名雪「パパなんていないよ。」
北川「俺だよ、俺の誕生日。」
名雪「知らないよ。知るはずもないよ。そんなもの存在しないもん。」
北川「え?!」
名雪「北川君に、誕生日を持つ権利なんて無いよ。」
北川「が〜〜〜〜ん」
名雪「もしそんなものがあったら、わたしアラーの神を呪ってガウディの城に火付けてやる。」
北川「そこまで言いますか・・・・。」
北川エィプリル・フゥル大作戦
北川「と言うことで、俺の誕生日は4月1日だ。」
祐一「何故。」
北川「エィプリル・フゥルと言うからな。」
祐一「北川・・・・。何も、そこまで自虐的にならなくても・・・・。」
北川「いいんだ。今の俺は、ペシミストなのさ・・・・。」
そんな、精神的に病んだ俺に、秋子さんが声をかける。
秋子「北川さん、どうなさったんです?」
北川「いいんです、放っておいてください。僕なんて、この世に存在しない方がいい人間なんです。」
秋子「そんなことありませんよ。さあ、こっちにいらっしゃい。」
北川「あ・・・・・。」
秋子「私がこうして暖めてあげますから。心まで温まるかはわからないけど。」
北川「いえ・・・あなたの気持ち、心の奥底まで、しっかりと伝わっています・・・」
秋子「そう、それは良かったわ。」
北川「秋子さん・・・・」
秋子「潤ちゃん・・・・。」
北川「秋子さん・・・・・・・・・」
祐一「おーい。」
北川「そうですね、あんなどうしようもない甥なんて、放っておきましょう。」
祐一「・・・何言ってやがる。」
香里「何やってるの?また漫才の練習?」
祐一「いつ誰が漫才の練習したって?」
香里「いつでも、相沢君と北川君が。」
祐一「北川はともかく、俺まで含められるのは心外だな。」
北川「ああ、いけません、そんなところを・・・・」
香里「・・?!なに言ってるのこいつ。」
祐一「ああ、なんか白き夢の世界へ旅立っちゃったみたいなんだ。香里何とかしてくれよ。」
香里「どうしろって言うのよ。」
祐一「それは自分で考えてくれ。」
香里「あたしにはどうしようもないわ。関わりたくないし。」
祐一「そんなこと言わず、頼むよ。なあ。」
香里「どうにかしなきゃいけないものなの?放っておいてもいいんじゃない?」
祐一「でもなあ・・・。また名雪がおびえるといけないし・・・・。」
名雪「(眠)北川君イヂメて、ストレスうっぷんぜーんぶ吹っ飛ばすよ・・・・くくくくくく・・・・・・。」
香里「しっかり順応してると思うわ。」
祐一「なんか・・・・悔しいな。」
石橋「きゃぴーん。ホオムルウム始めちゃうよん☆」
香里「あ、石橋きたわよ。」
祐一「平然としてるな香里・・・・。」
石橋「ん、なんだそこ。そう、相沢の周囲にいる二人。」
謎の女生徒「(さっ)」
祐一「こいつ、身動き早いな。そんな事しなくても、二人が名雪と北川だと言うことは暗黙の了解なのに。」
石橋「ん〜、水瀬はまた寝てるのか。」
名雪「(眠)ホームページ作って、あること無いこと書いてやろうかな・・・・」
石橋「寝言か・・・。北川は・・・?」
北川「(夢)ああそんな真っ昼間から、気持ちよすぎます・・・・・」
石橋「・・・・何考えてんだこいつは。おい相沢、起こせ。」
祐一「結局俺がやるんかい・・・・おい名雪、北川が結婚しようって。」
名雪「(びくうっ!)」
祐一「効果覿面。おい北川、窓の外に秋子さんがいるぞ。」
