水瀬名雪様

水瀬名雪様。
 伝えたいことがあります。
 貴女に初めて会った時。貴女はじっと目を閉じていました。ただ眠っているだけ、それに気づいたときそれが却って愛らしく思えて、貴女のことを見続けていました。
 それ以来貴女の姿を目で追い続けていました。朝、髪をなびかせ校舎に駆け込んでくる姿。夕刻、結った髪で部活の友人に声をかける姿。昼食時、席が無くて戸惑っている姿。何度か席が一緒になったこともありました。最初の一回こそ偶然でしたが、その後は、貴女の友人に頼んで、来てもらっていたのです。
 その友人から聞きました。ずっと想いつづけた方に失恋したということを。同じ恋をするものとしてお察しします。そして不躾で申し訳ないのですが、私では変わりになれないでしょうか

「いや、やっぱりこの下りはまずいかな」
「北川君、何書いてるの?」
 水瀬の声。オレは、慌てて手紙を隠した。
「あっ。いや、これはその。」
「あ、見られたらまずいものだった? ごめんね、一生懸命何書いてるのかなと」
「いや、いいんだ。後で水瀬には見てもらいたかっしな。」
「そうなんだ。じゃあ、後で見せてね。」
 添削ー、添削ー、と歌いながら去る水瀬。
 それを見ながら、オレは呟いた。
「必ず、見せるからさ・・・」

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※執筆時期不明 「Campus Kanon」続編

10%の思春期

 空は、晴れ渡っていた。この場面にふさわしくない。天はオレに味方しない。そう宣言しているかのように。それでもオレは、腕を振り上げた。喉の奥から、咆吼が響き渡る。叫び声は腕が風を切る音とともに、鈍い衝撃音へと集約されていった。
 コンクリートの床の上に、たたきつけられて転がる相沢の姿があった。

10%の思春期 is staring….

 相沢がオレを睨んでいる。何をするんだ、俺にはこんな仕打ちをされるいわれはない。そう言いたげに。だが、奴の口は開こうとはしない。口元から血が流れ出している、それが理由ではなく。きっとオレの口から言葉が出るのを待っているから。
 オレの口は、言葉を発しない。何も言いたくない。あるのはただ憎しみだけで、それは謂われのない憎しみ、実体の無いもの。それを意味ありげな言葉にすることは、オレにはできない。
 目に差し込む光。救いを求めるかのように、天を仰いだ。脳裏に浮かぶ、彼女の言葉。
「ねえ きたがわくん」

「北川君の席って、暖かそうだね」
「あ? ああ、まあそうだな。」
「よく眠れそう。うらやましいな。」
「水瀬はどこでだって眠れるだろ」
「うん。でも、やっぱり気持ちのいいところで寝たいとは思うよ。」
「お前さんさあ。念のために言うと、学校は寝るところじゃないぞ」
「うーっ・・。でもでも、北川君だって寝てるじゃない」
「な、何で知ってるんだよ」
「わかるよ。だって、北川君って、わたしと同じ感じがするから」
「ハァ?」
「たぶん。同じ事、してると思って。」
「まあ、・・・寝てるのは事実だけどな」
「うんっ。だからね、今だけ席代わって。いいでしょ?」
「あ、ああ・・・」
「暖かい・・・くー。」
「・・・・・・。」

 額に落ちる、水滴の感覚。涙ではない、天から降り注ぐ、雨粒の先魁。
「なんだよ、今頃になってオレの味方してくれるのかよ・・・。」
 降り始める雨。目の前には、まだ転がったままの相沢。明るい友情とはほど遠い場面が、まだ続いている。
「どうせ味方するなら、もっと早く・・・転がってるのが、オレの方で良かったからよっ!」
 出る言葉以外に心はない。心以外の何かが体を動かし、左足を思い切り振り上げる。目標は相沢の脇腹。振り下ろす途中でよろめき、体全体ががくりと落ち込んでいく。痛み。
「ちっ、こんな時に側溝にはまるなんて・・所詮これが、オレにお似合いの姿だってのかよっ・・・!」
 かっこいいヒーローになんてなれやしない。ちょっと変わったことが好きな、でも普通以上になれないオレは
「でも きたがわくん いいひと」

「そ、そうかな?」
「うんっ。わたしは、そう思うよ。」
「まいったなあ、これでも結構ワルぶってるつもりなんだぜ、お嬢さぁん。」
「うーん・・・でも、わたしの頼み、いろいろときいてくれるし、話ちゃんと聞いてくれるから。わたしにとっては、すごくいい人。」
「はは、まいったなあ・・・。でも、それぐらい他の奴だってするだろ?」
「ん・・・そんなことないよ。北川君と、香里ぐらい、だよ。」
「そうか・・・」
「なぁに? あたしが、なんですって?」
「わ、香里。ううん、なんでもないよ。」
「ほんとかしらあ? あんたたち二人の会話って怪しいのよねえ。ほらほら素直に白状した方がいいわよぉ」
「ふぉんふぉんとになんでもにゃいよ。ひたいよかおり、わはひむひふ。」
「はははははっ、・・・・・は。いい人、か」

「いい人が・・・こんな事しねえよ・・・・」
 側溝に半身を突っ込んだまま、オレは両手を路上に広げて空を見上げていた。感覚は、過去の思い出に支配されてしまっている。相沢が起きあがったことを感じ取っても、体は動こうとしない。
 衝撃。体が引き上げられ、頭を少しだけ揺さぶられる、揺り起こされたような感覚。相沢の右手が、オレの胸ぐらをつかんでいた。
「なんのつもりだよ。」
 相沢の顔が、間近に見える。相沢祐一。相沢祐一。そう、これが、相沢祐一。オレはコイツを殴った。オレが殴った相手。オレが憎い相手。憎むべき相手。殴るべき相手。相沢祐一。
 睫毛に垂れた滴が視界を遮る。言葉が甦る。

「ゆういちが くるの 。」

 見えない視界の向こうから聞こえてくる脳裏の言葉。

「ゆういちは わたしと くらすの 。」

「誰だよ、それ。」
「祐一だよ。わたしのいとこの。前にも話したじゃない。」
「あたしは聞いたわよ。」
「ああ・・・ああ。オレも聞いた。」
「7年ぶりなんだよ。」
「男・・・だよな、祐一って・・・」
「うん。男の子」
「女だったらびっくり。」
「男、か・・・。いい男か?」
「う~ん、ずっと会ってないから見た目はわからないけど、でも・・・」
「いい男だといいわね。」
「・・・うんっ。」

 そのとき、気づくべきだったんだ。いや、違う。本当は気づいていた。
 水瀬が心を満たしたい奴はそいつ、祐一なんだと。水瀬にとって、オレはただの友達、寂しい時に心を埋めてくれる、友達。欠片でしかないんだ。
 そしてオレは。その現実を受け入れてしまった。自分が欠片であることに気付いてしまったから。欠片は、捨てられてしまうかもしれないから。捨てられない欠片であり続けるしか、無かったから。水瀬への思いは、無くしたくなかったから。

「ゆういちと ともだちに なってね」

 ほんの少しでいいと思った。水瀬のそばにいられればいいと思った。祐一の、相沢の友達になっておけば、水瀬が喜んでくれると思った、オレへの好意が少しでも上がると思った。昔オレのいた場所がどんどん相沢に占められていっても、水瀬の目線の先が相沢ばかりになっていっても。ほんの一瞬だけ、水瀬がオレに微笑みかけてくれるだけで、オレは満足してしまっていた。そして、相沢の、水瀬に気がないような言葉を聞いて、オレは希望を持ってしまった。持ち続けてしまった。

「いっそ、ずっとあのままならよかったんだよ・・・」

 そうすれば、憎しみも怒りも無かった。ただ笑っていられた。恥ずかしげも無く、一生の友達と言い合っていられたかもしれない。

「いっそ、オレに言ってくれれば良かったんだよ・・・」
 
 そうすれば、憎しみも怒りもなかった。笑って祝福することも、出来たかもしれない。恥ずかしげも無く、最後の勝負と拳で友情を語ることも、出来たかもしれない。

 でも。相沢は何も言わなかった。水瀬も、何も言わなかった。
 そしてオレは、聞いてしまった。片隅に女子が集まった中で、水瀬が語るのを。

「・・・うん 痛かったよ   でも 祐一は優しくしてくれたから   すごく幸せだった・・・」

 血の気が引いてゆく。言葉が体の筋を走ってゆく。寒い。何もできない。瞼だけは痙攣して。後は何も動かない。ただ座って虚空を見つめる人形のように。感覚は白。流れる、白。
 感情が戻ったとき、水瀬が憎いと思った。でも、それは一瞬で消えた。水瀬は、名雪は、オレが決して憎んではいけない存在だから。理屈抜きで、感情のほんの一割でも、そう思ってはいけない存在。

だから、憎いのは、

「お前だッ!」

オレは、現実の視界のすぐ前にあった、そいつの顔を思いっきり殴った。
これ以上、過去は無い。あるのは今、今のオレの感情のみ。

「オレはずっと水瀬が好きだった!水瀬は相沢が好きだった!わかっていた!だからオレは少しでいいと思った!今は少しでも、いつかは全てが手にはいると思っていた!ああ、確かに勘違いさ!身の程知らずの勝手な思いこみさ!吐き気のするような自惚れだよ!だけどな・・・」

 オレは再び、相沢の胸ぐらを掴んだ。

「今のてめえは、もっと吐き気をもよおさせる存在なんだよっ!」

 左手を振り上げた。その手を制止する声は、右側から聞こえた。
「やめてっ! やめてよ北川くんっ・・!」
 振り返る。左手は無意識のうちに下がっていく。泣きながら駆けてくる水瀬と、無表情の美坂が視界に入った。
 水瀬は、駆け寄ってくるとすぐに相沢を抱きよせ、泣きながら喚いていた。
「どうして! どうして二人がこんな、こんな事しないといけないんだよ!」

