リトルバスターズの世界観を再考する
アニメ葉留佳編終了をきっかけに、「二木佳奈多とは一体何者なのか」という文章をまとめようと思い、その参考資料としてリトルバスターズの舞台となっている虚構世界の構成を図面に引いてまとめてみたのですが。それ見ているうちに自分の考えが間違ってんじゃ無いかということに気づいてしまったので、佳奈多に関する話は一旦棚上げすることにしました。
ですが、折角作った図面なので、世界観に関する議論の叩きたいにでもなればと思い、解説する文書を付けてみることにしました。
虚構世界のあり方は、長らく「ループ説」が学説の主流でしたが、アニメ化にあたりリトバスのシナリオライターである都乃河勇人氏がこの説を否定するコメントを出したため、再考を余儀なくされています。
ループでなければ一体何なのか。アニメBD1巻のブックレットには、「平行世界と量子力学」というヒントが提示されています。これを元に、「情報の同期が可能な複数の世界が立ち上がっていて、必要に応じて意識をシフト出来る」という仮説を立ててみます。情報の同期というのは、量子力学がどのように関係しているのかというのを考えた結果、量子テレポーテーション理論で離れた世界同時で瞬時に情報の交換を行っているのでは無いか、と考えた結果です。
この仮説に基づき、TVアニメの進行を基準に引いた図面が以下になります。
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ここで、もう一つ仮説が必要になります。リトルバスターズのメンバーには、世界を一つだけ構築する権限がある、というものです。ただこれは若干の例外があります。例えばグランドマスターである棗恭介は、自分の世界の他に補佐的な世界を幾つか作ることが出来る、ということにしておきます。
その一つが、図の上の方にある待機世界です。この世界は、声優さんのコメントで、ヒロイン達が待機しているときの会話をアニメ化して欲しい、というのがあったのをその意味を考えた結果出てきた発想です。(声優さん達も世界観について一通りの説明くらいは受けているんじゃないでしょうか…?)
この作り出した世界というのは、世界が役目を終えたら消滅します。ゲーム版で言う波紋の消滅にあたります。この時、世界の構築者が別の他人が構築した世界に移るのか、待機世界に移るのか、ちょっとそこは考証が練り込まれていません。(図面では別の構築世界に移ることになっています。)
あと補足すると、図面では恭介世界となっている世界がありますが、これはゲームで言う鈴ルートにあたるものです。作ったのは棗恭介なので、恭介世界
という名前にしています。
次に、情報同期についてもう少し詳しく解説します。
構築した世界は独立して動いているので、連係して動作させるためにはどこかのタイミングで2つの世界の情報を一致させておかないといけません。この作業をここでは情報同期と呼んでいます。
説明しやすいのでアニメ版を元に解説します。個別編が終わる度に理樹が目を覚ますシーンがありますが、この直前に情報同期が行われています。これまで使っていた世界は消えてしまうので、消える前に全部の情報を引き継がないといけないからです。誰がやっているのかは、ちょっとわかりません。また、複数の世界で一斉に同期が行えるのか、1対1でないと同期出来ないのか、そこもちょっとわかりません。
さて。基本理樹が寝ている間に行われる情報同期ですが、1回だけ事故なのか意図的なのかわかりませんが起きている間にこの作業が行われてしまったことがあります。それが、2話の「フラッシュバック」と呼ばれている部分です。ただ、こんな現象が起きるということは、この時点で理樹がいた小毬世界よりも前に、このあと移動する構築世界以外の別の世界が存在していた、ということになります。図面では「既に通過した世界」というよくわからない扱いにしていますが、もしかしたら待機世界とこれは統合して考えるべきなのかもしれませんし、そもそも「一人一つしか世界を構築出来ない」という前提が間違っているのかもしれません。
次に、世界が消えてしまう理由について考えてみます。単純に言ってしまえば、「維持出来ないから」ということなのですが、維持出来ないということについてもう少し考えてみようと思います。
アニメで小毬・美魚・葉留佳・クドという順番で来ているので、この順で考えてみます。
小毬は、ゲームをやっていればわかりますが、世界全体の記録者の役割も担っています。小毬の問題が解決したらそちらの作業に専念するので、自分の世界を維持するのは困難になります。なので次に引き継いでいるのです。
美魚の場合、世界構成そのものに問題が発生しました。美鳥というイレギュラーな存在が発生してしまい、世界そのものがガタガタになってしまいました。なので放棄せざるを得ませんでした。
葉留佳の場合、葉留佳の補佐役である佳奈多が実質的に世界運営を取り仕切っています。ですが、佳奈多はグランドマスターとは利害が対立関係にあります。いろいろと都合がよろしくないので…ということで、お取り潰し(アニメ版だと葉留佳の意志により消滅)。
