佐祐理「祐一さん、佐祐理は納得行きません。」

祐一「なにが?」

佐祐理「変態で痔な北川さんのことです。」

祐一「大丈夫だ、あいつの存在には、俺も納得行ってないから。」

佐祐理「それもありますが・・・・佐祐理が納得行かないのは、もっと佐祐理のプライドに関わることなんです。」

祐一「プライド?東京裁判?」

佐祐理「変態で痔な北川さんは最初佐祐理に言い寄ってきたくせに、どうしてフられてすぐ秋子さんにしっぽふってるんですか?」

祐一「それはまあ・・・いろいろと事情がな・・・・。」

佐祐理「事情って何ですか。」

祐一「それは・・・・思い出したくない気が・・・」

佐祐理「納得行きません!変態で痔な北川さん、佐祐理のこと好きだって言っておきながらっ!あれは、只の遊びだったのねっ!許せません、この佐祐理を玩ぶとはぁっ!」

祐一「佐祐理さん、落ち着いて・・・」

佐祐理「祐一さん。」

祐一「はい。」

佐祐理「変態で痔な北川さんを、秋子さんから引き離します。そして、もう一度佐祐理の方に振り向かせます。いいですね?」

祐一「佐祐理さん。もしかして・・・・北川に未練ある?」

佐祐理「・・・祐一さん。いくらあなたでも、言っていけないことがありますよ・・・・?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(しばらくおまちください)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

祐一「うっ・・うっうっ・・・・・俺、もうお婿にいけない・・・・」

佐祐理「ふふふ、変態で痔な北川さん。待ってらっしゃい、今にあなたのこと、佐祐理の方に向き直らせて見せますからね・・・」
 
 
 
 

1

〜北川補完計画外伝〜

  佐祐理さんの野望  
        ______    

(さゆ倫)

1

 

諸般の事情により、俺は中庭でサンマを焼いていた。
昔懐かしい七輪から出る煙が、俺の目に涙を誘う。

祐一「ふっ、男泣き・・・・他人には見せられない姿だぜ。」

香里「なにしてるの?」

祐一「か、香里・・・・。」

香里「・・これ、サンマ・・・・?」

祐一「あ、ああ。サンマだぞ。昔懐かしい七輪で焼いてるんだぞ。」

香里「夏ももう近いって言うのに?」

祐一「俺もさ、いろいろ考えたりした訳よ。人生とか。政治のこととか。人はどうして憎しみを持つのかな、何てさ。その結果が、このサンマさ。」

香里「・・・そう。詳しいことは、訊かないで置いてあげるわ。」

香里はそのまま去っていった。

祐一「あいつ、案外いい奴だったんだな・・・・。」

そんなことを呟きながら、俺はサンマを焼き続けた。

とは言え、俺も本当に人生のためにサンマを焼いているわけではない。
では、これは何か。
それは、北川をおびき寄せるための罠である。
何故こんなもので北川がよってくるか?
ふっ、それは、しばし待てばわかるであろう・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

北川「む・・・この臭い、サンマだな。何でこんな季節はずれに。サンマは、秋に焼くものだろう・・・・」

北川「秋・・・・」

北川「『秋の刀』と書いて、サンマと読む・・・・」

北川「・・・秋子さん。」

北川「うおおおぉぉぉぉぉぉ!あきこさまあぁ〜〜〜っ!!」
 
 
 
 