 もはや感情は無い。最後の感情までをも奪われてしまった。それが残酷だと感じる心すら無い。
 水瀬はまだ泣いていた。後ろから、美坂がゆっくりと歩み寄ってきていた。

「美坂・・・お前が、連れてきたのか?」
「ええ。」
「こんな場面見せて・・・水瀬が喜ぶとでも思ったのかよ・・・」
「思わないわ。」
 その顔は、無表情のままだった。視線の先には、抱き合う二人の姿があった。
「だったら、何で連れてきたりしたんだよ・・・!」
「あたし・・・あたし、そんなできのいい女じゃないもの・・・」
 その視線の先は、まだ相沢と水瀬がいた。だが、美坂の瞳には、何も映ってはいなかった。

 気がつくと、雨はやんでいた。

「名雪ぃ、それに相沢君。今日は、一緒にお昼ご飯食べましょうねぇ」
 翌日の、昼になっていた。
「今日も、だろ? いつも一緒じゃないか。」
「うふふふ。でも、今日はね、ちょぉっと違うの。ほら、二人のためにお赤飯作ってきてあげたのよ。」
「お赤飯・・・・」
「オレはゴマ塩持ってきてやったぜ。」
「いや、待て・・・お赤飯は、わかる。何となく俺達への嫌みだということが。しかし、ゴマ塩ってなんだ?なんの意味があるんだ?」
「意味などあるか。赤飯にはゴマ塩が付き物だろう。」
「・・・それだけかあ?」
「疑り深い奴だな。」
「いやしかし」
「いいじゃない。折角北川君が持ってきてくれたんだから。ねっ」
 そう言って、水瀬は笑った。笑顔。オレは、それに顔を背けそうになるのを必死で堪えていた。
 美坂は、笑っている、相沢も、笑っている。だから、オレも笑おう。それでいいじゃないか。こいつらはいい奴だ。一緒にいて楽しい奴らだ。他に何を、これ以上何を、望むというんだ。
 否、一つだけ。一つだけ望むことは。心の奥深く、重りをつけて沈めたはずの10%の感情が、今この場で浮かび上がってこないように。ただそれを願って。
「食べよっ」

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※執筆時期不明 「Campus Kanon」続編

北名-無題

「行ってきます」
それだけ言って、わたしは外に出た。特に行くところもない、
ただの散歩。だって今日は天気がいいからね。
祐一は、あゆちゃんとどこかに出かけていった。どこへ行ったのかは
わからない。祐一は、当てもない二人の逃避行だなんて言って、
あゆちゃんが本気にしてたけど。

公園で、ハトに餌をやる北川君を見つけた。髪型ですぐにわかった。
しょうがねえなあとか言いながら餌をやっている姿が妙にしっくり
きていて、わたしはつい笑ってしまった。
「あっ」
笑い声で振り返った北川君は、それがわたしだと気づいてひどく
とまどっていた。

「水瀬は、何やってるんだ?」
北川君は隣のわたしにそう訊いてきた。公園のベンチに腰掛けた二人。
日差しも風も気持ちいいけど、ベンチだけは少し冷たい。
「ただの散歩。北川君は? ハトの餌やり?」
「いや、決してそういうわけではないんだが・・・」
北川君は、何か言いづらいことがあるように、紙袋をいじり回していた。
餌ではなく自分が食べるつもりだったのかもしれない。でもそれは、
あえて訊かないことにした。
「相沢は? 家か?」
半ばごまかすように、北川君は訊いてきた。
「ううん。あゆちゃんとデート。」
「そ、そうか。」
それを聞いた北川君は、また何か気まずそうな表情をした。
「すまん。」
「え、なにが。」
「いやその。水瀬の前で、二人のことを持ち出したのはまずいかなと。」
「・・・・。」
「あ、美坂から聞いたんだ。水瀬もその、7年も前から、相沢のこと」

「うん、そうだね。」
わたしはそう言って立ち上がった。少しだけ、光がまぶしい。
「でも、ふられちゃったんだし。祐一にも彼女出来たし。
 それでも想い続けてるなんて、わたし、そんな病んだ女じゃないよ?」
念を押すように、振り返って北川君の顔を見た。北川君は、呆然とした
表情でわたしの顔を見ていた。
「? どうしたの?」
わたしの言葉で、北川君は我に返ったようだった。横を向いて、まあなんだ
とかぶつぶつ言っていた。
クックックッと鳴きながら、ハトが1羽近づいてきた。それを見て、北川君が
さも思い出したように言った。
「ああ、そうだ、オレ、ハトに朝飯食われちまったから、もう帰らないと」
言葉として少しおかしい気がしたけど、気にしないことにした。
立ち上がった北川君に、わたしは声をかけた。
「また、今度。」
「おう、また今度な。」
そう言って北川君は駆けていった。それを見送ってから、わたしも家路についた。
もしかしたら明日あたりいいことがあるかな。そんなことを思った、
春の午後の一時だった。

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※執筆時期不明 「Campus Kanon」続編

名雪の18禁の書きかけ?

 名雪と付き合って7年、ようやく二人が一つになる日が来た。ベッドの上に横たわる名雪。その上にオレは、体重をかけないように気遣いながら覆い被さった。胸一杯に息を吸い込む。清楚で甘い、そんなことを感じさせる名雪のにおいがした。
 オレは僅かに身を起こし、名雪の服、一番上のボタンに手をかけた。名雪はそれに応えるようににっこりと微笑み、同じようにオレの服のボタンに手をやった。二人一緒に、同じように互いの服を脱がせ始める。その行為は、これからしようというそれへの期待をいやが応にも高めてくれる。心臓が高鳴り、体中に血が周り、陰茎が大きく膨らんでいくのが感じ取れた。
 名雪の服のボタンはもう、殆どはずされていた。隙間から白い下着が見える。これまで雑誌かただの偶然でしか見ることの無かったそれ。しかも一番好きな名雪のブラジャーだ。それを今なんらの罪悪感を抱くことも無く、オレは見ることを許されているのだ。そう思うともうたまらなかった。服を払いのけ、右手を名雪のふくらみに乗せ、もう片方のふくらみに顔をうずめた。むしゃぶりつき、大きく息を吸い込んだ。
「んっ・・・だめだよ、そんなにがっついたら。」

 名雪の言葉に、我に返る。とんでもないことをしたのかもしれない、という罪悪感が襲ってきた。名雪が怒っているのではないか、そう思っておそるおそる名雪の顔を窺う。怒ってはいないようだった。もうっ、とでも言いたげな表情を一瞬見せた後、いたずらっぽく笑みを見せて、そしてオレに触れていた手をごそごそとまた動かし始めた。上半身の服が脱ぎ取られ、そしてズボンと下着も名雪の手によってはぎ取られてしまった。真っ裸にされたオレ。それを見て、名雪は笑った。

「ふふ。かわいい。」
 その言葉に、オレの顔はかぁっと赤くなった。屈辱的な気がした。同い年とはいえオレの方が8ヶ月も早く生まれているし、それに今はオレの方が体位が上なのに。と、そこでオレは、名雪はまだ全部脱いでいないのに、自分はもう真っ裸にされていることに気づいた。
「オ、オレ・・・ごめん、先に裸になっちゃって。」
「わ、びっくり。わたし、まだ服着てたんだ。」
 そういうと名雪は、少しだけ視線をずらした。もう自分は裸にされていたつもりだったのだろうか。オレは自分の顔がゆるむのを感じながら、名雪の残りの服を丁寧に脱がせていった。

 子供のような前戯を少ししただけで、二人とも顔が紅潮していた。オレはといえば、もう早く入れたくてたまらなくなっていた。
「名雪・・・もう、・・・いいかな?」
「う、うん・・・。潤の、したいようにしていいよ。」
 その言葉にオレは頷き、自分の陰茎をそっと名雪の股の間に差し入れた。濡れている。そしてそれは、思いの外すんなりと名雪の中に入っていった。始めて感じる、女の子の暖かさ。名雪に受け入れて貰っている、そんな感覚に俺は思わず大きなため息を漏らした。そして名雪も、んっと軽い吐息を漏らした。痛がる様子はなかった。
 そこでオレは気づいた。そうか、初めてではないのか、と。相手は誰だろうか。やっぱり、相沢なんだろうか。
 そう考えると、急にいろんな感情がわき起こってきた。悲しみ。嫉妬心。相手の男に対する憎悪。そしてそんなことを考える自分への嫌悪。快感を楽しむどころではなくなっていた。大好きな人と結ばれている、今こんな時に。そんな自分が情けなくて、思わず涙が出た。
「どうしたの、潤・・・?」
 名雪がそれに、気づいてしまった。そっと、優しくオレの目頭に指を添えてくれる。そして、はっと気がついたように言った。
「そ、そうか。潤、初めてだったんだね。」
 その言葉に、よけい心がずきりと痛む。だが名雪の次の言葉は、オレが予想していたものとは違った。
「そうだよね。初めてだったら、痛いよね。ごめんね、気づいてあげられなくて。言ってくれれば良かったのに。」
 確かに痛い。だがそれは心の方であって、名雪が考えているのとは違う。だが、それを言い出す勇気はなかった。

「大丈夫。最初は痛いかもしれないけど、ゆっくりやっていけばそのうち良くなるから。ね。だから泣かないで。」
「あ、ああ・・・。」
「少しづつでいいから動かしてみて。なれるまではゆっくり。ほら。1、2、1、2。」
 名雪が号令をかけてくれる。オレは仕方なく、それに併せて動かし始めた。気持ちいい。間違いなく気持ちいい。だが、何かが違う。そんな気持ちを振り切れなかった。そんなオレの心境も知らず、名雪は一生懸命語りかけながら、オレの頭に手を回し、そっとなで始めてくれた。それは、今下半身で感じている快感よりもずっと心地よく思えた。頭の中が真っ白に近くなっていく。オレは夢中で腰を動かし始めた。
「そう、もう大丈夫みたいだね、うん、ん、んっんっ・・・」
 名雪自身も感じ始めたのだろうか、言葉よりも嗚咽の方が多くなっていった。そして名雪の滑らかな足がオレの腰に、太ももにとゆっくりと這っていく。全身で名雪を感じる。たまらなく気持ちいい。耐えられない。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
 オレは思わず、叫びだしていた。
「かわいいよおぉ! 気持ちいいよおぉ! 大好きだよおぉ! なゆちゃあぁん!」
「潤っ、潤っ・・・!」
 名雪も必死でオレにしがみつき、体を動かしてくる。二人の間を阻むものなど何もない、あるのはただ互いから得る快楽。
 そしてそれが頂点に達する感覚を確かに感じとり、オレは果てた。そしてそのまま、名雪の体の上にどさりと倒れ込んでしまった。

