エム

わたしの、お母さん。
美人で、背が高くて、かっこいい。
 すぐ泣いちゃうところがわたしに似てるけど、本当はとっても強いんだって、お父さんが言っていた。
「本当は、お父さんの方がもっと強いんだけどな」
「・・・嘘ばっかり。」
 お父さんが冗談を言うとき、お母さんはいつも冷たい。ときどき、叩いたりもする。そんなときお父さんは反撃するのだけど、いつも負けてしまう。やっぱり、お母さんの方が強い。
 でも、二人とも悲しそうな顔はしていない。とても楽しそうだ。二人だけで、楽しいことをしている。そう思うと、わたしは少しさみしくなる。さみしくなって、おかあさんをまねて、お父さんに殴りかかったりする。お父さんはすぐ負けてくれて、お母さんは笑ってる。だからわたしも、笑ってる。でも本当は、少しさみしい。
 二人の時とは、ちがうから。

 ときどき。こうしてひどく、さみしくなる・・・・・

「舞ちゃん先生!」
 呼ばれて、声のした方に振り返る。一人の生徒が駆け寄ってきていた。
「先生、今日もうあがりですか?」
「あがり・・・?」
「仕事、まだ残ってるんですか?」
「・・・いや。無い。」
「だったら、これから一緒に買い物に行きません? 先生の車で。」
「買い物?」
「日曜日の、観察会の買い出しですよ。あたし、バードウォッチングって行ったこと無いから、何持っていけばいいのかよくわからなくて。」
「・・・双眼鏡と、お弁当があればいい。余計な物はいらない。」
「え、でも。やっぱり、双眼鏡も選んだ方がいいだろうし。・・一緒に行ってもらえませんか?」
 ・・・・。
「わかった。一度職員室に戻るから、車の前で待ってて。」
「はーいっ!」
 彼女も自分の荷物があるのだろう、教室の方に駆けだしていった。私はそのまま、目の前まで来ていた職員室の中に入っていった。
「お、舞ちゃん先生。今日は早めにお帰りなんですか?」
 外の会話を聞いていたらしい男性教師が、からかうように私に話しかけてくる。
「・・・舞ちゃんと呼ばないで。」
「だって生徒達は、舞ちゃん舞ちゃんと呼んでるじゃないですか」
「私のクラスの生徒だけ。他の人に許した覚えはない。」

 私は、この春から高校の教師をしている。新任で、いきなり1年生のクラスを任された。確かに本採用前は、数年間臨時教師をやったりはしていた。でも、担任というのは初めての経験だった。
 始業式の前夜。私は、クラスの生徒達に受け入れられるか、とても不安になっていた。その不安を、夫に打ち明けてみた。私たちは8年前に結婚をしていて、既に娘も一人いた。
「祐一、私、生徒達に受け入れられるかしら。正直に言って、かなり不安・・・」
 私は夫のことを、祐一と呼んでいた。祐一は自分のことを「まいダーリン」と呼ぶよう強く希望していたが、私は時々つきあい程度にそう呼んであげるに留めていた。
 そんな夫の言うことなのだから、まともに聞くべきではなかったのかもしれない。でも私は、そのとき祐一がくれた助言を、翌日そのまま実行してしまった。
「・・・私の名前は、川澄舞。でも、舞ちゃんと呼んでもらってかまわない・・・・」
 結果私は、クラスの生徒の三分の二からは舞先生、残り三分の一からは舞ちゃん先生と呼ばれるようになった。誰も、川澄先生とは呼んでくれなかった。

「他の生徒達だって、そう呼んでますよ。彼らの口に戸は立てられませんからねえ」
 男性教師は、しつこく食い下がってきていた。
「でも、あなたまで真似することはない。」
「・・・は。そうですね。ああ、舞ちゃん、じゃなくて川澄先生はキビシいなあ」
 男性教師は、少し小馬鹿にした感じの入った鼻息を立てて、そのまま机の方に向き直った。私も自分の荷物を取りに自分の席に行き、荷物を取ってそのまま職員室を出て行った。
 歩きながら、またあの日のことを思い出していた。初日からいきなり恥をかいた私は、家に帰ってすぐに、祐一にお仕置きをした。祐一は弁解しながら激しく抵抗したが、そのお仕置きという行為自体に楽しみを感じ始めていた私は、やめようとしなかった。その光景をじっと見る娘の視線に気づくまでは。
「・・・なにをしてたの?」
 私は、すぐに答えられなかった。親として、教育者として、一人前ではないにせよ立派な行為をしていた、とは思えなかった。その説明を口にすることが、娘にとって良くないことであるかのように感じてしまった。だから、何も言えなかった。
「・・・・・・・。」
 娘は、それ以上訊いてくることはなかった。

「舞ちゃん先生の娘さんも、ゆきって言うんですよね?」
 動き出した車の中で、その女生徒、ユキはそう訊いてきた。
「・・・そう。幸。 どうして知っているの?」
「うーんっと、誰かがそう言ってたんですよ。誰だったかなあ、あ、坂井君だったかな」
 坂井というのはおそらく、私が顧問をしている野鳥観察会の坂井だろう。今ここにいるユキと同じ二年生で、野鳥観察会以外、特に私と繋がりがあるわけでもない。それなのに、何故彼がそこまでのことを知っているのか、という疑問は抱いたが、追求しても仕方のなさそうなことなので、忘れることにした。
「ゆきちゃんも、今度の観察会にくるんですよねっ。私、会えるの楽しみなんですよー」
 会ったこともないくせにいきなりちゃん付け呼ばわり。しかも、一体何がそんなに楽しみだというのだろう。私は少し苦笑した。
「・・・そう、来る。ついでに言うと、祐一も来る。」
「祐一って誰ですか?」
 祐一を知らないのかこの娘は。自分だってついで呼ばわりしたくせに、私は憤りを感じてしまっていた。
「祐一は、私の・・・・夫。」
「へえ、そうなんですか。あ、舞ちゃん先生赤くなってる。どうしたんですか?あ、もしかして照れてる。わー、そうなんだ。えー、そんなに祐一さんのことが好きなんだー」
「・・・決して嫌いではない。」
「もー、そんな言い方しちゃってー。素直に『大好き』って言えばいいじゃないですか。ああ、これはもう絶対チェックチェック。」
 ユキは鞄から手帳を取り出して、なにやら書き込みを始めていた。私は、憂鬱さを顔に出すことを隠すことが出来ずにいた。

 よく晴れた、日曜日だった。俺は自宅から駅に向かっていた。
「舞、荷物を持つという行為を体験してみたいとは思わないか?」
「思わない。」
「そうか・・・。」
 俺の手には、野鳥観察用の道具一式と家族3人分の弁当があった。実際のところ野鳥観察の道具などそんなにかさばるものでもないし、3人分の弁当にしたって一人は子供用だから、そこまで重いわけでもない。それでも俺が舞に荷物を託したくなったのは、理不尽だと感じたからだ。手ぶらで身軽な舞が、娘と二人楽しそうに手をつないで歩いている様を、俺一人が荷物を持って追いかける。世間一般的父親はこういう役回りなものなのだと知ってはいるものの、実際その役を引き受けてみれば腹も立つ。俺だってゆきを愛してるいるんだぞ! と、公衆の目もはばからず叫びたくもなる。
「お父さん、にもつ重いの?」
 舞と手をつないだままのゆきが、気遣うようにこちらを見上げてくる。
「いや。決してそんなことはないさ。」
 ここで重いなどと言おうものなら、ゆきは自分が持つといって聞かなくなるだろう。一体誰に似たのか、ゆきにはそういう向こう見ずな優しさがある。それに、実際重いわけではない。むかついただけだ。
「・・・・。」
 舞がじっとこちらをみている。まるで俺の心を見透かそうとしているかのように。
「・・・三人で手をつないで歩きたいというなら、半分持ってもいい。」
 実際、見透かされていた。
「・・・ああ、その通りだ。俺はゆきと手をつないで仲良く歩きたいんだよ。」
「最初から素直にそう言えばいいのに。」
 最初から見透かされていたらしい。

