ひみつのカオリちゃん


むかしむかしあるところに、香里という女の子がいました。

名雪「香里って、魔法が使えるんだよねっ」

香里「秘密。」

と、いつもこう答えるので、「秘密。」の香里ちゃんと呼ばれていました。

表向き秘密と言ってはいますが、香里が魔法を使えることは、とっくにバレバレでした。
それでも、香里には「秘密。」と言い続けなければならないわけがありました。
それは、香里に魔法をくれたおば・・・・・・・・・お姉さんから、

秋子「魔法を使えることが公になったら、芋虫さんにしますからね♪」

と言われたので、建前上は秘密にしておかなければいけないのです。

そもそも、香里は魔法なんか全然欲しくありませんでした。
しかし、魔法をくれたお・・・・・ねえさんに

秋子「魔法とジャムと、どっちがいいですか?」(にっこり)

と微笑まれ、つい「魔法」と言ってしまったのです。

んなわけで、香里は自分が魔法を持ってることが、あまり嬉しくありませんでした。

そんなある日、佐祐理さんが香里に話しかけてきました。

佐祐理「香里さん、魔法が使えるそうですねーっ。」

香里「秘密。」

佐祐理「あははーっ。佐祐理を差し置いて魔女っ娘名乗ろうなんて、いい根性してますねーっ。」

香里「秘密って言ってるのに・・・」

佐祐理「佐祐理の向こう張って魔女っ娘名乗るなんて、いい根性してますねーっ。それなりの覚悟があるんですよねーっ。」

香里「好きで名乗ってるんじゃないんだってば・・・」

佐祐理「そういうわけですから、最強の魔女っ娘の名を賭けて、佐祐理と勝負ですよーっ。」

香里「なんでそんな事しなきゃならないのよ・・・」

香里は無視してその場を立ち去ろうとしました。
そのとき、天から声が聞こえてきました。

秋子「素のままで勝つ自信がないなら、特製パワー・アップ・ジャムを用意してありますよ。転送しましょうか?」(にっこり)

香里「・・・・・。」

そんなわけで香里は、佐祐理さんと素で魔法勝負をすることになってしまいました。

佐祐理「あははーっ、勝負のお題目は、祐一さんの服を脱がせることですよーっ。」

香里「佐祐理さんって実は変態?!」

佐祐理「・・・よくも佐祐理を変態呼ばわりしましたね。」

香里「だって脱がすって」

佐祐理「あははーっ、上に着てるコートを脱がすだけですよーっ。香里さんはえっちですねーっ。」

香里「・・・・。」

佐祐理「それじゃまず、えっちな香里さんからどうぞーっ。」

香里「(馬鹿馬鹿しいけど、ジャムは怖いし・・・ま、適当にやろ。)」

香里「要するに相沢君のコートを脱がせばいいのよね。」
 

祐一「るんるるるるるんる〜♪」
 

香里「手っ取り早くすまそ。出よお日様の陽!」

佐祐理「はえ〜、いきなりお日さまですか?順番からいうと北風のはずなのに」

香里「そんなの関係ないわよ。あたし早く済ませておじゃる丸の再放送見たいの。」

香里と佐祐理さんが言い争っている間に、香里が出した人工太陽が祐一をじりじりと照りつけていました。
 

祐一「暑いぜ・・・真夏の太陽が、俺の柔肌をじりじりと焼き付けるぜ・・・」
 

香里「相沢君、今はもう冬よ・・・」

突っ込みだけはしっかり忘れない香里であった。
 

祐一「こうも暑いと、脱ぎたくなっちまうぜ」
 

香里「よし、脱いだわね。」
 

祐一「下も脱ぐか。」
 

香里「え?!」
 

祐一「るんるるるるるんる〜♪」
 

佐祐理「はえーっ。全部脱いじゃいました・・・」
 

真琴「きゃーっ!なにこいつ、なに道の真ん中で裸になってんのよぉ!」

祐一「ちょっとだけよ。」

真琴「えっちバカスケベへんた〜い!」
 

香里「・・・・。」

佐祐理「・・・。」

香里「いいいいい、今の無し、無かったことにしよっ、ね?」

佐祐理「あ、あはは、か、香里さんがそういうのなら、かまいませんよーっ。」

香里の出した人工太陽が消えました。

祐一「う、なんだか寒くなってきたぞ。仕方ない、服を着るか。」
 

佐祐理「じゃ、今度は佐祐理の番ですねーっ。」

佐祐理「香里さんが太陽やっちゃったから、佐祐理は北風でいきますねーっ。」

佐祐理「北風招来!」

北川「呼んだかい?」

佐祐理「呼んでません。」

香里「何いきなりしゃしゃり出てるのよ。」

北川「ひ、ひどい・・・呼ばれたと思ったから出てきたのに・・・」

佐祐理「仕方ないですね・・・じゃあ、北川さんに仕事をあげます。」

北川「なんでございましょう」

佐祐理「祐一さんを脱がしてください。」

北川「・・・・・。」

香里「嫌だったら別にいいのよ。」

北川「はっきり言って凄く嫌だぞ。」

佐祐理「ふえ・・・佐祐理のお願い、きいてくれないんですか・・?」

北川「う・・・。」

佐祐理「・・・きいてくれないんですか・・・・・・?」(上目遣い)

