いろいろすれ違いな姉妹のバースデイ
理樹「佳奈多さん、今日は葉留佳さんの誕生日だね」
佳奈多「そうね」
理樹「ということは、佳奈多さんの誕生日でもあるよね」
佳奈多「そうとも限らないわよ」
理樹「どうして? 二人は双子なんでしょ?」
佳奈多「双子だからって同じ誕生日とは限らないわ。特にKeyではね。藤林杏と藤林椋の誕生日が違ったのは有名な話よ」
理樹「でもあれは後で訂正されたよね?」
佳奈多「そうね。でも実際、双子が同じ日に生まれるとは限らないのよ。双子と言っても、普通分娩なら一度に出てくるわけではないし、帝王切開でも手間取れば0時を過ぎて誕生日の日付が変わってしまうという事はあり得るわ。wikipediaによると、アメリカのルイジアナ州で1994年から1995年にかけて、誕生日が95日離れた双子が生まれたらしいわ。異父二卵性双生児に比べれば、ずっとありふれた話よ」
理樹「そうなんだ。でもそのwikipediaに、佳奈多さんも葉留佳さんも誕生日は10月13日と書いてあるよね?」
佳奈多「…。」
理樹「どうしてそんな無駄な抵抗するのさ」
佳奈多「そ、それは…」
理樹「それは?」
佳奈多「あ、あの子と一緒の誕生日なんて、嫌だったからよ」
理樹「ホントに? て言うか、嘘でしょ」
佳奈多「…。」
理樹「なんでそんな嘘つくのさ。もうみんな真相は知ってるんだから、虚勢張らなくてもいいのに」
憂希「ではあたしが説明してみましょうか」
理樹「誰!?」
あーちゃん「クドわふたーに出てくる併設校の科学部部長で、クドのテヴア時代の先輩の、氷室憂希さん。主人公なら覚えときなさいね」
憂希「ちなみに城桐キャラよ」
佳奈多「クドわふたーで出てきたキャラなんだから基本的には城桐キャラに決まってるでしょう。何を言ってるのかしら」
憂希「そう? 食堂のおばちゃんって城桐キャラかしら…?」
佳奈多「そんなレベルで話されても…」
理樹「そんなことよりさっきの話説明してよ。城桐キャラは変人という事はよくわかったから」
憂希「…。」
佳奈多「…。」
あーちゃん「…。」
理樹「あ、有月姉妹はまとも、かな…?」
憂希「全然フォローになってないわ…」
理樹「そんな事より説明! 説明お願い! 話進まないから」
憂希「いつか追求するからね、忘れないでよ。で、さっきの話を解説すると。二木佳奈多の心情としては、自分が、自分自身が、妹の葉留佳の誕生日を祝いたいと」
佳奈多「!!!」
理樹「祝えばいいじゃない」
憂希「でも彼女も同じ誕生日なのよ? それなのに祝う立場になっちゃうのは変だと、考えたのじゃない?」
佳奈多「…。」
理樹「そうなのかなあ?」
あーちゃん「ま、例えば卒業生が送別会の幹事やってたら、それは変だしね」
理樹「うーん、それもそうか」
憂希「ま、でも誕生日が同じという現実は変えられないわ。この件に関してはあきらめる事ね」
佳奈多「…そうね…」
理樹「…いや、そういうことなら手はある」
佳奈多「え?」
憂希「無いわよ。戸籍上の名前や本籍を変える事は出来ても、誕生日を変える事は出来ないのよ。事実と違うという証明がされない限りはね」
理樹「いや、誕生日を変える必要はない。ただ、時間を変えてしまえばいいんだ」
佳奈多「…は?」
理樹「時間を入れ替えて、誕生日じゃない日の佳奈多さんが誕生日の葉留佳さんを祝えば良いんだよ」
佳奈多「ごめん何言ってるのかわからない。ううん正確に言うと、言ってる事が非現実的すぎて、理解したくない」
憂希「そうね、そんなできない提案をされてもねえ」
理樹「デキルヨ!」
あーちゃん「あんたは中津静流か」
佳奈多「で。いったいどうやるって言うの?」
理樹「僕は、時間を変える事が出来るんだ!」
佳奈多「…馬鹿じゃないの?」
憂希「なにそれ。あの、厨二って奴? それともデムパ?」
理樹「何言ってるの! リトルバスターズのラストそういう展開だったでしょ! 遺伝子まで書き換えちゃったんだよ! もう忘れちゃったの!?」
憂希「いや、あたしクドわふからのキャラだし…」
あーちゃん「あたしもリトバス時代は立ち絵無しだったし…」
佳奈多「私もリフレイン以降は絡んでないから…」
理樹「うわー。なんかそこはかとない僻みを感じるよー」
佳奈多「だって野球にも出してもらえなかったし…」
理樹「出たかったんだ」
佳奈多「べ、別に…ッ。ただ、ファンが…」