「仲良し親子、はっけーん!」
 駅に着くと、口やかましい少女が待ちかまえていた。
「わー、その人が『祐一』さんですか? ずいぶんアゴが目立ちますね。いえ、悪く言ってるんじゃないですよ、かっこいいって意味ですから、そんな睨まないでください舞ちゃん先生、で、こっちの女の子がゆきちゃん・・・・ですか・・? うそ・・・」
 少女の目は、ゆきに釘付けになっていた。危険だ、俺の第六感が警告を発していた。
「かわいいい・・・」
 そう言いながら少女は、ゆきに接近してきた。怯えたゆきが、舞の後ろに隠れてしがみついている。その姿は、あのやかまし少女ならずとも愛玩心をそそるものがある。実際ゆきは、親の欲目を除いても超がつくほどの美少女なのだ。長い黒髪に、大きなくりっとした瞳。敢えて言うならば、小さいときの舞にそっくりである。
 少女の目は、何かに取り憑かれたように妖しくとろんとしていた。そう、たとえて言うならば、俺のいとこの名雪が猫を発見するとそうなったように。そうするとこの少女は、猫好きならぬ美少女好きということか。もう少し世間体の悪い言い方をすれば、ロリコンか。ロリコンというのは変わった趣味の男の人、という印象があったが、10代の女性でもロリコンは十分存在しうる、ということに俺はこの時初めて気づかされた。
 俺は決して、ロリコンを否定したいわけではない。大学生の頃には、誘われてやっていたことではあるがロリコン差別に反対する全国運動に加わっていたこともあったくらいだ。だが現実に人の親、それもロリコンが好むような美少女の親になってみると、あのとき狂ったようにロリコンを非難し続ける「親たち」の心情も、わかるような気がする。頼むから娘に手を出さないでくれ、そういう事なのだ。今の俺も、そんな心境だ。
「舞・・・」
 俺は、ゆきをかばっている舞に目配せをした。ゆきは俺が預かるから、とにかくあの変な子を止めてこい。どうせおまえの生徒だろう。
 舞は頷くと、後ろに隠れていたゆきを俺の手に渡した。俺はゆきを受け取ると、両手でしっかりと抱き寄せてやり、事の成り行きを見守っていた。
 やかまし変態少女の前に進みゆく舞。少女の前に立つと舞は、右手を振り上げ、そのまま少女の頭の上に振り下ろした。
「痛い・・・痛いよ、舞ちゃん先生」
「・・・ゆきが怯えてる。あまり変態じみた行為をするな。」
「えーっ! そんなあ、あたしそんな変態みたいな事して無いのにぃ」
 少女が抗議の声を上げている。自分だけは変態ではないという、絶対の自負があったのだろう。そんな自負など持つだけ無意味というものだよ、プライドと同じでね。自分でも訳のわからないせりふを心の中で呟き、これは口に出さないようにしておこうと思いながら、俺は立ち上がった。ゆきは俺の両腕に抱きかかえられていた。
「祐一、この子は竹内由希。私のクラスの生徒で、野鳥観察部員。」
「・・・ユキと呼んでください。」
 舞に叩かれた場所を両手で押さえながら、俺の腕にいるゆきを物欲しそうに見つめている。
「ね、ゆきちゃん。私も、ユキって言うんだよ。」
「ユキ・・・さん?」
「そう。だから私のことはお姉ちゃんって呼んでね。」
 まだあきらめていないらしい。油断は禁物だ。
「他の子達は・・・あそこに固まってるのがそう?」
「はい。たぶん、みんなもう集まってますよ。」
 そう言ってユキが指さした先には、3人程の学生がいた。
「みんなぁ! 舞ちゃん先生来たよぉ!」
「知ってる。」
「さっきから見てた。」
 手を振りながら駆け寄るユキに対して、3人は冷淡だった。
「水野、坂井、島村。全員いる。」
 指さし点呼で部員全員がそろったこあにはとを確認した舞は、満足そうに頷いていた。

「舞ちゃん先生、早く早くー!」
「・・そんなに早く走れない、ゆきがいるし」
 目的地の山に到着して、生徒達、特にユキは大はしゃぎだった。
「それに、そんな大騒ぎをしたら、野鳥が逃げてしまう。」
「あ。そっかー」
 生徒達に指導をする舞。その舞を横目で見ながら、俺はゆきの方を見やった。両手で双眼鏡を持って嬉々としている。言葉には出さないが、これからどんな鳥さんが見れるのかと、心躍らせているのだろう。
 俺は、しゃがみ込んでゆきに目線を合わせ、言った。
「ゆき。鳥さん楽しみだな。」
「うんっ」
「でも、さっきあの女の子が大騒ぎしてたからなあ。鳥さん、この辺にはいなくなっちゃったかもしれないぞ。」
 ゆきの顔がさっと曇る。
「いや、どこにもいなくなったというわけじゃないんだ。どこに行ってしまったのか、ちょっとお母さんに訊いてみようか。」
「うん。」
 ゆきが大きく頷いて同意したのを確認してから、俺は立ち上がってゆきの手を引き、生徒達に説教している舞のところまで行った。
「あー、舞ちゃん先生。御指導中のところ悪いんだが」
 とたんにチョップが飛んでくる。
「・・・舞ちゃん先生と言うな。」
「悪い悪い。舞、説教もいいが、そろそろバードウォッチングの極意というか、秘伝の技というか、そういうのを伝授してくれないか? なにしろ、俺達はバードウォッチングなんて初めてだからさ。」
「私もよく知らない。」
「そうかそうか。って待て、知らないって何だよ。お前は野鳥観察部の顧問だろうが。」
「なり手がないから引き受けただけ。詳しいことまでは知らない。」
「えーっ。舞ちゃん先生偉そうな事言っておきながら、詳しいこと知らないんですかぁ?」
 ユキが素っ頓狂な声を上げる。
「ごめんなさい、川澄先生には私が無理にお願いしたんです。去年まで顧問をしていた先生が、退職されてしまったものですから・・・」
「そうだぞ竹内。この間入ったばかりで事情を知らんのは仕方ないが、失礼だぞ」
 一方は俺に弁解をし、一方はユキをたしなめる。微妙にずれた連係プレーだった。俺に説明をしてきたのは、口調から言って、舞のクラスの生徒ではないだろう。たぶん、2年生で部長だと舞が言っていた、水野という子だ。ユキを冷たい口調でたしなめている男子生徒は、舞のクラスの坂井だろう、男子部員は一人だけといっていたから。すると残り一人が島村か。彼女は周りの様子を気にするでもなく、ただ双眼鏡の中を覗き込んでいた。
 くいくいと、引っ張られる感触。ゆきが俺を見上げながら、服の裾を引っ張っていた。目線が、「ねえまだ?」と訴えかけていた。
「とにかく。鳥がどのあたりにいるのかということを教えてくれないか?」
 俺は、舞と水野両方に問いかけるように言った。
「そうですね。さっきまで鳴き声がしたので、そんなに遠くには行っていないと思いますが。とりあえず、こんな大人数で固まってると鳥たちが警戒しますから。・・・3つにグループ分けしましょうか。」
「あ、あたし舞ちゃん先生と一緒がいいー!」
 その言葉に俺は、思わず苦笑した。

 結局経験のある3人を頭にグループ分けがされ、俺はゆきと一緒に坂井チームに入った。水野チームに入れられたユキは、「舞ちゃん先生と一緒」にならなかったことに、ご不満の様子だった。そしてこの坂井という男は、そのユキに関していたくご立腹の様子だった。
「ねえ。竹内って、ウザいと思いません?」
 そういう乱暴な言葉は、あまりユキの前では吐いて欲しくないな。教育上良くないから。そう思っている矢先に、ゆきが訊いてきた。
「うざいって、なあに?」
「どういう意味かな、坂井君?」
 俺は、言葉を発した張本人である坂井に質問を振った。こういう責任をとるという点においては、俺は相手が子供であろうとも容赦はしない。
「え、いやその・・・つまりなんですか、人として良くない点があると、そんなような意味ですよ。」
「竹内さん、よくないの?」
「えっとまあ・・・僕の目から見れば、そういう事ですね、はい。」
 坂井は動揺しているのか、子供相手に敬語になっていた。最も、元から子供に対しても敬語を使う人間なのかもしれないが。だとしたら、君もちょっとウザいぞ。そう思って俺は、苦笑していた。
 その俺の傍らで、ゆきがぽつりと呟いた。
「竹内さんって・・・さっきのこわいひとだよね?」
「ん・・・」
 突然のゆきの言葉に、俺は何も言えなかった。坂井は、素早く反応した。
「そう、そうなんだよ、えっと、舞先生のお嬢さん」
「ゆきだ。」
「いや・・ゆきというと、どうしても竹内を連想してしまうもので」
 俺とゆきの自己紹介をしたとき、ゆきの名前を聞いたときの彼の顔。俺はそれを思い出しながら、彼の言動に何度目かの苦笑をしていた。
  茂みをかき分ける、音がした。熊かと一瞬ひるみ、思わずゆきを抱き寄せた。
「あーっ、やっぱりゆきちゃん達だー」
 ユキだった。よほど道ならぬ道をかき分けてきたのか、腕に切り傷も見える。
「竹内か・・。わざわざ草むらかき分けて来てんじゃねーよ」
「あー、坂井。あんたさっき、あたしの悪口言ってたでしょー!」
「真実に基づく所感を述べていただけだろ。」
 盛んに言い合いをする二人。これじゃまた、鳥が逃げるな、そう思っていた俺の耳に、ぽつりと呟くゆきの声が聞こえた。
「よくない・・・」
 風が、吹き抜けた、そんな気がした。いや、風ではなく、何かが頭の上を飛んでいるような感覚。そう思った矢先、その何かは頭上から急降下してきた。
「あっ」
「きゃっ!」
 一瞬だった。上から飛んできたそれは、ユキめがけて衝突し、地上に降り立った後すぐさま樹上に飛び上がった。木々を渡り、俺達から少し離れた木の枝で、ようやくそれは動きを止めていた。
「りす・・・か?」
「マリネ、ですね。モモンガやムササビの仲間の。」
 気がつくと、ユキと同行していた島村が傍らに立っていた。
「普通は山奥に住む生き物だから、こんな場所で見かけるとは思いませんでしたけど。」
「いや、それよりも・・・そのマリネってのは、ああいう凶暴で人を襲う生き物なのか?」
 そういって俺は、ユキの方を見やった。うずくまった彼女の腕からは、血が流れ出ていた。そのときに俺は、ようやく手当てしなければという考えに行き着いた。
「いいえ。マリネはおとなしい生き物ですから。人を恐がりこそすれ、あんな風に襲いかかるなんて事は・・・」
 手当の為に駆け寄った俺の背中に、島村はそう答えた。
「じゃあ、なんで・・・」
「ここのマリネは肉食なんですよ、きっとっ!」
 介抱する俺に向かって、ユキはそう笑いながら茶化して見せた。
「そんなわけあるかよ。」
 そう言ってユキを見下ろす坂井。その目の冷たさが印象に残った。

