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リトバス世界名作劇場 おかしのいえ

 
 むかしむかしあるところに、理樹と小毬という兄妹がおりました。
 
 ほんとの兄妹ではないのですが、二人とも家族を亡くした経験とかまあいろいろ共通するところがあったので義兄弟のちぎりを交わした、とかまあそういう方向で。
 二人は、両親に捨てられたとか意地悪な継母にいじめられたとか特にそういう目にあったわけでもないのですが、それだと話が進まないのでとりあえず二人で森の中まで来ました。
 すると、森の小道の中に「おかしのいえ 500m」と書かれた看板を見つけました。
 
「なんだろうこれ…。ここ東海自然歩道に指定されてるし、環境省の新しい施策かな?」
「ううん、これはきっと、テーマパークです」
「テーマパークって愛知県犬山市にある博物館明治村が最初といわれるけど、明治村が出来た当時はテーマパークという言葉は無かったからあまりそう呼ばれることが少なくて、それでディズニーランドが最初のテーマパークだと思ってる人が多いよね」
「その辺の事情はよく知らないけど。その愛知県犬山市に、お菓子の城というテーマパークがあるのです」
「へぇ…よく知らないけど。じゃあ、このおかしのいえというのも、そのお菓子の城みたいなものだということ?」
「きっとそうです。幸せの待っている場所なのです」
「うん、じゃあとりあえず行ってみようか」
 
 理樹と小毬はおかしのいえに向かいました。
 
 
 
 二人が500m程歩くと、森の中に殺風景な家が建っていました。
 
「おかしいな。方角間違えたのかな?」
「そうでもないみたいだよ。ほら、戸口に『おかしのいえ』って、看板が掛かってる」
「うーん。でもこの家、あんまり可愛くないし。認めたくないなあ」
「プレハブ小屋に太陽電池が乗っかってるだけだし、確かにお菓子の家って感じはしないね」
「これは、私じゃ無くて、はるちゃんか探偵ナイトスクープが担当すべき案件かな」
「桂小枝卒業したし、葉留佳さんがいいと思うよ」
 
 すると、扉が開いて中から女の人が顔を出しました。
 
「あれ、二木さんだ。どうしたのこんなとこで」
「葉留佳の名前が聞こえた気がしたので」
「うん、確かに今葉留佳さんの名前は口にしたけど」
「でもはるちゃんはここにはいないよ?」
「…そう」
 
 佳奈多はちょっとがっかりした表情をしています。
 
「二木さん…もしかして、葉留佳さんをおびき寄せたくて、こんなよくわからない家を建てたの?」
「は!? 何を言ってるのかしらあなた、意味がわからないわ。なあに、最近環境問題に関心を示し始めた葉留佳の気を惹きたくて究極のエコ住宅を建てて葉留佳を待ち構えていたとでもいいたいの?」
「はるちゃん、環境問題に関心持ち出したんだ」
「でも葉留佳さん、この家のことは知らないんじゃ無いかなあ」
「だから。葉留佳をおびき寄せたいんじゃ無いって言ってるでしょ」
「葉留佳さんに、佳奈多さんここにいるって伝えておこうか?」
「やめて」
「はるちゃんこういうの喜ぶと思うけどなあ。あ、とりあえずメール出しておくね」
「やめてって言ってるでしょ…ッ!」
 
 佳奈多は大慌てで小毬を制止し、そのまま腕を引いて家の中に連れ込んでしまいました。理樹も後を追って中に入り、扉は閉まりました。
 
 
 
「…何が目当て? お金?」
 
 家の中に入った佳奈多は、猜疑心でいっぱいでした。
 
「そういうんじゃないんだけどなあ」
「そうだよ。僕たちはただ、葉留佳さんと佳奈多さんが幸せになるようにって思って。それで葉留佳さんにメールを」
「だからそれはやめてって言ってるでしょ」
「メール駄目。そうだ理樹君。メールで連絡するのがだめなら伝書鳩を使えばいいのでは」
「はぁ!? あなた一体何を言って」
「そうだねそういうの葉留佳さんが喜びそうだ」
「…あなた達、とんでもなく危険だわ。仕方ないわね、しばらくこの家にいて貰います」
 
 理樹と小毬は、佳奈多に家の中に閉じ込められてしまいました。
 
 
 
 二人は佳奈多に家の中のことを手伝うように言われました。しかししばらくして理樹は持病のナルコレプシーが発症してぶっ倒れたので、部屋の中で絶対安静を言い渡されてしまいました。
 
