むかしむかし・・・と言っても、1ナノ秒くらいの昔と思っておいてください。ある所に、二木佳奈多ちゃんというとっても真面目な女の子がいました。あまりにも真面目な為に「マ女」という称号をつけられたあげく、「マ女っ娘に変身する」という、なんだかよくわからない羞恥プレイまでさせられる羽目になりました。
でもそのおかげで密かに思いを寄せていた直枝理樹と結果的に結ばれることが出来たので、佳奈多自身にとってもきっと良いことだったと言えなくもないでしょう。
しかし。この結果を全く歓迎していない一人の人物がいました。
恭介「俺の理樹を…横取りしやがって!」
棗恭介君は、理樹君のことが大好きでした。そして、理樹も自分のことが好きだと信じて疑っていませんでした。それが、突然現れたくそ真面目女に理樹君をかっさらわれたものですから、おもしろいはずがありません。
恭介「俺は…二木佳奈多に復讐する!」
佳奈多の新たな災難が始まろうとしていました。
その日佳奈多は、クド・美魚と一緒に、街に買い出しに行こうとしていました。
クド「佳奈多さん。いよかん星人との勝負は、いつしていただけるですか?」
佳奈多「クドリャフカ…。あなた、まだいよかん星人やってたの?」
クド「はい。解雇された覚えはないので。任を解かれていない以上、最後まで職責を全うするのが人としてのあり方だと思います。」
佳奈多「クドリャフカ。あなたのその律儀な性格はとってもいいものだと思うけど。もう少し目の前の事実を疑い検証することも覚えた方がいいわ。」
クド「あの、それはどういう意味ですか?」
美魚「単刀直入に言ってしまえば、能美さんは来ヶ谷さんにだまされていたということです。」
クド「ガーン!」
そんな会話をしている彼女たちの前に、突如一人の怪しい男が現れました。
???「はりゃほれうまうー。」
佳奈多「…。」
クド「…。」
美魚「…。」
???「二木佳奈多。俺と勝負しろ!」
佳奈多「…西園さん、今日買うものはなんだったかしら?」
美魚「ガスボンベです。」
佳奈多「そうね。ガスボンベね。ガスボンベ。」
クド「ガスボンベなのですっ!」
三人とも目の前にある現実を無視することに決めたようです。
しかし、男は食い下がってきます。
???「無視するなぁっ! 二木佳奈多、俺と戦って勝つまで、ここは通さないぞ! そして俺が勝ったら理樹を返してもらう。」
佳奈多「…。」
佳奈多、はぁとため息をつきます。なんか変なのに目つけられちゃったなあ。風紀委員長とかやってた関係かしら。なんにしろ逆恨みなんだろうけど。でも、無視が通じる相手ではなさそうだし。何とか手っ取り早く片付ける方法はないかしら。
佳奈多、少し考えた後、クドに言いました。
佳奈多「クドリャフカ、醤油取って。」
クド「どぞです。」
クドから醤油を受け取った佳奈多は、その中身を勢いよく、怪しい男の顔面にぶちまけました。
???「目があぁ〜!」
クド「百万ですかっ!?」
恭介「違うっ…! 目が…目が痛てぇんだよ…ッ! ちくしょう…わけわかんねえよ…なんでこんな理不尽なんだよ…ッ! 俺だって…俺だってなあ…!」
怪しい男の正体であった恭介さんは、ちょっと錯乱しているのかいろいろうわごとのようなことを言い続けています。
恭介「チクショウ…話くらい聞いてくれたっていいじゃねえかよ…ッ! 俺だって、俺だって理樹のことがなあ…好きなんだよ…ッ!」
その言葉に、美魚がびくんと反応します。
美魚「二木さん。恭介さんの話を聞いてあげませんか?」
佳奈多「…まあ、話だけなら。」
佳奈多はあきらめたように言い放ちました。その言葉を受けて、恭介は語り始めました。
恭介「俺と理樹は愛し合っていた。そう、碇シンジと渚カヲルの如く。」
美魚「!!!」
恭介「だがそれを、二木佳奈多、お前は引き裂いた…!」
佳奈多「いや…愛し合ってたとか引き裂いたとか…ちょっと待ってよ。」
恭介「いや待たない。これから、俺と理樹がどんなに愛し合っていたか、それを語る。」
美魚「どうぞ。」
佳奈多「いや…ちょっと勝手に許可しないでよ。」
美魚と佳奈多が言い争っている間に、恭介は語り始めていました。
