ですし、折角ですから是非このイベントに参加して頂きたく」

「えっ。サークル参加?」

 佳奈多さんのその言葉に、一瞬二人が沈黙します。

「えっと…二木さん、何故その言葉をご存じなのですか?」

「…いえ、用語は以前私がみっちり教え込みました」

「そうだったのですか。そんなことが。そうでしたか」

「はい。それで二木さん、サークル参加をご希望ですか?」

「ち、違うのよ。勘違い。サークル参加を打診されたのかと勘違いをしてしまっただけ。私自身が例えそれが社交辞令だとしてもそれを希望しているわけでは無いし、ましてや心の底から望んでいることなど決してありえ無いわ」

「二木さん、動揺しすぎてキャラが崩壊しかかってますよ」

「安心して下さい、二木さんには警備責任者としてスタッフに入って貰いたいだけです」

「あら、そうなの。そうね、確かにそれなら私には経験があるし、声をかけられるのも納得だわ」

「二木さん、もうイベントスタッフの経験が…。駆け出しの私にはまぶしすぎます」

「そうじゃないわ。風紀委員長として警備責任者の経験がある、という意味よ」

「あっ。そうでしたか、それは失礼しました」

「そうですよ。二木さんはまだ、一般参加ですら妹に嘘をついて出掛けるレベルの初心者ですよ」

「初心者なのですか」

「そうです。家族に堂々と言えるようになってやっと素人卒業、家族をも巻き込むレベルになってようやく一人前です」

「そうでしたか。確かに弓道をやっているときも、家族の協力無しでは熟達者の道を目指すのは困難でした。同人の道も決して平坦では無いのですね」

「道って…」

「二木さんも剣道をやってらした方なら、道の心得くらいはおありでしょう」

「同人に道があるという話は今初めて聞いたわ…」

「戦車にすら道がある時代ですよ」

「むしろ戦車の必要の無い道が世界に広まって欲しいものだわ」

「それは政治家に言って下さい」

「それで二木さん、警備責任者の方は」

「引き受けるわよ。あなた達、というより葉留佳と棗恭介を放置しておくわけにはいかないもの」

「今回はむしろ、その他の一般参加者の暴走を事前に食い止めて貰うのが目的なのですが…。まあ、いいでしょう。二木さんなら私如きがいちいち口を出さずとも、臨機応変な対応を取って下さるでしょうから」

「随分と厚い信頼を頂いて、光栄の限りだわ。で」

 二木さんは再びチラシに目を落としながら、続けました。

「スタッフは先に会場に入れるのよね」

「…念のためお訊きしますが、何が目的ですか?」

 二木さんは答えませんでした。

 

 

 

 

 

 そしてイベント当日。体育館の周りには、一般生徒の行列と、一部のいそいそと荷物を運び込む生徒の姿がありました。

「…行列は女子が多いようね」

「謙吾のイベントだし、やっぱり女子が中心になるんじゃ無いかな」

 警備担当の佳奈多さんと直枝さんが、見回りをしながら話しています。

「ところで、どうしてあなたが私と一緒に警備担当をすることになったのかしら」

「二木さんだけだと言い方がきつくなりがちだから、穏やかに話が出来る人も必要だって」

「そうね。出来るだけ穏便に、と言われてるものね」

 そこに、竹刀を肩に背負った宮沢さんがやってきました。行列を作っている女子達が、きゃー宮沢様、などと歓声を上げています。

「あら、宮沢。随分と遅いじゃない、もうとっくに会場入りしてるものだとばかり思ってたわ」

「うむ。不覚にも寝坊してしまってな」

「謙吾が寝坊するなんて珍しいね」

「正確に言うと決まった時間にはもう目が冷めていたのだが、何故か起き出したくなくてずっと布団に篭もっていた」

「それは軽い鬱状態ね」

「そんなに今回のイベントがいやなの?」

「嫌と言うより、何をされるかわからなくて不安だ」

「万一女子達が襲いかかるようなら私が責任持って救出するわよ」

「いや、女子の扱いはそれなりに慣れている」

「じゃあ棗恭介? それこそあなたは長い付き合いなんだから、慣れていそうなものに思えるのだけど」

「ああ、いつもならな。だが今回はどうにも勝手が違う気がしてな」

「確かに、いつもとは違う禍々しい何かを感じるね」

「とにかく、そろそろ時間よ。一緒に中に入りましょう」

「ああ。今更逃げるわけにもいかんしな」

 