北川「え?!どこどこどこどこどこ?!」
祐一「二キロくらい先かな。」
北川「騙されたぁ〜」
石橋「北川、水瀬・・・、お前らそろいも揃って。似たもの夫婦になるぞ。」
名雪「(なゆちゃんショックでのっぺらぼー)」
北川「先生、なんて事言うんです!あなたは、あなたは僕たちに、近親相姦やれって言うんですか?!」
石橋「き、近親そーかん?!」
石橋、言語情報検索中。
80286使用のため、時間がかかります。しばらくお待ちください。
石橋「・・・なんだ今の意味不明な解説は?」
祐一「ただの電波ですよ。」
石橋「そうか、なら問題ないな。おい北川、近親相姦とは、どういうことだ。」
北川「近親相姦(きんしんそうかん):血縁関係の近い同一家族内の成員が行う性的交渉のこと。あらゆる社会において近親相姦のタブーを犯すことは反社会的行動とみなされ,社会秩序の危機となる。レビ・ストロースはこのタブーの重要性について論究し,精神分析の方面からフロイトも同じ問題を考察している。<MYPEDIA for WinTextより>」
石橋「そういうことを訊いているのではなく・・・何でお前と水瀬が、近親なんだ?」
北川「決まっているでしょう。僕がなゆちゃんのパパだからですよ!」
石橋「・・・よくわからんが。それは、父親という意味じゃ、無いよな?」
北川「父親です!」
石橋「そんな力まなくても・・・。いやしかし待て、お前と水瀬は、同じ年齢のはずじゃ・・・・。」
北川「もちろん、義理のってことになりますがね。」
石橋「なるほど・・・。だったら、近親相姦という言葉は、少し不適切じゃないか?」
北川「何故です!」
石橋「近親相姦の定義をもう一度読み返して見ろ。」
北川「血縁関係の近い・・・血縁関係・・・。血縁。」
石橋「そう、血縁。つまりは血族。姻族は該当しない。」
北川「つまり・・・俺となゆちゃんがあれしたりこれしたりしても、近親相姦にはならない・・・・」
祐一「するなよ。言っておくが。」
北川「ふふふ・・・そうか、そういうことだったのか・・・・・。」
香里「目が、やばくなってる。」
北川「なゆちゃん・・・・。」
名雪「北川君、変なこと考えたら焼き殺すからね。」
北川「いいとも、二人でこれから、燃えさかる炎のような愛を・・・・・」
ごすっ
北川「うぐっ・・・・・」
名雪「伝説の名刀水瀬木刀、だよ。」
祐一「いつの間に持ってきたんだ。」
香里「北川君、大丈夫?」
北川「ああ、大丈夫さ・・・それに、今の一撃で、俺は目が覚めた。」
祐一「寝てたんかい!」
北川「俺の愛すべき人は、この世で只一人秋子さんだけ。それをよりにもよってその娘に心変わりしようとするなんて・・・・。俺って最低だ。」
名雪「うん。最低、だよ。」
北川「この腹の痛みは、受けるべき当然の報い。否、むしろ報いとしては少ないくらいだ・・・・。」
祐一「そうかそうか。じゃあ、足りない分を俺が・・・・」
北川「そうだ、俺は今すぐ、このことを秋子さんに謝罪しなければ!秋子さぁ〜〜〜〜ん!!!」
ずどどどどどどどど
祐一「ち、うまいこと言って逃げやがったな。」
香里「あ、もう外にいる。靴くらい履きなさいよね。」
石橋「北川早退、と。」
北川「あきこさぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!」
どしぃん!
