Kanonむかしばなし
舌切り雀
 

むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

佐祐理「はぇ〜、佐祐理、おばあさんなんですかあ」
祐一「佐祐理さん、たとえおばあさんになっても、君の美しさは変わらないよ・・・・」

佐祐理「ふぇ・・・祐一さんがヘンなこと言ってます・・・・」

おじいさんとおばあさんは、どういうわけか一緒に暮らしていました。
いわゆる腐れ縁という奴でしょう。
 

ある日のこと。おじいさんは山へしばかれに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

祐一「ああっ、痛いッ!・・・でも、、、、もっと!」

誰にしばかれているのかは、考えない方がよいでしょう。

そんなこととも知らず、おばあさんはせっせと洗濯に励んでいました。

佐祐理「お洗濯♪お洗濯♪ ま、祐一さんったら、こんなところにシミ作っちゃって☆」

そう言いながら、洗濯物を洗濯機に放り込んでいきます。
そして300円を入れると、洗濯機が快音をあげて動き出しました。

佐祐理「さ、終わるまで暇ですね。お菓子食べて雑誌でも読みながら時間つぶしましょう。」

そう言いながら、たい焼きの入った袋と日本応用物理学会誌を取り出しました。

佐祐理「やっぱり、物理学はもう行き詰まりを見せてますよねーっ。」

そんなわけわかんないこと言いながら、たい焼きをほおばっていました。
すると、後ろからこっそりと小さな手が伸びてきました。
佐祐理さんはとっくに気づいていますが、敢えて無視していました。
そして手がたい焼きを掴んだとき。

佐祐理「あははーっ、捕まえましたよーっ。」
あゆ「う、うぐっ?!」

佐祐理「悪い子ですねーっ、人の物黙って持っていこうとするなんてーっ。」
あゆ「うぐぅ・・・・」

佐祐理「きっと親が甘ちゃんなんですね。佐祐理が代わりに叱ってあげます。ええ、佐祐理はよそのうちの子でも、悪い事したらちゃんと叱りますからねーっ。」
あゆ「うぐぅ〜〜〜〜」

あゆは必死に抵抗し、その甲斐あって佐祐理さんに掴まれていた手はふりほどけました。

佐祐理「あ、こ、こらおとなしく叱られなさいっ」

そう言って佐祐理さんは、あゆの背中にあった羽を掴みました。

あゆ「うぐぅ〜、見逃してぇ」

そう言ってあゆは、なおも暴れます。
暴れるので佐祐理さんは、今度こそ逃げられないようにと、しっかりと羽を持っていました。
すると

べぎっ

あゆ「え?」
佐祐理「あ・・・」

羽が取れてしまいました。

あゆ「す、凄い力・・・。テニスボールを一つにする強力な接着剤でつけてあったのに・・・」
佐祐理「そのネタ、かなり古いですよ・・・・」

あゆ「うぐぅ・・・・」

あゆは今にも泣き出しそうです。

佐祐理「あ、あの・・・これってやっぱり、佐祐理が悪いんでしょうか?」

あゆ「みゅーっ!」

そう叫びながらあゆは、走り去ってしまいました。

佐祐理「みゅーって・・・・。なんですか?」
 
 
 

あゆが泣きながら走りついた先には、祐一がいました。

祐一「ああ、・・・・よかった。」

なにが良かったのか知りませんが、幸せなのはいいことです。

あゆ「うぐぅ〜、どいてえ!」
祐一「お、あゆじゃないか。よし、ナイフとフォークで、ナイフを持つ方に避けるんだ。」

そう言って祐一は、左に避けます。

どしんっ!

ぶつかってしまいました。

祐一「ナイフを持つ方って言っただろ!」
あゆ「うぐぅ、左利き・・・・。」

祐一「それを考慮した上での指示だったはずだが。」

だったらたぶん祐一の動きが間違ってるのですが・・・・

祐一「で、どうしたんだ、あ。」
あゆ「あ、って、何?」

祐一「たまには略してやろうと思ってな。」
あゆ「略さなくていいよっ!」

あゆは、それまでの経緯を説明しました。

祐一「なるほど、佐祐理さんはそんなに力があったのか。・・・これからは佐祐理さんにしばいてもらおうかな・・・。」
あゆ「何言ってるの?」

祐一「で、その取れた羽はどこだ?」
あゆ「これ・・・・」

祐一「ふむ、・・・・。こんなのはな、唾つけときゃくっつくんだよ。」

そう言って祐一は、ほんとにそれを実行しました。

あゆ「何となくキタナイ・・・・。」
祐一「汚いもんか。だいたい、そんな汚いものが人の口から出てきたら困るだろ?」

あゆ「うん・・・。」

祐一「じゃあな、あ。」
あゆ「あゆだもんっ!」
 
 
 
 
 