 宮沢さんは、二木さんと直枝さんに付き添われて、会場の体育館の中に入っていきました。

 

 

「よく来てくれた謙吾。謙吾には特別席を用意してある、スタッフが案内するから彼についていってくれ。理樹と二木も、警備任務ご苦労様。最後までよろしく頼むぞ」

 中に入ると、恭介さんと西園さんが出迎え得てくれました。

「ええ。勿論引き受けたからにはちゃんとやりますよ」

 そう言いつつ、二木さんの視線は会場内を探し回るように泳いでいました。それに気づいた恭介さんが言いました。

「三枝ならB列の5番にいるぞ」

「そ、そうですか。てっきりスタッフでもやっているのだとばかり」

「何も聞いていなかったのですか」

「ええ。何も教えてくれなくて」

「佳奈多さんに言うとうるさくダメ出しされると思ったんじゃない?」

「そ、そんなこと。しない…わよ」

「しかし、配置図を見ればサークル参加だということくらいはわかるだろう。渡していなかったか?」

「いえ、さすがに警備上必要ですし、貰ってますけど」

 そう言って佳奈多さんは、懐から配置図を取り出して確認しました。

「B-5…独立数理研、としか書いてないですけど」

「そういうサークル名にしたんでしょう」

「これだけだと葉留佳だとわからないじゃ無いですか」

「まあ、確かにそうだな」

「他のイベント行ってもいつも思うんですけど、どうして個人名でリストを作らないんですか? これでは誰がどこにいるのかわからないじゃ無いですか」

「あれ、佳奈多さんそんなに他のイベント行ってるの?」

「それには歴史的経緯というものがありまして…。よそですと何も個人参加とは限りませんし。というより元々は団体参加が基本だったのですよ。サークルメンバー全員の名前を載せていたらきりがありませんし。それに昨今では個人情報保護という厄介な問題も加わってきますし」

「めんどくさいわねえ」 

「とはいえどっちみち対面なのだし、このIT化の時代、今どのスペースに誰が座っているかぐらいは、把握できるようにした方が一般参加者には親切かもしれないな。今回は到底そこまでは手が回らなかったが」

「まあ、いいです。今はもうわかりましたから。直枝、後で行きましょう」

「え?」

「見回りがわたしたちの仕事でしょう?」

「あ、見回りにかこつけて葉留佳さんのスペースに行くんだね」

「嫌な言い方しないで頂戴。葉留佳が不穏な行動をとらないかチェックしに行くだけよ」

「ふうん」

 

 そんな会話をしている間に、開場時刻になりました。一般生徒が整然と体育館の中に入ってきます。そして恭介さんがマイクでアナウンスをしています。

「ただいまより、第1回宮沢謙吾オンリーイベント・竹刀乱舞を開催致します。一般入場の方、暫しお待ちを。本日の主役、宮沢謙吾がこれより特別席に座ります」

 そう言いながら恭介さんが身振りで指す先には、まるで玉座のように高くしつらえた特別席と、そこから床に繋がる階段がありました。その階段を、宮沢さんが、恥に耐えるかのような苦渋に満ちた表情で登っていきます。そして、頂上にある王座のごとき装飾の施された椅子に渋々座りました。後から上がってきた恭介さんがその傍らに跪いて身をかがめ、宮沢さんに耳打ちします。

「どうだ謙吾。高いところから愚民共を見下ろす気分は」

「俺にそういう思想は無い。恭介、貴様はそういう人間だったのか」

「お前がそう思うんなら、そうなんだろう」

 ふん、と宮沢さんは鼻を鳴らして、そして吐き捨てるように言います。

「とてもそうは見えんがな」

「そいつはどうも」

「今回は一体何がしたい」

「何がしたい、か…」

 恭介さんは遠い目をして上を見上げます。

「謙吾。俺と一緒に上を目指さないか」

「俺はいつまでもこんなところにいるつもりは無い」

「おお。そうか、俺と一緒に上に行ってくれるか」

「早く下に降りたいと言っているんだ」

「馬鹿な。わざわざ下を目指そうというのか。進歩的生物としての使命を捨て、与えられたものを消費するだけの動物に成り下がるつもりか。それこそ堕落では無いか。精神的敗北だ。文化を衰退させ、社会を荒廃させる原因だ」