北川「う・・・・なんだ、体が動かん。何者だ、俺の恋の行く手を妨げるものは!」
秋子「あらあら潤ちゃん。今日はどうしたの?」
北川「あ、秋子さん!今すぐそのおそばに・・・・・・行けない。」
秋子「現代芸術ですか?上半身だけドアからつきだして。」
北川「なんですと。ああっ、なんということだ!」
秋子「・・・写真、撮っておきますか?」
ああ、秋子さん意地悪です・・。でもその意地悪さも、この潤の小さなハートを貫くときめきとなるんです・・・・
ぱしゃぱしゃぱしゃ
北川「・・・ほんとに撮っちゃうんですね。」
秋子「記念ですから。」
記念。記念。二人の記念。
それは指輪であったり押し花であったり浜辺の貝殻であったり。
でも、僕たち二人の記念品は、その写真なんですね・・・・・・
秋子「撮り終わったから、もういいですよ。」
北川「え?」
秋子「いつまでもそうしているの、大変でしょう?」
北川「ええ・・・あのでも、・・・・抜けないんですけど。」
秋子「あら、そうだったんですか。」
北川「秋子様・・・申し訳ありませんが、手伝っていただけませんか?」
秋子「はい。」
ああっ、秋子さんが近づいている。そう、その手は、まさに俺を救うために、俺を抱きかかえるために、今この身の元へと差し出されて・・・・
どすっ
北川「な、なんだ。尻が痛いぞ。」
断っておくが、決してあっちの趣味があってその所為で痔を煩っているわけではない。
ごすっ
北川「まただ!何事だ!」
名雪「祐一、この木刀で殴るといいよ。」
祐一「おう、そうだな。」
北川「うごうっ!」
思わず尻を手で押さえたくなるほどの痛み。
しかし尻はドアの向こうにあるので、抑えようにも抑えられない。
北川「し、尻が・・・・」
秋子「お尻が痛いんですか?」
訝しげな目で見つめる秋子さん。
ああ、そんな目で見ないで・・・ 潤は、決して決して痔なんかじゃ・・・・
祐一「はやくっ、行かんかいっ!」
ずごぉん!
北川「おおうっ・・・・・!」
すぽぉん。
秋子「あら、抜けましたね。」
祐一「ふう、やっとどいてくれたか。」
北川「痛い、いたい・・・・・」
秋子「あら名雪に祐一さん。おかえりなさい。」
祐一「ただいま秋子さん。」
名雪「ただいま。」
祐一「あ〜、腹減った。何か小腹に納めるもの無いですか?」
秋子「ジャムならありますよ?」
祐一「結構です。」
秋子「食べたいってことですね。」
祐一「がーん。」
北川「おいこら相沢、俺を無視していこうとするんじゃない・・・」
祐一「なんだ北川いたのか。」
北川「人の尻さんざん殴っといてそれはないだろう」
祐一「俺は知らないぞ。」
北川「その手に持っているのは何だ!」
祐一「これか?これは今晩俺が魔物と戦うためのものだが?」
北川「訳のわからん言い訳するなっ!」
秋子「まあまあ北川さん。さあ、こっちに来て、手当てしましょう。」
名雪「お母さん・・・・。また、中入れるの?」
秋子「いけませんか?」
名雪「・・・・ううん。」
なゆちゃん・・・やっとわかってくれたんだね。
名雪「お母さん、信じてるからね。」
秋子「はいはい。さあ潤ちゃん、お尻出して。」
え゛?!
北川「いや、それは、あの、さすがに・・・・」
秋子「でも、出さないと手当てできませんよ?」
北川「で、でも・・・・」
祐一「どうした北川。石橋の前ではすぐ出すくせに。」
北川「出すかボゲぇっ!」
秋子「さあ、遠慮しなくて良いんですよ。」
北川「いや、あの、でも・・・。やっぱり手当良いです。このまま寝かせてください。」
秋子「そうですか?じゃあ、寝かせて起きますね。」
北川「はい。で、あの・・・できればその、膝枕なんか・・・」
祐一「こいつ、調子に乗りやがって。」
名雪「そうだよ、膝枕なんて!北川君なんか、国鉄越美北線の枕木で十分だよ!」
北川「せめて北陸本線にしてくれ・・・・。」
祐一「どう違うんだよ。」
翌日。
北川「う、尻が痛ひ・・・」
尻の痛みは退かず、俺はそれを抑えながら校内を移動するという、無様な姿をさらしていた。
祐一「よお北川。まだ痔は治らないのか?」
