ハァレム

後編

 
 

前回までのあらすじ:

 天からの啓示により永遠の脇役という好ましくない称号を与えられた北川潤は、その運命の鎖を断ち切るために旅に出た。その旅の途中であった7人の美少女。彼女らは、彼女たちなりの愛と知恵で北川の運命を変える手助けをする。だが、その前に立ちはだかる強大な敵、相沢祐一。彼は乙女コスモの力を借りて7人の美少女を魅了し、彼女たちを自分のものにしようとする。そしてあゆが、舞が、栞が、そして佐祐理までも堕ちていった。残された3人そして北川は、4人を奪回するために「母なる永遠」アキコサマの元へ向かう。そして彼らがそこで知ったのは、祐一の背後に潜む陰の永遠、「KAOLI」の存在だった・・・!
 
 
 
 
 
 
 
 

「・・・・なにそれ。」

真琴「おもしろくなあい!」

北川「そ、そうかな。なかなかの出来映えだと思ったんだけど。」

佐祐理「佐祐理が祐一さんに魅了される、ってあたりが気に入りませんね。」

名雪「昔のこと、思い出しちゃうよ・・・」

北川「そ、そうか。そうだな。ごめん、今の話無し、駄作、ボツ。」

「ふう。でも、ちょっと残念です・・・」

北川「ま、いいじゃないか。どうせ暇つぶしなんだし。」

佐祐理「でも、いいんでしょうか?こんなヒマヒマして。いくら失業率の高い世の中とはいっても・・・」

北川「ああ、とりあえず半年くらい経ったら、なんか事業始めるつもりだから。それまではしばらく、骨休みだ。だからいいんだよ。」

美汐「でも。北川さんはともかく、私達はそういうわけには・・」

あゆ「お給料もらってる身だしね・・・」

北川「いやあ、家のこといろいろやってもらってるし」

名雪「7人がかりだとあっと言うまだよ・・・」

佐祐理「ほとんど仕事といえないです。」

北川「うん、確かにそうかもしれない。とはいえ、今は他に仕事もない状態であるのも事実だ。と言うことで、せめて気分だけでも仕事しているという雰囲気を出すために、制服を用意した。」

「・・・・制服。」

あゆ「北川君、そういうの好きそうだもんね・・・。」

真琴「いやらしぃーっ」

北川「な、なんでだよ、別に制服自体いやらしいものでもなんでもないと思うが・・・」

名雪「うん。制服じゃなくて、それに劣情を抱く男がいやらしいんだよね。」

あゆ「でもって、制服とか言って実際はメイド服だったりするんだよ、その袋の中身。」

北川「残念だったな、メイド服ではない。ほら、見てみろ。」

「・・・濃緑のブレザー。」

「郵便局員さんの制服、ですか。」

あゆ「・・なんでまた郵便局?」

佐祐理「わかりました。きっと、その制服に青春時代のトラウマをくすぐられるんですよ。」

「なるほど。まだ10代の頃、近所の郵便局のお姉さん(27歳ロングヘア)に恋をして、毎月記念切手とエコーはがきを買いに行っていたけど、一年後彼女は、中央局に勤める一つ年上のエリート局員と結婚してしまった、んですね。」

名雪「そうだったんだ・・・つらいね。」

北川「いや、そんな思いではないんだけど・・・そもそも郵便局員にエリートってあるのか?」

佐祐理「ふえ、無いんですか・・・?」

北川「無いよ・・オレ切手少年じゃなかったし・・・」

美汐「じゃあ。どんな思い出ならあったんですか?」

名雪「聞かせてよ。」

北川「言わない。」

佐祐理「佐祐理も聞きたいですねーっ。」

北川「言いません。」

「多数決。北川さんの恋のお話、聞きたい人!」

あゆ「はーい」
真琴「はーい」

北川「って、勝手に決とってんじゃねえよ!」
 
 

==
 
 
 
 
 
 

祐一「ひー、ひー」

香里「祐一、次はS○NY首脳陣と会議。移動時間15分しかないから、急いで。」

祐一「ひー、こら。香里ぃ、俺なんか、以前にも増して忙しくなってる気が・・・」

香里「当たり前よ。仕事増やしてるんだもの。」

祐一「何でそんなことするんだよ、減らしてくれよお!」

香里「何言ってるの。北川君がもってった2百億、あれの穴埋めるまでは、がんがん働いてもらうからね。」

祐一「香里・・・お前の頭には、カネのことしかないのか?」

香里「そんなはずないでしょ。7割は祐一のことよ☆」

祐一「香里・・・」

香里「さ。これの次は講演会の原稿の打ち合わせだからね。」

祐一「ちくしょーっ、おぼえてろ北川ぁ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

==
 
 

