荒野草途伸ルート >> 荒野草途伸Key系ページ >>薫り米 >>KanonSS >>北川補完計画 >>北川ポピュレイションポォル大作戦 >>前編

「北川潤、北川潤をよろしくお願いします!」
 隣に立つ人が張り上げる応援演説。傍らでオレは、それをただじっと聴いている。
「皆様にとって最も近い存在、もっとも好感の持てる男です!」
 歯の浮くとまでは行かないが、過剰なまでの自己アピールだと思う。いくらオレでも恥ずかしい。
「麻枝と同じ名前です!」
「お茶のお供に最適です!」
「マイクロウェーブを受信しています!」
「あなたの潤、私の潤、みんなの順はいつもあなたの側にいます!」
「北川潤、北川潤をよろしくお願いします!」
 しかも言いたい放題だ。もう、正直帰りたい。
 だが、少しでも帰ろうというそぶりを見せると、後方に位置している川澄舞と倉田佐祐理にがっちりと両脇を固められてしまう。逃げられないのだ。そして眼前の聴衆は、水瀬名雪の少々イってしまっている演説を茫然としながら聴いている。
 なぜこんなことになってしまったのだろう。オレは群衆の最後方、そのまた隅っこにいる一人の男に目をやった。彼はオレの視線に気づくと、フッとでも言いたげな顔をし片指で眼鏡を直し、そして立ち去っていった。生徒会長久瀬。そう、そもそもはあいつが原因なのだ。
 事の起こりは2週間前にさかのぼる。
 
 

北川ポピュラリティポォル大作戦

 
 
 そもそもの話の発端は、生徒会の支持率低迷であった。相沢劇場とも呼ばれた校内の一大変革運動によって守旧派で抵抗勢力とのレッテルを貼られた久瀬生徒会長は生徒達の信望を著しく失っていた。野党は政治改革を掲げて激しく執行部を追求しさらに与党の中にも公然と執行部不信任案が提出されれば賛成すると口にするものが後を絶たずさらには新党結成が取りざたされ生徒議会解散か執行部総辞職かという局面にまで追い込まれていた。だが年度の変わり目ということもあり3年生は卒業までほんのわずかという時期に新しい議員を選出させるというのはあまりにも非現実的な話であり、かといって執行部は執行部でシェリコガトベナイカメ各国の教育関係者による表敬訪問を控えており政治的空白を生み出すことは許されない状況であった。
 如何にしてこの逆境を乗り切るか。久瀬会長はじめとする生徒会執行部が頭を抱えて会議をしているさなか、彼女は部屋に入ってきた。
「・・・。」
「き、貴様は川澄舞!」
「我々生徒会が貶められるきっかけを作った、そもそもの張本人!」
「何をしに来た、とどめでも差しに来たのか!」
 激する役員達、しかし久瀬会長はそれを押しとどめて、言った。
「何か用かね、川澄君? 我々は今大事な話し合いをしているところなんだ、たいした用件ではないなら」
「・・・いい話を持ってきた。」
「何?」
「・・・あなた達に対する生徒の批判をそらし、他に目を向けさせ、うまくすれば生徒会の信頼をも取り戻せるかもしれない方法を。」
「な、なんだと。そんな方法があるのか?」
 こくり。
「だ、だが。なぜ君が我々にそんな話を? 我々は、君たちとは敵同士ではないか。」
「・・・勝手に敵だと決めつけているのはあなた達の方。私は最初からそんな風に思ってはいなかった。」
「・・・。」
「・・・それに。ただ好意だけでこの話を持ってきたわけじゃない。私にも、それなりの理由はあるから・・・。」
「それは?」
「・・・今は言えない。で、どうするの? この話、乗るの?」
「・・・・中身を聞いてからだな。その上でないと判断しようがない。」
「・・・一理ある。では話すから、耳を貸せ。」
 
 
 