憂希「まあ、朱鷺戸沙耶は出てるのに二木佳奈多はスクリプトの都合で無理ですとか言われても、納得いかないわよねえ」
佳奈多「べ、別に良いのよ…野球なんて…本編に関係ないし…」
理樹「そう、その本編! 僕ちゃんと過去書き換えてるでしょ!? 出てる出てないとかは置いといて、この事実は認めてよ!」
憂希「でもクドわふだとあなた、ナルコレプシー治ってないのよ? つまり過去書き換えられてないのよ?」
佳奈多「それが本来の流れよね。そもそも過去書き換えなんて、そんな荒唐無稽な話あり得ないわ」
理樹「でも、リトバスってそういう話なんだよ!」
憂希「そう。じゃあもし仮にそれが可能だとして。でもあれは、あなたが虚構世界とかいうこの宇宙の物理現象を無視した特殊な空間にいたからこそ出来た次元跳躍的な行動だと考えるべきじゃないかしら。つまり、普通の空間にいる限りは、あなたは時間をいじる事なんて出来やしない。そう考えるのが妥当じゃない?」
理樹「それは…。じゃあわかった、虚構世界をもう一回作ってもらう! 恭介に頼んでみる!」
佳奈多「またそんな無茶苦茶を…。というかもう良いわよ、そこまでしなくても」
あーちゃん「まあ、そう言わず最後まで付き合ってみたら? 方向性はともかく、気持ちは真剣みたいだし」
憂希「あたしも、ほんとに出来るのなら興味あるわね。ついていくわ」
恭介「風が気持ちいいぜ…。ここは屋上…。俺は片足を欄干にかけて一人でかっこつけながら、ちょっとした自己陶酔に浸っている…。今回筆者が地の文は書かないと決めやがったから、こんな事もいちいち声に出して言わないといけない…虚しいぜ」
理樹「恭介、ちょっといいかな?」
恭介「なんだ、理樹か。いいぞ、理樹のいう事なら大概の事は聞くぞ。性的な話も含めてな」
理樹「性的な事はどうでもいいけど、話を聞いてくれるのはうれしいよ。実は、恭介にもう一度虚構世界を作って欲しいんだ」
恭介「…理樹。確かに、作品を重ねるごとにお前がだんだん馬鹿になっていっている事はわかってる。わかってはいるが、だからと言って認めたくはないものだ」
理樹「ひどいよそんな言い方…。だいたい、クドわふではそんなに馬鹿じゃなかったでしょ」
恭介「俺出てなかったから知らない」
憂希「またここにも僻み根性の人が…」
あーちゃん「まあ、就職活動してたんだからこれは仕方ないんじゃない?」
恭介「まあそれは置いといて。虚構世界をもう一度作れというのは無理な話だ。あれは俺の、生死をかけた一生一度の大技だ。やれと言われて安易に出来るものじゃない」
理樹「でも、時間を動かしたいんだよ」
恭介「そういう話なら、尚更無理だ。SFの世界でも、時間絡みの話は大変に複雑で緻密な考察と理論設計が必要になる。安直に手を出していいものじゃない」
理樹「でもリトバスは特に深い説明とか無くそういう展開になってたのに」
恭介「あれは麻枝准だから許されるんだ。一介のSS書きがそんな事したら失笑を買うのがオチだ」
理樹「え? SS書き? 恭介の話じゃなくて?」
恭介「その辺は気にするな。とにかく、虚構世界は無理だ。何か別の案を考えるべきだな」
理樹「別の案と言っても…」
恭介「理樹、目的と手段を混同するな。お前が本当にやりたい事は一体何だ? まずそれを整理してみろ」
理樹「それは…佳奈多さんに喜んでもらいたい」
佳奈多「え…? ちょ、直枝、違うでしょ」
あーちゃん「違わないんでしょ。本当の目的はそういう事、って事でしょ。直枝君って、意外と素直なのね」
佳奈多「な…! な…! な…!」
恭介「ふむ。それで理樹は、どうしたいと思った?」
理樹「佳奈多さんは葉留佳さんの誕生日を祝いたかった。でも自分も同じ誕生日だから、直接お祝いするのはおかしいという話になった。」
恭介「だから時間をいじろうとしたわけか。だがそういう話なら、別の視点もあるんじゃないか?」
理樹「別の視点?」
恭介「つまり、二木佳奈多が二木佳奈多でなくなればいい。二木佳奈多以外の誰かが三枝葉留佳の誕生日を祝うのならば、何の問題もなくなる。そうだろう?」
憂希「それはそれですごい屁理屈っぽい気がするけど…具体的にはどうやるの?」
恭介「二木には自分を自分でなくする得意技があるだろう。三枝葉留佳に変身するという」
理樹「あ!」
恭介「シナリオによってはそれで理樹を犯しちゃうしな」
あーちゃん「へーーーーーーーーーーーー」
