AIRむかしばなし

浦島太郎


むかしむかしあるところに、遠野美凪という天然美少女がおりました。

美凪「・・・焼肉キムチ。」

時々意味不明な言動をするのは、まあご愛敬です。
 

ある日美凪が海岸を歩いていると、むさい男がよってたかって女の人にいじめられておりました。

観鈴「往人さんおなか空いてるんだよね。ゲルルンジュース、がおがお」

往人「いらねえ。」

佳乃「往人君は佳乃の手料理が食べたいんだよねえ?」

往人「食べたくねえ。」

晴子「そやよなあ。やっぱ手っ取り早く、アルコールでカロリー補給した方がええよなあ?」

往人「いやです。」

みちる「にゅふふ、国崎往人。お前のために生ゴミ拾ってきてやったぞ。食べろ。」

往人「ふざけんな。」

「贅沢な男だな。ならばいっそ、自分の腕を切り落として食うか?」

往人「勘弁してください。」
 

美凪「まあ・・・・・。」

美凪さんは、少し羨ましいと思いました。もちろん往人さんがではなく、いじめている方が、です。
 でも、少し不満もありました。美凪さんは主張する青少年なので、その不満を告げに歩み寄ってゆきました。

美凪「・・・みなさん。そんなやり方をしてはイケマセーン。」

みちる「にょわっ、みなぎ!」

往人「おお、美凪。そうか、助けに来てくれたんだな。だよなだよな、こんないじめ、許されないよな!」

美凪「ノンノン。往人さんいじめるのはとてもいいこと。でもおお。そのやり方がよくありまセーン。」

「ほう・・・」

美凪「男の人をいじめるときはア。はじめからひどい事してはいけませーん。むしろお。最初はとにかく優しく。そう、まるでお母さんかお姉さんのように。そしてえ。男の人が気を許したら、いよいよ行動開始。でもぉ、焦っちゃダメダメ。気づかれないように、少しづつ、じっくり、じわじわ、チクチクと。そしてある日、男の人が気づいたときには。時すでに遅ぉし。もうあなたは私から逃げることはできないのよ、残念だったわねおーほほほ」

観鈴「なるほど・・・」

観鈴ちんは妙に感心しています。

往人「・・・・。」

往人さんは怯えています。

美凪「それではァ。早速実習に入りましょうか。」

晴子「それはええけど。コイツでやるんか?もう内容バレバレやで。」

「ならば、まず私が記憶を消してやろう。・・・ん、奴はどこへ行った?」

一同が顔を上げると、海岸の向こうに両手を高々と掲げながら走り去ってゆく往人さんの姿が見えました。

晴子「ちっ、逃げられたわ。」

美凪「逃げるときにバンザイしながら走るのって、誰が始めたんでしょう・・・?」
 
 
 
 
 
 
 

その夜。
美凪さんは眠っています。

美凪「・・・むにゃむにゃ・・・」

なんか寝言言ってるようです。

美凪「・・・平成米騒動の時は中国に助けてもらったのに・・・本当に日本人って恩知らず・・・いつからこうなってしまったんでしょう・・・やっぱり戦後民主主義教育の所為・・・ううんちがいます・・・戦後民主主義教育は・・・60年安保の時に民族主義者の手で葬り去られてしまった・・・これ以降の教育は戦無管理教育と呼ばれて然るべきもの・・・それなのに・・・戦無管理教育が間違っていたと判明するや・・・民族主義者は手のひらを返して教育体制を攻撃・・・しかも名前すり替えて・・・責任を左翼勢力に押しつけて・・・なんて無責任・・・だいたい・・・彼らの言う日本の伝統なんて・・・ほとんど明治以降に成立したもの・・・江戸以前の日本というのは・・・もっとおおらかで進取性に富んだ社会・・・それを全部ぶちこわしたのは・・・明治政権・・・ですから最初から・・・坂本龍馬が目指したように・・・共和制を目指していればよかった・・・それを王政復古などという愚行に及んだがために・・・原爆二個も落とされて沖縄は植民地化・・・それでもあの人たちは天皇制を賛美し続ける・・・しかも・・・私たち若い世代が・・・職無くて自暴自棄になるくらい苦しんでいるというのに・・・元軍人やら遺族やらは・・・年金と恩給貰ってぬくぬくと暮らしている・・・これが日本の現実・・・改めるべき日本の現実・・・それなのに・・・こんな連中にゴマ擦る小泉総理は・・・やっぱり無能・・・だって彼は・・・辺野古沖15年期限すら引き出せなかった・・・15年期限というのは・・・沖縄の保守勢力がギリギリの妥協として打ち出したものなのに・・・ブッシュの言いなりな提灯発言するなんて・・・見損ないました・・・だいたいあの田中真紀子にしたって・・・米兵に強姦された女性を非難する始末・・・何で性暴力の被害者が非難されなくちゃいけないんですか・・・人間性を疑います・・・だいたい夜二時と言ったら沖縄では宵の口・・・目黒の豪邸にしか住んだこと無いくせに・・・わかったような口きいて欲しくないですね・・・にもかかわらず・・・マスコミ・・・特にテレビメディア・・・勢揃いして小泉バンザイ田中バンザイ・・・社民党のCMは放映拒否するくせに・・・なんて嘆かわしい・・・この国は・・・・・・」