 そして翌日。生徒会から突然の告知がなされた。
『校内最燃男性キャラ人気投票開催決定。立候補受付は本日より1週間、投票は2週間後。』
 オレは正直興味がなかったので、傍らでその話を聞いてもただ窓の外を見ながら愛しい秋子さまのことを考えているだけだった。ただ、オレの近くにいる3人、相沢に美坂、それに我が愛しの娘なゆちゃんは違ったようだった。
「祐一祐一、男性人気投票だって。祐一も出ようよ。」
「出ない。」
「どうして? 優勝賞品はおから一年分だよ? 食費が助かるよ?」
「なんでおからなのかしら。」
「食費に困ってる理由じゃないし毎日おからばっか食えんし、それにおから一年分なんてもらっても1年経つ前に腐っちゃうだろ?」
「そうか。そうだよね。」
「って、いくら何でも一年分のおからをまとめて渡されるわけ無いでしょ?!」
 そんなアホな会話も、オレはただ傍らで聞いているだけだった。と、そこで教室の扉が開かれた。
「生徒会執行部並びに選挙管理委員会のものだ。相沢祐一はいるか?!」
「いないと言ってくれ。」
「いるじゃないか。ふざけた受け答えをしてもらっては困るな。」
「お前らこそ何の用事で来た。ふざけた内容だったら登校拒否起こすぞ。」
「大切な話だ。単刀直入に言うと、君は今回開催される校内最燃男性キャラ人気投票に強制エントリーされることになったので、その告知に来たのだ。」
「な・・! なんだそれは、俺は出るなんて言ってないぞ!」
「我々も聞いていない。だがこれは強制なのだ。だから君の意思を確認する必要はない。ただ、後々面倒なことになりそうなので事実だけは伝えておくことにしたのだ。」
「ふざけるな! お前ら、なにが目的だ!」
「それを言う必要はない。君が把握しておくべきことはただ、君は人気投票にエントリーされたというその事実だけだ。支持者獲得にために戦う義務すらない。普段通りの生活を送ってくれればそれでよいのだ。」
「な、何言ってやがる・・・。さては久瀬の差し金だな。俺を戦いから逃げた負け犬に仕立て上げて俺の評判を落とそうと・・・。」
「事実は伝えた。この件は本日付の官報で全校に告知される。ではさらば。」
 そして生徒会の一団は去っていった。取り残され呆然としている相沢、そして美坂となゆちゃん。オレは心の中で、少しだけ面白いことになってきたと思っていた。その時は。
 
 
 
 その日の立候補は相沢一人だけだった。だがその翌日に候補者は8人に増え、翌々日には26人にまで膨れあがった。そして、相沢を除く候補者のすべてが「反相沢祐一」を公約に掲げているのであった。
「女たらしの相沢に制裁を」「男の友達がいない、否作ろうとしない相沢」「相沢は決して神などではない」「SSクラスより上のMとかあり得ねー」「女はプレゼントに惑わされるな」「奴のハーレム計画を阻止せよ」云々。
 学校中を埋め尽くす反相沢25候補のポスター。それを見たオレは、さすがに相沢が凹んでいるだろうと思い、どう声をかけてやったらいいだろうと思案しながら教室に入っていった。だがオレが入っていったときにはもう、対策会議が始まっているところだった。学級委員でもある美坂香里が、壇上にて演説をぶっていた。
「――私達はこれまで、平和な学園生活がおくれることを願い争いを回避する努力を続けてきました。表だった選挙運動を控えてきたのもそのためです。しかし、反相沢派はそれを私達の弱さと受け取ったようです。そしてそこにつけ込むべく、かかる誹謗中傷以外の何物でも無い主張を校内中に振りまき、私達を潰そうとしてきたのです。平和的共存の道は、今まさに彼らの手によって断たれてしまったのです。今、私達に残された道は二つしかありません。甘んじて彼らに滅ぼされるか、それとも徹底的に戦うか。何度も繰り返しますが、私達は争いを好みません。ですが、このまま何もせず滅びの道を選ぶのは、人として許される行為でしょうか? 否、そんなはずはありません! ですから、私は今ここに、彼ら反相沢派への抵抗とこの人気投票での相沢祐一の勝利のために、一致団結して戦うことを提案いたします。そして私自身は、相沢祐一陣営の選挙対策本部長に立候補したいと思います!」
 クールないつもの美坂ではない。どうやら反相沢派の言動が、彼女の怒りの溶鉱炉に火をつけてしまったようだ。怒るのはいいがそれがこっちにまで向けられるようだと困る。自分は美坂に近づかないようにしよう。そう決めて見つからないように教室内を移動し、相沢の元まで行った。
「よお。大変なことになってるな。」
「・・ああ、北川か。そうなんだ、願わくば何とかしてほしいところなんだが。」
「そうしてやりたいところだが、こと相手が美坂となると話は別だ。反抗したら何されるかわかったもんじゃない。」
「周りも美坂の言葉に酔っちまってるからなぁ。さっきもちょっと待てと言っただけで空気読めとか言われてさ。」
「本人の意志も無視かよ。ひでえな。よし、こっそり教室抜け出して、逃げついでにどっか行こうぜ。」
「いいけど、どっかってどこ行くんだ?」
「もちろん、秋子さまのところだ。」
「それって俺んちじゃん。」
 