「そんな哲学を語っているのでは無い。このような阿呆な場所に座らされているのは屈辱だから降ろしてくれと言っているだけだ」

 

 宮沢さんと恭介さんがそんな会話を交わしている間、佳奈多さんと直枝さんは会場内の見回りをしていました。

「B-5、B-5」

「佳奈多さん、A列から周らないの?」

「どっちからでもいいでしょっ。ええと、ここが4になるから」

「あ、お姉ちゃんだ」

 B-5スペースには三枝さんが座っていました。

「あら、葉留佳じゃない。こんなところで何をしているの?」

「謙吾君のコピ本を売っているのデスヨ」

 そう言われて佳奈多さんと直枝さんが机を見ると、「宮沢謙吾の発声パターンの数理的解析と考察」というタイトルの薄い本が何冊か積んでありました。

「…これ、売れるの?」

「サア」

「さあ、って」

「まあ、手にとってよんで貰えれバ」

「つまり売れないのね」

「ソウデスネ」

「売れない物を置いてどうするのよ」

「評論系は基本赤字前提なのですヨ」

「そ、そうなの」

 

 佳奈多さんと葉留佳さんがそんな会話をしている間に、宮沢さんは玉座から降りてしまっていました。すると、間を置かずにファンの女の子達が集まり出しました。

「宮沢様!」

「宮沢様、公式物販スペースで宮沢様公認竹刀を買いました、サインして頂けますか?」

「俺はそんなものを公認した覚えは無いのだが…まあサインくらいいいだろう」

「宮沢様、差し入れのムルキムチです、受け取って下さい」

「何故そのようなものを差し入れようと思ったのかわからんが、まあ受け取っておこう」

「宮沢様、あの、あの」

 女子の集団の中から、おすおずと笹瀬川さんが歩み出てきて、宮沢さんに薄い本を1冊手渡しました。

「これは?」

「今回のイベントのために私が作った新刊です、読んで頂けますでしょうか」

「うむ、折角作ってくれたのなら読まねばな」

 そう言って宮沢さんは、その場で本を開いて読み出してしまいました。

 

 半裸にされて縛り付けられた宮沢さんの上に、やはり半裸になった笹瀬川さんが乗っている絵が出てきました。

 
『や、やめろ笹瀬川、なんのつもりだ』
『何のつもり、ですって? 宮沢様もお人が悪い、わかっててそんな事をわざわざ訊くなんて』
『冗談はやめろ』
『冗談などではありませんわ、むしろ本気です。その本気を宮沢様がわかって下さらないから、こうしてお仕置きしているのではないですか』
『笹瀬川、お前は正気じゃ無い。薬でも飲んだのか』
『ええ、宮沢様への思いが募りすぎて、私とても正気でなどいられませぬ。だからこれから、宮沢様のお体というお薬を頂くのですわ』
『意味がわからん』
『宮沢様。私が今感じている感情のようなものは精神疾患の一種ですわ。でも治し方は私が知っています、私にお任せ下さい』
『医者に任せろ』
『お医者様でも草津の湯でも治せませぬの。治す方法はただ一つ、宮沢様のお体を頂くこと』
『理不尽すぎる、解放しろ!』
『ええ。思う存分、宮沢様の欲望を解放させて差し上げますわ。ん、んくっ』
『あ、あああああ』
『あああ、宮沢様、あの宮沢様がついに私のものに…ああっ』
『くぁあっ、やめろっ、やめろっ』
『体は正直ですわよ宮沢様』
『あ、あああああ』
『あああ』
『あ、あああああ』
『あああ』
『あ、あああああ』
『あああ』
『っ、ぁはっ、はあっ、…』
『うふふ…宮沢様、パパになってしまいますわね…』


「…なんだこれは?」

 宮沢さんが顔を上げると、笹瀬川さんの姿は既にありませんでした。

 会場中を見渡すと、出口に向かってもう突進していく笹瀬川さんの姿がありました。そして出口から飛び出るすんでの所で、両脇から鈴さんと神北さんに取り押さえられてしまいました。

「離して下さいまし! わたくしもう、恥ずかしくて生きていられませぬ!」

「あんしんしろ、あたしの兄以上にはずかしい人間など、そうめったにいるもんじゃない」

「おい待て鈴、それは一体どういう意味だ」

 