数日後。
再び祐一は、山でしばかれていました。佐祐理さんはしばいてくれなかったのでしょう。

祐一「ああ、えがった・・・・」

そこへ、栞がやってきました。

「祐一さん。ボスが、この間の礼をしたいって・・・。」
祐一「礼?何の礼?ボスって、どこのボス?俺、いろんなボスに悪さしてるからなあ・・・。」

「来てください♪」

びくびくしながら祐一がついていくと、小さな祠に着きました。

「ここです。入ってください。」
祐一「・・小さくて入れないんすけど・・・」

「大丈夫です♪」

そう言って栞は、ポケットからなにやら取り出しました。
それのおかげで、祐一は祠にはいることが出来ました。栞が何を取り出したかは、まあ暗黙の了解って奴です。

そして祠の中には、名雪がいました。

名雪「うにゅう、祐一。私ここのリーダー。」
祐一「お前だったのかここのボスは。確かに、悪さしてるな・・・・」

名雪「ううん、ボスはあっち。」

そう言って指さす先には、あゆがいました。

祐一「・・・・どう違うんだ。」
名雪「よくわからないよ。」

真琴「ちなみに真琴が隊長ね。」
香里「大統領よ。」
美汐「ツァーリです。」
「・・・カリフ。」
秋子「唯一絶対神です。」
祐一「ぐああああああああ!」

精神に混乱を来して放心状態になった祐一を、祠のみんなは優しくもてなしてくれました。

そして祐一の精神が回復しました。

祐一「・・・帰る。」
名雪「そんなこと言うと、夕飯はゴーヤだよ?生のゴーヤに、ゴーヤの絞りかす乗っけて食べるの。飲み物はゴーヤジュース。」

祐一「甘いな。佐祐理さんの作るゴーヤチャンプルーはタコさんウインナーが入っていてうまいんだ。」
「タコさんウインナー・・・・」

秋子「本気で帰るんですね。仕方ありません、おみやげにアレを・・・」

そう言って秋子さんは、大きなつづらと小さなつづら、それに瓶を持ってこさせました。

秋子「さあ、この中から好きなのを選んでください。」
祐一「う〜ん、でかいのは持って帰るのが面倒だしなあ。かといって瓶は速攻却下だし。小さなつづらにするか。」

秋子「瓶にしないんですか?」
祐一「ええ。」

秋子「考えを改める気はないですか?」
祐一「ないです。」

秋子「そうですか・・・・。」

秋子さんはとても残念そうです。

祐一「ではこれで、うんしょ。ぐぎ」

小さなつづらは、見た目に反してとても重いものでした。

祐一「やっぱいいわ。重いから要らない。」
香里「だったら、後で宅配便で送るわ。」
 
 
 
 

3日後。祐一がごろごろしていると、宅配便で荷物が届きました。

祐一「べ、別にぐうたらなわけじゃないぞ。ちょっと腰を痛めてだな・・・・。」
配達員「はあそうですか。お若いですね。」

祐一「そういう理由じゃないのに・・・・」
佐祐理「ふぇ〜、何ですかこの荷物。」

祐一「ああ、なんか知らんがヘンな人たちから貰った。」
佐祐理「祐一さんが変な人っていうくらいだから、よっぽど変な人なんですね。」

二人が荷物を開けると、そこには金銀財宝がぎっしり詰まっていました。

祐一「うお・・・・」
佐祐理「はぇ〜」

祐一は一瞬目を輝かせました。
しかし、すぐに沈んだ目になってしまいました。

祐一「虚しい・・・。何だ、この心の奥底からわき上がってくるむなしさは・・・・・。」
佐祐理「どうしたんですか?」

祐一「カネ。カネ。カネ。そう、カネは物欲の象徴。カネさえあれば、欲しいものは何でも買える・・・。」

祐一「でも、愛はカネで買えないんだよな・・・・。」

そう言って、佐祐理さんの顔をまじまじと見つめます。

佐祐理「そ、そんな見つめられたら、はっ倒したくなります・・・・。」
祐一「・・・・・・。」

祐一「寝る。」

そう言って祐一は、ふて寝してしまいました。

それを見た佐祐理さんは、激怒しました。

佐祐理「祐一さんをこんな腑抜けにしてしまうなんて・・・・。許せません、荷物の送り主っ!」

復讐を誓った佐祐理さんは、宅配便の送り状を頼りに祠を探し当てました。
 

祠の入り口は小さいので、中に入れません。
でも最初から入る気など無かった佐祐理さんは、いきなり祠をぶっ壊しにかかりました。

すると、中から秋子さんが出てきました。

秋子「あらあらお客さんね。にぎやかなのは大歓迎ですよ。」
佐祐理「か、歓迎なんですか・・・?}

さすがの佐祐理さんも、これには動揺したようです。

その隙に秋子さんは、大きなつづらと瓶を持ってこさせました。

秋子「さあ、好きなのを持っていってください。」

すっかり秋子さんのペースにはまってしまった佐祐理さんは、ふらふらと瓶に手を伸ばします。

「・・・佐祐理、それだけは駄目。」
佐祐理「え?!」

舞の言葉に我に返った佐祐理さんは、咄嗟に大きなつづらに手をつきました。

秋子「あら、そっちなんですか?残念です・・・・。」
佐祐理「え?え、ええ・・・・・。」

なんだかよくわからないまま、大きなつづらを持って帰ることになってしまいました。

香里「じゃあ、さっそく宅配便の手配を。」
佐祐理「大丈夫ですよ。佐祐理はこう見えても力ありますから。」

大きなつづらをひょいと担ぐと、そのまま帰ってしまいました。
 
 
 

家に帰った佐祐理さんがつづらを開けると、そこには蛇だの蛙だの芋虫だのがうじゃうじゃ入っていました。
普通ならここで「きゃーっ、いやーっ」とか言って逃げ回るのですが、佐祐理さんは超然とした人なので、そんなみっともないことはしませんでした。

佐祐理「あははーっ、かわいいですねこれーっ」

そう言って、中の蛇を一つ取って、祐一の目の前に突き出しました。

祐一「ん、ああ・・・・。ってこれ、蛇じゃん!」

佐祐理「あははーっ、ほらほら、祐一さぁ〜ん☆」
祐一「やめてくれェ!」

こうして佐祐理さんは、祐一をいぢめながら一生幸せに暮らしましたとさ。
 
 

めでたしめでたし
 
 
 

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