 そのあと、美坂はオレ達二人が逃げたことに心底怒り、またなゆちゃんはオレが勝手に秋子さまに会いに行ったことに心底怒り、オレは二人からひどいお仕置きを受けた。だがそんなものは、その後の過酷な展開に比べれば些細な不幸でしかなった。
 
 
 
 候補受付締切2日前。久瀬ら生徒会執行部は、生徒会室で頭を抱えていた。
「なんとしたことだ。まさか、反相沢の候補がここまで乱立するとは。」
「相沢祐一に勝てる対抗馬を立てるべく、体育会系から反生徒会諸勢力まで幅広く立候補の声がけをしたのだが・・・。」
「それが見事に裏目に出てしまいましたね。」
「しかもその全員が反相沢を掲げていると来ています。」
「彼は女子生徒からは割と人気がありますが、その分一部の男子生徒に反感を持たれてますからね。ただ、反感を持ってる者同士が必ずしも仲がいいとは限らないわけで。」
「反相沢派同士での潰し合いも既に始まっています。その一方で相沢祐一へは反対派の中傷に対する同情票が集まり始めているようです。」
「選対本部長に就いた美坂香里の力も侮れません。学級委員や妹の伝手を使って1,2年の女子票を固め、2年男子や3年女子にも大きく勢力を伸ばしているようです。」
「朝日新聞社の世論調査によると、相沢祐一の支持率は44%。2位の男子陸上部長は7%で、大差をつけています。浮動票の行方次第では1回目投票での過半数獲得も視野に入ってきます。」
「参ったな。一回目で過半数を得る候補者がいなければ上位二人による決選投票になるから、そこで逆転する目もあったというのに。」
 久瀬は大きくため息をついた。
「明後日までなら立候補の辞退が出来るはずだ。なんとか候補者の一本化は出来ないのか? 」
「既に打診はしてみました。が、色よい返事をもらえた陣営は今のところありません。」
「自分が降りるのはともかく、意に沿わない候補を応援するのは嫌だというところが多くて。」
「だからと言って、相沢が勝ったんじゃ彼らにとっても意味がないだろう。」
「朝日新聞の言うことは全部捏造だといって、世論調査の結果自体を否定する人もいました。」
「まあそれは極端な話としても。納得のいく統一候補をまず提示しろという意見が多かったですね。」
「誰もが納得のいく統一候補、か・・・。確かに実際、そういう奴でなければ相沢には勝てないだろうからね・・・。」
「しかし、そんな男がいるんでしょうか?」
 久瀬は天井を見上げ、そしてずっと隣で黙っていた舞に話しかけた。
「・・・君には、そういう心当たりはないのか?」
「・・・ある。」
「なにっ。」
「・・・あるからこそ、この話を持ってきた。」
「なら、なぜ最初からそいつの名前を出さないんだ。」
「・・・最初から出していたら、彼もまた乱立するうちの一人にしかならなかったから。」
「む。確かにそれはそうだな。」
「乱立状態では勝てないけど、一騎打ちなら勝てそうということですか。」
「で、そいつは一体誰なんだ?」
「・・・たぶん。読者はもう気がついている。」
 
 
 