 おかあさんの話では、ユキさんはまたけがをした。学校の中を歩いていたら、吹き矢がとんできてささったのだそうだ。
「つくづく運がないな、あのユキって子は。この間の肉食マリネの件といい。」
「本人はとても、明るいけど。」
 おとうさんとおかあさんは、ユキさんの話でもちきりだった。わたしは、ちょっとふくざつな気分だった。
「ねえ、おかあさん。わたしね---」
 そういって話しかけても、二人とも「ああそうだね」といって、すぐに話を元にもどしてしまった。
 仕方がないから、わたしは一人でごはんを食べた。

 ある日、町でユキさんをみた。うでに包帯を巻いていた。ほかの人と一緒だった。
「ねえ、ユキってここんとこ、ついてないよねー。」
「うーん。ツイテナイというか。何者かに狙われてるってカンジなのよねー」
「なにそれ。」
「何かに取り憑かれてるんじゃない? お祓いでもしてもらったら。」
「やだ。あたし、恋愛の神様以外信じないもんっ」
「なんじゃそりゃ。」
「なーにが恋愛の神様なんだか。舞ちゃん先生べったりで、浮いた話の一つもないくせに。」
「えー、だって。」
「だってじゃないよ。あんた、ちょっと舞ちゃん先生独占しすぎ。そのうち刺されるよ。」
「そうかなあ・・・」
「そうだよ。あんた、よくないよ。」
 よくない・・・
 その言葉は、前にもきいたことがある。ユキさんは、よくないひと。そう思ったとき、体のよこを風が通り抜けていくようなかんじがあった。
「きゃっ!」
「わ、ユキ、どうしたの。急に溝に落ちたりして。」
「わかんない・・・わかんないけど、なんか急に突き飛ばされたような気がして・・」
「あんた、やっぱ呪われてるんじゃない? 絶対誰かの恨み買ってるって。」
「そんなあ。あたし、そんな自覚無いのに・・」
 話は、さいごまできけなかった。わたしはこわくなってその場を逃げ出していた。
 あのときわたしの横を通りすぎたもの。あれがきっと、ユキさんをつきとばしたのだ。そしてどうしてあれがそんなことをしたかというと、それはきっとわたしがそう願ったから。あの森での出来事もそうだった。わたしがユキさんをきらいだと思ったら、ユキさんはどうぶつにおそわれてけがをした。よくわからないけど、わたしがユキさんをきらうと、ユキさんはけがをするのだ。

 ユキさんを、きらわないようにしよう。そう、こころに決めた。

 でも、その決意は長くはつづかなかった。

 その日は、おとうさんとおかあさんと、わたしと三人で、お買い物にいくはずだった。
 でも、いく前になってかかってきた電話が、人数を二人にしてしまった。
「ユキが・・・また襲われたらしい。」
 そういって受話器を置くおかあさんの顔は、とても深刻だった。わたしは、おかあさんは一緒にいけなくなったんだなと、直感した。
 ユキさんのせいで。いっしゅんそう思ったけど、すぐにその考えをふりはらった。そういうことをかんがえては、いけないのだ。
「仕方ないな。ゆき、お父さんと二人で行こうか。」
 そういってお父さんは、わたしの片手をとって歩き出した。もう片方の手が、さびしかった。

「よお、相沢・・・祐一!」
 町を歩いていると、お父さんの名前が呼ばれた。
「誰だ、俺を旧姓でフルネーム呼ばわりするやつは。」
「すまんすまん、つい昔の癖が抜けなくてな。川澄祐一君。」
「だから、フルネーム呼ばわりするなと言ってるんだ。」
「はっはっは、照れるな照れるな」
 このばかなことを言っているかみの立った人は、北川おじさん。おとうさんの、むかしからの友達。さいきんはあまりこなくなったけど、わたしがもう少し小さい頃は、よく家にもきてわたしと遊んでくれた。
 とてもいい人。かなりきらいじゃない。
「おー、ゆきちゃんか。しばらく見ないうちにまた大きくなったなあ。子供の成長は早いからなあ。」
 そういって北川おじさんは、わたしのことを抱き上げた。ちょっとはずかしい。
「しかもまた一段とかわいくなって。なー祐一。オレ、このままゆきちゃんお持ち帰りしちゃってもいいか?」
「何バカな事言ってんだよ。ふざけてないでゆき返せ」
「バカな事じゃないさ。オレ、ゆきちゃん大好きだからなぁー。」
「ったく、何言ってんだか。お前の好きなのは違うゆきちゃんだろうが。」
 ちがうゆきちゃん・・・
 わたしの心の中に、いっしゅんであの人の顔が思い浮かんだ。今日おかあさんをこれなくしちゃった、ユキさんの顔が。
「オイオイ、頼むからそれは言わないでくれよ・・・」
「いーや、言ってやる。お前さっき、フルネーム呼ばわりで俺のこといじめてくれたからな。お返しだ。」
「てめー。そういう事言ってると、ほんとにゆきちゃん持って帰っちゃうぞ。」
 ふたりの言葉が、耳からはいって素通りしていく。わたしの頭の中は、すでにユキさんのことでいっぱいだった。
 気がついたときには、わたしは家についていた。
「お、ゆき、気がついたか。全く心配したぞ、途中から急にぼーっとしちゃって。熱でもあるのかと・・・」
 そうやって心配してくれるおとうさんの声も、まだすっきり入ってこなかった。頭のなかには、さっきまでの変な思いがまだのこっていた。

 おかあさんが帰ってきたのは、夜遅くになってからだった。
「舞・・怪我してるのか?」
「・・・大したこと無い。」
 おかあさんの顔や腕には、かすり傷のようなものがいっぱいついていた。
「大したこと無いったってなあ・・・」
「祐一。」
「ん?」
「まだ、確信は持てないんだけど・・・」
 おかあさんは、座り込みながら一息ついて、続けた。
「魔物が・・・出たのかもしれない。」

「坂井?」
 昼食のおろしそばをすすり込んでいるときに、生活指導の谷口から声をかけられた。ユキを襲った犯人がわかったというのだ。
「まさか。」
 だがそれは、私にとっては少し信じがたい結果だった。犯人は、私のクラスの、野鳥観察部の坂井だというのだ。
 確かに、坂井はユキを疎んじている。多少の嫌がらせくらいしかねないのではないかという危惧はあった。だけど。ユキを襲った災難が、すべて坂井の仕業だとは、とうてい考えられなかった。
「・・・あれは、人間にできるようなことじゃない・・・」
 私は、先日ユキに呼び出されたときのことを思い出していた。

 ユキは、神社の前にいた。「また襲われちゃった、へへっ」そう言って笑ってはいたが、その心の内には、得体の知れないものに襲われる恐怖心がありありと見えた。
「何があったの?」
 私は、座り込んでいるユキの隣に腰掛けながら訊いた。
「ガラスが割れて・・・ううん、窓ガラスじゃないの、どこのガラスかわからないけど、とにかく割れる音がして、破片が飛んできて・・・」
「怪我は?!」
「大丈夫。当たったけど、怪我はしてないみたい。」
「そう。でも一応、病院に行った方がいい・・・」
 そう言った矢先、私の横を、風が通り抜ける感覚がした。いや、感覚は風だけではなかった。もっと不自然な、心の中の傷をえぐるような感覚。この感覚には、覚えがある—–
 だが、それが何であったのかを思い出す間も無く、私はユキをかばって地面に伏せなければならなくなった。無数の石の飛礫が、こちらに向かって宙を飛んできていた。幾つか、幾つかが私の背中に当たった。怪我をするほどではないが、痛い。
 結構長い時間が経って、ようやく石は当たらなくなった。背中が痛む。どうせなら、肩こりのツボにでも当たってくれればよかったのに。そう思いながらユキをみると、ユキの目には涙が浮かんでいた。
「泣いてない、泣いてないよ、舞ちゃん先生・・・」