「潤・・・?」
 オレの名を呼ぶ名雪の声に、ほんの一瞬だけ、気を失っていたことに気づいた。
「ごめん、オレ、あんまり気持ちよくて、一瞬だけ気を・・・」
「ううん。わたしも、だよ。」
 そう言いながら名雪は、とろんとした目でオレを見つめている。
「わたしも、眠くなっちゃった・・・。このまま寝ていいかな・・・?」
「ああ。オレはずっと、そばにいるから。」
 そして二人は、抱き合ったそのままで、しばしの眠りについた。

エム

わたしの、お母さん。
美人で、背が高くて、かっこいい。
 すぐ泣いちゃうところがわたしに似てるけど、本当はとっても強いんだって、お父さんが言っていた。
「本当は、お父さんの方がもっと強いんだけどな」
「・・・嘘ばっかり。」
 お父さんが冗談を言うとき、お母さんはいつも冷たい。ときどき、叩いたりもする。そんなときお父さんは反撃するのだけど、いつも負けてしまう。やっぱり、お母さんの方が強い。
 でも、二人とも悲しそうな顔はしていない。とても楽しそうだ。二人だけで、楽しいことをしている。そう思うと、わたしは少しさみしくなる。さみしくなって、おかあさんをまねて、お父さんに殴りかかったりする。お父さんはすぐ負けてくれて、お母さんは笑ってる。だからわたしも、笑ってる。でも本当は、少しさみしい。
 二人の時とは、ちがうから。

 ときどき。こうしてひどく、さみしくなる・・・・・

「舞ちゃん先生!」
 呼ばれて、声のした方に振り返る。一人の生徒が駆け寄ってきていた。
「先生、今日もうあがりですか?」
「あがり・・・?」
「仕事、まだ残ってるんですか?」
「・・・いや。無い。」
「だったら、これから一緒に買い物に行きません? 先生の車で。」
「買い物?」
「日曜日の、観察会の買い出しですよ。あたし、バードウォッチングって行ったこと無いから、何持っていけばいいのかよくわからなくて。」
「・・・双眼鏡と、お弁当があればいい。余計な物はいらない。」
「え、でも。やっぱり、双眼鏡も選んだ方がいいだろうし。・・一緒に行ってもらえませんか?」
 ・・・・。
「わかった。一度職員室に戻るから、車の前で待ってて。」
「はーいっ!」
 彼女も自分の荷物があるのだろう、教室の方に駆けだしていった。私はそのまま、目の前まで来ていた職員室の中に入っていった。
「お、舞ちゃん先生。今日は早めにお帰りなんですか?」
 外の会話を聞いていたらしい男性教師が、からかうように私に話しかけてくる。
「・・・舞ちゃんと呼ばないで。」
「だって生徒達は、舞ちゃん舞ちゃんと呼んでるじゃないですか」
「私のクラスの生徒だけ。他の人に許した覚えはない。」

 私は、この春から高校の教師をしている。新任で、いきなり1年生のクラスを任された。確かに本採用前は、数年間臨時教師をやったりはしていた。でも、担任というのは初めての経験だった。
 始業式の前夜。私は、クラスの生徒達に受け入れられるか、とても不安になっていた。その不安を、夫に打ち明けてみた。私たちは8年前に結婚をしていて、既に娘も一人いた。
「祐一、私、生徒達に受け入れられるかしら。正直に言って、かなり不安・・・」
 私は夫のことを、祐一と呼んでいた。祐一は自分のことを「まいダーリン」と呼ぶよう強く希望していたが、私は時々つきあい程度にそう呼んであげるに留めていた。
 そんな夫の言うことなのだから、まともに聞くべきではなかったのかもしれない。でも私は、そのとき祐一がくれた助言を、翌日そのまま実行してしまった。
「・・・私の名前は、川澄舞。でも、舞ちゃんと呼んでもらってかまわない・・・・」
 結果私は、クラスの生徒の三分の二からは舞先生、残り三分の一からは舞ちゃん先生と呼ばれるようになった。誰も、川澄先生とは呼んでくれなかった。

「他の生徒達だって、そう呼んでますよ。彼らの口に戸は立てられませんからねえ」
 男性教師は、しつこく食い下がってきていた。
「でも、あなたまで真似することはない。」
「・・・は。そうですね。ああ、舞ちゃん、じゃなくて川澄先生はキビシいなあ」
 男性教師は、少し小馬鹿にした感じの入った鼻息を立てて、そのまま机の方に向き直った。私も自分の荷物を取りに自分の席に行き、荷物を取ってそのまま職員室を出て行った。
 歩きながら、またあの日のことを思い出していた。初日からいきなり恥をかいた私は、家に帰ってすぐに、祐一にお仕置きをした。祐一は弁解しながら激しく抵抗したが、そのお仕置きという行為自体に楽しみを感じ始めていた私は、やめようとしなかった。その光景をじっと見る娘の視線に気づくまでは。
「・・・なにをしてたの?」
 私は、すぐに答えられなかった。親として、教育者として、一人前ではないにせよ立派な行為をしていた、とは思えなかった。その説明を口にすることが、娘にとって良くないことであるかのように感じてしまった。だから、何も言えなかった。
「・・・・・・・。」
 娘は、それ以上訊いてくることはなかった。

「舞ちゃん先生の娘さんも、ゆきって言うんですよね?」
 動き出した車の中で、その女生徒、ユキはそう訊いてきた。
「・・・そう。幸。 どうして知っているの?」
「うーんっと、誰かがそう言ってたんですよ。誰だったかなあ、あ、坂井君だったかな」
 坂井というのはおそらく、私が顧問をしている野鳥観察会の坂井だろう。今ここにいるユキと同じ二年生で、野鳥観察会以外、特に私と繋がりがあるわけでもない。それなのに、何故彼がそこまでのことを知っているのか、という疑問は抱いたが、追求しても仕方のなさそうなことなので、忘れることにした。
「ゆきちゃんも、今度の観察会にくるんですよねっ。私、会えるの楽しみなんですよー」
 会ったこともないくせにいきなりちゃん付け呼ばわり。しかも、一体何がそんなに楽しみだというのだろう。私は少し苦笑した。
「・・・そう、来る。ついでに言うと、祐一も来る。」
「祐一って誰ですか?」
 祐一を知らないのかこの娘は。自分だってついで呼ばわりしたくせに、私は憤りを感じてしまっていた。
「祐一は、私の・・・・夫。」
「へえ、そうなんですか。あ、舞ちゃん先生赤くなってる。どうしたんですか?あ、もしかして照れてる。わー、そうなんだ。えー、そんなに祐一さんのことが好きなんだー」
「・・・決して嫌いではない。」
「もー、そんな言い方しちゃってー。素直に『大好き』って言えばいいじゃないですか。ああ、これはもう絶対チェックチェック。」
 ユキは鞄から手帳を取り出して、なにやら書き込みを始めていた。私は、憂鬱さを顔に出すことを隠すことが出来ずにいた。

 よく晴れた、日曜日だった。俺は自宅から駅に向かっていた。
「舞、荷物を持つという行為を体験してみたいとは思わないか?」
「思わない。」
「そうか・・・。」
 俺の手には、野鳥観察用の道具一式と家族3人分の弁当があった。実際のところ野鳥観察の道具などそんなにかさばるものでもないし、3人分の弁当にしたって一人は子供用だから、そこまで重いわけでもない。それでも俺が舞に荷物を託したくなったのは、理不尽だと感じたからだ。手ぶらで身軽な舞が、娘と二人楽しそうに手をつないで歩いている様を、俺一人が荷物を持って追いかける。世間一般的父親はこういう役回りなものなのだと知ってはいるものの、実際その役を引き受けてみれば腹も立つ。俺だってゆきを愛してるいるんだぞ! と、公衆の目もはばからず叫びたくもなる。
「お父さん、にもつ重いの?」
 舞と手をつないだままのゆきが、気遣うようにこちらを見上げてくる。
「いや。決してそんなことはないさ。」
 ここで重いなどと言おうものなら、ゆきは自分が持つといって聞かなくなるだろう。一体誰に似たのか、ゆきにはそういう向こう見ずな優しさがある。それに、実際重いわけではない。むかついただけだ。
「・・・・。」
 舞がじっとこちらをみている。まるで俺の心を見透かそうとしているかのように。
「・・・三人で手をつないで歩きたいというなら、半分持ってもいい。」
 実際、見透かされていた。
「・・・ああ、その通りだ。俺はゆきと手をつないで仲良く歩きたいんだよ。」
「最初から素直にそう言えばいいのに。」
 最初から見透かされていたらしい。