ずどどどどどどどど

祐一「お、来た来た。」

北川「秋子さまぁ!秋子様はいづこに?!」

祐一「秋子さんはいねーよ。いるのは、秋刀魚を焼いてる俺だけだ。」

北川「ちくしょ〜、だまされたぁ!」

祐一「誰に騙されたって言うんだ。このアホが・・・」

北川「なんだと!アホという言葉は、アホに対して言うべき言葉だぞ!」

祐一「訳の分からんこと言ってないで。ほら、サンマでもどうだ?」

北川「いらん。」

祐一「そおかあ?・・・秋子さんと、一字違いの魚だぞ・・・。それを、・・食べちゃうんだぞ・・・?」

北川「・・・・・・・・。」

祐一「ま、要らないって言うなら、別にいいけどな・・・・。」

北川「うおおおぉぉぉぉぉぉ!よこせえ!!」

ばぐっ

北川「ごんまぁ〜〜〜!あきこさまぁ〜〜〜!」

祐一「嗚呼、北川がなんだかよくわからない雄叫びを!俺はもしかして、北川の恋する暴走ハートに火をつけてしまったのかっ!」

ちりちりちり

北川「ん、なんか焦げ臭い・・・」

祐一「ああっ!もしかして北川の制服にも火をつけてしまったのかっ!」

北川「なにをわざとらしい。って、俺燃えてるじゃん。」

ごおぉ〜

祐一「お〜、よく燃える。さすが中ががらんどうなだけあるな。」

北川「誰ががらんどうだっ!って、俺火だるまじゃん。」

祐一「ああっ、何故こんな事にぃ、こんなつもりでわぁ」

北川「おまえ、わざとやってないか?」

祐一「全然そんなこと無いぞ。て言うか、北川、妙に冷静だな。」

北川「嗚呼〜っ、俺火だるま〜、助けてぇ〜」

祐一「そうか、助けて欲しいのか。じゃあ、俺のつま先にキスしな。」

北川「・・・お前、そういう趣味だったのか。」

祐一「冷静だから助ける必要ないな。」

北川「嗚呼〜っ、俺火だるま〜、助けてぇ〜」

祐一「じゃあ、キスしな。」

ちゅっ

祐一「げぇ〜、やっぱされなきゃよかった・・・・って、なんか足下焦げ臭いし。」

ぼおぉ〜

祐一「足下燃えてるし。て言うか、俺まで火だるまだし。」

北川「相沢、冷静だな。」

祐一「お前ほどじゃないさ。」

北川「はっはっは。」

・・・・。

二人「ああ〜〜っ、オタスケエ!」
 
 



 
 

そんなわけで、俺は佐祐理さんの元に北川を連れてきた。

佐祐理「なにがそんなわけなのか、全然解らないんですけど・・・」

祐一「気にしないでくれ。」

佐祐理「わかりました。変態で痔な北川さんを連れてきてくれれば、あとは干渉しません。」

北川「あの・・・俺に何か用ですか?」

佐祐理「・・・変態で痔な北川さん。あなたは、昔佐祐理のこと好きだって言いましたよね?」

北川「そんな過去もあったな・・・・」

佐祐理「でも、今は秋子さんのお尻追いかけ回してますね。どういうことですか?佐祐理は傷つきました。」

北川「あんたが俺のことフったんじゃないか。傷ついたのは俺の方だ。」

佐祐理「あなたなんか、傷ついて当然です。でも佐祐理が傷つけられたのは許せません。」

北川「なんだそのジャイアン思想の変形みたいな主張は・・・」

佐祐理「とにかく。佐祐理のプライドのためにも、あなたにはもう一度佐祐理の方を向いて貰います。」

北川「もう、向いてるんですけど。」

佐祐理「え?」

北川「目線、と言うか、顔の方向。」

佐祐理「・・・バカにしましたね。」

祐一「大丈夫だ佐祐理さん、バカがバカをバカと言っても、それはバカじゃない。」

佐祐理「あ、なるほど。そう、そうですよね。バカと天才紙一重だけど、紙は電気を通さないんですよね。」

北川「・・・論理破綻というか、意味不明だぞ。」

佐祐理「と言うことで。あなたには、すっぱりきっぱりどっきりもっきり秋子さんをあきらめて貰います!」

北川「なにがと言うわけなんだ!何故俺が秋子さんをあきらめなければならない!俺の秋子さんに対する思いは、俺のこの燃える命よりも遙かに重いんだぞ!」

祐一「そんなものと比べられてもな・・・全然重みが伝わらない。」

佐祐理「変態で痔な北川さん・・・。秋子さんの、どこがそんなに良いんですか?」

北川「全部。」

佐祐理「全部。フ・・・」

北川「なにがおかしい!」

祐一「お前の頭。」

北川「髪が立ってるのはワンポイントアクセスだ!」

祐一「アクセス?接続?なにと?」

佐祐理「・・・佐祐理が含み笑いしてるのに、無視して話進めないでください。」

祐一「あ、申し訳ございません。どうぞ。」

佐祐理「なんでしたっけ?」

北川「秋子さんのどこが良いかって事で、俺は全部って答えたんだよ。」

佐祐理「あ、そうそう、そうでした。フ・・・」

北川「それはもう聞いた。」

佐祐理「え、そ、そうですか?じゃあ次は、『明確な根拠が無い人間に限って、全部という答えをするのよね・・・・』ですね。」

北川「なんか、台本読んでない?」

佐祐理「そ、そんなことないですっ!えっと、次は・・・」

北川「・・・・・・・。」

佐祐理「『北川君、あなたに至高のジャムの味を教えてあげるわ!』」

北川「歯垢のジャム?!」

祐一「おばあちゃん、お口くさぁい」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(暫くお待ちください)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