恭介「俺と理樹は、毎晩のようにベッドをともにしていた。俺と理樹は寮の部屋が違うから、そうすることはあまり簡単なことではなかった。だが、俺の同居者がいない時を見計らったり、理樹の同居者の真人に頼み込んで少しの間出て行ってもらって、そうして一緒の時間を過ごした。もちろん、唇も体も重ね合わせた。『理樹は本当に可愛いなあ』そう言いながら俺は理樹の股間に手を伸ばす。そういうそぶりを見せるだけで、理樹は身をすくめてしまう。俺はそんな理樹の頭を撫でて落ち着かせてから、そっと理樹の下着の中に手を入れる。理樹は『うっ』と軽い声を上げて、また身をすくめてしまう。『理樹は本当に感じやすいなあ。タマ筋に出てるぜ。』そう言って俺は理樹のものを愛撫し続ける。理樹の息が荒くなってゆく。次は穴だ。理樹が十分に快感を味わったところで、俺は手をもっと下にのばしていく。そこにある穴の周りを、優しく優しくなぞっていく。『気持ち悪いよ』理樹がそう言う。『すぐに良くなるさ』俺は答える。『でも、汚いよ。こんな所を触ったら』『理樹の体が汚いはずが無いじゃないか』そう言って俺は理樹の足を持ち上げ、ズボンとトランクスを引き上げて脱がした。理樹の秘部が俺からはよく見える。『恥ずかしいよこんな格好』理樹は抵抗するが俺はそれを無視して、自分の顔を理樹のそこに近づけた。『ちょ、ちょっと恭介』俺は舌を出して、理樹の穴の周りを舐め始めた。『ほら。理樹の体が汚いはずがないんだ。』『うう、余計に恥ずかしいよ』理樹の体は羞恥心で真っ赤に火照っている。『なあ、入れてもいいか?』俺が理樹に訊くと、理樹はやっとの思いという感じで首を縦に振った。俺は半立ちになり、自分のズボンを」
佳奈多「待った!ストップ!ストップ!」
美魚「…何故止めるのですか?」
佳奈多「何故って…いや、ヤバすぎでしょ。これは。いろんな方面で。」
美魚「きっとこれからがいいところなんですよ?」
佳奈多「よくない。とにかくこれ以上はダメ。禁止。」
クド「わふ〜・・・。」
クドはすっかりのぼせ上がってしまっています。
恭介「…まあ、いいだろう。俺たちがいかに愛し合っていたかと言うことは、これで十分に伝わったはずだ。」
佳奈多「それ、あなたの妄想でしょ?」
恭介「…。」
佳奈多「直枝がそんな、男同士で愛し合うなんて聞いたことない。そんな趣味があるとも思えない。」
恭介「何故そんなことが言える! お前に理樹の何がわかるって言うんだ!」
佳奈多「わかるわよ。だって、その…直枝はその…少なくとも今は、」
佳奈多、そこで少し口ごもってしまいます。
佳奈多「今は、私のことが…好きなんだから。」
佳奈多は顔を真っ赤にして、恭介に言ってやりました。恭介は、苦痛に顔を歪ませています。
恭介「くそぉ…ジェラスイイィィッッッ!!!」
佳奈多「そういうわけだから。あなたの馬鹿な話にこれ以上付き合っている理由はないわ。」
そう言って佳奈多、立ち去ろうとします。それを恭介呼び止めます。
恭介「待て。俺と戦え二木佳奈多!」
佳奈多「戦わない。あなたの話はちゃんと聞いた。これ以上馬鹿なことに付き合ってられない。」
恭介「ふふ…そうか? そんなことを言っていいのか?」
佳奈多「? 何よ。」
恭介「理樹は今、俺の手下の監視下にある。」
佳奈多「!?」
恭介「井ノ原真人を知っているだろう。あいつが今、理樹を監視しているはずだ。もしお前がここで俺を倒さなかった場合…。」
美魚「すぐにでも恭介さんが直枝さんの元に向かい、そして直枝さんと、あんな…ああこれ以上は言えません。」
佳奈多「ちょっと、何変な想像してるのよ。」
恭介「いや、あながち間違いでもないぜ。」
佳奈多「な…!」
恭介「何故なら俺と理樹は愛し合っているはずだからな。俺が理樹の元に向かえば、自然とそういう流れになるはずだ。」
佳奈多「この人…頭大丈夫かしら?」
クド「佳奈多さん。なんにしろ、勝負しないと棗さんはここを通してくれないと思うのです。」
美魚「ですね。」
佳奈多「…。」
佳奈多少し考えます。勝負ってことは、また例のあのマ女っ娘とかいうのに変身しなきゃならないのかしら。やだなあ。私、あれあんまりやりたくないんだけど。誰か代わりにやってくれないかしら。
佳奈多、少しだけ救いを求めるように美魚の方を見ます。美魚、すすっと引いていきます。
美魚「…申し訳ないのですが。今回私、中立の立場を取らせていただきます。」
佳奈多「え?」