真琴「・・・・・。」

北川「あれ、どうしたんだ?一人で。」

真琴「みんな、忙しくて・・・真琴一人で遊んでるの。」

北川「忙しくて・・またみんな、やらんでいい仕事勝手につくって動き回ってるな。」

真琴「真琴の仕事何もないの。」

北川「こんな有様じゃますます、な。ま、適当に遊んでていいよ。」

真琴「・・飽きちゃった。」

北川「う〜ん、そう言われても。」

真琴「ね、仕事無いの?なんか無いの?」

北川「だから、それはみんなよってたかって片づけちゃってるから・・・」

真琴「あうーっ・・・」

北川「・・・しょうがねえな。じゃあ、オレの肩でも揉んでいてくれ。」

真琴「うんっ♪」

もみもみもみ

北川「あー、やっぱり力弱いなー。でも今あんまり凝ってないから丁度いいや。」

真琴「ほんとはもっと強い方が良いの?」

北川「ま、そうだな。強すぎるのもなんだが。」

真琴「どれくらいがいいの?」

北川「さあなあ。そこら辺は、経験で修得して貰わないと。」

真琴「・・わかった。しゅーとくして、もっとうまくなるね。」

北川「ああ。そんときは、オレ専属の肩もみ係に任命してやろう。」

真琴「うんっ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あゆ「おそうじおそうじ?♪ ボクだってやるときはやるんだよ、少しでも働いて、北川君の役に立つよっ。」

あゆ「・・・でもこの制服、はっきり言って掃除向きじゃないね・・・」

がたん

あゆ「あ、やばいっ・・・って言ったときにはもう遅いの?!」

がしゃあん

北川「ん、なんの音だ?あ・・・」

あゆ「うぐ、北川君・・・」

北川「あ、・・な、なんだこれ、どうしたんだ?!」

あゆ「あ、あの、ボク、ボク、掃除してて、そしたら、ちょっとひっかけちゃったみたいで、・・・」

北川「・・・オレのガラス管細工・・が、落ちたのか?」

あゆ「・・うぐぅ」

北川「・・・怪我、無かったか?」

あゆ「う、うん・・・」

北川「そうか・・・・」

あゆ「あ、集めるのはボクがやるよっ、・・ボクが落としたんだし・・」

北川「いや・・オレがやるよ・・・」

あゆ「・・・北川君?」

北川「・・・・オレ、ちょっと戻ってる・・・」

あゆ「え、それ捨てないの?え、え?」
 
 
 
 