「大丈夫だよ二木さん、もう平気だから」
「何言ってるのあなたっ! どれだけ心配したと思って…」
「理樹君。倒れたのは事実だし、しばらくいうこときいといた方がいいと思うな。家の仕事は私一人で何とかなるから」
「そんな、悪いよ…」
「ううん、私一人にやらせて。かなちゃん、掃除や洗濯はいいんだけど、お料理がなんか栄養のことしか考えないものばっかり作るから」
「あ、そっちなんだ」
「…栄養は大事でしょ」
「味や見た目も大事だと思うな」
「そんなに酷い味じゃ無いと思うけど?」
「もっと良くなると思うのです。なので少し任せて欲しいのです」
「でも…」
「かなちゃんだって、今日一日ぐらい理樹君の看病をしていたいのではないですか?」
「はぁ!? ちょっとあなた何を言って」
「よぉし。私頑張るよぉ」
 
 小毬が出て行ってしまったので、佳奈多は仕方なく理樹の看病をしました。
 
 
 
 その後一日以上経った後も、理樹は部屋で寝かされたままでした。
 
「だいじょうぶだって二木さんほんとにもう大丈夫だから」
「何が大丈夫なのこんなほっそい腕して」
「腕の話じゃ無かった気がするんだけど…それに僕そんなに腕細くないよ」
「じゃあ見せてみなさい」
 
 理樹はお昼の残りのフライドチキンを突き出しました。
 
「…なによこれ」
「これが僕の腕。ほら、すごく肉付きいいでしょ?」
「かなり重症みたいね」
「わっ。待って、待って! これ冗談だから、それぐらいわかるよね!?」
「ええ、冗談だって事はわかるわ。でも、あなたがお昼のフライドチキンを残したのも、また事実」
「えっ」
「食欲があまりないみたいね…」
「いやこれはたまたま」
「もうしばらく様子を見るわ」
 
 その後も理樹は解放して貰えませんでした。
 
 
 
「ありゃりゃ。かなちゃんまた理樹君の部屋でお仕事してる」
「目を離した隙に逃げたりするといけないから。見張ってるの」
「そんな。僕、佳奈多さんに黙って勝手に逃げたりしないよ」
「どうだか」
「…そうなっちゃいましたか」
 
 
 
 ある日のこと。小毬は近所のショッピングセンターが割り引きデーということで外に出ていました。
 
「小毬さん、たくさん買い込んでくるって言ってたな…。荷物大丈夫かな?」
 
 理樹は窓の外を見ながらつぶやき、そして小毬の荷物持ちをしようと思い立って、服を着替え始めました。
 そこに佳奈多が入ってきました。
 
「…何をしてるの」
「えっと…着替え」
「何故着替える必要があるの?」
「服は着替えるものだし」
「朝着替えたばかりじゃ無い」
「えっと、小毬さんが買い物行ってるから。たくさんあるだろうから、荷物持とうと思って」
「外に出るつもりだったの? 私に黙って」
「着替えたら言うつもりだった」
「…だめよ。外に出るのはだめ」
「そんな。小毬さんの荷物は」
「それは私が行くわ。あなたはここにいなさい」
「いやでもたまには外に出たいし。服も着替えたことだし」
「まだ途中じゃないの」
「そういえば途中だった」
「とにかく。あなたはここにいなさい。服も着たらだめ!」
「ええっ。服くらい着させてよ!」
「えっ。あっ、違うの。外に出る為の服を着るなって意味であって。ああもう、うるさいわね、いいからそれ脱ぎなさい!」
 
 佳奈多は理樹に馬乗りになって理樹が着ようとしていた服を脱がせようとしました。
 
「え、ちょっと佳奈多さん落ち着いて。自分で脱げるから!」
 
 理樹が抵抗しているところに、小毬が帰ってきました。
 
「ただいま〜たくさん買っちゃったけど最近は買ったもの家まで届けてくれるサービスがあるんだねえだから手ぶらでラクチンだったよぉ。って二人とも何してるの!?」
「…着替え」
「…の手伝い」
「そっかぁ。もうそこまでの関係に」
「…そうか。バレてるのならもう隠す必要も無い、か」
「いやいやいや、ちょっと待って違うから!」
「そうかあ、違うんだ。うん。じゃあ、私、何も見なかったことにして出ていくね」
「理解があって助かるわ」
「ええっ、なんでそうなるのっ!?」
「そうだ、今日は、お天気がいいし、洗濯物、全部、片付けちゃおう。うんそうしよう」
 
 小毬は部屋を出て行ってしまいました。
 
「ちょっと待って小毬さん。えっ、何。やめて! 佳奈多さんやめて!」
「大丈夫今は誰も見ていないから」
 
 
 理樹は佳奈多におかされてしまいました。
 
 
 めでたしめでたし。
 
 
 
 
 
 
 
 めでたいんだよ!
 
 
 
 
 
 
 
(2013/12/23公開)
 
 
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