美魚「筋からいえば、私はマ女っ娘仲間である二木さんを支援するべきなのでしょうけど。ただ今回、私極めて個人的な感情から恭介さんを応援したいという心境があるのです。両者の葛藤の結果、今回は中立の立場を取ることに決めました。」
佳奈多「個人的な感情って…何?」
美魚「それは言えません。」
佳奈多「どうしても聞かせてといったら?」
美魚「そうしたら私、恭介さんの味方をしますよ?」
佳奈多「…わかった。あなたはあんまり敵に回したくないわ。」
はぁ、と佳奈多はため息をつきます。
恭介「話は終わったか? では、いくぞ。」
恭介、またあの変な仮面をかぶります。
恭介「はりゃほれうまうー!」
美魚「さあ佳奈多さん。あなたも変身しないと、負けますよ?」
クド「そうです。今恭介さんがつけているマスクは、全ての能力値が+50になる、とっても強力な武器なのです。生身で勝つのは無理だと思います。」
佳奈多「詳しいのね、クドリャフカ。」
クド「情報戦の時代ですので。」
美魚「そういうわけですから、さっさと変身した方がいいですよ。ほら、恭介さん準備運動なのか、さっきからなんか怪しい動きしてます。」
佳奈多「でも…この場で変身するのは恥ずかしいわ。どこか物陰に隠れてしたいんだけど。」
美魚「そんなことをしている余裕はないと思いますよ。…いいじゃないですか、別に見られたって、変身シーン中で裸になるわけでもないですし。」
恭介「なにっ! 裸にならないのかっ!?」
佳奈多「…。」
クド「…。」
美魚「…。」
三人が一斉に、恭介を白い目で見ます。
美魚「あなたは…直枝さん一筋なのではなかったのですか?」
恭介「も、もちろん理樹一筋だ。何を言うのかねキミは。」
美魚「では何故、そんな女人の裸に興味を示すかのような発言を…?」
恭介「そ、それは、俺だって男だし、普通に女性に興味を示すことくらいあって当然…。」
美魚「…恭介さん。私、あなたには失望しました。」
恭介「そ、そんな…。」
美魚「そういうわけですから。私、中立はやめて二木さんに肩入れしたいと思います。」
佳奈多「肩入れと言わず、出来れば代わりに戦って欲しいんだけど。」
美魚「それは…ちょっと気が乗らないですね。」
佳奈多「どうして。」
美魚「多くの方がお察しの通り、私が変身した場合は美鳥の姿になるのですが…。でも、美鳥の立ち絵って少なすぎるんですもの。」
佳奈多「…それが理由?」
美魚「いけませんか?」
佳奈多「そう開き直られると、ダメとも言いづらいわね。…わかった。私が変身するから。」
美魚「ご理解いただけて幸いです。では私は、二木さんを援護する為に恭介さんを蹴り続けることにします。その間に二木さん、あなたは変身してください。」
そう言うと美魚は、恭介の元に近づいてゆき、こう言いました。
美魚「恭介兄さん。私、前からあなたのこと蹴りたかったの…。」
恭介「兄さん…!」
「兄さん」という言葉に恭介が感動している間に、美魚は恭介の足をげしげしと蹴り始めました。
佳奈多「なんか、あれだけでも十分勝てそうな気がしないでもないけど…。」
そう言いつつも佳奈多は、変身の為の準備に入ります。目を閉じ、自己暗示をかけ、そして大声で叫びます。
佳奈多「リリカルヘリカルトカマクレーザー、未来を繋ぐ胸キュンドッキンエネルギー、素粒子ビームでみんなのハートを融合しちゃえ〜!!!」
佳奈多の体が光で包まれ、そして佳奈多はマ女っ娘かなたんに変身しました。
恭介「って、三枝の姿じゃねえか。」
佳奈多「そのことには突っ込まないで。仕様らしいから。」
変身した佳奈多は体勢を整え、恭介に向かっていこうとします。と、そこにクドが何かを手渡してきました。
クド「佳奈多さん。今の佳奈多さんなら、これが使えるはずです。」
そういってクドは、ラッパを手渡してきました。
佳奈多「これは…?」
クド「葉留佳さんからもらった、『突撃ラッパ』です。使うとステータスがあがりますよ。」
佳奈多「で、でも…。」
クド「佳奈多さん。ここは腹をくくって、葉留佳さんになりきることが大事だと思います。そうしないと、恭介さんに勝つ事なんて出来ませんよ? 佳奈多さんなら出来ます。」
佳奈多「そ、そうね。そういうものかしら。」
佳奈多は突撃ラッパを受け取り、それを高らかに吹き鳴らしました。
ぱぱらぱっぱぱぱー!
