<原案:松谷みよ子「モモちゃんとプー」>
吾輩は猫である。名前はぴろ。
実はこの名前は気に入っていない。そもそも、勝手に付けられた名前だ。
だが、俺の飼い主の飼い主が乙女なんたらから生み出したとかで、こんな名前を付けられてしまった。
まあ、よい。どうせ名前なんて、人間世界でしか通用しない代物だ。猫世界では、こんなもの何の役にも立たない。
ところで、俺は雄猫である。そしてこの間までは子猫だった。だが最近、俺は自分の体が大人になっていることに気づいた。
人間で言うと、思春期に当たる。
これはつまり、どういうことか。どういう事になってしまうのか。
言葉で語るより、実例をお見せしよう。
メス猫「にゃあ」
お、かわいい娘。
ぴろ「にゃあ。」
メス猫「にゃあ。」
ぴろ「にゃあにゃ、にゃにゃにゃ、にゃにゃん?」
メス猫「にゃ・・・・」
ぴろ「にゃあ・・・にゃあにゃにゃ・・・?」
メス猫「うにゃあ・・・」
ぴろ「にゃん、にゃにゃん」
メス猫「にゃおん」
<18禁>
メス猫「にゃ・・・にゃにゃ、にゃにゃあ・・・?」
ぴろ「にゃ。」
メス猫「にゃん。」
・・・ふ、ま、ざっとこんなものさ。
え、意味が分からなかった?ふ、そのうち嫌でもわかるようになるさ。
さあて、また次の娘を探しに行くとするか。俺ってば、こう見えてプレイボーイなんだ。猫は飼い主に似るって言うけど、俺は飼い主の飼い主に似ちゃったんだな。
・・・む。なんだこの、五感から第六感、猫特有の予知能力に至るまで発せられている警鐘は。
危険だ。何か、危険なものが近づいているのか?!
い、いかん、あれにかかわったら、俺の俺の青春も一生も、台無しだ・・・
俺は素早く手近な木に飛び移り、そしてすべての気配を消して様子をうかがった。
しばらくすると、角から、かわいい雌猫が現れた。
いや、かわいいのはいいのだが、真っ白な毛もいいのだが、背中の部分が、そう、ジャム色・・・
俺は、びくびくしながら、彼女が通り過ぎるのを待った。
が、彼女は俺がいる木の前に来ると、突如立ち止まってこっちを向いたのだ。
ジャム猫「にゃぁん」
か、かわいい・・・
いや、ここで誘惑に屈してはいけない。だって、だってあれは、ジャム・・・・
ジャム猫「にゃうん・・・」
彼女は俺が降りてこないことを悟ったのか、再び歩き出してしまった。
・・やれやれ。
安心した俺は木から飛び降り、そして歩き始めた。
角を曲がったところに、ジャム猫さんがいた。
ジャム猫「にゃ☆」
ぴろ「にゃ、にゃにゃにゃにゃにゃ!」
ジャム猫「にゃん、にゃにゃにゃあ」
い、いやだ・・・
俺は逃げようとした。が、かなわず後ろ足をつかまれ、そのまま仰向けに組み臥されてしまった。
ジャム猫「にゃにゃにゃん♪」
ぴろ「にゃーーーーーーーーーーっ!」
真琴「ゆういち・・・」
祐一「なんだ?」
真琴「ぴろが、よごされちゃったって・・」
祐一「猫がそんな事言うか。」
秋子「あらあらエカテリーナ、お久しぶりね。」
ジャム猫「にゃん。」
秋子「どこ行ってたの?心配したのよ?」
ジャム猫「にゃあ」
秋子「どこかで子づくりでもしてたの?」
ジャム猫「にゃ・・・」
秋子「あらあら、図星だったのかしら。」
ジャム猫「にゃん」
秋子「あなたから生まれる子猫って、どんなかしら?やっぱりジャム猫なのかしら。」
ジャム猫「にゃあ」
秋子「でも、子猫が生まれるのを待ってはいられないの。だから、今日はあなたからジャムをもらいますね。」
ごりごり
ジャム猫「うにゃにゃにゃ」
秋子「さあ、これでよし。ありがとうございますね。」
ジャム猫「にゃあ・・」
秋子「でも、折角のこのジャムも、名雪が食べてくれなければ意味無いですよね・・・」
ジャム猫「にゃ?」
秋子「名雪の猫アレルギーを治すために、あなたの背中にジャム細胞を植え付けたのに・・・・・どうして食べてくれないのかしら。」