「仲良し親子、はっけーん!」
 駅に着くと、口やかましい少女が待ちかまえていた。
「わー、その人が『祐一』さんですか? ずいぶんアゴが目立ちますね。いえ、悪く言ってるんじゃないですよ、かっこいいって意味ですから、そんな睨まないでください舞ちゃん先生、で、こっちの女の子がゆきちゃん・・・・ですか・・? うそ・・・」
 少女の目は、ゆきに釘付けになっていた。危険だ、俺の第六感が警告を発していた。
「かわいいい・・・」
 そう言いながら少女は、ゆきに接近してきた。怯えたゆきが、舞の後ろに隠れてしがみついている。その姿は、あのやかまし少女ならずとも愛玩心をそそるものがある。実際ゆきは、親の欲目を除いても超がつくほどの美少女なのだ。長い黒髪に、大きなくりっとした瞳。敢えて言うならば、小さいときの舞にそっくりである。
 少女の目は、何かに取り憑かれたように妖しくとろんとしていた。そう、たとえて言うならば、俺のいとこの名雪が猫を発見するとそうなったように。そうするとこの少女は、猫好きならぬ美少女好きということか。もう少し世間体の悪い言い方をすれば、ロリコンか。ロリコンというのは変わった趣味の男の人、という印象があったが、10代の女性でもロリコンは十分存在しうる、ということに俺はこの時初めて気づかされた。
 俺は決して、ロリコンを否定したいわけではない。大学生の頃には、誘われてやっていたことではあるがロリコン差別に反対する全国運動に加わっていたこともあったくらいだ。だが現実に人の親、それもロリコンが好むような美少女の親になってみると、あのとき狂ったようにロリコンを非難し続ける「親たち」の心情も、わかるような気がする。頼むから娘に手を出さないでくれ、そういう事なのだ。今の俺も、そんな心境だ。
「舞・・・」
 俺は、ゆきをかばっている舞に目配せをした。ゆきは俺が預かるから、とにかくあの変な子を止めてこい。どうせおまえの生徒だろう。
 舞は頷くと、後ろに隠れていたゆきを俺の手に渡した。俺はゆきを受け取ると、両手でしっかりと抱き寄せてやり、事の成り行きを見守っていた。
 やかまし変態少女の前に進みゆく舞。少女の前に立つと舞は、右手を振り上げ、そのまま少女の頭の上に振り下ろした。
「痛い・・・痛いよ、舞ちゃん先生」
「・・・ゆきが怯えてる。あまり変態じみた行為をするな。」
「えーっ! そんなあ、あたしそんな変態みたいな事して無いのにぃ」
 少女が抗議の声を上げている。自分だけは変態ではないという、絶対の自負があったのだろう。そんな自負など持つだけ無意味というものだよ、プライドと同じでね。自分でも訳のわからないせりふを心の中で呟き、これは口に出さないようにしておこうと思いながら、俺は立ち上がった。ゆきは俺の両腕に抱きかかえられていた。
「祐一、この子は竹内由希。私のクラスの生徒で、野鳥観察部員。」
「・・・ユキと呼んでください。」
 舞に叩かれた場所を両手で押さえながら、俺の腕にいるゆきを物欲しそうに見つめている。
「ね、ゆきちゃん。私も、ユキって言うんだよ。」
「ユキ・・・さん?」
「そう。だから私のことはお姉ちゃんって呼んでね。」
 まだあきらめていないらしい。油断は禁物だ。
「他の子達は・・・あそこに固まってるのがそう?」
「はい。たぶん、みんなもう集まってますよ。」
 そう言ってユキが指さした先には、3人程の学生がいた。
「みんなぁ! 舞ちゃん先生来たよぉ!」
「知ってる。」
「さっきから見てた。」
 手を振りながら駆け寄るユキに対して、3人は冷淡だった。
「水野、坂井、島村。全員いる。」
 指さし点呼で部員全員がそろったこあにはとを確認した舞は、満足そうに頷いていた。

「舞ちゃん先生、早く早くー!」
「・・そんなに早く走れない、ゆきがいるし」
 目的地の山に到着して、生徒達、特にユキは大はしゃぎだった。
「それに、そんな大騒ぎをしたら、野鳥が逃げてしまう。」
「あ。そっかー」
 生徒達に指導をする舞。その舞を横目で見ながら、俺はゆきの方を見やった。両手で双眼鏡を持って嬉々としている。言葉には出さないが、これからどんな鳥さんが見れるのかと、心躍らせているのだろう。
 俺は、しゃがみ込んでゆきに目線を合わせ、言った。
「ゆき。鳥さん楽しみだな。」
「うんっ」
「でも、さっきあの女の子が大騒ぎしてたからなあ。鳥さん、この辺にはいなくなっちゃったかもしれないぞ。」
 ゆきの顔がさっと曇る。
「いや、どこにもいなくなったというわけじゃないんだ。どこに行ってしまったのか、ちょっとお母さんに訊いてみようか。」
「うん。」
 ゆきが大きく頷いて同意したのを確認してから、俺は立ち上がってゆきの手を引き、生徒達に説教している舞のところまで行った。
「あー、舞ちゃん先生。御指導中のところ悪いんだが」
 とたんにチョップが飛んでくる。
「・・・舞ちゃん先生と言うな。」
「悪い悪い。舞、説教もいいが、そろそろバードウォッチングの極意というか、秘伝の技というか、そういうのを伝授してくれないか? なにしろ、俺達はバードウォッチングなんて初めてだからさ。」
「私もよく知らない。」
「そうかそうか。って待て、知らないって何だよ。お前は野鳥観察部の顧問だろうが。」
「なり手がないから引き受けただけ。詳しいことまでは知らない。」
「えーっ。舞ちゃん先生偉そうな事言っておきながら、詳しいこと知らないんですかぁ?」
 ユキが素っ頓狂な声を上げる。
「ごめんなさい、川澄先生には私が無理にお願いしたんです。去年まで顧問をしていた先生が、退職されてしまったものですから・・・」
「そうだぞ竹内。この間入ったばかりで事情を知らんのは仕方ないが、失礼だぞ」
 一方は俺に弁解をし、一方はユキをたしなめる。微妙にずれた連係プレーだった。俺に説明をしてきたのは、口調から言って、舞のクラスの生徒ではないだろう。たぶん、2年生で部長だと舞が言っていた、水野という子だ。ユキを冷たい口調でたしなめている男子生徒は、舞のクラスの坂井だろう、男子部員は一人だけといっていたから。すると残り一人が島村か。彼女は周りの様子を気にするでもなく、ただ双眼鏡の中を覗き込んでいた。
 くいくいと、引っ張られる感触。ゆきが俺を見上げながら、服の裾を引っ張っていた。目線が、「ねえまだ?」と訴えかけていた。
「とにかく。鳥がどのあたりにいるのかということを教えてくれないか?」
 俺は、舞と水野両方に問いかけるように言った。
「そうですね。さっきまで鳴き声がしたので、そんなに遠くには行っていないと思いますが。とりあえず、こんな大人数で固まってると鳥たちが警戒しますから。・・・3つにグループ分けしましょうか。」
「あ、あたし舞ちゃん先生と一緒がいいー!」
 その言葉に俺は、思わず苦笑した。

 結局経験のある3人を頭にグループ分けがされ、俺はゆきと一緒に坂井チームに入った。水野チームに入れられたユキは、「舞ちゃん先生と一緒」にならなかったことに、ご不満の様子だった。そしてこの坂井という男は、そのユキに関していたくご立腹の様子だった。
「ねえ。竹内って、ウザいと思いません?」
 そういう乱暴な言葉は、あまりユキの前では吐いて欲しくないな。教育上良くないから。そう思っている矢先に、ゆきが訊いてきた。
「うざいって、なあに?」
「どういう意味かな、坂井君?」
 俺は、言葉を発した張本人である坂井に質問を振った。こういう責任をとるという点においては、俺は相手が子供であろうとも容赦はしない。
「え、いやその・・・つまりなんですか、人として良くない点があると、そんなような意味ですよ。」
「竹内さん、よくないの?」
「えっとまあ・・・僕の目から見れば、そういう事ですね、はい。」
 坂井は動揺しているのか、子供相手に敬語になっていた。最も、元から子供に対しても敬語を使う人間なのかもしれないが。だとしたら、君もちょっとウザいぞ。そう思って俺は、苦笑していた。
 その俺の傍らで、ゆきがぽつりと呟いた。
「竹内さんって・・・さっきのこわいひとだよね?」
「ん・・・」
 突然のゆきの言葉に、俺は何も言えなかった。坂井は、素早く反応した。
「そう、そうなんだよ、えっと、舞先生のお嬢さん」
「ゆきだ。」
「いや・・ゆきというと、どうしても竹内を連想してしまうもので」
 俺とゆきの自己紹介をしたとき、ゆきの名前を聞いたときの彼の顔。俺はそれを思い出しながら、彼の言動に何度目かの苦笑をしていた。
  茂みをかき分ける、音がした。熊かと一瞬ひるみ、思わずゆきを抱き寄せた。
「あーっ、やっぱりゆきちゃん達だー」
 ユキだった。よほど道ならぬ道をかき分けてきたのか、腕に切り傷も見える。
「竹内か・・。わざわざ草むらかき分けて来てんじゃねーよ」
「あー、坂井。あんたさっき、あたしの悪口言ってたでしょー!」
「真実に基づく所感を述べていただけだろ。」
 盛んに言い合いをする二人。これじゃまた、鳥が逃げるな、そう思っていた俺の耳に、ぽつりと呟くゆきの声が聞こえた。
「よくない・・・」
 風が、吹き抜けた、そんな気がした。いや、風ではなく、何かが頭の上を飛んでいるような感覚。そう思った矢先、その何かは頭上から急降下してきた。
「あっ」
「きゃっ!」
 一瞬だった。上から飛んできたそれは、ユキめがけて衝突し、地上に降り立った後すぐさま樹上に飛び上がった。木々を渡り、俺達から少し離れた木の枝で、ようやくそれは動きを止めていた。
「りす・・・か?」
「マリネ、ですね。モモンガやムササビの仲間の。」
 気がつくと、ユキと同行していた島村が傍らに立っていた。
「普通は山奥に住む生き物だから、こんな場所で見かけるとは思いませんでしたけど。」
「いや、それよりも・・・そのマリネってのは、ああいう凶暴で人を襲う生き物なのか?」
 そういって俺は、ユキの方を見やった。うずくまった彼女の腕からは、血が流れ出ていた。そのときに俺は、ようやく手当てしなければという考えに行き着いた。
「いいえ。マリネはおとなしい生き物ですから。人を恐がりこそすれ、あんな風に襲いかかるなんて事は・・・」
 手当の為に駆け寄った俺の背中に、島村はそう答えた。
「じゃあ、なんで・・・」
「ここのマリネは肉食なんですよ、きっとっ!」
 介抱する俺に向かって、ユキはそう笑いながら茶化して見せた。
「そんなわけあるかよ。」
 そう言ってユキを見下ろす坂井。その目の冷たさが印象に残った。