「とにかく、話を聞いてみるか・・・」
 私の目の前には、食べかけのそばがあった。かなり未練があったが、それを残して私は生徒指導室に向かった。

「吹き矢の件と、植木鉢の件と、ガラスの件。これは認めるんだな?」
「はい。」
「じゃあ何で、他のことは認めないんだ!」
「だって、僕がやったんじゃないんですよ!」
 生徒指導室で、坂井は三人の教師に尋問を受けていた。指導主任に、学年主任に、私。
 もっとも私は、まだ何も彼に訊いてはいなかった。
「だったら、誰がやったというんだ!」
「知りませんよ・・・とにかく、僕がやったのはさっきの三つだけです!」
 その通りだ。私は心の中で、そう思った。吹き矢やガラスの事は、彼一人で殺ってやれないことでもない。でも、それ以外の、石が飛んでくるとか、壁にたたきつけられるとか、動物に襲われるとか。そんなことが、彼にできるはずもない。
 彼に、私のような能力があるというのなら別だが----
「谷口先生。」
 私は、立ち上がりながら言った。
「本人がやっていないと言っていることを、無理に追求するのもどうかと。被害者加害者ともに私のクラスの生徒でもありますし、ここは、私に引き取らせていただけないでしょうか。」
「そうですな。」
 あまり事を荒立てたくないのか、学年主任がすぐに同調してくれた。
「川澄先生は、彼も含めて生徒に慕われているようですし。ここで我々ががみがみ言うより、かえってその方がいいかもしれません。」
「わかりました。川澄先生、くれぐれも、よろしくお願いしますよ。」
 二人は、部屋を出て行った。私と坂井の二人だけになった。坂井は黙っていた。
「本当に、三つしかやっていないの?」
 坂井は黙ったままだった。
「大丈夫。私も、他に犯人がいると思っている。」
 その言葉に、坂井ははっとしたようにに顔を上げた。
「どうなの?」
「三つだけです。」
「そう。じゃあ、それについて詳しく聞かせてくれる? それと」
 私は、一呼吸置いて続けた。
「ユキ---竹内にも、この事は話しておくから。」

 私とユキは、私の家に向かう車の中にいた。ユキに坂井のことを話しておかなければならないが、学校や人目につくところでは少し困ると思っていたところへ、ユキが持ちかけてきた。
「舞ちゃん先生、あたし今日、先生の家に行ってもいいですか?」
 家なら無闇に他人に聞かれることもないし、行く途中の車の中でも話はできる。それに、ユキを襲う何者か-おそらくは、魔物-から、ユキを守ることができる。
 車が走り出してすぐ、私は坂井の一件を話した。
「そう、ですか。やっぱり。」
 ユキは薄々、幾つかに坂井が絡んでいるとは感づいていたようだった。そして、全てが坂井の仕業でないことも。
「でも。私、みんなの見ている前で、見えない何かに突き飛ばされたりしたんですよ。それも坂井の仕業ですか?」
「違うと思う。」
 私は断言した。
「何者かはわからないけど・・・坂井以外の、別の何かがあなたを狙っている。」
「ですよね。そうですよね。あたしも、そんな気がするんです。」
 とにかく明るく振る舞おうとするユキ。その姿が、また痛ましく思えた。
「・・・大丈夫。あなたのことは、私が守るから。」
 ユキを励ますつもりで言った言葉だった。だがその言葉で、ユキは却って意気消沈してしまった。
「ごめんなさい・・・舞ちゃん先生にまで迷惑かけちゃって・・・・」
 もはや、取り繕った明るささえもなかった。そのとき私は確信した、この子は本当に、私のことを好きでいてくれるんだと。
「気にすることはない。そもそも、教師というのは生徒が迷惑かけるために存在している。そのために給料をもらっているのだから、いくらでも迷惑かけてくれていいし、頼ってもらっていい。」
「舞ちゃん先生・・・なんかかっこいい!」
 ユキに、少なくとも表面上の明るさが戻った。ついでに言うと、目が潤んでいる。そこまで感動的な台詞だっただろうかと、私は疑問符を抱きながら、家路を急いだ。

 家に着くと、祐一はいなかった。まだ帰っていないらしい。ゆきは帰ってきていた。
「ただいま・・。」
「おかえりなさいっ・・・あ」
 明るい顔で私を迎えてくれたゆきの顔は、後ろに立っていたユキの姿を見て凝固した。
「ゆき、お客さん。ご挨拶は?」
「う、うん。こんにちは、ユキさん。」
「こんにちは、ゆきちゃん。」
 ユキは型どおりの挨拶をすませると、突然「うぅーん」と唸って、何かがはずれたようにゆきを抱きしめた。
「かわいー! ゆきちゃんやっぱりかわいぃ、かわいいよぉ」
 そういって頬ずりしたりしている。ゆきは少し嫌がっている感じだった。が、私は止める気にならなかった。作り物でない、本物の笑顔。今のユキの顔には、それがあった。今辛くてもじっと耐えている少女の顔から、本当に喜べることを奪ってしまうことが、とても残酷なことに思えた。
 ゆきも、そんな私の気持ちを察したのか、何も言おうとはしなかった。

 帰ってきた祐一は、ユキを泊めることに快く賛成してくれた。と言うより、祐一が勝手に決めてしまった。私もユキも、彼女が今日ここに泊まるということまでは考えていなかった。
「いや、訳のわからないものに怯えて一晩過ごすよりは、いっそ泊まっていった方がいいだろう、うん、その方がいい、そうするべきだ。」
 泊まるとも何とも言っていないのに、勝手に泊まると勘違いした。その恥ずかしさを隠したいのか、祐一は必死にユキを泊めようとした。
 私は、一抹の不安を覚えて、祐一にそっと耳打ちをした。
「祐一。」
「ん?」
「もし。もしユキを襲っているのが本当に魔物、あの魔物だとして。」
「ああ。」
「それはもしかして、私の作り出したものではないかしら。」
「そうなのか?」
「わからない。わからないけど・・・あの感覚は、昔私が作り出した魔物とよく似ていた。」
「・・・・。」
「もしそうだとしたら・・・ユキをここに泊めるのは、却って危険。」
「大丈夫だろ。」
 祐一は、即答で私の不安を否定した。
「今さら舞が魔物を生み出してしまう理由もないし、もし仮に生み出してしまったとしたら、そいつが真っ先に襲いかかってくるのは、俺のはずだろ?」
「・・・・。」
「それに、もし魔物が出たとして。その時は、また二人で戦って追い払えばいいじゃないか。昔みたいにさ。」
「・・・・・。」
 祐一の思考は、なんだか楽天的に思えた。それでも私は、その祐一の考えを信じたかった。自分の中の不安は、否定したかった。
 私は、ちらりとユキの方を見た。ユキは眠ってしまっていた。ゆきを抱いたまま。ゆきが困った顔をしていた。
 私は、ゆきをユキの腕から抜き取りながら、眠っている彼女の顔を見た。安らかな寝顔。ここにいれば安心、そう思いきっているのだろうか。
 私の心は決まった。もし魔物が出たとしたら。その時は、彼女を全力で守ってやるまで。それだけのことだ、と。
   

 そして、その夜。魔物は出た。

「ユキ、起きて。ユキ、ユキ。」
「う、うーん・・・」
 おかあさんが、ユキさんを起こしている。
「あ、・・・ごめんなさい、あたし、寝ちゃった」
「これから、食事に行く。起きて。」
「あ、はい・・・」
 ユキさんは、まだねむそうな目でごそごそと支度をはじめた。
「あれ・・・そういえば? 外に食べに行くんですか?」
「ああ。本当は今日は、俺の料理当番なんだけどさ。俺の作るメシ、不味いから。ちょっと食わせられねーなと思って。」
「そうなんですか?」
 そう。おとうさんの作る料理は、正直にいってあまりおいしくない。それはわたしもいつも思っていることだ。でもそれをいってしまうと、おとうさんはとても悲しそうな顔になるので、いわない。
「・・・祐一の料理は不味い。」
「ぐはっ」
 ・・・おかあさんがいってしまった。せっかく、わたしがいわないようにしていたのに。
「でも。昔よりずいぶん、おいしくなった。」
「舞・・・お前ってさ、ほんとにけなしてんだかフォローしてんだか、わかんないよな・・・」
「それは・・・褒めてるの?」
「そんなはずはないだろう。」
 くすくすっ、と、ユキさんがわらう。そのわらいごえを聞いてわたしは、さっきまでの複雑な感じをおもいだした。
 ユキさんのうでに抱かれていたとき。わたしは考えていた。わたしは、ユキさんをあまり好きではなかった。うるさいし、怖いことするし、おかあさんを連れていっちゃう。それなのに、ユキさんはわたしのことを大好きだという。どうしてだろう。どうしてだろう。わたしがユキさんをきらってしまっているのだから、ユキさんもわたしをきらって当然なのに。わたしは、そんなに人に好かれる子なんだろうか。それとも、ほんとうはユキさんは、とてもいい人なんだろうか・・・・。

 気がつくと、手を引かれて夜の道を歩いていた。両隣におとうさんとおかあさん、後ろから、ユキさんがついてきていた。
 ユキさんが、わたしの上に割り込むように、頭をつっこんできた。
「ね。どこ行くんですか?」
「そうだなあ・・・適当にラーメン屋でもいいか?」
「えーと、あたし、グルジア料理屋さんがいいと思います!」
「長寿料理・・・?」
「いや、それは、なんというか、そんな店この辺にあったか?」
 3人の話をききながら、わたしはまた考えていた。この人はいったい、なんなのだろう。わたしはこの人にとって、なんなのだろう。この人はよくないと思っていたから、わたしはずっとこの人がきらいだった。でもこの人がいい人だというなら、そのいい人をきらっていたわたしはどうなるのだろう。
 わたしは、もしかしてよくない子。