 そんな様子を宮沢さんが唖然としながら眺めていると、一人の男が得体のしれない出で立ちで宮沢さんの前に現れました。全身に割り箸で作った何かをまとっています。

「真人か。何の用だ。というより、なんのつもりだ」

「なんのつもりとは?」

「その得体のしれない奇天烈な恰好のことだ」

「謙吾のコスプレ」

「は?」

「謙吾のコスプレ」

「声は聞こえている。何故それが俺のコスプレになるのかと訊いているのだ」

「謙吾は剣道部だろう」

「ああ。それで?」

「試合の時、鎧を着るだろう」

「胴着のことか?」

「試合では自己アピールが必要になる」

「剣道の試合に自己アピールは必要無い」

「剣道だと面接があると聞いたが」

「面は使うが、面接はしない」

「まあいいや。とにかく自己アピールが必要だ」

「よくない。自己アピールも必要無い」

「で、謙吾と言えば割り箸だ。なので割り箸で鎧を作った」

「どこからそんな話が出てきた」

「使い古した竹刀を素手で叩き割って割り箸に再利用するエコでワイルドな宮沢様、ともっぱら一部女子の間で評判だ」

「その一部女子の具体的な名前を聞かせろ」

「来ヶ谷唯湖とか」

「ほう」

「三枝葉留佳とか」

「ほう」

「能美クドリャフカとか」

「すまん、今のはさすがにショックだった」

「リサイクルの精神も重要なのですね! と褒めていたぞ」

「…後で訂正をいれておかねば。他にはもういないだろうな」

「あーちゃん先輩とか」

「そんなところにまで広めたのか貴様。どこまで言い触らした?」

「そりゃもう、今日この会場来ている人できる限りに」

「貴様…なんということをしてくれる! そこに直れ!」

「お、この最強の謙吾コスプレに身を包んだ俺と勝負しようってか? いいぜ、やってやるぜ!」

 宮沢さんと井ノ原さんが乱闘を始めたので、周りも人だかりが出来てあっという間に大変な騒ぎになってしまいました。

「ちょっと、何事なのあなた達! 会場内での私闘は禁止よ!」

 二木さんが駆けつけて二人の間に割って入ります。そして直枝さんと恭介さんで暴れていた宮沢さんと井ノ原さんを後ろから押さえつけました。

「外に連れ出して」

「いや、待ってくれ二木。真人はともかく、謙吾は今日の主役なんだが」

「主役でも壁サークルでも関係ありません。問題を起こしたなら退場して貰います」

「謙吾は女生徒に人気がある」

「人気があれば何をしてもいいわけが無いでしょう」

 こうして宮沢さんと井ノ原さんは外に連れ出されてしまいました。主役がいなくなってしまったので女生徒達も次第に会場から減っていき、閉会時には殆どいなくなってしまいました。それでも、僅かに残って往生際悪く掘り出し物を物色している人もいました。

 

 閉会後、サークル参加者が撤収を始めている中、恭介さんが佳奈多さんにそっと耳打ちしました。

「なあ。先程西園と三枝から提案があったんだが、今度は二木佳奈多オンリーイベントを」

「やりません」

 

 

 

リトバスアニメ~EX~佐々美編1話 感想(転載)

 

リトバスアニメ2期のBDは、諸事情というか宗教上の理由により1巻と7巻だけ買う予定だったのですが。予算に余裕が出来たので5、6巻も買うことにしました。7千円のjpegとか、冷静に考えたら買う意味なんてないよね…。

さて。5、6巻に付いてくる「EX」編は、佐々美ルート。原作ですと、無印の6シナリオが出題編だとすれば、EX+クドわふの4シナリオは解答編といえる存在な訳ですが。その中でもとりわけ、「世界の秘密」をストレートに解説しているのが、佐々美編です。
アニメでも、それを前面に押し出した構成になっています。

一言で言うと

「この世界に、笹瀬川佐々美は存在するか?」

 という話ですね。

これに関しては、若干とは言えないレベルで補足したいことがあるので、ちょっと後回し。

なので、世界の秘密とは直接関与しない部分から。

にっこにっこにー (世界観崩壊)

