Campus Kanon

8(f3)




事件報道から、二週間。

あれから自治会連中は、散発的なアジテーションを行う以外、これといった攻撃は仕掛けてこなかった。

それだけだからといって、決して平気でいられる俺達ではなかったが。

祐一「そういえば、高校の頃も生徒会と対立して、なんでかやってたことがあったな・・・。」
「・・・私の所為で、佐祐理と祐一を巻き込んだあれのこと。」

祐一「舞の所為じゃないさ。いろんな小さなひずみが積もり重なって、それが一気に俺達に降りかかってしまった。ま、言うなれば不幸な事件さ。」
「・・・今度のは?」

祐一「わからん。俺達『部外者』には、さすがに事件の真相が、さっぱり見えてこない。」
「・・・じゃあ、佐祐理一人が傷つくの。」

祐一「そうならないことを願うのみだな。出来るなら、俺達の方に火の粉が降りかかってくれた方が、よほど気が楽なんだが・・・。」

そのときは、そう思っていた。火の粉が実は火流弾であるとも知らず。


祐一「そういえば。あんたは、何か知ってるんじゃないのか?」
新濃「何を?」

祐一「この事件についての何かだよ。思わせぶりなこと言ってたじゃないか。」
新濃「・・・・・・。」

新濃「・・・知れば、危険なことに巻き込まれる。俺が今教えられるのは、それだけだ。」
祐一「危険は承知だ。このまま、佐祐理さんをひとりぼっちになんて、出来ない。」

新濃「彼女は、なんて言ってるんだい?」
祐一「何も言わない。関わるな、とでも言っているようだ。」

新濃「賢明な判断だな。」

祐一「だからって、何もせず手をこまねいているなんて・・・・俺には出来ない。」

新濃「熱き友情だな。羨ましいよ。」
祐一「はぐらかすな。」

新濃「友情は、確かに強い心の支えになる。でも同時に、敵に付け入られる隙ともなりうるんだ。それを忘れるな。」

隙、か。
確かに、あのときもそうだった。
佐祐理さんを取り込みたがっていた生徒会は、その友人である舞の存在につけ込んで、攻撃してきた。

じゃあ、今回もまた、友人である俺や舞に攻撃が来るというのか。

新濃「連中が彼女の友人関係をどこまで把握しているかわからないが・・・。俺なら、弱いところからついていくね。」
祐一「弱いところ・・・。」

新濃「叩けば壊れそうな関係で、あわよくば自分の味方に引き込めそうな、そんな人物、だ。」
祐一「つまりそれは、俺や舞以外の誰か、って事か?!」

新濃「・・・単独行動は避けろ。それから、これは悲しいことだが・・・不用意に他人と関わりを持たないようにするんだな。」
祐一「巻き込まないために、か・・・。」

新濃「手遅れ、ってこともあるがな。」
祐一「・・・・香里、遅いな。いつもなら、もうとっくに来てる頃だ。」

新濃「・・・そうだな。」


「美坂香里さん、ですね。」
香里「何か?」

「ちょっとおつきあい願えますか。」
香里「・・・・・パス。」

「手間はとらせませんよ。」
香里「ちょっと、何すん・・ぐっ!」


祐一「俺、探してきます。」
新濃「・・・・俺も行こう。ここで待ってる意味は、あまりないからな。」


香里「・・・・・・。」
「よし、ここなら、声を出しても気づかれはしないだろう。」
「拘束しなくていいのか?」
「その必要はない。話し合いは、あくまで穏便に対等に、というのが鉄則だ。」

香里「・・・既に、穏便でも対等でもないわね。」
「・・・まあ、不幸な結果といったところだな。」

香里「話し合いといったわね。何が目的?」
「おや、君ほどの人物なら、心当たりからとっくに推察をつけているところだと思ったが?」

香里「・・・・・・。」
「わかるね。」
「今の君の置かれている立場は、君にとっても我々にとっても、好ましくはないのだよ。」

香里「・・・手を引けっての?」
「それは、最低限の条件だな。」

香里「何を望むの。」
「君ならどうする。」

香里「・・・断る。」
「それは、決して賢明な判断ではないな。」

香里「殴ったぐらいじゃ、あたしは落ちないわよ。」
「わかっているさ。だから、かなり手荒なまねをすることになってしまうよ。」

「君も、こんなところで花を散らしたくはないだろう。」
香里「・・・くっ・・・・・。」
 
 



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