 おかあさんの話では、ユキさんはまたけがをした。学校の中を歩いていたら、吹き矢がとんできてささったのだそうだ。
「つくづく運がないな、あのユキって子は。この間の肉食マリネの件といい。」
「本人はとても、明るいけど。」
 おとうさんとおかあさんは、ユキさんの話でもちきりだった。わたしは、ちょっとふくざつな気分だった。
「ねえ、おかあさん。わたしね---」
 そういって話しかけても、二人とも「ああそうだね」といって、すぐに話を元にもどしてしまった。
 仕方がないから、わたしは一人でごはんを食べた。

 ある日、町でユキさんをみた。うでに包帯を巻いていた。ほかの人と一緒だった。
「ねえ、ユキってここんとこ、ついてないよねー。」
「うーん。ツイテナイというか。何者かに狙われてるってカンジなのよねー」
「なにそれ。」
「何かに取り憑かれてるんじゃない? お祓いでもしてもらったら。」
「やだ。あたし、恋愛の神様以外信じないもんっ」
「なんじゃそりゃ。」
「なーにが恋愛の神様なんだか。舞ちゃん先生べったりで、浮いた話の一つもないくせに。」
「えー、だって。」
「だってじゃないよ。あんた、ちょっと舞ちゃん先生独占しすぎ。そのうち刺されるよ。」
「そうかなあ・・・」
「そうだよ。あんた、よくないよ。」
 よくない・・・
 その言葉は、前にもきいたことがある。ユキさんは、よくないひと。そう思ったとき、体のよこを風が通り抜けていくようなかんじがあった。
「きゃっ!」
「わ、ユキ、どうしたの。急に溝に落ちたりして。」
「わかんない・・・わかんないけど、なんか急に突き飛ばされたような気がして・・」
「あんた、やっぱ呪われてるんじゃない? 絶対誰かの恨み買ってるって。」
「そんなあ。あたし、そんな自覚無いのに・・」
 話は、さいごまできけなかった。わたしはこわくなってその場を逃げ出していた。
 あのときわたしの横を通りすぎたもの。あれがきっと、ユキさんをつきとばしたのだ。そしてどうしてあれがそんなことをしたかというと、それはきっとわたしがそう願ったから。あの森での出来事もそうだった。わたしがユキさんをきらいだと思ったら、ユキさんはどうぶつにおそわれてけがをした。よくわからないけど、わたしがユキさんをきらうと、ユキさんはけがをするのだ。

 ユキさんを、きらわないようにしよう。そう、こころに決めた。

 でも、その決意は長くはつづかなかった。

 その日は、おとうさんとおかあさんと、わたしと三人で、お買い物にいくはずだった。
 でも、いく前になってかかってきた電話が、人数を二人にしてしまった。
「ユキが・・・また襲われたらしい。」
 そういって受話器を置くおかあさんの顔は、とても深刻だった。わたしは、おかあさんは一緒にいけなくなったんだなと、直感した。
 ユキさんのせいで。いっしゅんそう思ったけど、すぐにその考えをふりはらった。そういうことをかんがえては、いけないのだ。
「仕方ないな。ゆき、お父さんと二人で行こうか。」
 そういってお父さんは、わたしの片手をとって歩き出した。もう片方の手が、さびしかった。

「よお、相沢・・・祐一!」
 町を歩いていると、お父さんの名前が呼ばれた。
「誰だ、俺を旧姓でフルネーム呼ばわりするやつは。」
「すまんすまん、つい昔の癖が抜けなくてな。川澄祐一君。」
「だから、フルネーム呼ばわりするなと言ってるんだ。」
「はっはっは、照れるな照れるな」
 このばかなことを言っているかみの立った人は、北川おじさん。おとうさんの、むかしからの友達。さいきんはあまりこなくなったけど、わたしがもう少し小さい頃は、よく家にもきてわたしと遊んでくれた。
 とてもいい人。かなりきらいじゃない。
「おー、ゆきちゃんか。しばらく見ないうちにまた大きくなったなあ。子供の成長は早いからなあ。」
 そういって北川おじさんは、わたしのことを抱き上げた。ちょっとはずかしい。
「しかもまた一段とかわいくなって。なー祐一。オレ、このままゆきちゃんお持ち帰りしちゃってもいいか?」
「何バカな事言ってんだよ。ふざけてないでゆき返せ」
「バカな事じゃないさ。オレ、ゆきちゃん大好きだからなぁー。」
「ったく、何言ってんだか。お前の好きなのは違うゆきちゃんだろうが。」
 ちがうゆきちゃん・・・
 わたしの心の中に、いっしゅんであの人の顔が思い浮かんだ。今日おかあさんをこれなくしちゃった、ユキさんの顔が。
「オイオイ、頼むからそれは言わないでくれよ・・・」
「いーや、言ってやる。お前さっき、フルネーム呼ばわりで俺のこといじめてくれたからな。お返しだ。」
「てめー。そういう事言ってると、ほんとにゆきちゃん持って帰っちゃうぞ。」
 ふたりの言葉が、耳からはいって素通りしていく。わたしの頭の中は、すでにユキさんのことでいっぱいだった。
 気がついたときには、わたしは家についていた。
「お、ゆき、気がついたか。全く心配したぞ、途中から急にぼーっとしちゃって。熱でもあるのかと・・・」
 そうやって心配してくれるおとうさんの声も、まだすっきり入ってこなかった。頭のなかには、さっきまでの変な思いがまだのこっていた。

 おかあさんが帰ってきたのは、夜遅くになってからだった。
「舞・・怪我してるのか?」
「・・・大したこと無い。」
 おかあさんの顔や腕には、かすり傷のようなものがいっぱいついていた。
「大したこと無いったってなあ・・・」
「祐一。」
「ん?」
「まだ、確信は持てないんだけど・・・」
 おかあさんは、座り込みながら一息ついて、続けた。
「魔物が・・・出たのかもしれない。」

「坂井?」
 昼食のおろしそばをすすり込んでいるときに、生活指導の谷口から声をかけられた。ユキを襲った犯人がわかったというのだ。
「まさか。」
 だがそれは、私にとっては少し信じがたい結果だった。犯人は、私のクラスの、野鳥観察部の坂井だというのだ。
 確かに、坂井はユキを疎んじている。多少の嫌がらせくらいしかねないのではないかという危惧はあった。だけど。ユキを襲った災難が、すべて坂井の仕業だとは、とうてい考えられなかった。
「・・・あれは、人間にできるようなことじゃない・・・」
 私は、先日ユキに呼び出されたときのことを思い出していた。

 ユキは、神社の前にいた。「また襲われちゃった、へへっ」そう言って笑ってはいたが、その心の内には、得体の知れないものに襲われる恐怖心がありありと見えた。
「何があったの?」
 私は、座り込んでいるユキの隣に腰掛けながら訊いた。
「ガラスが割れて・・・ううん、窓ガラスじゃないの、どこのガラスかわからないけど、とにかく割れる音がして、破片が飛んできて・・・」
「怪我は?!」
「大丈夫。当たったけど、怪我はしてないみたい。」
「そう。でも一応、病院に行った方がいい・・・」
 そう言った矢先、私の横を、風が通り抜ける感覚がした。いや、感覚は風だけではなかった。もっと不自然な、心の中の傷をえぐるような感覚。この感覚には、覚えがある—–
 だが、それが何であったのかを思い出す間も無く、私はユキをかばって地面に伏せなければならなくなった。無数の石の飛礫が、こちらに向かって宙を飛んできていた。幾つか、幾つかが私の背中に当たった。怪我をするほどではないが、痛い。
 結構長い時間が経って、ようやく石は当たらなくなった。背中が痛む。どうせなら、肩こりのツボにでも当たってくれればよかったのに。そう思いながらユキをみると、ユキの目には涙が浮かんでいた。
「泣いてない、泣いてないよ、舞ちゃん先生・・・」

「とにかく、話を聞いてみるか・・・」
 私の目の前には、食べかけのそばがあった。かなり未練があったが、それを残して私は生徒指導室に向かった。

「吹き矢の件と、植木鉢の件と、ガラスの件。これは認めるんだな?」
「はい。」
「じゃあ何で、他のことは認めないんだ!」
「だって、僕がやったんじゃないんですよ!」
 生徒指導室で、坂井は三人の教師に尋問を受けていた。指導主任に、学年主任に、私。
 もっとも私は、まだ何も彼に訊いてはいなかった。
「だったら、誰がやったというんだ!」
「知りませんよ・・・とにかく、僕がやったのはさっきの三つだけです!」
 その通りだ。私は心の中で、そう思った。吹き矢やガラスの事は、彼一人で殺ってやれないことでもない。でも、それ以外の、石が飛んでくるとか、壁にたたきつけられるとか、動物に襲われるとか。そんなことが、彼にできるはずもない。
 彼に、私のような能力があるというのなら別だが----
「谷口先生。」
 私は、立ち上がりながら言った。
「本人がやっていないと言っていることを、無理に追求するのもどうかと。被害者加害者ともに私のクラスの生徒でもありますし、ここは、私に引き取らせていただけないでしょうか。」
「そうですな。」
 あまり事を荒立てたくないのか、学年主任がすぐに同調してくれた。
「川澄先生は、彼も含めて生徒に慕われているようですし。ここで我々ががみがみ言うより、かえってその方がいいかもしれません。」
「わかりました。川澄先生、くれぐれも、よろしくお願いしますよ。」
 二人は、部屋を出て行った。私と坂井の二人だけになった。坂井は黙っていた。
「本当に、三つしかやっていないの?」
 坂井は黙ったままだった。
「大丈夫。私も、他に犯人がいると思っている。」
 その言葉に、坂井ははっとしたようにに顔を上げた。
「どうなの?」
「三つだけです。」
「そう。じゃあ、それについて詳しく聞かせてくれる? それと」
 私は、一呼吸置いて続けた。
「ユキ---竹内にも、この事は話しておくから。」

