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みおエモン〜バイバイン編〜

原案:藤子・F・不二雄「ドラえもん バイバイン」より
 
 
 まさ人君が部屋で腕組みをしながらなにやら唸っています。そこへみおエモンが入ってきました。
 
「どうしたのですかまさ人君」
「みおエモンか。ここに理樹がいるだろ」
「いますね」
「理樹って可愛いだろ」
「可愛いですね」
「でも食べたら無くなっちゃうだろ」
「無くなっちゃいますね…え?」
「食べても無くならない理樹がいないものかなあ」
「あの、ちょっと待って下さい。食べたら無くなるって…どういう意味ですか?」
「え? どういう意味も何も、そういう意味だが」
「そういう意味とは具体的に?」
「よくわからんがみんなそう言っている」
「まさ人君は意味を理解しているのですか?」
「実はよくわからん。そう言ったら、君もまだ無くしてないんだねと言われた」
「そうですね。出来ればそのままずっと無くさないままでいて欲しい気もしますが…」
「だよな。理樹が無くなったらいやだよな」
「まさ人君の方のことを言ったのですが…。まあいいです。ではアレを出しましょう」
 
 ぴこぴこ〜ん。
 
「バイバイ〜ン」
「バイバイン」
「何か言いたいことでもあるのですか?」
「いや、どういう意味かなと思って」
「そうですね、こほん。では説明しましょう。この薬は、つけると5分ごとに数が倍に倍にと増えていくものなのです」
「ああ、それこの間悪徳商法の講習でやった。何かネズミがどうこういう話だったから鈴に退治しろって言ったら、蹴られた」
「そりゃ蹴られますよ。まあ、原理としてはネズミ講と一緒ですね」
「じゃあ危ないんじゃないのか?」
「はい。ですので決して残したりせず必ず最後まで食べきらないといけません」
「食べたあとの理樹はどうなるんだ?」
「そこは都合良く元に戻ります」
「そうか。ならやってみよう」
 
 まさ人君とみおエモンはバイバインを理樹君に塗りたくりました。
 
そして5分経ちました。
 
「わあ。ほんとに増えた」
「では仲良く半分こ」
「待て。それじゃ意味が無い」
「は?」
「もう5分待てばこの理樹がさらに倍に増えるだろ? 食べてる間にまた増える。そうすれば二人ともずっと理樹を食べ続けられる」
「はあ。好きにしてください。静かにして欲しい子ちゃんでもからかってきます」
 
 みおエモンは部屋を出て行ってしまいました。
 
 そしてまた5分経って、理樹君は4人に増えました。
 
「よし。食べるか」
 
 まさ人君は理樹君の肩に手をかけました。
 
「俺達だっていつまでも子供じゃ無い…わかってるんだろ、理樹?」
「真人…」
 
 この後具体的に何をしたのかは言いません。
 まさ人君は満足するまで理樹君を食べまくりました。
 
「ふう。もうお腹いっぱいだ。おーい、みおエモン! 理樹まだ残ってるぞ!」
 
 しかしみおエモンは外に出て行ってしまったのか、呼んでも返事がありません。
 そうこうしてる間に理樹君はまた増えてしまいました。
 
「困ったな…このままでは理樹が増え続けてしまう。そうだ、みんなに食べてもらおう」
 
 まさ人君は理樹君を連れて、謙吾君の所に移動しました。
 
「パパ。理樹食べないか?」
「いつから俺が貴様の父親になった」
「そう細かいこと言うなよ。理樹たくさんあるんだ。食べなよ」
「ほう。お前が奢ってくれるとは珍しいな。なら遠慮無くいただくか」
 