コンコン
 

北川「・・開いてるよ。」

あゆ「うぐぅ・・・」

北川「・・なんだ、あゆちゃんか。どうしたんだ?」

あゆ「北川君・・・さっきのこと、怒ってる?」

北川「怒ってなんか無いさ。」

あゆ「でも、ずっと部屋に引きこもっちゃって」

北川「・・ああ、ごめん。ちょっと落ち込んじゃってさ。」

あゆ「ボクが壊したもの・・・そんなに大事なものだったんだ・・・」

北川「・・・まあ、そうかもな。」

あゆ「うぐぅ。ごめんなさい・・」

北川「もういいって。壊れてしまって初めて、大切なものだと気付いた。その程度のものなんだから。」

あゆ「でも、大切なものだったんでしょ?」

北川「それより、本当に怪我無かったか?」

あゆ「うん、怪我はないけど・・・」

北川「そうか。じゃあ、もう出てっていいよ。」

あゆ「・・・・・。」

北川「ん、なんだ?」

あゆ「北川君、隣いい?」

北川「あ、ああ・・。どうしたんだ?」

あゆ「なんだか今の北川君、放っておいたらいけないような気がして。」

北川「別にいいのに・・」

あゆ「ねえ北川君・・その、ガラス細工・・?なんだったの?」

北川「ガラス細工じゃなくてガラス管細工だ。ま、ちょっとした思いでの品だよ」

あゆ「思いでの・・・ねえ、その話聞かせて?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

北川「眠い・・・・」

美汐「・・北川さん、目が赤いですよ?」

北川「え?う、うん、ちょっと夕べ一晩中語り合っちゃったから。」

美汐「誰とです?」

北川「あゆちゃんと・・・いや、なんでもない。」

美汐「そうですか。」

北川「それより、どうしたんだ?工具箱なんか持って。」

美汐「・・屋根の上の太陽電池を見てこようと思いまして。」

北川「何でまた。」

美汐「この家の電力供給が、一昨日ぐらいから不安定になってるんです。」

北川「そうなのか。この家の電力って、全部あれでまかなってるからなあ。・・・でも、ここ数日外はいい天気だぜ?供給不足って事はないはずなんだけど。」

美汐「ええ。ですから、様子を見ようと思いまして。」

北川「見て、解るのか?」

美汐「私、これでも応用物性勉強していたんです。」

北川「そうなのか?」

美汐「・・・座学ですけど。」

北川「で、屋根に登って見てみようと。でも大丈夫か?」

美汐「平気です。ちゃんとズボンはいてますから。」

北川「そういうことじゃなく・・・」
 
 
 
 

北川「おーい、やっぱり危なくないかあ?!」

美汐「・・・平気です。あ、やっぱりパネルが数枚、ひび入ってますね。」

北川「そうなのか。」

美汐「最近は太陽電池の生産が追いつかなくて、不良品が多いんですよ。」

北川「政府が気まぐれな補助金しか出さないからな、供給計画が立てられないんだろ、っておい、あぶないっ」

美汐「ちょ、ちょっと滑っただけです、あ。」

北川「おい、落ちそうじゃないか!よし待ってろ、今受け止めてやれる場所に行くから!」

美汐「待てといわれた時には時既に遅し、ですね・・・」

北川「落ちながら冷静に状況語ってんじゃねえよ!えいくそ、滑り込みだ、間に合え!」

ずざざざざざ

どすん

美汐「・・・・・。」

北川「・・・・・。」

美汐「・・・すみません、北川さんの上に乗っかってしまいました・・」

北川「いいんだよ、そのために滑り込んだんだから。はずれてたらむしろブルーだ。」

美汐「・・でも、重かったでしょう。」

北川「・・いや、重くないよ。」

美汐「重いですよね?」

北川「重くない。」

美汐「重いんでしょう?」

北川「重くなんか無いさ。」

美汐「ほんとは重くないんですよね?」

北川「ああ、重くない。」

美汐「・・・強情ですね。」

北川「強情なんかじゃない、正直なだけさ。」

美汐「・・・そうですか。」

北川「ああ、そういうことだ。」

美汐「じゃあ、もう少しこのまま上にいてもいいですか?」

北川「ああ。オレはかまわない。むしろ歓迎だ。」

美汐「・・もしかして、いやらしいこと考えてますか?」

北川「ちょっとな。」

美汐「・・・本当に正直なんですね。」

北川「そう言っただろ。」

美汐「そうですね。」

北川「・・・・。」

美汐「・・・空が、綺麗ですね。」

北川「いい天気だからな。」

美汐「・・・ずっとこのままでいていいですか?」

北川「ずっとはちょっと困るな・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

佐祐理「うんしょ、うんしょ・・ふう、移ってもお買い物って大変ですねーっ。」

「・・・10人分も8人分も大して変わりない。」

佐祐理「そうだねーっ。あ、」

どかっ

「いてっ」

佐祐理「あ、ごめんなさい。」

「あー、ごめんなさい、で済むと思うの?」

佐祐理「ふ、ふえ?」

「どうなの?」

佐祐理「え、えっと・・・」

「・・・どうすればいいの?」

「どうすればいい〜?んなこともわかんないわけ。」

佐祐理「ご、ごめんなさい・・・」

「そうやって謝るだけじゃだめだって言ってんでしょぉ?どうするの。」

「・・・どうすればいいのか教えてください。」

「ん〜、ずいぶん素直だね。いいだろ、その素直さに免じて特別に教えてやる。こっち来な。」

佐祐理「は、はい・・」

「車、乗んな。」

「・・・。」

「どうした?さっさと乗れよ!」

北川「ちょっと待てぇい!」

佐祐理「あ、き、北川さん・・・」

「ん〜?なんだお前。」

北川「その二人の雇い主だ。勤務中のことにつき、苦情その他はこのオレが承る。」

「何言ってんだお前・・・ふざけたこと言ってんじゃねえよ!」

どかっ!

