Campus Kanon

11






前期期末試験期間開始前日。

祐一「明日は、・・・情報科学概論か。手つかずだ。」
香里「あたしもやってないわ。勉強するほどのことじゃないもの。」

祐一「悪かったな、どうせ俺は海馬死んでるよ。」
香里「別に非難してるわけじゃないのよ。」

祐一「・・・哀れんでんだろ?」
香里「さあ?」

祐一「仕方ない、縮小コピーでも始めるか。」

香里「なんの意味があるの?」
祐一「ふ、そんなことは訊くまでもあるまい。『コピ達祐ちゃん』と呼ばれた俺の腕、これから見せてやるぜ!」

香里「ふーん・・・・・。ま、いいけどね。」
佐祐理「そうか、縮小しておけば、持ち込むときにかさばらずにすみますよね。祐一さん、さすがです。」

祐一「ということで、コピー開始!」
 

がちゃんがちゃん
うぃ〜ん、うぃ〜ん

佐祐理「ふぇぇ、こんなちっちゃくしちゃうんですか?」
祐一「これくらい小さくないと、ばれるだろ?」

佐祐理「ばれたらいけないんですか?」
祐一「・・・・あたりまえだろ。」

佐祐理「・・・納得行きません。」
祐一「いや、カンニングペーパーってのは、ばれたらやばいものだろ・・?」

佐祐理「持ち込んじゃいけないんですか?」
祐一「そりゃそうだろ。・・・あ、もしかして遠回しに俺のこと非難してる?」

佐祐理「そんなことないです。ただ納得行かないだけです。」
祐一「なにが納得行かないんだ?」

佐祐理「だって、教科書も電卓も持ち込んでもいいのに、カンニングペーパーは持ち込んじゃいけないなんて・・・・。」

祐一「・・・・・・・・・なに?」

佐祐理「どうしてなんですか、香里さん?」
香里「あたしに訊かれてもねえ。相沢君が勝手にそう思いこんでるだけだし。」

祐一「あの〜、・・・・教科書も電卓も持ち込んでいいって・・・・。」
香里「最後の授業で言ってたでしょ。爆発物以外何持ち込んでもいいって。」

祐一「・・・・えいえんはあるよ、ここにあるよ・・・・」

佐祐理「どうしちゃったんですか?」
香里「現実の世界から離れたくなったんでしょ。」

祐一「・・・・納得いかん、コピー代返せ、俺の530円っ!」
香里「日本経済の消費拡大に貢献したのよ。決して無意味じゃないわ。」

祐一「530円ばっかで景気回復するなら、とっくに管首相が誕生してるわぁ!!」

「・・・・・・・(なでなで)」

祐一「なでなですんなぁ、余計惨めになるぅ!」


前期期末試験期間、中入り。

北川「中入りったって、たまたま間に土日が入っただけだけどな。」
祐一「しかし、この土日は実際貴重だぞ。さあ、どうする?」
名雪「寝る。」

祐一「一人で寝てろ。」
名雪「うー、ひどいよー、ひどいよー」

祐一「だいたい、そんないかにも俺が言いそうな台詞を名雪が言うなんて、間違っている。」
名雪「そんなことないもん。わたし、どこでも寝られるもん。」

香里「相変わらず論理が破綻してるわ。」

名雪「う〜、祐一ぃ、寝ようよ〜、一緒に寝ようよぉ〜」
祐一「ば、バカ、なんちゅーアブナイ発言を!」

北川「やっぱりそうだったのか・・・。相沢、俺はお前を軽蔑する。」
祐一「軽蔑するのはかまわんが、たぶんお前は誤解してるぞ。」

名雪「ねむいよ〜、ねむいよ〜、Windows2000は最低メモリ32MBだけどほんとはもっと要るんだよ〜」
香里「睡眠時間が足りないと言いたいのね・・・。」

名雪「ね、かおり。はるをみたいとおもわない?」
祐一「見るのはかまわないが、売っちゃ駄目だぞ。」
香里「バカなこと言わないで。ただでさえやばい状況なのに。」

「・・・3・・・2・・・1・・・」
ぱちん

名雪「くー」

佐祐理「わ、すごい。舞、催眠術も出来るんだ。」
祐一「いや、誰がやっても寝たと思うが。」
香里「どうするの?きっと明日の朝まで起きないわよ。」

祐一「う〜ん・・・よし北川、お前つきあってやれ。」
北川「え、つきあうって・・・。いや、俺達別にそんな関係じゃ・・・・。」

香里「なに言ってるの。一緒に寝てあげたら、って言ってるのよ。」
北川「なんだ、そういうことか。・・・・・・・って、、ええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜っっっっっ!!!」

祐一「安心しろ、何も名雪の隣で寝ろといってるわけじゃない。そこのタンス貸してやるから、その中入れ。」
北川「なんでタンスの中で・・・だいたい俺眠くないし・・・・・」

香里「あのね北川君。名雪は、寝てしまったのよ。寝てしまったら、試験勉強は出来ないのよ。そのことについて、同級生のあなたはどう思うのかしら?」
北川「どう思うって・・・寝ちゃったんだからしょうがないじゃん・・・・。」

