8/27フレンズとうかいの新刊「あねてき」の、1章のみ先行公開します。
(TINAMIで公開している範囲と同じです。)
序章
しっかりものはお姉さんで、ごろごろしてたいのは妹。そんなこといったい誰が決めたのだろう。そんな疑問を抱きつつも、しっかり面倒を見てくれる姉的な存在に甘えて、いつのまにか妹的な立場に居座ってしまっていた。
1 五姉選出 4
2 姉妹分裂 9
3 知将と盟友 14
4 信頼的試練 21
5 じゃぱりかふぇ その1 28
6 ネコ科のよしみ 33
7 じゃぱりかふぇ その2 37
8 はかせとじょしゅ 38
9 逆襲のキタキツネ 42
10 急速回転 48
11 開票速報 55
12 穏やかな笑顔達 68
はかせは激怒した。必ずやかの邪知暴虐な雑務処理を倒さねばならぬと心に誓った。はかせに雑務処理は余裕である、かしこいので。しかし、あまりにも量が増えればそれは手に余るのも必然というものである。
じょしゅも激怒した。はかせの手に余る仕事はじょしゅが始末せねばならぬからである。じょしゅに雑務処理は余裕である、かしこいので。しかし、じょしゅの手を以てしても尚あまりあるほどに業務量は増大していた。
かばん一行が隣のごこくちほーに渡り数ヶ月。他の島ちほーや海域に済むフレンズとの交流が始まり、交易的なものも行われ始めていた。加えて、かばんの知恵でヒトの遺産が一部再稼働を始め、文明的なものがパークで発展し始めていた。
しかしそれは、パークを管理し統治するはかせの業務量の増大をも意味していた。はかせの業務量が増大すればじょしゅの業務量も増大した。
はかせはまた激怒した。じょしゅもまた激怒した。
「このままでは我々は過労死してしまうのです、じょしゅ」
「私も同じ事を思いました、はかせ」
「解決策を講じねばならぬのです」
「全くその通りです」
「要員を増やしましょう」
「要員を増やす」
そこでじょしゅはしばし動きが止まった。
「その要員というのは、助手的なものですか?」
「助手はすでにいるのです、じょしゅ」
じょしゅの顔は一気に明るくなった。
「それで。助手的でないとすると、どのような要員を増やすのですか」
「姉的な要員を増やします」
「姉的な要員」
じょしゅはまた動きが止まった。
「パークはあまりにも広く、各ちほー毎に特徴も違うのです。そこで、ちほーの特徴やある業務に精通したフレンズを推薦させ、我々の補佐をさせるのです」
「なるほど、はかせの姉ではなくちほーの姉という意味ですね」
「その通りです」
じょしゅの顔は一気に明るくなった。
かくして、ジャパリ図書館館長にしてパークの長、アフリカオオコノハズクはかせにより、姉的な新役職の創設とその選出方法が布告された。
具体的には、姉の名を関する以下の5つの役職が創設される。
姉統領
姉大帝
姉大将
姉将軍
姉醤油
「姉醤油とはなんですか、はかせ」
「醤油とは、大豆を塩と麹で発酵させて作る調味料のことです、じょしゅ」
「それはしっています、はかせ」
「場所によっては魚を使うこともあるのです、その場合は魚醤と呼ぶのです、じょしゅ」
「それもしっています、はかせ」
「まだなにか?」
「姉と醤油にはいったいどのような関係があるのですか」
「それを言ったら、姉と将軍の間にも大した因果性はないのです」
「なるほど???」
少し納得のいかない助手であった。きっとはかせは疲れているのだ。そう自分に言い聞かせて、じょしゅは口を閉じた。
「それで、この姉的な役職は、誰をつけるのですか」
「図書館の資料の中に、せんきょ、というものがありました。それを使います」
「要するに人気投票のことですか」
「人気があるという事は人望があるという事なのです。人望のないものに長の補佐役は務まらぬのです」
「なるほど」
「逆に、あまり人望のないものに立候補されてもせんきょが混乱するのです。3名以上の推薦人を必要とすることにします」
「3名は厳しくないですか?」
「3人の推薦人も集められぬものにせんきょは勝ち抜けぬのです」
「なるほど」
「とうひょう、で票を集め、票数の多い候補者から順番に、先ほどの5つの役職から好きなものを選ぶようにします」
「なるほど。下手に5番目で当選すると、逆にハズレを引くことになるのですね」
「ハズレなどないのです」
「そうですね、はかせ」
じょしゅは達観した表情で淡々と答えた。
「ではさっそく、これを紙に書いてはりだすのです」
「字が読めないフレンズも多いです、ラッキービーストに持たせるジャパリまんに旗でも立てておきましょう」
「旗だけでわかりますか?」
「意味が分からないから、図書館まで訊きに来るでしょう。そのときに説明すればよいのです」
「なるほど。では早速実行するのです」
こうして布告の紙が図書館に張り出され、ラッキービーストは旗を立てたジャパリまんを持って各ちほーに出発した。
そして、図書館に張り出された紙をじっと眺めている一人のフレンズがいた。キタキツネである。
以降は本誌にて