祐一「うっ・・うっうっ・・・・・俺、もうお婿にいけない・・・・」

北川「秋子さん・・・こんな汚れたボクでもあなたは受け入れてくれますか・・・?」

祐一「無理だな」

北川「そんなことはない、秋子さんの魅力は、不浄のものをも清めるその力にあるんだ!」

祐一「いやあ、確かに掃除好きだけど・・・ゴミは捨てるからなあ。」

北川「がーん。」

佐祐理「佐祐理を無視しないでください!」

祐一「あ、申し訳ございません。」

北川「どうぞ。」

佐祐理「何の話でしたっけ?」

祐一「佐祐理さんって、ボケろ」

佐祐理「(きっ)」

祐一「・・・よ、ボケろぉよぉ〜、北川ボぉケぇろぉ♪」

北川「無理矢理歌ってんじゃねーよ」

佐祐理「で、なんでしたっけ?」

祐一「歯垢がどうとか・・・」

佐祐理「そうそう、そうでした。変態で痔な北川さんに、祐一さんの歯垢を全部嘗め取って貰うって話でしたね?」

北川「俺はいやだ。」

祐一「俺だっていやだ。」

佐祐理「・・・・・・。」

祐一「こ、こわい・・・佐祐理さん怖い・・・・・」

北川「あ、相沢。歯垢じゃない、確か、ジャムの話だったはずだ。」

祐一「お、おお、そうだ。ジャム、ジャムジャム。すジャムもジャムもジャムのうち。」

佐祐理「そうでしたっけ・・・・?」

二人「(こくんこくんこくんこくんこくんこくんこくんこくんこくん)」

佐祐理「歯垢じゃなかったですか・・・?」

二人「(ぶるんぶるんぶるんぶるんぶるんぶるんぶるんぶるんぶるん)」

佐祐理「そうですか・・・・・。じゃあ、取ってきます。」

北川「取ってくるって、何を・・・・?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

佐祐理「お待たせしましたーっ。」

北川「そ、それは・・・・」

佐祐理「ジャムです。佐祐理お手製の。」

祐一「ジャム・・・・」

佐祐理「さ、食べてくださ〜い☆」

北川「これ・・・何?材料は?」

佐祐理「国家機密です。」

祐一「国家機密・・・・企業秘密より重いんだな。」
 
 