佳奈多「とーつーげーきーーーー!」
佳奈多は万歳しながら、恭介に向かって突進していきました。美魚がまだ恭介のことを蹴っていましたが、佳奈多が突撃してくるのを見ると、すすっと離れていきます。
恭介「うわ!? な、なんだ。来るな!来るな!!」
恭介は逃げようとしますが、さっきまで美魚に蹴られていたので足が思うように動きません。そのまま、突撃してきた佳奈多に体当たりされてしまいました。
恭介「うわあああぁぁぁーーーっっっ!!!」
恭介はそのまま吹き飛び、変な仮面も取れてしまいました。そして美魚が取れた仮面の元に歩み寄り、それを手にとって、恭介の頭をぽかりと殴りました。
美魚「恭介さん…正座しなさい。」
恭介「はい…。」
美魚「二木さん…さあ、今のうちに直枝さんの元へ。」
佳奈多「え?」
美魚「直枝さんが監視されている…とさっき恭介さんが言っていたでしょう。探しに行った方がいいと思いますよ。」
佳奈多「…わかった。とりあえず心当たりを当たってみる。」
美魚「私も、恭介さんから場所を聞き出してお説教が済んだら、そちらに向かいますので…。」
クド「私も探してみるのですっ!」
佳奈多とクドは、手分けして理樹の居場所を探しに行きました。残った美魚は、恭介への説教を延々と続けていました。
美魚「恭介さん。そもそも、あなたのその緑川ボイスは何の為にあるとお思いですか?」
恭介「はい、はい…、すんません、おっしゃるとおりです…、はい、ほんとすいませんでした…はい、もう堪忍してください…、はい、はい、…、申し訳ございませんでした…。」
場所は変わって、理樹と真人の部屋。
真人「筋肉筋肉〜♪」
理樹「筋肉筋肉〜♪」
真人「筋肉筋肉〜♪」
理樹「筋肉筋肉〜♪」
真人「筋肉筋肉〜♪」
理樹「筋肉筋肉〜♪」
真人「筋肉筋肉〜♪」
理樹「筋肉筋肉〜♪」
真人「筋肉筋肉〜♪」
佳奈多「直枝っ! 大丈夫!?」
理樹「筋肉筋肉〜、って、え?」
佳奈多「…。」
理樹「…。」
真人「…。」
佳奈多「…何をしていたの?」
理樹「え? えーっと…。 筋肉筋肉〜♪」
佳奈多「そうじゃなくて。あなた、井ノ原真人に監視されてたんじゃなかったの?」
理樹「監視?」
真人「あー…。そういや恭介から、そんなこと依頼されてたっけなあ。でも監視ったってようするに見てるだけだろ? だったら、どうせ同じ部屋だし、ただ見てるだけでいいなら何にもしなくていいかなと。」
佳奈多「…。」
理樹「ま、まあそういうことらしいよ?」
佳奈多「で。さっきの筋肉は、いったい何なの?」
真人「そりゃおめえ。あれはいつもの、理樹と俺との筋肉コミュニズムよ。」
理樹「暇だったから…。それと真人、コミュニケーションね。」
佳奈多「…。」
理樹「あれ? どうしたの佳奈多さん?」
佳奈多「人が心配して駆けつけてみれば…何が筋肉筋肉よ!」
真人「何だと聞き捨てならねえな。あたしは毎日毎日理樹といちゃいちゃしたいのにいっつもこの筋肉バカが邪魔します、おまけに筋肉筋肉とかいって変な遊びして悪い洗脳でもしてるんじゃないかと心配です、あー、この筋肉どっかに消えてくれないかしらー、とでも言いたげだなあ、ああん?」
佳奈多「その通りよ!」
真人「え。」
佳奈多「何よ! 直枝のバカ…ッ!」
そう言って佳奈多は、部屋を飛び出していってしまいました。
理樹「ま、待ってよ佳奈多さん!」
理樹も、佳奈多の後を追って部屋を出て行ってしまいました。
後に残された真人は呆然としています。
真人「俺は…どうすれば。」
クド「いつも通りにしていればいいと思います。」
真人「クド公…。 いつも通りっていうと、筋肉でもいいのか?」
クド「はい。筋肉でもかまわないと思います。」
真人「よっしゃぁ! 筋肉筋肉〜!」
クド「まっする いず のっと えぼりゅーしょん。いっつ れぼりゅーしょん! なのですっ。」
美魚「いいですか恭介さん。そもそもBLというのはですね。」
恭介「はい…、あの、俺、今、何の件で怒られてんですか?」
そんな様子を、陰から見守る一人の少女の姿がありました。
鈴「馬鹿な兄貴だが…敵は取らねばなるまい。」
とりあえず 完
2008年11月19日執筆