 私とユキは、私の家に向かう車の中にいた。ユキに坂井のことを話しておかなければならないが、学校や人目につくところでは少し困ると思っていたところへ、ユキが持ちかけてきた。
「舞ちゃん先生、あたし今日、先生の家に行ってもいいですか?」
 家なら無闇に他人に聞かれることもないし、行く途中の車の中でも話はできる。それに、ユキを襲う何者か-おそらくは、魔物-から、ユキを守ることができる。
 車が走り出してすぐ、私は坂井の一件を話した。
「そう、ですか。やっぱり。」
 ユキは薄々、幾つかに坂井が絡んでいるとは感づいていたようだった。そして、全てが坂井の仕業でないことも。
「でも。私、みんなの見ている前で、見えない何かに突き飛ばされたりしたんですよ。それも坂井の仕業ですか?」
「違うと思う。」
 私は断言した。
「何者かはわからないけど・・・坂井以外の、別の何かがあなたを狙っている。」
「ですよね。そうですよね。あたしも、そんな気がするんです。」
 とにかく明るく振る舞おうとするユキ。その姿が、また痛ましく思えた。
「・・・大丈夫。あなたのことは、私が守るから。」
 ユキを励ますつもりで言った言葉だった。だがその言葉で、ユキは却って意気消沈してしまった。
「ごめんなさい・・・舞ちゃん先生にまで迷惑かけちゃって・・・・」
 もはや、取り繕った明るささえもなかった。そのとき私は確信した、この子は本当に、私のことを好きでいてくれるんだと。
「気にすることはない。そもそも、教師というのは生徒が迷惑かけるために存在している。そのために給料をもらっているのだから、いくらでも迷惑かけてくれていいし、頼ってもらっていい。」
「舞ちゃん先生・・・なんかかっこいい!」
 ユキに、少なくとも表面上の明るさが戻った。ついでに言うと、目が潤んでいる。そこまで感動的な台詞だっただろうかと、私は疑問符を抱きながら、家路を急いだ。

 家に着くと、祐一はいなかった。まだ帰っていないらしい。ゆきは帰ってきていた。
「ただいま・・。」
「おかえりなさいっ・・・あ」
 明るい顔で私を迎えてくれたゆきの顔は、後ろに立っていたユキの姿を見て凝固した。
「ゆき、お客さん。ご挨拶は?」
「う、うん。こんにちは、ユキさん。」
「こんにちは、ゆきちゃん。」
 ユキは型どおりの挨拶をすませると、突然「うぅーん」と唸って、何かがはずれたようにゆきを抱きしめた。
「かわいー! ゆきちゃんやっぱりかわいぃ、かわいいよぉ」
 そういって頬ずりしたりしている。ゆきは少し嫌がっている感じだった。が、私は止める気にならなかった。作り物でない、本物の笑顔。今のユキの顔には、それがあった。今辛くてもじっと耐えている少女の顔から、本当に喜べることを奪ってしまうことが、とても残酷なことに思えた。
 ゆきも、そんな私の気持ちを察したのか、何も言おうとはしなかった。

 帰ってきた祐一は、ユキを泊めることに快く賛成してくれた。と言うより、祐一が勝手に決めてしまった。私もユキも、彼女が今日ここに泊まるということまでは考えていなかった。
「いや、訳のわからないものに怯えて一晩過ごすよりは、いっそ泊まっていった方がいいだろう、うん、その方がいい、そうするべきだ。」
 泊まるとも何とも言っていないのに、勝手に泊まると勘違いした。その恥ずかしさを隠したいのか、祐一は必死にユキを泊めようとした。
 私は、一抹の不安を覚えて、祐一にそっと耳打ちをした。
「祐一。」
「ん?」
「もし。もしユキを襲っているのが本当に魔物、あの魔物だとして。」
「ああ。」
「それはもしかして、私の作り出したものではないかしら。」
「そうなのか?」
「わからない。わからないけど・・・あの感覚は、昔私が作り出した魔物とよく似ていた。」
「・・・・。」
「もしそうだとしたら・・・ユキをここに泊めるのは、却って危険。」
「大丈夫だろ。」
 祐一は、即答で私の不安を否定した。
「今さら舞が魔物を生み出してしまう理由もないし、もし仮に生み出してしまったとしたら、そいつが真っ先に襲いかかってくるのは、俺のはずだろ?」
「・・・・。」
「それに、もし魔物が出たとして。その時は、また二人で戦って追い払えばいいじゃないか。昔みたいにさ。」
「・・・・・。」
 祐一の思考は、なんだか楽天的に思えた。それでも私は、その祐一の考えを信じたかった。自分の中の不安は、否定したかった。
 私は、ちらりとユキの方を見た。ユキは眠ってしまっていた。ゆきを抱いたまま。ゆきが困った顔をしていた。
 私は、ゆきをユキの腕から抜き取りながら、眠っている彼女の顔を見た。安らかな寝顔。ここにいれば安心、そう思いきっているのだろうか。
 私の心は決まった。もし魔物が出たとしたら。その時は、彼女を全力で守ってやるまで。それだけのことだ、と。
   

 そして、その夜。魔物は出た。

「ユキ、起きて。ユキ、ユキ。」
「う、うーん・・・」
 おかあさんが、ユキさんを起こしている。
「あ、・・・ごめんなさい、あたし、寝ちゃった」
「これから、食事に行く。起きて。」
「あ、はい・・・」
 ユキさんは、まだねむそうな目でごそごそと支度をはじめた。
「あれ・・・そういえば? 外に食べに行くんですか?」
「ああ。本当は今日は、俺の料理当番なんだけどさ。俺の作るメシ、不味いから。ちょっと食わせられねーなと思って。」
「そうなんですか?」
 そう。おとうさんの作る料理は、正直にいってあまりおいしくない。それはわたしもいつも思っていることだ。でもそれをいってしまうと、おとうさんはとても悲しそうな顔になるので、いわない。
「・・・祐一の料理は不味い。」
「ぐはっ」
 ・・・おかあさんがいってしまった。せっかく、わたしがいわないようにしていたのに。
「でも。昔よりずいぶん、おいしくなった。」
「舞・・・お前ってさ、ほんとにけなしてんだかフォローしてんだか、わかんないよな・・・」
「それは・・・褒めてるの?」
「そんなはずはないだろう。」
 くすくすっ、と、ユキさんがわらう。そのわらいごえを聞いてわたしは、さっきまでの複雑な感じをおもいだした。
 ユキさんのうでに抱かれていたとき。わたしは考えていた。わたしは、ユキさんをあまり好きではなかった。うるさいし、怖いことするし、おかあさんを連れていっちゃう。それなのに、ユキさんはわたしのことを大好きだという。どうしてだろう。どうしてだろう。わたしがユキさんをきらってしまっているのだから、ユキさんもわたしをきらって当然なのに。わたしは、そんなに人に好かれる子なんだろうか。それとも、ほんとうはユキさんは、とてもいい人なんだろうか・・・・。

 気がつくと、手を引かれて夜の道を歩いていた。両隣におとうさんとおかあさん、後ろから、ユキさんがついてきていた。
 ユキさんが、わたしの上に割り込むように、頭をつっこんできた。
「ね。どこ行くんですか?」
「そうだなあ・・・適当にラーメン屋でもいいか?」
「えーと、あたし、グルジア料理屋さんがいいと思います!」
「長寿料理・・・?」
「いや、それは、なんというか、そんな店この辺にあったか?」
 3人の話をききながら、わたしはまた考えていた。この人はいったい、なんなのだろう。わたしはこの人にとって、なんなのだろう。この人はよくないと思っていたから、わたしはずっとこの人がきらいだった。でもこの人がいい人だというなら、そのいい人をきらっていたわたしはどうなるのだろう。
 わたしは、もしかしてよくない子。