 そう思ったとき、通り抜ける風を感じた。あのときと同じ。
 立ち止まる。するどい視線。おかあさんの目が、じっと前を見すえていた。なにかが、たしかにそこにいた。
「下がって・・・!」
 おかあさんの左手が、わたしとおとうさんの行く手をさえぎった。
「出たのか・・・・? 舞!」
 ごくりとつばをのみこむ音がきこえる。わたしのすぐ後ろで、ユキさんが立ちすくんでいた。
「私がやる。祐一は、その二人を守っていて。」
 そういっておかあさんは、私たちをうしろにぐいと押しのけた。
「いや、やるって舞・・・お前、武器もなにも無しに」
「これを使う・・・」
 そういっておかあさんは、道ばたにすてられていた傘を拾いあげた。バンッと勢いよくひらき、その勢いのまま壁にうちつけ、いっきに傘の骨を取り払う。
「舞・・・」
「舞ちゃん先生・・・」
 わたしは言葉がでなかった。
 おかあさんは身構えたまま、じっと何かとにらみあっている。
 何かが、動いた。おかあさんの手がすばやく反応する。だけどそれは、何かをとらえることなく、すっと空振りしてしまう。
 わたしに、来る。そう思った。ユキさんにではなく、わたしに。
 わたしは、ゆっくりと目を閉じた。
「ゆきちゃん、危ないっ!」
 そのこえにおどろいて、ふたたび目を開ける。ユキさんの体が、わたしにおおいかぶさってくるのがわかった。そして、どしんと来る衝撃。
「ああッ!」
 何かは、ユキさんの背中に当たった。ユキさんは悲鳴を上げて、そのまま倒れ込んでしまった。
「ユキ!」
 おかあさんの叫ぶ声。それが一瞬、どっちのことなのかわからなかった。
 何かはそのままとおりすぎて、後ろのほう、私たちが歩いてきた方向でとどまっている。
「何者・・・一体何者・・・!」
 月明かりに照らされて、怒りにふるえたおかあさんの顔が見える。1、2、3。間合いをつめたおかあさんが、そのまま何かに飛びかかっていく。当たった。
 ずきん。
 体の底から、はげしい痛みがわき起こってくる。
「ゆき!」
 わたしを呼ぶ、お父さんの声が聞こえる。その声にふりかえった、おかあさんの姿が見える。そのむこうに、何かがいた。その何かが、少しづつ、はっきりと目に見える形になっていった。人の形。子供。女の子。あれは、わたし・・・?
 再びあれに目を向けたおかあさんが、その場に固まっていた。おとうさんも、ユキさんも同じだった。わたしも、動けずにいた。なにが起きているのか、よくわからなかった。ただ頭の中にあるのは、ひとつだけ。あれは、わたし。
 やがておかあさんが動きを取りもどした。ゆっくりと、軸だけになった傘をおろし、そしてわたしの方に歩みよってきた。
「あれは・・・あなたなの?」
 おかあさんは、ゆっくりと、やさしく訊いてきた。
「あなたなの?」
 わたしは、うなづいた。あれは、わたし。わたしの中から生まれた、わたし。証拠は何もない、だけど、わたしははっきりとした確信をもっていた。
「だったら---」
 おかあさんは、ゆっくりとわたしの前にしゃがみながら、傘の軸をさしだしてきた。
「あなたが、やりなさい。」
 すぐには、意味がわからなかった。
「あなたでないと、できない。」
 両手でさしだされた、傘の軸。これをもって、あの「わたし」と戦えということだろうか。わたしはおかあさんの目を見た。まっすぐにわたしの目を見つめる瞳が、そうだと言っていた。わたしは、おそるおそる、傘をうけとった。「わたし」が、おかあさんのすぐ後ろにまできていた。
 どぐっ。
 にぶいおと。おかあさんが、右手で肩をおさえていた。次の瞬間、おかあさんは体をひねって、左手で「わたし」をふりとばした。からだに、軽い衝撃を感じる。
「さあ、・・・行きなさい。」
 おかあさんは、再びわたしにうながした。自分で生み出した魔物なのだから、自分で始末をつけなさい。そう言っているような気がした。わたしはその言葉に従い、ふりとばされた「わたし」の元に歩いていった。
 どさっ。
 うしろから、倒れるおとが聞こえる。振り返ると、おかあさんが倒れていた。おとうさんとユキさんが駆け寄るのが見える。
「おかあさん!」
 おもわず、叫んでいた。その言葉に、起きあがったおかあさんはこう答えた。
「行きなさい!」
 それは、はじめて聞く母の強い言葉だった。 
 わたしは再び「わたし」の方に向き直り、そして傘をかまえた。「わたし」も、その場に立ちすくんでいるかのようだった。
「うわああああああ!」
 言葉にならない声を叫びながら、わたしは「わたし」に立ち向かっていった。
 ふりおろす傘。当たらない。よけられた。
「消えてっ! おねがいだから、消えてっ!」
 わたしは、必死の思いをさけびながら、「わたし」に傘をうち下ろしていった。
「あなたがわたしだというのなら! おねがい! もう、わたしたちの前から消えてっ!!」
 強くねがう。わたしはもう、わたしの周りの人をきずつけたくない。わたしの好きな人たちを傷つけたくない。だから。だから。人をきずつけるわたしはもう、消えてほしい。無くなって!
 光が、見えた気がした。正確には、感じた。とおりすぎる光が、わたしの前にいた「わたし」にからみつき、わたしの前から引きはなした。「わたし」の姿が見えなくなり、ふたたび何かへと戻った。それは光とからみあいながらうずまきのように空に上って行き、そして、消えてしまった。
「消えた・・・。」
 それがわかった、そこで、わたしの意識はとぎれてしまった。

エピローグ

「舞ちゃん先生っ」
 振り向くとそこに、ユキがいた。
「ゆきちゃん、どうですか? 元気にしてます?」
「・・・問題ない。」
 あの事件から、三ヶ月が経っていた。ゆきは、自分の生み出した魔物を倒したあと昏睡状態に陥り、一週間目を覚まさなかった。その一週間、わたしも祐一も泣き、取り乱していた。そんな私たちを支え励ましてくれたのが、ユキだった。今から思えば、ユキだって精神的にかなり追いつめられていたはず。それを思うと、正直ユキには頭が上がらない思いだ。
「学校にも行ってる。よく笑うようになった。」
 一ヶ月後、ゆきは退院できた。回復したゆきは、何かを吹っ切ったかのように明るくなった。誰とでもよく話すようになり、多少の悪口を言われても平然としていた。時としてお節介と思えるような事をすることもあった。そう、あまり言いたくはないが、誰かに似てきた。
「そう。よかった。」
 あまりよくない、一瞬だけそう思った。
「あなたは、最近おとなしくなった。」
「そう思います? ええ、そう心がけてますから。」
「そうなの?」
「はい。あたしも、いつまでも子供じゃいられませんから。」
 そう言って笑うユキの顔は、少しだけ大人びて見えた。そのとき私は思い出していた。坂井のことは不問にするから、今回の事件はいっさい無かったことにしてくれと、学年主任らに頭を下げるユキの姿を。どうやら私は、この子をかなり見くびっていたようだ。
「じゃ、先生。いずれまた、先生の家行かせてくださいね。ゆきちゃんにも会いたいし。」
「うん、いつでも来ていい。歓迎する。」
 そう言って私たちは、その場を別れた。
「さて・・・今日はもう帰ろうか。」
 今日は、ゆきも祐一も早く帰ってくるはずだ。今帰ればきっと、ゆきのかわいい笑顔が出迎えてくれることだろう。
「おかえりなさいっ、おかあさん。今日ね、おとうさんも早かったんだよ。だからわたし、すごくうれしいっ・・・・・・・・」

完。 

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※2002/9/23執筆 第2回かのんSSこんぺ出稿作品

舞ナンバーカード

「マイナンバーカード取りに来て!麦畑で待ってるから!」
そう叫ぶ舞をよそに俺は電話を切ってしまった。「くそめんどくせぇなぁ」
知らなかったんだ。舞が6体もいて、ちゃんと番号管理しないと、数え間違えて、まさか、死ぬ、なんて…
 #KeySS

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※2016/3/26Twitter投稿SS

SSとは主にネット上で公開される二次創作文章の事で、

 SSとは主にネット上で公開される二次創作文章の事で、最初にこの言葉を使ったのは同人作家で評論家の本田透氏であるといわれており、氏の書く新世紀エヴァンゲリオンの二次創作小説をSSと呼んでいたのが始まりと言われています。
 SSが何の略であるかは結局よくわかっておらず、人によって解釈が分かれます。昔は「ネット」で公開する「二次創作」の「短い小説」であるとされていましたが、20世紀末にSSの対象ジャンルがLeaf/Ley(通称葉鍵)に移って以降書かれる文章の幅が拡がり、小説という枠で捉えることは困難になりました。
 また、葉鍵にジャンルの主流が移ったことでSS作家・作品共に幾何級数的に増大し、それまで「小説」が二次創作に於いて傍流でしか無かったものが、少なくとも葉鍵に於いてはマンガ・イラストと並ぶ三大創作手法の一つにSSが挙げられるようになりました。
 書かれる内容もラブコメから本格ミステリーまで多岐に渡るようになり、長さもショートショートから大長編まで幅が拡がりました。これらの、特に中長編SSは、後に「ライトノベル」(ラノベ)と呼ばれる文章形式の源流の一つとなりました。実際、葉鍵の長編SSを書いていた人が後にラノベ作家としてプロデビューした例は枚挙に暇がありません。(有名どころでは、竹井10日。)
 その後更に時代は移り、ラノベで発達した手法がSSに持ち込まれるようになり、また公開の場もネットに留まらず製本して同人誌即売会で頒布する者も多くなりました。加えて、葉鍵の衰退に伴ってSS作家が様々なジャンルを彷徨った挙げ句、コミティアの台頭に代表される昨今のオリジナルブームに乗って、オリジナルラノベをSSと呼称する作家も現れるに至り、現在では再びその定義づけは困難となっています。