祐一「しょうがない。なんて冷たい言葉だ。あ、お前まさか、名雪が寝てる間に一人勉強して、自分だけ栄光を掴もうなんて考えてるんじゃないだろうな。」
北川「なんだよ、そのわけわかんない脅迫は」

祐一「脅迫じゃない。友人として、お前に人として正しい道を歩ませようとしているだけだ。」
北川「俺が間違ってるのか?!」

祐一「さあ、入った入った。羊毛のセーター入ってるから、眠れなかったらその毛玉の数でも数えてろ。」
北川「そんなむなしいことできるかぁ」

ばたん
がちゃん

祐一「実は鍵付きだったりするんだな、このタンス。」
香里「相沢君って、意地悪ね。」

祐一「香里にはかなわないさ。」
香里「あら。あたしのは純粋に友情よ。」

くくくくく。
二人で笑い合う。

「・・・似たもの夫婦。」
香里「冗談じゃないわ。あたしの海馬はまだ大丈夫よ。」
祐一「そこで『似たもの』の方を否定するか・・・。普通『夫婦』の方を否定するのに・・・。」

佐祐理「あの、ちょっといいですか?」
祐一「なんだ?」

佐祐理「土日って貴重な時間だ、って、さっき話してましたよね・・・?」

祐一「・・・そうだった・・・・。」

ついバカなことで時間を過ごしてしまったじゃないか。


前期期末試験、千秋楽。

祐一「なあ、あの先生って、追試型かな、レポート型かな?」
香里「既にあきらめてるわけね。まあでも、温厚そうに見える人ほど、問答無用切り捨て型だったりするのよ。」
佐祐理「だ、だいじょうぶですよ。大学って、四年間で単位取ればいいんですから」

新濃「ふっふっふ、甘いね。」
祐一「・・・誰だあんた。」

新濃「なんだ、もう私のことを忘れてしまったのか?それともいつもの嫌がらせかな?」
祐一「いや・・・マジでわからん。」

新濃「・・・・・・。」
香里「前部長。」

祐一「・・・・帰れ。」
新濃「思い出したとたんにそれかい?それはちょっと酷いな。」

祐一「これから試験なんだ。あんたに余計な妨害されたくない。」
新濃「そうか・・・・。じゃあ仕方ない、帰るとするよ。」

祐一「ん?なんだ、今日はやけに素直だな。」
新濃「おっとその前に、お嬢さん方に『この試験で毎年必ず出る問題』を教えておかないとな。」

佐祐理「そんなのがあるんですか?是非教えていただきたいですね。」
祐一「待て、佐祐理さん、この変態と知り合いか?!」

佐祐理「はい。この間香里さんと歩いていたら、『美しいお嬢さん、私と一緒に世界平和について語りませんか?』って。」
祐一「帰れ、今すぐ帰れっ!」

佐祐理「でも、せっかくいい情報を教えてくれるって言うんですし・・・」
新濃「そうだぞ。君はどうやら知りたくないらしいがな。」

祐一「・・・・・・。」

香里「変な意地張ってないで、教えてもらったら?ただでさえ海馬駄目なんだから。」
祐一「またそれかよ・・・。解ったよ、教えてもらえばいいんだろ。」

新濃「よく言った、我が愛しき後輩よ。」
祐一「・・・・・・。」

我慢だ。試験が終わるまでの辛抱だ・・・・。
 
 
 
 

祐一「おわった・・・・・。」
佐祐理「あの問題、ほんとに出ましたね。」

祐一「信じてなかったのか?」
佐祐理「半信半疑でした。」

祐一「あんな変態だけど、情報力だけは凄まじいからな。」
佐祐理「だったら、最初からあの人頼ってれば、もっと楽に対策たてられたんじゃないですか?」

祐一「それは俺のプライドが許さない・・・・」
ん?待てよ。

祐一「香里、お前今回、やけに余裕だったよな。優等生だからと当たり前に受け取っていたが・・・」
香里「なあに?」

祐一「・・・まさか・・・・ヤツに極秘情報とか・・・・」
香里「秘密。」

祐一「秘密って、なんか『その通り』にも聞こえるんだけど。」
香里「秘密」

祐一「ちょっと待て、気になるじゃないか、あの変態と何があったんだ。」
香里「ひ・み・つ・☆」

つんっ

祐一「え?」

いきなり額を突かれて、面食らってしまう。

香里「じゃあね、先に帰るから。」

そういって、手を振って行ってしまった。

祐一「なんだって言うんだ・・・。」
佐祐理「祐一さん、なんとなく顔赤いですよ?」

祐一「え?」

なんでだ。

「・・・・・・・。」

ぶしっ

祐一「・・・い、いたい・・・。」

気がつくと、舞に鉛筆で額を突かれていた。
もちろん、先ではなく尻の方だが。

祐一「・・・なにすんだよ!」

「・・・ちょっと、まねしただけ。」
祐一「こんな事真似すんなあ!」

佐祐理「あははーっ!」

祐一「あははじゃない、マジで痛いって・・・・。」
 

なんだかもうみんな、行動が意味不明だ。
試験が終わって気が緩んだ所為だろうか。
 
 

その12へ

戻る