往人「寝言長いっちゅーねん!」

いつの間にか、往人さんが枕元に立っていました。

往人「おい、遠野美凪、起きろ。」

美凪「・・・ぐがー。」

起きないようです。

往人「起きないなら仕方ないな。用は済んだことにして立ち去ろう。」

往人さんは勝手に任務を完了させてしまいました。

往人「さて、帰るか。」

往人さんが帰ろうとすると、戸口には美凪さんが立っていました。

往人「お、おわ!お前、いつの間に!」

美凪「・・・せっかく往人さんが夜ばいに来てくださったのに・・・黙って帰すなんてできません・・・ぽ。」

往人「お前さっきまで寝てただろ!」

美凪「まあ心外。私は往人さん以外の男と寝るつもりなんてこれっぽっちもありませんわ。」

往人「・・意味わかって言ってるか?」

美凪「もっちもちもちもち肌もちろん。」

往人さんはなんだか逃げたくなりました。
でも、大事な任務があるので、逃げるわけには行きませんでした。

往人「あのな、遠野。俺はただ、竜王の命令でお前を竜宮城に連れてくるよう命令されただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。」

美凪「つまり要約すると、ホテル『竜宮城』に連れ込む・・・」

往人「おかしな解釈で要約するなあっ!」

こうして美凪さんは、往人さんに連れられて竜宮城に行きました。
 
 
 
 

 竜宮城は絵にも描けない美しさでした。でもこのSSは文章だけで挿絵はないので、問題なしです。

柳也「ようこそ竜宮城へ。本当はあなたのような奇天烈なお方をこの神聖なる竜宮城には入れたくなかったのですが、大事な子孫を助けて貰った礼はしなければなりませんので。はあ・・・」

美凪「まあ、ほんとは美しいのかもしれないけど顔を描いてもらえなかったから真偽のほどは定かではない柳也さん。あなたが竜王様?」

柳也「いや、一応このクソガキが竜王ということになっている。ところでその前フリは何なんだ?」

神奈「誰がクソガキじゃっ、この顔無しアンダーセブンが!」

往人「俺にすらちゃんと顔があるっていうのにな。」

裏葉「ちゃんとした顔とは到底思えませぬが。」

往人「(顔面蒼白)」

美凪「・・・楽しいところですねえ・・・」

 こうして美凪さんは、楽しい時を過ごしました。帰れというのも聞かず、一ヶ月も居座っておりました。
 
 
 
 
 

 そして、とうとう美凪さんが強制送還される日が来ました。

美凪「やっぱり、就労ビザをとっておくべきだったんでしょうか・・?」

裏葉「関係ありませぬ。」

美凪「ところで。何かおみやげをくださいませんか?ここってどうも土産物屋が無いようなので・・・」

柳也「厚かましいやつだな。ほれ、この箱をやる。」

美凪「あら。やっぱり玉手箱なんですね。」

柳也「・・・何故知っている。」

美凪「ちょっと・・・その筋から。」

神奈「なに手首を指し示しておるのじゃ。」

美凪「短橈側手根伸筋。」

往人「え、なんだって、なんて読むんだ?」

美凪「わかりません。コピーしてきただけなので。逆変換もできませんでした。」

往人「自分でも意味解らない単語なんか使うなよ・・」

美凪「えっへん。」

往人「えっへんじゃないって・・・」
 
 
 