 謙吾君は理樹君の肩に手をかけました。
 
「お前のことは俺がずっと守ってやる…そう言っただろ?」
「謙吾…」
 
 この後具体的に何をしたのかは言いません。
 謙吾君は満足するまで理樹君を食べまくりました。
 
「ふう。満足だ」
「おい、一人残ってるじゃ無いか。ちゃんと最後まで食べてくれよ」
「うるさいな。満足したと言っているだろう」
 
 まさ人君は部屋から追い出されてしまいました。
 
「まいったな、このままじゃまた理樹が増えちまう…わあ、また増えた」
 
 まさ人君は理樹君を連れて、恭介さんの所に移動しました。
 
「恭介。頼みがある」
「おう、なんだまさ人」
「理樹がたくさん余って困ってるんだ。食べてくれよ」
「いいぜ。俺理樹のこと大好きだから、全部食べちゃうぞ」
 
 恭介さんは理樹君の肩に手をかけました。
 
「ずっとずっと理樹と一緒にいたい…そう思う俺は傲慢か、理樹?」
「恭介、そんなこと無いよ…」
 
 この後具体的に何をしたのかは言いません。
 恭介さんは満足するまで理樹君を食べまくりました。
 
「ふう。満足だ」
「おい。まだ理樹一人残ってるぞ」
「理樹の蕾を全て摘み取ってしまうほど俺は罪深くは無い」
「何言ってんだお前」
「理樹のことが大切だからこそ全てを独占したくは無いんだ」
「かっこつけなくていいからとっとと全部食べてくれよ」
「うるさいな。これ以上食べられないって言ってるだろう!」
 
 まさ人君は部屋から追い出されてしまいました。
 
「参ったな…わあ、また理樹増えた」
 
 まさ人君は理樹君を食べてくれる人を探してあちこち回り出しました。
 
「わふー! リキが食べ放題なのですか!」
 
「ほう…好きなだけ理樹君を食べていいと」
 
「あたしあんまり食べられないぞ」
 
 あちこちまわりましたが、結局誰も全部食べきれませんでした。そうこうしてるうちに理樹君はどんどん増えていきます。
 
「参ったな…このままでは地球が理樹で埋まってしまう」
「これはもう、ロケットで宇宙に送り出すしか無いのでしょうか…」
「そんな事をしたらいずれ宇宙全体が理樹君が埋まってしまうぞ」
「それはそれで楽しそうだ」
 
 そこへ、みおエモンと静かにして欲しい子ちゃんがやってきました。
 
「おヨヨ! これは一体どういう事態ですカ!?」
「理樹が増え過ぎちまって大変なんだよぅ」
「まさ人君…だから、全部食べないと大変なことになるとあれほど…」
「全部食べようとしたしみんなにも頼んでまわったんだよでもどうにもならなかったんだよぅ」
「困りましたね…。これだけの直枝さんを全部食べきれる人など、誰かいるでしょうか」
 
 そこへ風紀委員長の二木佳奈多さんがやってきました。
 
「あなた達…これは何の騒ぎ?」
「あ、仕事出来過ぎさん」
「別に出来すぎってほどでも無いと思うけど。で、何の騒ぎ?」
「理樹にバイバインをつけたので全部食べないと大変なことになるのだが誰も食べきれなくて困っている」
「このままだと地球は理樹で覆われるな」
「地球が地球が大ピンチなのです」
「筋肉の次は直枝理樹というわけ? あなた達は本当におめでたいわね」
「すいません今回はわざとやってるわけでは無いんです」
「まあいいわ。要は直枝を食べればいいんでしょう? 私が全部引き取るわ」
「え。いやでもこの数」
「問題無いわ。保健室に運んで」
 
 佳奈多さんは理樹君を保健室のベッドに押し倒しました。
 
「あなたは大人しくしていれば可愛いんだから…だから私のいうことだけきいてればいいの。わかるでしょう?」
「佳奈多さん、むりやりはやめて…」
 
 佳奈多さんは理樹君を全部食べてしまいました。
 
 
 めでたしめでたし。
 
 
 
 
 
 
 
 
「…酷いオチですね。最悪です。美しくないです」
「ほええ。やっぱりヤマとかオチとかはつけない方がいいのかなあ」
「そういう話をしているわけでは」
 
 
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