 その日の夕刻。喧噪残る学校を後にしたオレは、愛しの秋子さまに会うべく彼女の住む家に猪突猛進で向かっていた。が、そのオレの恋路をふさぐ存在が突如現れた。両手を広げて道を塞いでしまったのだ。オレは時速119Kmで走っていたので危うく彼女とぶつかりそうになってしまった。
「あははーっ。とうせんぼですよーっ。」
「ちょっと何すんだ。どいてくれよ!」
「どきません。佐祐理はこれから、あなたを連れて行かなければならないんです。」
「連れてくって、どこに。」
「北川潤選対事務所です。あなたは反相沢祐一派の統一候補として校内最燃男性キャラ人気投票にエントリーすることになったんです。」
「なんじゃそりゃ。オレそんな話聞いてないぞ!」
「今佐祐理が言いました。」
「ああそうかい。でもオレ、承諾してないから。」
「ふえ。困りました。承諾がいただけないと強制エントリーということになって、いろいろ手続きが面倒なんですけど。」
「じゃあしなきゃいいじゃん。」
「そういうわけにはいきません。北川さんが統一候補ということで、反対派の皆さん納得して立候補を辞退されたんですから。今更北川さんは出ないなんてことになったら、暴動になってしまいます。」
「話がよく見えないのだが。」
「ですから、詳しいことは選対事務所でお話しします。さあ行きましょう。」
「いやでも、オレ、これから秋子さまのところに行かなきゃならないんだけど。」
「そうなんですか? でも秋子さんなら今買い物に出てるから、家にはいませんよ。」
「え、そうなの? じゃあ今どこにいるの? スーパー?商店街?公設市場?秋葉原?」
「それは言えません。言ったら北川さん、バンザイしながらそっちへ走っていっちゃいそうですから。」
「当然だろう、そこに秋子さまがいるなら。」
「だから言えないんです。あ、そうそう。代わりに伝言を持ってきましたよ。」
「伝言?」
「『北川さん、人気投票がんばってくださいね。勝ったら私からご褒美あげますよ。』」
オレ出る。」
 
 こうしてオレは、相沢の対抗馬として人気投票に出馬することになり、即日立候補届をすませた。翌日、相沢と俺以外の大半の候補が辞退。そのまま立候補受付締切となり、校内最燃男性キャラ人気投票は、相沢祐一と北川潤の事実上の一騎打ちとなった。
 
 
 
相沢陣営:候補者/相沢祐一、選対本部長/美坂香里、主要幹部/水瀬名雪・美坂栞
北川陣営:候補者/北川潤、選対本部長/倉田佐祐理、主要幹部/川澄舞 非公式支援/久瀬生徒会長・水瀬秋子(?)
投票一週間前時点での世論調査結果(朝日新聞社調べ):相沢祐一/46%、北川潤/39%、その他候補/3%、態度未定/12%。
 調査報告を見ながら、久瀬はうんうんと頷いていた。
「反相沢派を完全に一本化できなかったのは心残りだが、しかし残っているのは泡沫候補だ。そんなに気にすることはないだろう。問題は1回目での相沢の過半数獲得を阻止できるかどうかだな。支持の広がりを食い止め、さらにこれまでの彼の支持層を切り崩していく必要があるな。」
「そうですね。さらに詳しい情勢分析によると、相沢はこれまでの支持基盤である1,2年女子は固めていますが、男子や3年生への浸透が伸び悩んでいるようです。逆に北川は男子からの支持が高く、特に1年男子は彼の面倒見の良さを慕って圧倒的に北川支持に傾いています。また、倉田佐祐理が北川陣営の選対本部長に就いたことが好印象となって、3年生男女問わず北川支持が急速に広がっています。2年男子は現状完全に互角ですね。」
「なるほど。しかし3年は投票率自体が低そうだからな。それを上げる手段も必要になってくるな。あと、相沢の支持基盤を何とか切り崩す方法はないか?」
「女子の多くは相沢の個人票なので、切り崩すのは難しいでしょう。しかし残りは、美坂香里の各種委員や水瀬名雪の運動部系への繋がりによるものです。ここには十分切り込む余地はあるかと。」
「そうか。では切り込む具体的な方法だが。」
「・・・それは、私がやる。」
 すっと、舞が立ち上がった。
「大丈夫なのか? 君にそういう工作が向いているとは思えないが。」
「・・・当てはある。確証はないけど、試す価値はある。」
「そうか。なら任せよう。我々はとりあえず、投票率アップの方法を考えようか。生徒会として合法的に動けるしな。」
「・・・失礼する。」
 舞は扉を開け、部屋を出て行った。それを視線で見送った後、久瀬は思い出したように言った。
「ところで。この世論調査の朝日新聞社というのだが、これは本物なのか? 実は沖縄朝日とか、そういう話じゃないだろうな。」
「沖縄朝日だって、発行当時はちゃんとした新聞社ですよ。」
 
 
 