憂希「へーーーーーーーーーーーーーーー」
理樹「わーっ! わーっ! わーっ!」
佳奈多「嫌! やめて! その話はやめて!」
あーちゃん「ま、この件は後でゆっくり追求するとして。かなちゃん、はるちゃんに変身するのはすぐ出来るの?」
佳奈多「出来ますよ、いつでも準備してますから。あと、いつからはるちゃん呼ばわりするようになったんですか」
あーちゃん「NHKのニュースに冬将軍が出るようになった頃から、かしら」
恭介「結構前だよな、それ」
理樹「かなちゃん呼ばわりはもう許したんだね」
憂希「いつでも準備してる事には誰も突っ込まないのね…」
あーちゃん「そういうわけで、変身完了です!」
佳奈多「…。」
理樹「文字じゃ全然わからないけど、どこからどう見ても葉留佳さんです!」
あーちゃん「かなちゃん、『アヒョー!』とか『葉留佳ちんちん18禁』とか言ってみてよ」
佳奈多「葉留佳はそんな事言いません! 前半はともかく!」
憂希「前半は言うのね…」
恭介「そしてうまい具合に三枝葉留佳も呼び出した。事件の臭いがすると携帯電話で告げただけで、すぐ飛んできた」
葉留佳「その一言ではるちんは騙された事を理解しました! いやー、参りましたネ」
理樹「まあ、そう参る事もないよ。これからいいことがあるから」
葉留佳「?」
理樹「この人が、話があるって」
佳奈多「…。」
葉留佳「…誰デスカ?」
佳奈多「わ、わ、わ、…」
葉留佳「輪? 輪っか? 円デスカ? 円はあらゆる図形の中で最も性質がいいという、あれデスカ?」
憂希「好きなタイプだけど関わりたくない人が、こんなところにいたなんて…」
佳奈多「私は葉留佳! 三枝葉留佳!」
葉留佳「何言い出すんですカ突然? 確かに姿ははるちんにそっくりデスケド」
佳奈多「サイグサハルカハシンダ! サイグサハルカハシンダ!!!」
葉留佳「何て事言うんデスカ」
理樹「佳奈多さん落ち着いて、テンパらないで!」
葉留佳「お姉ちゃん?? まーた私の格好して遊んでるんですか? 何やってんでスカ。風紀委員と寮長と女子高生弁理士の仕事はどうしたんデスカ」
憂希「最後の、何…?」
佳奈多「遊びじゃないわよ! その…葉留佳、誕生日おめでとう」
葉留佳「…それを言うためにわざわざそんな格好を?」
あーちゃん「誕生日が同じかなちゃんが誕生日のお祝いを言うのは変だからという、彼女なりの理屈なのよ。察してあげて」
葉留佳「それで私の格好を?」
恭介「そうだ。これで二木は二木でなくなった。問題無い」
葉留佳「でもそれって、私が私におめでとうって言ってる事になりますヨネ? 余計変じゃないデスカ?」
理樹「あ」
あーちゃん「そうよねー」
恭介「フ、俺とした事が…」
憂希「私は気づいてたけど、敢えて黙ってた」
佳奈多「え、えっと、そ、その、その、その、…」
葉留佳「はあ…。まあいいデス。お姉ちゃんが変な事するのは、今に始まった事じゃないですカラ」
理樹「葉留佳さんには言われたくないと思うよ…」
あーちゃん「まあまあ。姉妹なんだし、その辺はお互い様という事で」
佳奈多「…。」
葉留佳「…まあ、いいデスケドネ」
恭介「では、これで一件落着という事で」
理樹「うん。じゃあ、僕たちからもおめでとうを言わせて」
あーちゃん「そうね。おめでとう」
憂希「ま、私もおめでとうと言っておくわ」
恭介「おめでとうな」
クド「おめでとうなのですー」
初「おめでとうございます」
椎菜「おめでとー」
真人「おめっとさん」
謙吾「おめでとう」
小毬「おめでとう〜」
鈴「うん、めでたい」
唯湖「めでたいな」
美魚「おめでとうございます」
佐々美「おめでとうございますですわ」
沙耶「おめでとう」
佳奈多「ソウカ、ワタシハココニイテイインダ!」
葉留佳「だから、私の格好で変な事言うのやめてくださいヨ。て言うか軽くキャラ破壊デスヨ」
Fin
クド「ふう。私たち、なんとか最後で出してもらえましたねえ」
椎菜「おなじ城桐キャラなのにはぶられたらどうしようかとおもったよー」
初「筆者によると他意はなかったとの事ですが…。それよりも、一日遅れた事の方が問題ですね」
クド「城桐信者鞍替え宣言をしておきながら遅刻した筆者への抗議メールはこちら!」
初「yahooドメインからのメールは何故か届かないらしいので、ご注意を」
今度こそ 終わり
2010年10月14日執筆