佳奈多をめぐる冒険~二木島編~

麻枝准は、急行が好きである。CLANNADで岡崎朋也と汐が乗っていたのも、Charlotteで友利奈緒と乙坂有宇が乗っていたのも、急行である。麻枝准は何故急行が好きなのか。その謎を解明する為、我々は三重県に飛んだ。
三重県は紀伊半島東岸を占める南北に長い県であり、県中央部の伊勢市は麻枝准の出身地である。三重県内の鉄道交通網は近鉄が主流であり、かつては国鉄の駅長が名古屋出張で近鉄を使っていた事が新聞記事になって問題になった事もあるほどである。それほどまでに三重県は近鉄が強い。岐阜県内の近鉄養老線が養老鉄道として分社化された今、東部近鉄沿線は全て三重県であるといっても過言では無いほどである。つまり、近鉄が乗り入れている名古屋駅は三重県になるのである。浜松は名古屋駅でうなぎパイを売りたかったらまず三重県の赤福に勝たなければならない。麻枝と涼元の確執も、元を辿ればここに根源的な理由があるのである。
 そして、近鉄は急行が速い。名阪特急が新幹線より安上がりな事は名古屋民には割と常識だが、急行でも十分日帰り往復できる事は、あまり知られていない。かくいう筆者も、妹に教えられるまで知らなかった。近鉄名古屋から伊勢中川で大阪上本町行きの急行に乗り換えれば、3時間ほどで大阪まで行ける。高速バスと変わらない。
 麻枝の急行好きの根源もここにあるのではないか。我々調査班はそう考えた。

 だが、そういう話は今回はどうでもいい。佳奈多は城桐キャラであって、麻枝キャラでも涼元キャラでも無いからだ。そして、佳奈多の姓である二木を関する駅「二木島駅」は、JR東海の紀勢本線にある。南部の熊野市、「東紀州」にあたる場所になり、近鉄では行けない。

私が二木島駅に行ったのは、実は1年以上前の夏である。なので、実は当時の記憶があまり正確では無い。しかも、普段なら重要事項があればポメラでメモを取るところを、名古屋駅から亀山駅で乗り換えるときに電車の中にポメラを忘れてしまった為、メモを取る事も出来なかった。
青春18きっぷを使って普通列車だけで行った為(※快速みえを使うと伊勢鉄道を通る為別料金を取られる)、とにかく時間がかかった事だけは覚えている。
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隣の駅が「かた」(賀田)ということも、来てみて初めて知った。
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駅前はすぐ二木島湾という内湾なのだが、駅近くにある案内板によると、この湾を境にして紀伊国と志摩国に分かれていたらしい。
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…自分が習った歴史では、志摩国というのは現在の鳥羽市の一部と志摩市の辺りのみだった気がするし、そもそもここより少し北に紀北町とか大紀町という明らかに紀伊国の一部だった場所がある。そもそも、かの有名な大岡越前が徳川吉宗に登用されるきっかけとなった事件は、宇治山田奉行を務めていた際に管轄内の伊勢国と紀伊国の農民同士の争いを公平に扱った事例があった為であり、つまり宇治山田(現在の伊勢市)のすぐ近くまで紀伊国になっていたはずなのである。
それなのに、50Kmも南の二木島湾が志摩国とはどういうことなのか。

志摩国というのは「しまのくに」と読み、察するところ元の意味は「島の国」である。つまり、伊勢神宮近辺の島嶼部を管轄するのが志摩国であったと考えられる。(三河国渥美半島の目と鼻の先にある神島が志摩国であった事がその典型例と言える。)東紀州はリアス式海岸で半島が多く、昔は陸続きとは言え道など無く船で行き来していた(※今でもそういう地区があるらしい)ので実質島みたいなものだった。伊勢神宮付近の”島”なので、そういう場所は島の国に組み入れられた。
そういう話なのかもしれない。あくまで憶測である。裏を取る時間と気力はなかった。
佳奈多は一応巫女設定なので、まあこの程度の憶測は許されるだろう。

ついでに言うと、CLANNADの志麻賀津紀は志摩国(しま)~勝浦(かつ)~紀州(き)から来ている事は、想像に難くない。何故なら麻枝は三重県伊勢市出身であるから。国崎集落とか、倉田山公園とか、偶然にしては出来過ぎだろう。

そんなわけで、この後は勝浦まで寄ってこようかと思ったが、新宮まで行ったところで特急に乗らないとその日のうちに家に帰れない事がわかったので、あきらめて新宮で折り返す事にした。
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ちなみに新宮駅前からは、現時点での日本最長の路線バスである奈良交通の八木駅行きのバスが出ている。奈良交通だが、久弥は関係ない。はず。
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当然のことながら乗ってる時間はないので、このまま折り返した。

ちなみに亀山駅で忘れたポメラだが、この後疲れて電車の中で寝入ってしまって寝ぼけていた事もあって、たぶん多気駅だと思うのだが(そこすら明確な記憶が無い)
「名古屋からの電車のポメラを忘れたんですけど」
「…ここに名古屋からの電車は来ませんけど」
という意味不明なやりとりを駅員としていた事だけ覚えている。(その後名古屋駅の忘れ物センターまで行って問い合わせたら結局亀山駅にあって、後日取りに行く羽目になった。)

この後、佳景山駅・奈多駅に行く事になるのだが、それには1年もの間をおく事になる。

佳景山編に続く

SMAPとは即ちKeyである

Kanon AIR CLANNAD Planetarian リトバス/
クドわふ
Rewrite Charlotte
S: 栞・沢渡・佐祐理・斉藤・ そら・白穂・ 坂上・早苗・志麻・相良・春原・ シオマネキ・ 椎菜・笹瀬川.佐々美・沙耶・三枝・瞬・咲子・ 静流・千里・咲夜・宗源・しまこ・洲崎.周一郎・桜・ 俊介・七野・サラ・白柳
M: 水瀬・舞・真琴・美坂・美汐・ 観鈴・美凪・みちる・ 宮沢・美佐枝・ 美魚・マスクザ斉藤・ ミドウ・ 美砂
A: あゆ・秋子・天野・相沢・ 秋生・敦子・ あーちゃん先輩・あや・有月・ 朱音・旭・新・ 歩未
P: ぴろ・ ポテト・ ぱに・ プー

https://twitter.com/agbysx/status/765350392246865920
↑のツイートを見て「SMAPとは即ちKeyである」ということを主張したくなったのだが140字で収まらなかったのでこっちに掲載しておく。

SMAPとは即ちKeyである

北川ラーメン~鍵っ子的ラーメンセット企画~(転載)

 AIR15周年企画「鍵っ子的ラーメンセット」企画第二弾、北川ラーメンである。
 「あれ? 前回、『風子麺』にするつってたじゃん!」という指摘があるかもしれない。
 仰るとおり。第二弾は風子麺にするつもりで、実は試食も既に済ませてあるのです。しかし、Twitter見てた人ならわかると思うが、この一ヶ月妹が妊娠してつわりで入院してとかもう逆にこっちがぶっ倒れそうなくらいの多忙さで、風子麺の試食もその間に済ませたのだけど、その後文章化する体力がとても無いうちに、北川潤の誕生日が来てしまったので、先にこっちをUPすることにした。という次第です。
 さて、とはいえ何故「北川ラーメン」なのか。それは、妹が退院の見通しが立って妹の夫に任せても大丈夫となったちょうどその日が荒野草途伸の40歳の誕生日で、じゃあ青春18きっぷに残りあるしどこか行こうかと思ったときに、じゃあ喜多方・会津若松に行こう、と思ったからなのです。
 以前福島県に行ったときに、浜通り・中通りは行ったけど、会津方面は見ていなかった。それが引っかかっていたのもあったのですよね。
 なので今回、ラーメンレビューと言うよりも旅行記みたいな感じになります。
 ということで、3/27早朝、妹の自宅のある王子を出発。何時だったかは覚えていない。寝過ごして始発乗り逃がしたから。
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途中、宇都宮駅で乗り換えまで時間があったので、一旦降りる。
  宇都宮というと、あの東京都知事選からもう1年3ヶ月も経つのですね…。
 今回の目的はあくまでラーメンであって餃子では無いので、宇都宮は早々に離脱。…いや、今思えばここで餃子買ってラーメンに付けても良かった気もするけどね。
 東北本線でひたすら北上し、郡山で磐越西線に乗り換えて、会津若松着。
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 …喜多方方面への列車が、1時間待ち。そう、この日は平日で、たまたま着いた時間だけ連絡する列車が無かったのだった。ちゃんと始発で出ていればスムーズに乗り換えできていたんだが。
 仕方が無いので、駅前のスーパーでコーヒー牛乳を購入。
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いや、前回福島に行ったときも、「とにかくひたすら福島の牛乳を飲みまくる」というのをミッションにしていたのよね。なので今回も、ということで。