 
 
 

こうして美凪さんは地上に戻りました。

 地上に戻ると、そこはなんと30年もの年月が経っておりました。
顔見知りの女の子たちも、すっかりおばさんです。

美凪「まあ、もしかして晴子さん。あなたは全然お変わりありませんね、昔から老けてたから。」

晴子「しばきたおしたろか、このアマ」

もちろん、美凪さんは少女のままです。竜宮城というのは、地球よりも重力が大きいのです。

美凪「♪わたしがおばさんになあってもお♪」

 美凪さんはここぞとばかりに優越感に浸り、若さを見せびらかしています。

みんな怒っています。

 さすがに孤立化に気づいた美凪さんは、しゅんとなって海岸で座り込んでいました。
そして、ふと手元にある玉手箱に目がとまりました。

美凪「玉手箱・・・そう、これを開ければ、私はおばあさんになれる・・・みんなと一緒・・・」

しかし、開ける決心はつきません。

美凪「だって私、まだ青春を謳歌していないんですもの・・・そうよ、辛くたって、寂しくったって、若い方がいいに決まってる。若ければいくらでもやり直しはきく。そう、若さは力! 青春は夕日!」

決心のついた美凪さんは、玉手箱を海に放り投げようとしました。

みちる「ぴぴーっ、そこそこ! 海洋への廃棄物投棄は法律で禁止禁止!!」

美凪「・・・みちる?」

みちる「え、美凪・・美凪?美凪なの?竜宮城へ連れて行かれたって聞いてたけど、戻ってきたんだ・・・」

美凪「ええ、戻りました。みちるは・・・30年前と同じ姿なんですね。」

みちる「んに?ん、そうだよ。だってみちる、人外だもん。人間みたいに年取ったりする必要無いもんねー。でもねでもね、ちょっとコネがあって、戸籍作ってもらえることになって、で戸籍上は18になったからそろそろ就職しようかなーっておもって、今では環境パトロール、公務員だあ!」

美凪「まあ。それでさっき、偉そうな口たたいていたのですね。」

みちる「んにひ。子供の姿で大人に偉そうな口きくのって、そ−かいだね。ところでその箱何?」

美凪「ああ、これは」

そのとき、美凪さんの心の中に、めらめらといたずら心が燃え上がってきました。

美凪「・・・おみやげです。開けてご覧なさい。」

みちる「え、いいの?やったあ、おみやげ!」

みちるが箱を開けます。
箱の中から白い煙が立ち上り、そして

美凪「・・・まあ、18歳みちる。」

みちる「にょにょわーっ、大人の姿になっちゃった・・・」

美凪「何を言ってるんですみちる、18歳はまだまだ少女、大人じゃないですよ。」

みちる「で、でも、みちるはみちるのままでいたかったのに・・・」

美凪「贅沢言ってはいけません。これで新たなファンもゲットできるんですから。」

みちる「うううう・・・」

美凪「・・・それに。どうしても戻りたいのだったら、方法がないわけでもないです。」

みちる「え、ほんと?」

美凪「・・・この魔法のステッキで。地球に潜む悪と戦うのです。そして人々の心に愛と勇気と希望を取り戻し、宇宙の彼方にとんでってしまったフェノールフタレイン公国を呼び戻せば。」

みちる「な、なにそれ・・・そんな国知らないけど、どっかで聞いたような話・・・」

美凪「・・・ガンバ。」

みちる「ガンバって・・・ほんとにこれで、元に戻れるの?」

美凪「・・・・・・・・・・たぶん。」

みちる「たぶんって何・・・!」

美凪「ちなみに名前は、『魔法のプリンセスファンキーみちる』。」

みちる「そんな名前嫌だあ!」
 

 こうしてみちるは美凪の陰謀にはまり、ファンキーみちるとして美凪の引き起こす厄介ごとの処理に追われる日々を送ったとさ。

めでたしめでたし。
 
 
 

2001年7月15日執筆
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