むかしむかし。まあリトバスが発売されたぐらいの昔と思ってください。…結構前ですね。
あるところに、佳奈多姫と理樹星という、たいそうまじめで賢くて働き者の二人がおりました。
佳奈多姫は堅物で融通が利かないし、理樹星はひ弱なくせに正義感が強くて、二人ともすぐ自爆するタイプでした。
そんな二人を心配した女子寮長のあーちゃん先輩は、二人を仲良くさせてお互いを見つめ直すきっかけを作ろうと思い、寮長室で二人きりにして作業させることにしました。
最初は理樹星がさんざん罵倒されたりと大変だったようですが、じきに仲良くなりました。
大変仲良くなりました。
仲良くなりすぎて、そのうち寮長室に来ずに保健室に行くようになってしまいました。保健室で何をしているのかは、まあ書きません。怒られるのはいやなので。見つめ直すのではなくて見つめ合っていた、ぐらいにしときましょうか。
その話を聞いて、恭介さんは激怒しました。
「俺の理樹に、なんてことを…!」
恭介さんはいやがらせに保健室に笑える音楽を流そうとしましたが、保健室は佳奈多姫のテリトリーだったため、うまくいきませんでした。
そこで恭介さんは、理樹星と佳奈多姫が行き来できないように、大雨を降らして二人の間に激流を作ってしまいました。
「恭介! おまえ、何で男子寮と女子寮の間に天の川こさえてくれてんだよ!」
「今日女子寮に夜這いかけるつもりだったのに!」
「夜這いかける振りしてわざと警備の女子寮生に捕まってしばき倒されるのだけが生きる楽しみだったのに!」
恭介は一部の男子寮生の突き上げを食らってしまいました。
「まあまあ、みんな。恭介のことはアタシが突き上げでもしばき倒しでもしておくから。ここは押さえて」
「あーちゃん先輩!」
「…何でおまえはここにいる」
「ちょっと所用があってね。男子寮長に。そしたらその間に恭介が天の川なんか作ってくれちゃうから。もう、帰れなくなっちゃったじゃないのん。責任とってね恭介☆」
あーちゃん先輩は恭介にまとわりついています。
「い、いや待て、帰れる、帰れるようにするから」
「あらそう。直枝くーん、かなちゃんのとこ行けるわよ」
「待て、それは駄目だ!」
「なによ。アタシが女子寮に帰れるなら、直枝君だってかなちゃんのとこ行けるでしょ」
「そうじゃなくて物理的な意味ではなく社会的にというかなんだなあのだな」
「およよ、かわいそうなかなちゃんと直枝君。アタシが二人の分まで思う存分恭介といちゃつくことにするわ…」
「いやだからそれは! わかった、7/7には会えるようにする、だから離れてくれ!」
こうして、二人は年に一度、7/7にだけ、会うことが許されるようになったのです。
しかし佳理なんて認めないという他ヒロイン勢の嫉妬で赤道付近の北太平洋上に上昇気流が発生し、熱帯低気圧となって日本付近に接近してくるため、この時期は雨が降って会えないことが多いのでした。
そこで旧暦の7/7頃にあたる8月中旬に東京の埋め立て地で二人は会うようになったのでした。
めでたしめでたし
「…コミケデートって、かえって周りから嫉妬されますよ」
「ふえ? そうなの?」
「まあ、あの二人ならやらかしそうではありますけど」