北川「いや、最近の多国籍企業が動かすカネは、一国の予算を上回るからな。そういう意味では国家機密より企業秘密の方が上さ。」

佐祐理「変態で痔な北川さん・・・・どうしても、佐祐理より秋子さんの方が上だと言いたいんですね・・・・」

北川「当たり前だ。」

佐祐理「許せません・・・そういうセリフは、このジャムを食べてからにしなさいっ!」

ぐごぐごぐごごご

佐祐理「さあさあ、全部、きれい、さっぱり、跡形もなく食べちゃってくださーい!」

北川「う・・うぐぉごご・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

北川「・・・・しに不味い。」

祐一「そのネタは使用済みだ!」

佐祐理「そ、そんな・・・・佐祐理の作ったジャムが、よりによって変態で痔な北川さんの口に合わないなんて・・・」

北川「つーか今気づいたけど、変態で痔な北川さんって言い方やめて。」

佐祐理「秋子さんのジャムが大好きな変態で痔な北川さんなら、喜んで食べると思ったのに・・・」

北川「主部が長すぎるっちゅーに・・・」
 

祐一「・・・・・・・。」

ぺろん

祐一「・・・・・・・(泣き)」

佐祐理「あ・・・祐一さんまでジャム食べちゃったんですか?」

祐一「・・いや、北川が不味いっていうなら、俺なら美味いかなと思って・・・」

佐祐理「そうですよね・・・普通は、そう思いますよね・・・」

北川「お前ら・・・俺の舌をなんだと思ってる。」

祐一「佐祐理さん、これ・・・・何?」

佐祐理「・・・・・・・・。」

祐一「・・・・・・・。」

北川「・・・・・・・。」

佐祐理「・・・・・・・・。」

祐一「・・・・・・・。」

北川「・・・・・・・。」

佐祐理「佐祐理の髪の毛です。」

北川「か、髪の毛!どうりで、プロテインでトレハロースでドモホルンな味がするわけだあ!」

祐一「て言うか、髪の毛って高分子だから土に埋めて骨が腐っても分解しないくらい丈夫なんじゃなかったっけ?どうやってジャムにしたの?!」

佐祐理「・・・言わないと駄目ですか?」

祐一「無論!当然!当たり前!常識常識!」

佐祐理「え〜っと・・・香里さんに貰った薬使ったんですぅ〜」

北川「何、香里に?!」


祐一「と言うことなのだが、香里。事実か?」

香里「・・・・・たぶん。」

北川「たぶん?たぶんとは何だ、毒ガスのことか?」

香里「あたしも、よくわからない薬なのよ。」

祐一「よくわからない・・・何でそんなもの佐祐理さんにあげたんだ。」

香里「佐祐理さんに・・・・『誕生日のプレゼント、何がいい?』って訊いたら、『よくわからない薬が良いですねーっ。』って・・・」

北川「誕生日のプレゼントに、そんなものあげるなよなあ・・・・」

香里「だって欲しいって言うから・・・・」

祐一「しかし、佐祐理さんにそんな栞みたいな趣味があったとはな・・・・」

「おねえちゃん?!」

香里「あ、栞。」

「私の薬が4種類くらい、無くなってるんだけど・・・?」

香里「あ・・・ごめん。調合して佐祐理さんにあげちゃった。」

「おねえちゃん!どうしてそういう勝手なことするのっ!」

香里「いいじゃないの、薬の三つや四つ・・・あ、痛い、ちょっと、叩かなくても・・・」

北川「・・・・・・・。」


北川「ふ、全くとんだ災難だったぜ。しかし何だな、佐祐理さんも愚かだな。俺のハートを掴もうと画策するとは。俺のピュアでホットでデリシャスフルなハートは、昔も今もずっと秋子さんのものだというのに。」

祐一「あれ、昔は佐祐理さんのものだったんじゃ・・・・」

北川「余計なつっこみするなっ!」

ぼぐっ

祐一「何も殴らなくても・・・」

北川「自業自得だ。さって、たっだいまぁ〜っ、と」

祐一「ただいまって、ここは俺の家だぞ。」

名雪「え、俺の家?そんな風に言うって事は、もう祐一は自分が居候じゃなくてここの家族だって認識持ってるって事だよね。それってつまりわたしと・・・・きゃーっ」

祐一「絶対名雪じゃない、これ・・・」
 
 

北川「ただいまぁ〜、秋子さんっ!」

秋子「お帰りなさい、潤ちゃん。」

佐祐理「お帰りなさい、変態で痔な北川さん。」

北川「な・・・何故佐祐理さんがここに・・・」

佐祐理「変態で痔な北川さん。佐祐理は、考えたんです。変態で痔な北川さんがクルクルパーになるくらい秋子さんに惚れ込む理由は、何だろうって。」

祐一「甘いな佐祐理さん、北川は元々クルクルパーだ。」

北川「なんだと!」

佐祐理「そうだとしても。佐祐理が秋子さんに負けたのは、事実なんです。」

祐一「ま、秋子さんに勝てる人なんて、いないけどな・・・」

佐祐理「いいえ、佐祐理は勝って見せます。いつか必ず。だけど秋子さんに勝つには、佐祐理は秋子さんのことをもっと知っておく必要があると思ったんです。」

北川「で、ここで修行ってわけ?」

佐祐理「はい。」

北川「・・・ま、俺は別に良いけどな。」

祐一「お前がそういう口叩くなっ!」

佐祐理「そういうわけで祐一さん、早速修行の成果です。試食してください。」

祐一「・・・って、ジャム?」

佐祐理「はい。」

祐一「何で。何でジャムなのよ。何もジャムでなくても。もっとあるでしょ、秋子さんの魅力はいろいろ・・・」

佐祐理「『まず塊より始めろ』って言うじゃないですか。」

祐一「それは『まず隗より始めろ』・・・・。それに、ジャムは塊じゃない・・・」

佐祐理「いいからいいから。さっ、食べてくださいねーっ。☆」

佐祐理さんがやってきた

祐一の住む水瀬家にやってきた

ジャムを作った佐祐理さん

全部食べてと祐一に言った

佐祐理「佐祐理は、がんばりますよーっ!いつかきっと、秋子さんに勝って見せますから・・・」

祐一「それまでずっとここにいるの?」

佐祐理「はい。祐一さんには、これからいっぱいいっぱいお世話になりますからーっ。」

祐一「これ、絶対とばっちりだ・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 

続く
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

祐一「続いてたまるかあ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「・・・祐一。」

祐一「何だ、舞。」

「・・・別に。今回私、出番無かったから。」
 
 
 
 
 
 

おしまい
 
 

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