 そう思ったとき、通り抜ける風を感じた。あのときと同じ。
 立ち止まる。するどい視線。おかあさんの目が、じっと前を見すえていた。なにかが、たしかにそこにいた。
「下がって・・・!」
 おかあさんの左手が、わたしとおとうさんの行く手をさえぎった。
「出たのか・・・・? 舞!」
 ごくりとつばをのみこむ音がきこえる。わたしのすぐ後ろで、ユキさんが立ちすくんでいた。
「私がやる。祐一は、その二人を守っていて。」
 そういっておかあさんは、私たちをうしろにぐいと押しのけた。
「いや、やるって舞・・・お前、武器もなにも無しに」
「これを使う・・・」
 そういっておかあさんは、道ばたにすてられていた傘を拾いあげた。バンッと勢いよくひらき、その勢いのまま壁にうちつけ、いっきに傘の骨を取り払う。
「舞・・・」
「舞ちゃん先生・・・」
 わたしは言葉がでなかった。
 おかあさんは身構えたまま、じっと何かとにらみあっている。
 何かが、動いた。おかあさんの手がすばやく反応する。だけどそれは、何かをとらえることなく、すっと空振りしてしまう。
 わたしに、来る。そう思った。ユキさんにではなく、わたしに。
 わたしは、ゆっくりと目を閉じた。
「ゆきちゃん、危ないっ!」
 そのこえにおどろいて、ふたたび目を開ける。ユキさんの体が、わたしにおおいかぶさってくるのがわかった。そして、どしんと来る衝撃。
「ああッ!」
 何かは、ユキさんの背中に当たった。ユキさんは悲鳴を上げて、そのまま倒れ込んでしまった。
「ユキ!」
 おかあさんの叫ぶ声。それが一瞬、どっちのことなのかわからなかった。
 何かはそのままとおりすぎて、後ろのほう、私たちが歩いてきた方向でとどまっている。
「何者・・・一体何者・・・!」
 月明かりに照らされて、怒りにふるえたおかあさんの顔が見える。1、2、3。間合いをつめたおかあさんが、そのまま何かに飛びかかっていく。当たった。
 ずきん。
 体の底から、はげしい痛みがわき起こってくる。
「ゆき!」
 わたしを呼ぶ、お父さんの声が聞こえる。その声にふりかえった、おかあさんの姿が見える。そのむこうに、何かがいた。その何かが、少しづつ、はっきりと目に見える形になっていった。人の形。子供。女の子。あれは、わたし・・・?
 再びあれに目を向けたおかあさんが、その場に固まっていた。おとうさんも、ユキさんも同じだった。わたしも、動けずにいた。なにが起きているのか、よくわからなかった。ただ頭の中にあるのは、ひとつだけ。あれは、わたし。
 やがておかあさんが動きを取りもどした。ゆっくりと、軸だけになった傘をおろし、そしてわたしの方に歩みよってきた。
「あれは・・・あなたなの?」
 おかあさんは、ゆっくりと、やさしく訊いてきた。
「あなたなの?」
 わたしは、うなづいた。あれは、わたし。わたしの中から生まれた、わたし。証拠は何もない、だけど、わたしははっきりとした確信をもっていた。
「だったら---」
 おかあさんは、ゆっくりとわたしの前にしゃがみながら、傘の軸をさしだしてきた。
「あなたが、やりなさい。」
 すぐには、意味がわからなかった。
「あなたでないと、できない。」
 両手でさしだされた、傘の軸。これをもって、あの「わたし」と戦えということだろうか。わたしはおかあさんの目を見た。まっすぐにわたしの目を見つめる瞳が、そうだと言っていた。わたしは、おそるおそる、傘をうけとった。「わたし」が、おかあさんのすぐ後ろにまできていた。
 どぐっ。
 にぶいおと。おかあさんが、右手で肩をおさえていた。次の瞬間、おかあさんは体をひねって、左手で「わたし」をふりとばした。からだに、軽い衝撃を感じる。
「さあ、・・・行きなさい。」
 おかあさんは、再びわたしにうながした。自分で生み出した魔物なのだから、自分で始末をつけなさい。そう言っているような気がした。わたしはその言葉に従い、ふりとばされた「わたし」の元に歩いていった。
 どさっ。
 うしろから、倒れるおとが聞こえる。振り返ると、おかあさんが倒れていた。おとうさんとユキさんが駆け寄るのが見える。
「おかあさん!」
 おもわず、叫んでいた。その言葉に、起きあがったおかあさんはこう答えた。
「行きなさい!」
 それは、はじめて聞く母の強い言葉だった。 
 わたしは再び「わたし」の方に向き直り、そして傘をかまえた。「わたし」も、その場に立ちすくんでいるかのようだった。
「うわああああああ!」
 言葉にならない声を叫びながら、わたしは「わたし」に立ち向かっていった。
 ふりおろす傘。当たらない。よけられた。
「消えてっ! おねがいだから、消えてっ!」
 わたしは、必死の思いをさけびながら、「わたし」に傘をうち下ろしていった。
「あなたがわたしだというのなら! おねがい! もう、わたしたちの前から消えてっ!!」
 強くねがう。わたしはもう、わたしの周りの人をきずつけたくない。わたしの好きな人たちを傷つけたくない。だから。だから。人をきずつけるわたしはもう、消えてほしい。無くなって!
 光が、見えた気がした。正確には、感じた。とおりすぎる光が、わたしの前にいた「わたし」にからみつき、わたしの前から引きはなした。「わたし」の姿が見えなくなり、ふたたび何かへと戻った。それは光とからみあいながらうずまきのように空に上って行き、そして、消えてしまった。
「消えた・・・。」
 それがわかった、そこで、わたしの意識はとぎれてしまった。

エピローグ

「舞ちゃん先生っ」
 振り向くとそこに、ユキがいた。
「ゆきちゃん、どうですか? 元気にしてます?」
「・・・問題ない。」
 あの事件から、三ヶ月が経っていた。ゆきは、自分の生み出した魔物を倒したあと昏睡状態に陥り、一週間目を覚まさなかった。その一週間、わたしも祐一も泣き、取り乱していた。そんな私たちを支え励ましてくれたのが、ユキだった。今から思えば、ユキだって精神的にかなり追いつめられていたはず。それを思うと、正直ユキには頭が上がらない思いだ。
「学校にも行ってる。よく笑うようになった。」
 一ヶ月後、ゆきは退院できた。回復したゆきは、何かを吹っ切ったかのように明るくなった。誰とでもよく話すようになり、多少の悪口を言われても平然としていた。時としてお節介と思えるような事をすることもあった。そう、あまり言いたくはないが、誰かに似てきた。
「そう。よかった。」
 あまりよくない、一瞬だけそう思った。
「あなたは、最近おとなしくなった。」
「そう思います? ええ、そう心がけてますから。」
「そうなの?」
「はい。あたしも、いつまでも子供じゃいられませんから。」
 そう言って笑うユキの顔は、少しだけ大人びて見えた。そのとき私は思い出していた。坂井のことは不問にするから、今回の事件はいっさい無かったことにしてくれと、学年主任らに頭を下げるユキの姿を。どうやら私は、この子をかなり見くびっていたようだ。
「じゃ、先生。いずれまた、先生の家行かせてくださいね。ゆきちゃんにも会いたいし。」
「うん、いつでも来ていい。歓迎する。」
 そう言って私たちは、その場を別れた。
「さて・・・今日はもう帰ろうか。」
 今日は、ゆきも祐一も早く帰ってくるはずだ。今帰ればきっと、ゆきのかわいい笑顔が出迎えてくれることだろう。
「おかえりなさいっ、おかあさん。今日ね、おとうさんも早かったんだよ。だからわたし、すごくうれしいっ・・・・・・・・」

完。 

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※2002/9/23執筆 第2回かのんSSこんぺ出稿作品

舞ナンバーカード

「マイナンバーカード取りに来て!麦畑で待ってるから!」
そう叫ぶ舞をよそに俺は電話を切ってしまった。「くそめんどくせぇなぁ」
知らなかったんだ。舞が6体もいて、ちゃんと番号管理しないと、数え間違えて、まさか、死ぬ、なんて…
 #KeySS

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※2016/3/26Twitter投稿SS

SSとは主にネット上で公開される二次創作文章の事で、

 SSとは主にネット上で公開される二次創作文章の事で、最初にこの言葉を使ったのは同人作家で評論家の本田透氏であるといわれており、氏の書く新世紀エヴァンゲリオンの二次創作小説をSSと呼んでいたのが始まりと言われています。
 SSが何の略であるかは結局よくわかっておらず、人によって解釈が分かれます。昔は「ネット」で公開する「二次創作」の「短い小説」であるとされていましたが、20世紀末にSSの対象ジャンルがLeaf/Ley(通称葉鍵)に移って以降書かれる文章の幅が拡がり、小説という枠で捉えることは困難になりました。
 また、葉鍵にジャンルの主流が移ったことでSS作家・作品共に幾何級数的に増大し、それまで「小説」が二次創作に於いて傍流でしか無かったものが、少なくとも葉鍵に於いてはマンガ・イラストと並ぶ三大創作手法の一つにSSが挙げられるようになりました。
 書かれる内容もラブコメから本格ミステリーまで多岐に渡るようになり、長さもショートショートから大長編まで幅が拡がりました。これらの、特に中長編SSは、後に「ライトノベル」(ラノベ)と呼ばれる文章形式の源流の一つとなりました。実際、葉鍵の長編SSを書いていた人が後にラノベ作家としてプロデビューした例は枚挙に暇がありません。(有名どころでは、竹井10日。)
 その後更に時代は移り、ラノベで発達した手法がSSに持ち込まれるようになり、また公開の場もネットに留まらず製本して同人誌即売会で頒布する者も多くなりました。加えて、葉鍵の衰退に伴ってSS作家が様々なジャンルを彷徨った挙げ句、コミティアの台頭に代表される昨今のオリジナルブームに乗って、オリジナルラノベをSSと呼称する作家も現れるに至り、現在では再びその定義づけは困難となっています。

佳奈多をめぐる冒険~二木島編~

麻枝准は、急行が好きである。CLANNADで岡崎朋也と汐が乗っていたのも、Charlotteで友利奈緒と乙坂有宇が乗っていたのも、急行である。麻枝准は何故急行が好きなのか。その謎を解明する為、我々は三重県に飛んだ。
三重県は紀伊半島東岸を占める南北に長い県であり、県中央部の伊勢市は麻枝准の出身地である。三重県内の鉄道交通網は近鉄が主流であり、かつては国鉄の駅長が名古屋出張で近鉄を使っていた事が新聞記事になって問題になった事もあるほどである。それほどまでに三重県は近鉄が強い。岐阜県内の近鉄養老線が養老鉄道として分社化された今、東部近鉄沿線は全て三重県であるといっても過言では無いほどである。つまり、近鉄が乗り入れている名古屋駅は三重県になるのである。浜松は名古屋駅でうなぎパイを売りたかったらまず三重県の赤福に勝たなければならない。麻枝と涼元の確執も、元を辿ればここに根源的な理由があるのである。
 そして、近鉄は急行が速い。名阪特急が新幹線より安上がりな事は名古屋民には割と常識だが、急行でも十分日帰り往復できる事は、あまり知られていない。かくいう筆者も、妹に教えられるまで知らなかった。近鉄名古屋から伊勢中川で大阪上本町行きの急行に乗り換えれば、3時間ほどで大阪まで行ける。高速バスと変わらない。
 麻枝の急行好きの根源もここにあるのではないか。我々調査班はそう考えた。

 だが、そういう話は今回はどうでもいい。佳奈多は城桐キャラであって、麻枝キャラでも涼元キャラでも無いからだ。そして、佳奈多の姓である二木を関する駅「二木島駅」は、JR東海の紀勢本線にある。南部の熊野市、「東紀州」にあたる場所になり、近鉄では行けない。