クド・唯湖の方はアニメでまだやっていないので、ゲーム版のみをベースに。クドは、一国の問題までも自分の問題として抱え込んでしまい世界のキャパシティを超えてしまったので、崩壊。辛うじて理樹に救出された、といったところでしょうか。唯湖は、消えた理由はちょっとよくわからないのですが(もしかしたら理樹が鈴を無視して唯湖といちゃついたことに対する恭介の罰?)、世界が消えることに対して猛抵抗をしています。
次に、この世界に関与する権限について考えてみます。あの世界にいる人間が誰でも世界を構築出来るわけではないですし、恭介と他のリトルバスターズメンバーでもやれることに差があります。おそらく、権限は何階層かに分かれています。
仮説として、以下のような権限分類を作ってみました。
・グランドマスター(総とりまとめ)
複数の世界が動く基盤であり、複数の世界を統括的に管理し、場合によっては介入も行う存在。つまりは棗恭介のこと。
・世界構築者
専任の1世界を構築出来る存在。リトルバスターズメンバー。
・管理権限保有者
世界構築の権限はないが、世界構築者との繋がりにより、単一世界への介入や改変が出来る存在。佳奈多・(沙耶・佐々美)
・上級協力者
世界の根底を変えることまでは出来ないが世界のほころびを埋めるなどの作業を担っている。あーちゃん先輩・小次郎、他。
・一般協力者
世界の構築に力を貸しているだけで、積極的に動いているわけではない殆どの人達。
・NPC
現実には存在せずこの世界の中で作り出された存在。美鳥・レノン・恭介のルームメイト
上から権限が強大な順になっています。
この権限の強さというものはどのようにして決まっているのか。それは、理樹・鈴、またはリトルバスターズメンバーとの繋がりの強弱によって決まっています。単純にいえば、波紋の中心から近いか遠いか、という話になります。
この権限というのは、この世界での意識の強弱とほぼイコールです。なので、権限の弱い一般協力者は、時ととして淡泊・無関心な態度を取ることもあります。なので、時として権限が強いものが自らの指揮下に組み入れることがあります。が、100%コントロールすることが出来るわけでは無いようです(例:鈴強制拘束事件)。
ほぼ完全にコントロール出来る存在として、この世界で作られた存在(これをNPCと呼んでおきます)があります。ただしこれは、美鳥の事例でわかるように、ずっと存在出来るものではありません。そのうち消えてしまうので、美魚は自分が入れ替わることで美鳥を維持しようとしています。恭介のルームメイトも、すぐに隣の部屋に移動して消えてしまっています。権限が強いもの、例えば恭介には、レノンのような持続時間が長いNPCも作れるようです。ただし、レノンはドルジと比べれば明らかなように、人格(猫格?)がありません。そういうものしか作れないようです。
と、ここまで書いたところで、世界構成の話に戻ります。
この世界に関する権限が複雑に入り乱れるのが、ゲームでは後半にあたるリフレインと、それに続く3部作です。その辺りの世界関係を示したのが以下の図です。
(クリックすると拡大します)
リフレインの話(の裏、といったら良いでしょうか)では、前期リトルバスターズメンバーが構築した世界同士が複雑に絡み合っています。特に、謙吾と恭介はどちらが主軸世界になるかを争っていた、ともいえるでしょう。
最終的には、理樹と鈴が新しく世界を構築することで一旦問題は解決します。ここまでの情報は一旦現実世界にフィードバックされているので、直接問題に関わっていなかった人達もある程度の事情は把握しています。
ですが、このあと問題が起きてしまいます。何者かの手引きによって、理樹と鈴が構築した世界が乗っ取られてしまうという事件が発生します。主犯は、佐々美が昔飼っていた猫のクロ(=佐々美シナリオ)と、北アフリカで死にかけている理樹の幼なじみのあや(=沙耶シナリオ)ですが、クロとあやに世界を乗っとる権限があるとは到底思えません。構築者か管理者の誰かが手引きした、としか考えられません。
誰が、何のために。目的として考えられるのは、もう一つ発生している世界、つまりは佳奈多シナリオにあたる世界、これを作るためでは無いかということです。佳奈多シナリオの世界は葉留佳世界の延長線上にあるものですが、葉留佳世界自体は既に消滅しています。これを建て直すには世界構築権限が必要ですし、構築権限があっても一人一回しか世界を作れないならその制約を何らかの方法で外さないといけない。そのための情報収集のために、クロとあやに力を貸したのでは無いか。というのが私の説です。
ぶっちゃけ、この黒幕が佳奈多なのでは無いか、と考えていたのですが、いざ図面を見てみるとどうも違うなあ、と。候補としていくつかのパターンが考えられますが、とりあえず単独犯じゃないなと。
とまあ、とりあえず新説をまとめてみた。本来の目的である「佳奈多何者?」という話は、これ書いてる間にちょっと見えてきたけど、まだ書けるレベルじゃない。