北川「う、・がぐ・・・」

佐祐理「き、北川さん!」

「・・・何をする。」

「ふざけたヤローだぜ。髪立ってるしな。」

ぼぐっぼぐっ

北川「うう・・・」

「・・やめろ。やめないと」

北川「だ、だめだ。手を出すな!」

佐祐理「で、でもっ!」

北川「いいから!今のうちに逃げろ、二人とも、げふっ」

「何カッコつけてんだよ。バカじゃねーのか?むかつくヤローだぜ。」

ぼかぼかっ

北川「あぐっ・・・」

「・・・許せない・・・佐祐理、止めないで。」

佐祐理「舞こそ止めないでね。もう許せませんよーっ。」

北川「だ、だめだ二人とも!」

ばこっ!

「う・・な、なにしやがる!」

佐祐理「なにしやがるじゃないですよ、北川さんをこんな目に遭わせておいて!」

「・・・準正当防衛。」

どかどかどかどか

「ひ、ひ、ひ〜!やめて、やめてください、許してください!」

北川「お、おい二人とも、その辺にしとかないと過剰防衛になっちゃうぞ・・」

佐祐理「でも、このままじゃ佐祐理の気持ちは収まりません!」

北川「オレのこと案じてくれるのは嬉しいけどさ、な?」

「・・・わかった。」

「ひ、ひぃ〜っ!」

佐祐理「あ、逃げちゃいました。」

「・・・大丈夫。車が置いたまま。」

佐祐理「そうだね、ここで待ってれば絶対戻ってくるねーっ。」

北川「もう、いいじゃないか。・・帰ろうぜ?」

佐祐理「あ、そうですね・・・。北川さんの怪我の手当もしないと。」

「・・つかまって。」
 
 
 