 約1時間後に、行き先忘れたけど喜多方方面への列車は出発。喜多方まではそんなに長くない。30分もかからなかったと思う。
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 喜多方に着いた頃には昼過ぎになっていただろうか。ラーメンを食べるにはしかし丁度いい頃合いだ。
 さてどこで食べようか。駅に備え付けのパンフレットをめくってみる。
ここにあるのと同じと思われる。)
 うむ、全部は無理。帰りの電車の時刻を確認すると、幸か不幸か早くて二時間後。なので、少し遠いがここぞという所に行ってみることにした。
 バスは出てないようなので、歩く。正直地図がわかりづらい。目印とか何も記載してないんだもん…。




 歩くこと約20分。




 準備中。




 慌ててパンフレットを確認すると、不定休とある。え、いや、不定休たって、何も自分が来る日に限って…。というか金曜日やで? 明らかに観光客向けの店なのに、来る客おらんのかいな。
 仕方ないので、他の店を探す。なんとなく「坂内食堂」というところが北川っぽい印象を受けたので(※適当な勘)、ここに行ってみることにした。
 途中市役所の前の道が工事中で不審者の如くうろうろしてまた20分ぐらい時間がかかってしまったが、何とか店に到着。この時点でもう店の写真を撮る気力すら無かった。
 店に入ると、ほぼ満席。しかも店に自分が入っても店員に認識されない。空いてる席を探して店内をうろついてると、やっと店員に呼び止められて「先払いです」。いや、先に言ってくれ頼むから…。
 で、案内された席が、カウンター席の若いお姉さん3人がかけてる隣の端っこ。
「お前みたいなクソオタがこんなとこ来てんじゃねーよ!」とラーメン汁ぶっかけられやしないかとビクビクしながら、注文した肉そばを待つ。
 肉そば到着。IMG_20150327_143152
 えっと。正直、量多い。
 いや、20代の頃なら平気で平らげただろうけどね。私、この日ちょうど40になったばっかなんですわ。
 まあでも、この日まだ何も食べてないので、食べられないことは無い。
 そして食べてる途中で気づく。これ、セットじゃ無いじゃん!
 一応、水と一緒に写真撮り直して、「これで北川セット! だって北川だし!」と主張するつもりでいたのだが、何故かその写真が見当たらない。
 やはり宇都宮で餃子を買っておくべきだった。
 仕方ないので、帰りにまた買った普通の牛乳とヨーグルトの写真をあげておく。
IMG_20150327_175954
 OK、これでセットになる。同時に写真撮れてないけど、さすがにそれはもういいだろ!?
 ということで、北川ラーメン(セット)の概要をまとめておく。
1.喜多方ラーメン
2.会津産コーヒー牛乳
3.会津産牛乳
4.会津産ヨーグルト
5.(宇都宮餃子)
「これが立った髪とどう関係があるのですか?」だって? しるかよ!
「牛乳だと北川じゃ無くて長森になるんじゃないですか?」だって? しるかよ!!
 はい、ということで、次回こそは風子麺ね。もうあと文章書くだけなんだけどね。書けてないね。いやもう、一ヶ月分の疲労が…。ていうか、まさか40歳の誕生日をこんな形で過ごすことになるなんて思わなかったし…。
 北川もきっと、一生妹に振り回される人生を送るんだろうなあ。
 て言うか、北川って麻宮姫里・空 姉妹のお兄ちゃんなんだけど、最近鍵を知った人はそれ知らないのかなあ。というより、麻宮姉妹自体知らない可能性も…? もうほんとあのVAのいい加減な連中の所為でほんとにもう。というかこの先日の鍵点でも少し話したけど、複数作品ダブらせるのヤメレ。それでうまく行ったためしがないだろうがド阿呆。鍵っ子はATMじゃねえんだぞ。
 ああもう、ラーメンセットと全く関係ない話になってしまった…。

どうもまだ誤解してる人がいるようだから、麻枝キャラをまとめておこうか。(転載)

 1/3は麻枝潤と民安ともえの誕生日らしいです。もしかして二人はデキてるのか!?

 
 「佳奈多は麻枝キャラじゃ無い!」とブチ切れるのはもはや恒例行事となりつつあるが、なんかそれ以外のキャラに関してももしかして勘違いしてる人がいるのかなと気になったので。今年はAIR15周年ということで、改めて麻枝キャラを整理。

MOON.天沢郁未、巳間晴香、巳間良祐、高槻
ONE長森瑞佳、七瀬留美、椎名繭、氷上シュン、(折原浩平 {*1})
Kanon沢渡真琴、川澄舞、倉田佐祐理、倉田一弥、久瀬、天野美汐、(水瀬秋子 {*2})
AIR神尾観鈴、神尾晴子、(国崎往人 {*1})
CLANNAD古河渚、伊吹風子、坂上智代、宮沢有紀寧 {*3}、古河秋生、古河早苗、相良美佐枝、志麻賀津紀、伊吹公子、芳野祐介、幸村敏夫、春原陽平、春原芽衣、岡崎汐、(岡崎朋也 {*1})
智代アフター坂上智代、岡崎朋也、とも
リトルバスターズ!棗恭介、(棗鈴 {*4})、宮沢謙吾、朱鷺戸沙耶、時風瞬、マズク・ザ・斉藤、(直枝理樹 {*1})
Angel Beats!<全員>

注釈:
*1 主人公なので他ライターも担当しているが、作品の企画が麻枝ということで
*2 久弥企画作品だが、麻枝担当シナリオでは明らかにキャラが違う為
*3 元々は涼元担当だったが、最終的に麻枝と魁で分担している。
*4 麻枝と城桐で分担。

 どちらかというと、麻枝が担当していないキャラを麻枝と勘違いしてる人がいる傾向があるので、それ以外のキャラもざっくり。誤解が多そうなキャラだけ。

鹿沼葉子(MOON.)→久弥
川名みさき(ONE)→久弥
柚木詩子(ONE)→久弥
霧島佳乃(AIR)→イシカワ、涼元
神奈(AIR)→涼元
藤林杏(CLANNAD)→魁
二木佳奈多(リトバス)→城桐
クドわふ→全員城桐

 逆に、麻枝が担当してるのに他ライターの担当にされちゃってるという話はあまり聞かないなあ。舞佐祐理が久弥キャラにされてたのなら、昔目にしたか。

川澄舞と此花ルチアの対比表をまとめてみた。(転記)

 

荒野草途伸ルート>>荒野草途伸Key系ページ>>川澄舞と此花ルチアの対比表をまとめてみた。

川澄舞と此花ルチアの対比表をまとめてみた。

 川澄舞と此花ルチアがそっくりさん、というのはRewrite発売前から言われていた(らしい)。
 「川澄舞 此花ルチア」でググってみれば、似ているという意見でいっぱいである。
 では、具体的にどれくらい似ているのだろうか。
 「まとめる」とあったBLOGでも結局まとめられてないみたいなので、無いなら自分で作ろうの発想で、比較表を作ってみた。
川澄舞 此花ルチア 共通性 備考
基本設定 正式名 (同) 旭春花
キャラクターデザイン 樋上いたる 樋上いたる
声優 田村ゆかり 朝樹りさ
外観・携行物 髪型 ポニテ ポニテ
髪色
身長 167Cm 167Cm
体重 49Kg 52Kg
バスト 89Cm 93Cm
ウェスト 58Cm 59Cm
ヒップ 86Cm 86Cm
武器 鈍器(剣)
他携行物 消火器・金ダライ
特殊能力 (そのものとして) 有り 有り
遠隔攻撃 微粒子切断(かまいたち) 高周波振動 「遠隔攻撃可能」という意味では、共通と言える。
毒ガス
治癒能力 有り 無し
魔物生成能力 有り 無し
社会性 対人関係 無頓着 訳ありで敢えて避けている
犯罪歴 有り(舞踏会乱闘事件) 有り(住居損壊)
成績 留年・退学にならない程度には高い 委員長としての威厳を保てる程度には高い
性格・人間関係 基本性格 内罰的 内罰的
対話能力 無口 説教癖
外観・美容 無頓着 よく知らない ほぼ同一としてもいいかもしれないが、、、、
友人 お嬢様 貧乏性の資産家
対異性 ヤンデレ ツンデレ
性的傾向 実はエロい 実はエロい
 この表を見ると、まず外観設定はかなり被っている事がわかる。特に、身長がぴったり同じ167Cmという点は、個人的には正直「ここまでとは…」と驚きである。
 これはもう、Key側が設計段階で既に「此花ルチアは川澄舞の互換キャラ」という前提で設定を作っていた、と考えた方が良いだろう。
 次に、特殊能力。単純に表を見ると共通性が薄いようにも見えてしまうが、そもそも「特殊能力を使えるキャラ」というの自体、Key作品には(Rewriteを除いて)少ない事を考えると、単純にひとくくりで「同一」と判断してしまってもいい気もする。
 そして社会性。これは逆に、あまり共通性がない。こういう要素はシナリオ展開とも密接に絡んでくる部分でもあり、作品の方向性が全然違うKanonとRewriteでは、違って当然と言えるだろう。
 ただ、唯一共通性があるのが「犯罪歴の有無」というのが、何とも…。(但し舞は、乱入してきた魔物に正当防衛を行使しただけで、犯罪には当たらないとも言えるが。)
 最後に、性格・人間関係。この2つをひとくくりのジャンルにしてしまって良いものか、表を作ってから気づいたが、とりあえずこのままにするとして。これに関しては、割と共通性が高い。特に、性格絡みの部分は共通性が高い。人間関係は本人以外のキャラ設定も絡んでくるので、共通性がないと言ってもそれをキャラかぶりを否定する根拠としては弱い(項目設定しておいてなんだが)。
 要するに、舞とルチアは性格もよく似ている、という事だ。
 ということで。結論をまとめると、「純粋にキャラ自身に絡む部分では、川澄舞と此花ルチアはほぼ完璧にキャラが被っている」ということである。
 まあ、前述のようにKey自身がそのようにキャラ設計したのなら、これは当たり前の話なのだが。
 ということで。
 ちなみに、鳳ちはやはONEの七瀬留美と似ていると言われているらしい。…これは、キャラが似ていると言うよりは、主人公との関係・接し方が似ている、という事なので、舞とルチアの類似性とはまた話が違うと個人的には思うのだけど。