 その日の午後。オレのかわいい娘なゆちゃんは、学校中にポスターを貼る作業をしていた。
「優しい祐一、かっこいい祐一、祐一が優勝したらうれしいなっ♪」
 歌いながらポスターを貼るなゆちゃん。そこに、背後から忍び寄る影が一つ。それは名雪の後ろに立つと、右手を高々と上げ、そのまま名雪の頭上に振り落とした。
「・・・ちょっぷ。」
「痛い〜! なにするんだよ!」
「・・・妨害。」
「妨害? ポスター貼りの? そうか、川澄さんは北川君の陣営だったよね。でもどうして? 認めたくないけど川澄さんは祐一の恋人でしょ。どうして祐一応援しないの? こういうの利敵行為って言わない? それとももう祐一への愛が冷めちゃったの? だったら遠慮無くわたしがもらうよ。」
「・・・普段から遠慮なんかしてないくせに。」
 一瞬、二人の間に緊張が走った。だが、それは数秒間のみで終わった。
「・・今実力行使に出るのはお互いまずいよね。連座で祐一が立候補資格取り消しになっても嫌だし。」
「・・・こっちも、今は困る。」
「じゃあ、冷静に話し合いしようか。何で祐一を裏切ったの?」
「・・・裏切ってない。」
「裏切ってるじゃない。祐一じゃなくて北川君の側につくなんて。祐一が優勝できなくてもいいの?」
「・・・裏切ってない。でも、祐一には優勝してほしくない。」
「どういうこと?」
「・・・あなたこそ。なぜ祐一を優勝させようとするの? あなたの為にもならないのに。」
「え? なにそれ、どういうこと。なんで祐一が優勝するとわたしのためにならないんだよ。」
「・・・みんなが、祐一の魅力を知ってしまうから。」
「それのどこがいけないんだよ。」
「・・・あなたの思考ルーチンを使って説明すると、こうなる。」
 
祐一に優勝してほしーい!→そのためにはみんなに祐一の魅力いっぱい知ってもらわなきゃ→祐一優しいしかっこいいしアゴだって以下略→きゃー相沢さんって優しいしかっこいいしアゴだって以下略なんだー→祐一女の子の間で大人気→きゃー相沢さんこっち向いてー→祐一優しいから振り向いてあげる→きゃー相沢さんに振り向いてもらっちゃったー、うれしー、あたし投票では相沢さんに入れちゃうー→ありがとうみんな優勝したらお礼にプレゼントをあげよう→いやーんじゃあ相沢さんがあたしに入れてほしいなー→×全校女子生徒→祐一優勝→相沢さーんご褒美ちょうだーい→しょうがないなー順番待ちだぞー
 
「・・・こうなってしまう。」
「・・・わたしの思考ルーチン云々というあたりが気にくわないけど、言いたいことはわかったよ。大変なことになってしまうんだね!」
「・・・そう。もしこのまま祐一が優勝したらだけど。」
「そうか。だから川澄さんは、それを阻止するべく北川君の陣営に行ったんだね。」
「・・・。」
「わたし、誤解してたよ・・・。」
「・・・で、あなたはどうするの?」
「わたし? わたしは・・・」
「・・・このまま、祐一の応援を続けて優勝させてしまうの?」
「え、それは困るよ。でもどうしよう。途中で抜けたらたぶん香里がすごく怒るし。」
「・・・ならいっそ、北川陣営に来るといい。そこならあなたの身の安全を保証してあげられる。」
「え、いくら何でもそこまで大袈裟な話じゃ。あ、でも香里ならそれくらい怒るかも。どうしよう。今日はともかく明日は授業とかあるし。香里、怒るとコンマ3秒で移動できるんだよ。150m先まで移動して、0.3秒で元の位置に戻ってくるんだよ。まるで全然動いてなかったみたいに見えるんだよ。わたし、正直怖いよ。」
「・・・それは単に動いてなかっただけだと思うけど。そんなに怖いなら、北川を護衛につける。対立候補が護衛についているならいくら何でも手を出せない。」
「北川君・・・? わたし、北川君苦手なんだけど・・・。わたしのこと娘呼ばわりするし。」
「・・・無理強いはしない。一晩ゆっくり考えるといい。家までは私が送っていく。」
 
 
 
 そして翌日から、オレは候補者活動の傍らなゆちゃんの警護をすることになった。投票3日前。相沢祐一/49%、北川潤/43%、その他候補/2%、態度未定/6%。
 
後編に続く。
 
<2006年4月15日執筆>
 −−−−−−−−−−−−−−
 
  北川INDEXに戻る