北川「女の子二人に抱えられて・・・みっともないな、オレ・・・」

佐祐理「そんなこと無いです。北川さん、佐祐理たちを助けてくれたじゃないですか。」

「・・・かっこよかった。」

北川「そ、そうかな・・。」

佐祐理「後でたっぷりお礼しないといけませんね。」

北川「い、いいよ、お礼なんて・・」

「・・・別に怖い意味じゃない。」

北川「わかってるって。」

佐祐理「北川さん。どうして、佐祐理たち助けてくれたんです?」

北川「え?そりゃあ、労働者を守るのは雇用者の責務だから・・・・」

佐祐理「それだけですか?」

北川「・・・・・・・。」

佐祐理「他に理由無いんですか?」

北川「・・・・・・・。」

佐祐理「あはは、北川さん困ってる。他に理由あるんだあ。」

北川「・・・・・・・。」

「・・・佐祐理、あんまり北川君いじめたら駄目。」

佐祐理「そうだね。今日はこのくらいにしておきます。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

コンコン

北川「ほーい。」

名雪「ねえ、北川君。」

北川「なんだ、なゆちゃんか。どうしたんだ?」

名雪「ちょっと、北川君と話がしたくて。」

北川「珍しいな、なゆちゃんがそんなこと言うなんて。」

名雪「うん・・・今日は、ちょっとそういう気分なんだ・・・」

北川「ふうん・・・台風でも来なきゃいいが。」

名雪「ひどいよ、わたしそこまで北川君邪険にしてないよ・・」

北川「ははは、そうだったかな。」

名雪「そうだよ・・・。」

北川「で、何の話?」

名雪「うん、ちょっとだけ、昔話・・。」

北川「昔話?」

名雪「うん。わたし達が、この家にきた夜の話。」

北川「みんなでこの家にぶーぶー文句言ってた夜だな。なゆちゃん確か、ガスコンロにも文句つけてたっけ。」

名雪「だって、火力弱いと、お料理しにくいんだよ?」

北川「メタンガスだからな。ま、勘弁してくれよ。」

名雪「うん。それは、別にいいんだよ。」

北川「そうか。」

名雪「わたしね、その晩・・・泣いたんだよ。」

北川「メタンガスコンロだったから?」

名雪「違うよ・・・。こんな事言うと怒るかもしれないけど」

北川「?」

名雪「わたし。あの晩、今にも北川君が来るんじゃないか、そう怯えてたの。」

北川「・・・・。」

名雪「わたしはもう祐一のものじゃないんだ、今夜から北川君のものになっちゃうんだ。そう思ったら、凄く泣けてきて・・・」

北川「・・・・。」

名雪「でも。その晩は来なかった。次の晩も、その次の晩も。ずっと、今日に至るまで来なかった。とうとう、わたしから来ちゃった。」

北川「だな。」

名雪「どうして?」

北川「それはもちろん、オレが女の子を前にして何も出来ず指をくわえて見ているようなチキン野郎だからさ。」

名雪「・・・・うそ。」

北川「うそ、ではないな、残念ながら。」

名雪「そう。じゃあ、わたしが今夜一晩中ずっとここにいても、何もしないんだ。」

北川「そうだな。なゆちゃんがなにもして欲しくないなら。」

名雪「それが、理由だね。」

北川「え?」

名雪「わたしが、まだ何もして欲しくないって解ってたから。だから、何もしなかったんだね。」

北川「あ、ああ・・・。ま、そんなところだ。」

名雪「・・北川君。わたし、ちょっと北川君にいじわるしていいかな?」

北川「え、なんで?オレ何かなゆちゃんの恨み買うような事した?」

名雪「恨みはないよ。むしろ感謝してるくらいだよ。だから、いじわるするんだよ。」

北川「・・・よくわからねえな。」

名雪「うん、北川君にはわからないだろうね。じゃあ、おやすみ。」

北川「って、ここで寝るのかオイ」

名雪「うん。こうやって北川君にいじわるしてるんだよ。」

北川「まいったなあ・・・・」

名雪「北川君。わたしこれから寝るけど、寝てる間に変な事しないでね。」

北川「・・・わかった。変なことはしないよ。」

名雪「北川君までおまたに白鳥着けたりしたら・・わたしもう、誰を信じていいのか、わからなくなるよ・・・」

北川「変な事って、そっちの意味かい・・・」

名雪「信じてるよ、北川君。おやすみなさい。くー。」

北川「もう寝ちゃったよ・・・しょうがねえなあ・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「こほっ、こほん」

北川「あれ、栞ちゃん、風邪?」

「あ、北川さん。ええ、ちょっと夕べは冷えたもので・・・」

北川「そうか、夕べ雨だったしな・・・。まだ夏は遠いし、夜は結構冷えるんだよな。」

「コンクリートむき出しの壁って、断熱効果無いですしね。」

北川「・・・ごめん、栞ちゃん。オレが趣味に走った家造りをしたばっかりに・・・」

「ごめんなさい、別に北川さんを非難したわけでは・・・」

北川「いや、いいんだよ。しかし、体の弱い栞ちゃんには、この家はきついよなあ・・」

「・・・。」

北川「いずれ引っ越そうな・・・。」

「はい。」

北川「とりあえず、今夜引っ越すわけにも行かないから、なんか対策立てないと。うん、オレの布団を貸そう。重ねれば寒くないだろ?」

「はい。あ、でも、それじゃ北川さんは?」

北川「いいんだよ、オレは寝袋一つでも平気だから。前いたところ何て、もっと酷かったしな。」

「倉庫で直に寝かされてましたもんね。あれは酷かったです・・・」

北川「それで、真冬の寒い日に、栞ちゃんが携帯カイロ持ってきてくれたことあったっけ。」

「そんなこともありましたね。」

北川「振りすぎで無茶苦茶熱くなっててさ、最初嫌がらせかと思ったぜ。」

「ごめんなさい、早く暖めた方が良いと思ったので。」

北川「うん、わかってる。ま、おかげであの晩は助かったわけだし。感謝してるよ。」

「いえ、そんな・・・」

北川「それじゃ、布団は後でオレが持ってくよ。」

「わかりました、お待ちしてます。」
 
 
 
 

コンコン
北川「栞ちゃん?」

「どうぞ、入ってください。」

北川「布団、持ってきたぜ。」

「ありがとうございます、重かったでしょう。」

北川「そんな重い布団じゃないって。」

「はは、そうですね。」

北川「この上に重ねておけばいいか?」

「はい、ありがとうございます。」

北川「よし。じゃ、オレはこれで。」

「あ、北川さん・・・」

北川「ん、なんだ?」

「・・・いえ。」

北川「そうか。じゃあ」

「北川さん。」

北川「なんだ?」

「・・・・やっぱり、この布団だけじゃ駄目だと思うんです。」

北川「え?足りない?そんなに寒い?参ったなあ、余分な布団は今無いし・・・誰かに頼んで借りるか・・・」

「いえ、そうではなく。その、・・・布団が何枚あっても、駄目だと思うんです・・・」

北川「え?」

「お布団じゃ、心の中までは暖まりませんから・・・・」

北川「・・・栞ちゃん。」

「はは、私、何言ってるんでしょうね・・・」

北川「オレなら・・・暖められるか?」

「北川さん・・・はい、たぶん、暖まると思います・・・」

北川「じゃあ、あたためてやるよ・・・・」

「はい・・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

続く