Kanonむかしばなし~金の斧

Kanon昔話outer

金の斧
あゆ「…ボク…ここにいたらいけないの…?」
あゆ「…いたら…いけない人間なの…?」

あゆ「そんなの嘘だよっ!」
祐一「おい、あゆっ!」

 

あゆ「…大したことじゃないよ…」

あゆ「…昔のこと…思い出しただけだから…」
祐一「昔のこと…?」
あゆ「…ボク…探さないと…」
祐一「おいっ! あゆっ!」

鞄を置いたまま、あゆが走り出す。
俺は、慌てて鞄を拾い上げる。
そして…。
俺は、鞄を持ったまま、すぐにあゆの後を追いかけた。
森の中を、来た時とは逆の方向に走る。
すでに、陽はほとんど隠れて、鬱蒼とした森の中は闇に等しかった。
そんな中で、あゆの小さな背中を追って、ひたすら走る。
薄暗い道と、突き出した枝が行く手を遮る。
それでも、あゆの背中を見失わないように、ただ必死で走った。
今、あゆを見失ってしまうと、二度と会えないような…そんな気がしたからだ。
祐一「……」
どれくらい走ったかも分からない…。

ふっと、あゆの姿が目の前から消えた。
『ぼしゃあん』という音と主に。

祐一「?!」

俺が駆け寄ると、そこには小さいが深そうな泉があった。

祐一「あ、あゆ・・・・!」

事態を悟った俺は、泉に向かってあゆの名を呼び続けた。
だが、あゆは浮かんでこなかった。

へなへなと、泉の縁で座り込む俺。

だがそのとき、泉から一筋の光が立ち上り、美しい女神様が現れた。

女神様「あなたが落としたのは、金のあゆですか?それとも、銀のあゆですか?」

祐一「は?!」

女神様「あなたが落としたのは、金のあゆですか?それとも、銀のあゆですか?」

祐一「金銀?ポケモン?」

女神様「どっちですか?」

祐一「俺はどっちも落としてない。うぐぅなあゆが勝手に落ちたんだ。」

女神様「あなたは大変正直な方ですねーっ。。ご褒美に、この銀のあゆをあげましょう。」

祐一「はあ・・・・。」

女神様「五つ集めるとオモチャのカンヅメがもらえます。」

祐一「なんだそれ」

女神様「それでは、さようなら。」

祐一「お、おい、ちょっとまって!うぐぅなあゆは返してくれないのかよ!」

女神様「・・・・訪問販売ではないので、クーリングオフには応じられません。」

祐一「なんじゃそりゃ!」

女神様「それでは、さようなら~」

そう言い残して、女神は泉の中へ消えていった。


銀のあゆを背負った祐一が帰宅しました。

名雪「大きなおでん種。」

祐一「こんな時に冗談はよしてくれ・・・」

名雪「何があったの?」

祐一は事情を説明しました。

名雪「そうだったんだ・・・。」

祐一「なあ、名雪、俺は、俺はどうすればいいんだ・・・?」

名雪「う~ん・・・・わかんないけど・・・あゆちゃんは、今頃どうしてるんだろうね。」

祐一「え?」

名雪「季節が季節だし・・・きっと泉のそこで寒がってるんだろうね・・・」

祐一「・・・そうか!よしあゆ、待ってろ!」

そう叫ぶと祐一は、自分の部屋にかけて行き、毛布を取り出しました。

祐一「もう一度行って来る!」

名雪「いってらっしゃ~い」


再び泉までやってきた祐一。

祐一「さあ、あゆ!寒かったろう!毛布を持ってきたぞ!受け取れ!」

そういって毛布を高々とかざし、泉の中に放り込もうとしました。

しかしいきなり毛布を持ち上げたりしたので、祐一はバランスを崩してしまいました。
そしてよろけたまま、そのまま泉の中へ

ぼっちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

泉から一筋の光が立ち上り、美しい女神様が現れました。

女神様「あなたが落としたのは、金の祐一ですか?それとも・・・・・・・・」

きょろきょろ

女神様「はえ~、誰もいません・・・・・」

女神様は困ってしまいました。

 

そこへ、自称善良な一市民の北川君が接近してきました。

北川「♪ゴリラのパンツはにこにこパンツ♪」

 

女神様「丁度いいところに。とりあえず、あの人でいいですね。」

女神様は再び泉の中に戻ってしまいました。

 

そして、北川君が泉の側にさしかかったところで、再び女神様は現れました。

女神様「あなたが落としたのは金の祐一ですか?それとも、銀の祐一ですか?」

北川「おおお!泉の中から光の美女があ!あああああああ」

最後の「あああああああ」というのは、妄想に苦しむ声です。
かなり溜まってたみたいですね。

女神様「あなたが落としたのは金の祐一ですか?それとも、銀の祐一ですか?」

北川「あああ、漏れそう・・・・」

女神様「・・・話をちゃんと聞いてください!」

北川「おおう! (きりっ) 何ですか、お嬢さん。」

女神様「あなたが落としたのは金の祐一ですか?それとも、銀の祐一ですか?」

北川「祐一を?お嬢さん、僕は男を口説き落とすほど飢えてませんぜ。」

女神様「あなたは大変正直な方ですねーっ。。ご褒美に、金の祐一をあげましょう。」

北川「いらない。」

女神様「え?」

北川「何が悲しくて、男の銅像なんか貰わなきゃならないんだ。」

女神様「銅像じゃなくて金像です・・・・」

北川「金でもプラチナでも要らん。持って帰ってくれ。」

女神様「そんな・・・何か貰ってくれないと、佐祐理が叱られちゃうんですけど・・・」

北川「じゃあプレステ2くれ。」

女神様「プレステ2は、あいにく在庫がないんです。」

北川「ちっ、ここもかい。」

女神様「あの、そういうわけで金像・・・」

北川「いらねえってば、男の像なんか。女の子なら考えてもいいけど。」

女神様「女の子ですか・・・・わかりました。ちょっと待っててください。」

そういって女神さまは、泉の中に消え行きました。

 

そして、北川君が鼻毛を6本抜いた頃、女神様があゆを抱いて現れました。

女神様「どうぞ。」

北川「うおおぉぉ!女の子だあ!しかも本物の女の子だあ!いいの、ほんとにこれ貰っちゃっていいのおぉ?!ってあんたあゆじゃん」

あゆ「うぐぅ・・・そういうキミは北川君・・・・」

北川「何やってんだこんなとこで。」

あゆ「よくわからないんだよ・・・」

女神様「それでかまいませんね?それじゃ、失礼しまーす。」

女神様は泉の中に消えてしまいました。

あゆ「・・・ボク、帰らなきゃ。」

北川「あ、じゃあ送っていくよ。」


あゆ「ただいまっ」

北川「ただいま~ってここ俺の家じゃなかった。」

名雪「おかえりなさい。・・・あれ、祐一は?」

北川「祐一?誰だそれは。」

名雪「誰って・・・。あゆちゃん、祐一と一緒じゃなかったの?」

あゆ「祐一・・・・ゆーいち・・・誰だっけ・・・」

名雪「どうしたの二人とも。祐一忘れちゃったの?」

北川「だから誰だそれは。」

名雪「だから、祐一は・・・あれ?」

北川「どうしたんだ?寝ぼけてるのか?」

名雪「そんなこと無いよ・・・たぶん。」

あゆ「それよりボク、おなか空いたよ。」

北川「よし、このビックリマンチョコ2000シール抜き(¥60-α)をやろう。」

あゆ「うぐぅ、溶けてる」

名雪「二人とも仲がいいね・・・」

北川「はっはっは、何しろあゆは、俺が貰ったモノだからな。」

あゆ「うぐぅ、ボクモノじゃないよ・・・」


 

泉の底。

祐一「わ~~~!くらいよせまいよこわいよ~~~~!」

女神様「あははーっ、前からこんなペットが欲しかったんですよーっ。泉の底に一人で居るのって、寂しくってーっ。」

祐一「タスケテエ!ここから出してクレエ!」

 

こうして祐一は、泉の底で一生暮らしましたとさ。

 

 

めでたしめでたし