北川「誰が痔だっ!」
佐祐理「ふぇ、北川さん痔なんですかぁ?お薬あげようか?」
祐一「・・・痔の薬、持ってるのか?」
佐祐理「持ってないです。」
北川「・・・俺、行くね。」
佐祐理「・・・・・・・。」
佐祐理「えいっ☆」
ぶしっ
北川「うごおぉぉっっ!!」
佐祐理「そんなに苦しむなんて・・・。やっぱり痔ですね。」
北川「そんな剣で肛門直撃されたら、誰だって苦しむわあ!」
祐一「で、どうしたんだその剣。」
佐祐理「さっき舞が落としていったんです。祐一さん、見ませんでした?」
祐一「さあ、見てないなあ。」
北川「川澄舞なら、中庭にいたぞ。」
佐祐理「ありがとうございます、変態で痔な北川さん。」
・・・・また変な呼び名がつけられた。
北川「ふう・・・・・」
教室にたどり着いた俺は、一人ため息をついた。
そういえば今日は、4月1日か・・・。
ああ、確か俺の誕生日って事にしてあったんだっけ・・・・。
・・もういいや。どうせウソの誕生日だし。
名雪「北川君。」
北川「何だ、水瀬。」
は、いかんいかん。
北川「なんだい、なゆちゃん。」
名雪「無理して言い直さなくて良いのに・・・・。」
北川「いやいや、父親が娘を苗字で呼んだら、やっぱり変だからな。」
名雪「・・・ぶつよ。」
北川「で、何の用だい?」
名雪「うん、あのね。今日北川君の誕生日だって、祐一から聞いたから・・・」
北川「へえ、相沢がねえ。」
名雪「それでね。北川君に、これあげようと思って。」
・・・・・・・。
北川「なゆちゃん・・・・」
名雪「(さっ)」
北川「そんなあからさまに逃げなくても・・・・」
名雪「逃げなかったら手取ってたでしょ!」
北川「それくらい、父と娘のコミュニケーションとして・・・・」
名雪「変なことするんだったら、もうこれあげない。」
北川「わ、わ、いただきます。ありがとう、我が娘よ。」
名雪「・・・・・・・。」
北川「・・・・・名雪さん。」
名雪「・・・何となく言い方変だけど、それで許してあげるよ。」
そしてなゆちゃんは去っていった。
後に残された箱。包装された・・・・
北川「開けてみるか。一体何を・・・むふふふふふ・・・」
香里「今開けるの?」
北川「あ?ああ。」
香里「そう・・・・・。」
香里は立ち去っていった。
・・・?ま、いいか・・・・。
北川「さあ、開けるぞお」
佐祐理「・・・それで、名雪さんは北川さんに何をあげるんですか?」
祐一「さあなあ。そこまでは、俺もわからん。」
舞「・・・何か落ちてきた。」
ぼたっ
うじょうじょうじょ
佐祐理「わあ、毛虫さんですねーっ。つんつんつん」
祐一「佐祐理さん、毛虫平気か?」
佐祐理「さすがに素手はいやですけどねーっ。」
舞「・・・これ、入ってた箱。」
祐一「ん〜?これは・・・・」
北川「はあっ、はあっ、はあっ、・・・何だったんだ、何で毛虫が・・・」
名雪「北川君・・・・」
北川「はっ、み、な、なゆちゃん!」
名雪「私からのプレゼント、捨てたんだね・・・・・。」
北川「え、いや、あれはその、だって、毛虫だし・・・・」
名雪「わたしのこと娘とか何とか言っておきながら・・・そう、そういう態度取るんだね。」
北川「あ、それはその、いやしかし、・・・・」
名雪「おしおき、だよ。」
北川「 !」
祐一「これは、百科屋の箱・・・。もしかして・・・?」
舞「・・・上から何か聞こえる。」
祐一「ん〜?なんか、北川の声にも聞こえるなあ。」
佐祐理「悲鳴にも聞こえますね。なんかしでかしたんでしょうか。」
祐一「あ〜、何となく予想はついたな・・・。」
春麗らかな日。野には花咲き、空には小鳥が飛ぶ今日この頃。
潤は、娘とのスキンシップを、嫌と言うほど楽しみました・・・。
北川「うっ、うっうっ、・・・・(泣)」
名雪「あ、ちなみに今の叩いたの、ウソだからね☆」
北川「うそ?」
名雪「エイプリルフールだもん。」
北川「ウソで済むかあ!だいたい俺、実際痛いし!」
香里「ウソねえ・・・・。だったら、春休みなのにあたし達が学校きてるのも、実はウソって事かしら?」
おしまい