私が二木島駅に行ったのは、実は1年以上前の夏である。なので、実は当時の記憶があまり正確では無い。しかも、普段なら重要事項があればポメラでメモを取るところを、名古屋駅から亀山駅で乗り換えるときに電車の中にポメラを忘れてしまった為、メモを取る事も出来なかった。
青春18きっぷを使って普通列車だけで行った為(※快速みえを使うと伊勢鉄道を通る為別料金を取られる)、とにかく時間がかかった事だけは覚えている。
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隣の駅が「かた」(賀田)ということも、来てみて初めて知った。
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駅前はすぐ二木島湾という内湾なのだが、駅近くにある案内板によると、この湾を境にして紀伊国と志摩国に分かれていたらしい。
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…自分が習った歴史では、志摩国というのは現在の鳥羽市の一部と志摩市の辺りのみだった気がするし、そもそもここより少し北に紀北町とか大紀町という明らかに紀伊国の一部だった場所がある。そもそも、かの有名な大岡越前が徳川吉宗に登用されるきっかけとなった事件は、宇治山田奉行を務めていた際に管轄内の伊勢国と紀伊国の農民同士の争いを公平に扱った事例があった為であり、つまり宇治山田(現在の伊勢市)のすぐ近くまで紀伊国になっていたはずなのである。
それなのに、50Kmも南の二木島湾が志摩国とはどういうことなのか。

志摩国というのは「しまのくに」と読み、察するところ元の意味は「島の国」である。つまり、伊勢神宮近辺の島嶼部を管轄するのが志摩国であったと考えられる。(三河国渥美半島の目と鼻の先にある神島が志摩国であった事がその典型例と言える。)東紀州はリアス式海岸で半島が多く、昔は陸続きとは言え道など無く船で行き来していた(※今でもそういう地区があるらしい)ので実質島みたいなものだった。伊勢神宮付近の”島”なので、そういう場所は島の国に組み入れられた。
そういう話なのかもしれない。あくまで憶測である。裏を取る時間と気力はなかった。
佳奈多は一応巫女設定なので、まあこの程度の憶測は許されるだろう。

ついでに言うと、CLANNADの志麻賀津紀は志摩国(しま)~勝浦(かつ)~紀州(き)から来ている事は、想像に難くない。何故なら麻枝は三重県伊勢市出身であるから。国崎集落とか、倉田山公園とか、偶然にしては出来過ぎだろう。

そんなわけで、この後は勝浦まで寄ってこようかと思ったが、新宮まで行ったところで特急に乗らないとその日のうちに家に帰れない事がわかったので、あきらめて新宮で折り返す事にした。
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ちなみに新宮駅前からは、現時点での日本最長の路線バスである奈良交通の八木駅行きのバスが出ている。奈良交通だが、久弥は関係ない。はず。
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当然のことながら乗ってる時間はないので、このまま折り返した。

ちなみに亀山駅で忘れたポメラだが、この後疲れて電車の中で寝入ってしまって寝ぼけていた事もあって、たぶん多気駅だと思うのだが(そこすら明確な記憶が無い)
「名古屋からの電車のポメラを忘れたんですけど」
「…ここに名古屋からの電車は来ませんけど」
という意味不明なやりとりを駅員としていた事だけ覚えている。(その後名古屋駅の忘れ物センターまで行って問い合わせたら結局亀山駅にあって、後日取りに行く羽目になった。)

この後、佳景山駅・奈多駅に行く事になるのだが、それには1年もの間をおく事になる。

佳景山編に続く

SMAPとは即ちKeyである

Kanon AIR CLANNAD Planetarian リトバス/
クドわふ
Rewrite Charlotte
S: 栞・沢渡・佐祐理・斉藤・ そら・白穂・ 坂上・早苗・志麻・相良・春原・ シオマネキ・ 椎菜・笹瀬川.佐々美・沙耶・三枝・瞬・咲子・ 静流・千里・咲夜・宗源・しまこ・洲崎.周一郎・桜・ 俊介・七野・サラ・白柳
M: 水瀬・舞・真琴・美坂・美汐・ 観鈴・美凪・みちる・ 宮沢・美佐枝・ 美魚・マスクザ斉藤・ ミドウ・ 美砂
A: あゆ・秋子・天野・相沢・ 秋生・敦子・ あーちゃん先輩・あや・有月・ 朱音・旭・新・ 歩未
P: ぴろ・ ポテト・ ぱに・ プー

https://twitter.com/agbysx/status/765350392246865920
↑のツイートを見て「SMAPとは即ちKeyである」ということを主張したくなったのだが140字で収まらなかったのでこっちに掲載しておく。

SMAPとは即ちKeyである

北川ラーメン~鍵っ子的ラーメンセット企画~(転載)

 AIR15周年企画「鍵っ子的ラーメンセット」企画第二弾、北川ラーメンである。
 「あれ? 前回、『風子麺』にするつってたじゃん!」という指摘があるかもしれない。
 仰るとおり。第二弾は風子麺にするつもりで、実は試食も既に済ませてあるのです。しかし、Twitter見てた人ならわかると思うが、この一ヶ月妹が妊娠してつわりで入院してとかもう逆にこっちがぶっ倒れそうなくらいの多忙さで、風子麺の試食もその間に済ませたのだけど、その後文章化する体力がとても無いうちに、北川潤の誕生日が来てしまったので、先にこっちをUPすることにした。という次第です。
 さて、とはいえ何故「北川ラーメン」なのか。それは、妹が退院の見通しが立って妹の夫に任せても大丈夫となったちょうどその日が荒野草途伸の40歳の誕生日で、じゃあ青春18きっぷに残りあるしどこか行こうかと思ったときに、じゃあ喜多方・会津若松に行こう、と思ったからなのです。
 以前福島県に行ったときに、浜通り・中通りは行ったけど、会津方面は見ていなかった。それが引っかかっていたのもあったのですよね。
 なので今回、ラーメンレビューと言うよりも旅行記みたいな感じになります。
 ということで、3/27早朝、妹の自宅のある王子を出発。何時だったかは覚えていない。寝過ごして始発乗り逃がしたから。
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途中、宇都宮駅で乗り換えまで時間があったので、一旦降りる。
  宇都宮というと、あの東京都知事選からもう1年3ヶ月も経つのですね…。
 今回の目的はあくまでラーメンであって餃子では無いので、宇都宮は早々に離脱。…いや、今思えばここで餃子買ってラーメンに付けても良かった気もするけどね。
 東北本線でひたすら北上し、郡山で磐越西線に乗り換えて、会津若松着。
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 …喜多方方面への列車が、1時間待ち。そう、この日は平日で、たまたま着いた時間だけ連絡する列車が無かったのだった。ちゃんと始発で出ていればスムーズに乗り換えできていたんだが。
 仕方が無いので、駅前のスーパーでコーヒー牛乳を購入。
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いや、前回福島に行ったときも、「とにかくひたすら福島の牛乳を飲みまくる」というのをミッションにしていたのよね。なので今回も、ということで。

 約1時間後に、行き先忘れたけど喜多方方面への列車は出発。喜多方まではそんなに長くない。30分もかからなかったと思う。
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 喜多方に着いた頃には昼過ぎになっていただろうか。ラーメンを食べるにはしかし丁度いい頃合いだ。
 さてどこで食べようか。駅に備え付けのパンフレットをめくってみる。
ここにあるのと同じと思われる。)
 うむ、全部は無理。帰りの電車の時刻を確認すると、幸か不幸か早くて二時間後。なので、少し遠いがここぞという所に行ってみることにした。
 バスは出てないようなので、歩く。正直地図がわかりづらい。目印とか何も記載してないんだもん…。




 歩くこと約20分。




 準備中。




 慌ててパンフレットを確認すると、不定休とある。え、いや、不定休たって、何も自分が来る日に限って…。というか金曜日やで? 明らかに観光客向けの店なのに、来る客おらんのかいな。
 仕方ないので、他の店を探す。なんとなく「坂内食堂」というところが北川っぽい印象を受けたので(※適当な勘)、ここに行ってみることにした。
 途中市役所の前の道が工事中で不審者の如くうろうろしてまた20分ぐらい時間がかかってしまったが、何とか店に到着。この時点でもう店の写真を撮る気力すら無かった。
 店に入ると、ほぼ満席。しかも店に自分が入っても店員に認識されない。空いてる席を探して店内をうろついてると、やっと店員に呼び止められて「先払いです」。いや、先に言ってくれ頼むから…。
 で、案内された席が、カウンター席の若いお姉さん3人がかけてる隣の端っこ。
「お前みたいなクソオタがこんなとこ来てんじゃねーよ!」とラーメン汁ぶっかけられやしないかとビクビクしながら、注文した肉そばを待つ。
 肉そば到着。IMG_20150327_143152
 えっと。正直、量多い。
 いや、20代の頃なら平気で平らげただろうけどね。私、この日ちょうど40になったばっかなんですわ。
 まあでも、この日まだ何も食べてないので、食べられないことは無い。
 そして食べてる途中で気づく。これ、セットじゃ無いじゃん!
 一応、水と一緒に写真撮り直して、「これで北川セット! だって北川だし!」と主張するつもりでいたのだが、何故かその写真が見当たらない。
 やはり宇都宮で餃子を買っておくべきだった。
 仕方ないので、帰りにまた買った普通の牛乳とヨーグルトの写真をあげておく。
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 OK、これでセットになる。同時に写真撮れてないけど、さすがにそれはもういいだろ!?
 ということで、北川ラーメン(セット)の概要をまとめておく。
1.喜多方ラーメン
2.会津産コーヒー牛乳
3.会津産牛乳
4.会津産ヨーグルト
5.(宇都宮餃子)
「これが立った髪とどう関係があるのですか?」だって? しるかよ!
「牛乳だと北川じゃ無くて長森になるんじゃないですか?」だって? しるかよ!!
 はい、ということで、次回こそは風子麺ね。もうあと文章書くだけなんだけどね。書けてないね。いやもう、一ヶ月分の疲労が…。ていうか、まさか40歳の誕生日をこんな形で過ごすことになるなんて思わなかったし…。
 北川もきっと、一生妹に振り回される人生を送るんだろうなあ。
 て言うか、北川って麻宮姫里・空 姉妹のお兄ちゃんなんだけど、最近鍵を知った人はそれ知らないのかなあ。というより、麻宮姉妹自体知らない可能性も…? もうほんとあのVAのいい加減な連中の所為でほんとにもう。というかこの先日の鍵点でも少し話したけど、複数作品ダブらせるのヤメレ。それでうまく行ったためしがないだろうがド阿呆。鍵っ子はATMじゃねえんだぞ。
 ああもう、ラーメンセットと全く関係ない話になってしまった…。