北川「わ、解りましたよ、やりますよ。脱がせばいいんでしょ」

佐祐理「ありがとうございますーっ。」

香里「こういうのも、魔法って言うのかしら・・・」

佐祐理「あはは、ほら、北川さんが突進していきますよ。」
 

北川「うおおおお!」

祐一「お、なんだ北川」

北川「脱いで貰うぞ相沢!」

祐一「な、なんだと?!」
 

香里「ねえ佐祐理さん。」

佐祐理「何ですか?」

香里「北川君・・・脱がすのはコートだけでいいって、解ってるのかしら?」

佐祐理「え・・・?」
 

祐一「き、北川、なにおぅ、なにをぉ!」

北川「おとなしくしろ相沢、全ては佐祐理様のためだぁ!」

祐一「こ、この歳になって男の手で脱がされるなんて・・ああ、おれのパンダさんブリーフが・・・」
 

香里「・・・。」

佐祐理「・・・。」

香里「やっぱり解ってなかったみたいね」

佐祐理「ふええ、どうしましょう」
 

祐一「えいくそ、このまま北川に貞操を奪われてたまるか!」

ぐいっ

北川「あ、な、何を・・・そこは掴んじゃダメ・・・」

祐一「お、ここが北川の弱点なんだな。徹底的に攻撃してやる。」

北川「あ、は、はふはふん」

「・・・何してるの。」

祐一「あ、舞」

あゆ「どういうこと、これ・・?」

「説明してくださいっ!」
 

香里「また悪いときに出てきたものね・・」

佐祐理「どうしてあの三人が一緒に行動してるんでしょう」
 

あゆ「うぐぅ、ボク、祐一君のこと信じてたのに・・」

祐一「ま、待て。俺の話も聞け。落ち着いて聞け。な?」

「聞きましょう。」

祐一「まず、だ。北川が俺のことを襲ってきたんだ。」

北川「オレは相沢を脱がす必要があったんだ。」

祐一「それで、北川にパンダさんブリーフを剥ぎ取られてしまったんだ。」

北川「その後相沢は、オレの大事なところを掴んできたんだ。」

祐一「それで北川は感じてしまって、喘ぎ声を出したというわけだ。」

北川「どうだ、やましいところなんか一つもないだろう。安心してくれ。」

「・・・不潔。」

祐一「え?」

「男同士でそういうことする人嫌いですっ!」

祐一「あの・・・」

あゆ「ボクのこと、忘れてください。」

「・・・天罰。」

北川「え?え?え?」

ザシュ

北川「うあぁ・・・なんでオレが」

祐一「北川、北川!」

北川「相沢・・」

祐一「いうな、もうなにも言うな!」

北川「オレ、知らなかったよ・・・」

祐一「北川・・」

北川「髪の毛を掴まれるのが、そんなにいやらしい行為だったなんて・・」
 

佐祐理「佐祐理は、髪の毛が北川さんの弱点だなんて知りませんでした。」

香里「というか、髪の毛に神経あるのかしら」

「・・北川君だから。」

佐祐理「あ、舞、お疲れさま。」

香里「お疲れさま?!」

佐祐理「北川さん、大丈夫かな?死にそうだけど。」

「・・・髪切り落としただけだから。」

佐祐理「そっかー、じゃあ痛くないねーっ。」

香里「でも感じるらしいわよ。」

秋子「みなさん、ずいぶん楽しんだようですね。」

佐祐理「あ、秋子さん」

秋子「よほど魔法勝負が楽しかったのね。」

佐祐理「え?そういうわけじゃ・・・」

秋子「みんなが楽しめて、私も嬉しいわ。」

香里「全然楽しんでません。」

秋子「あら、そうなんですか・・?」

香里「いえ・・・存分に楽しみました。」

秋子「そう。良かったわ。」

秋子さんはにっこりと微笑みました。

秋子「みんなが楽しく生きることが、私の願いで生き甲斐ですから。」

秋子「でも、もっともっと多くの人に楽しんで欲しいわ・・・。」

香里「(この上まだ犠牲者を増やすつもりかしら)」

秋子「何ですか、香里さん?」

香里「いえなにも!」

秋子「そうですか。」

秋子「あら、あそこに寂しそうな目をした女の子がいますね。」

美汐「・・・。」

秋子「そこのあなた、魔法を授けて上げますね♪」

美汐「・・・私を妙なことに巻き込まないでください。」

秋子「・・・まあ。」

秋子「じゃあ、仕方ないですね・・・無理強いは出来ませんから。」

香里「とか言いつつ、なにおもむろに瓶取り出してるんですか!」

美汐「・・そうやってジャムで脅して無理矢理魔法を与えるのは、人として不出来だと思いませんか?」

ちなみにこの時点で舞と佐祐理の姿は、既に無い。逃げたのである。

秋子「・・・。」

香里「あ、あ、あたしも、知ぃらない!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

<2000年11月頃、えたーなるふれんどごちゃ混ぜ投票で連載>

 

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