ところで声優と言えば、美魚は今回は河原木志保か。1期特典では巽裕依子だったけど。1期=巽 2期=河原木 できっちり線引きしたかー。

佳奈多と加藤多賀子は出番なしか。あと、鈴は食堂に猫連れ込むな。

そんなに書くことは無いね。

さて。後回しにした、リトバスの世界観の話。

なんか、どうも未だにわかってない人がいるようなので、再確認ですが。リトバスの世界の大前提になっているのは、「エヴェレットの多世界解釈」です。
量子力学のエヴェレット解釈をベースにした、SFの世界での多世界(平行世界)理論です。原作(葉留佳ルート冒頭)にも出てきますね。
これがわかっていないことにはお話になりません。鈴小毬以外のヒロインは途中で退場するとかいったトンデモ解釈の原因になってしまいます。アニメは原作と世界観が違うとか、そんなことはありません。一緒です。

なので、少し話がそれますが、エヴェレット解釈とはそもそも何か、というのを簡単に。

まず、エヴェレット解釈の考え方を理解するために、一つの絵を提示します。私が大学生の時に受けたエヴェレット解釈の授業(※正規の授業ではなく、ファンタジー好きの先生が自主開講していたものでしたが)で、最初に示された資料です。

これ、なーんだ?

ルビンの壺

「ルビンの壺」と呼ばれる絵。はいそうです、で、何の絵に見えますか?
壷だったり向き合っている人の顔だったり。人によって見え方は違いますね。どっちかが間違いというのではありません。どちらも同時に存在しており、見る人の「観測」によって、何の絵かが決定づけられる。

これが、エヴェレット解釈の出発点です。
量子力学の世界では、量子の位置は常に多地点に存在しており、観測によって1つの場所に決定づけられる、となります。

ちなみにこのエヴェレット解釈ですが、観測者(=人間)の存在によって位置(=物理的量)が左右される、とも受け取れるために、当時の人文学者が「自然科学の敗北だ、俺たちの大勝利!」と、EXが発表されたときのエロ厨のごとく騒いだために、葬り去られてしまいます。
代わって、「量子の位置は最初から確率的に1つの位置に存在する」という、コペンハーゲン解釈が主流となり、現在は量子力学というとコペンハーゲン解釈の方を指すようになっています。

量子力学の世界では過去の遺物となったエヴェレット解釈ですが、その後SFの世界で多世界理論を構築する際に使われるようになり、「エヴェレットの多世界解釈」と呼ばれるようになります。
この場合、量子ではなく世界そのものが同時多数的に存在し、観測者の観測によって現在位置する世界が1つに決定される、となります。
(たまに勘違いしている人がいますが、分岐型の多世界理論とは全くの別物です。)

さて。ここで、最初の話に戻ります。

「この世界に、笹瀬川佐々美は存在するか?」

 理樹の視点から見れば、佐々美は当然存在します。では、鈴や小毬からしたら、どうなのか? クド美魚葉留佳、唯湖、謙吾からしたらどうなのか?
佐々美が佐々美だと、認識できていない、となりますね。

認識できていないのなら見えないし、見えないのは「いない」のと一緒。
葉留佳BAD(保健室じゃない方)で佳奈多が言っていたことを、具体的事例として解説している。それが佐々美ルートなのですね。

…この辺の理解は、無印が発売された2007年の年末頃には既におおむねできあがっていて、EXでそれが証明された、という流れだったはずなんだがなあ。どこでずれた事言う人が出てしまったんだろう。
あの世界で実在するのは事故ったバスの乗客だけ、っていう話もいまだにたまに目にするけど。あれってそもそも、葉鍵板で自分が言い出したことが発端なんだけど、その後の議論でそれじゃ話がおかしくなるよね、って否定された筈なんだよなあ。あと、それ以前に、恭介一人であの世界全部作ったとかいまだに言ってた人もおったし。
なんか、無印発売直後の頃に議論してた内容が、その後の議論無視して一人歩きしちまった、ってことなのかなあ。

という場外の話はさておき。アニメEXの佐々美1話は、世界解説編としての話として、実によくできていると思います。

もしかして佳奈多編も、そういう話が主軸になるんだろうか。葉留佳BAD(佳奈多の毒舌or佳奈多が保健室で理樹を…)の内容って、この世界を理解するのに欠かせないものなんだけど、アニメでは全くやってないし。しかしそうなると、「佳奈多編」の内容はいよいよもって全くやらないという話になっちゃうけど。2話しかないし。

2話しかないし。

とりあえず、6巻も買うことにしたんで、佐々美編2話を待ちますか。

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